炭素文明論 の商品レビュー
タイトルからは「炭素」を切り口とした壮大な世界史、を予期させるが、実態としてはさまざまの有機化合物を現代社会とリンクさせつつ、興味深い歴史的エピソードを交えて紹介する、「科学読み物」。方々の記述を寄せ集めただけな感もあるけれど、その編集能力や軽妙な語り口ふくめて一読に値するかと。...
タイトルからは「炭素」を切り口とした壮大な世界史、を予期させるが、実態としてはさまざまの有機化合物を現代社会とリンクさせつつ、興味深い歴史的エピソードを交えて紹介する、「科学読み物」。方々の記述を寄せ集めただけな感もあるけれど、その編集能力や軽妙な語り口ふくめて一読に値するかと。僕のような化学をほとんど学ばぬままに化学メーカーで営業やってる人間にはほどよくおもしろく読める。
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世界史と有機化合物とを見事に繋ぎ合わせた傑作。過去に起こった様々な戦争が、実はたった一種類の有機化合物を巡っての争いであることも少なからず。このような観点で、化学の歴史も学べるなんて、まさに目から鱗。 もしこの現代になってアルコールが発見されたら、恐らくアルコールの摂取そのもの...
世界史と有機化合物とを見事に繋ぎ合わせた傑作。過去に起こった様々な戦争が、実はたった一種類の有機化合物を巡っての争いであることも少なからず。このような観点で、化学の歴史も学べるなんて、まさに目から鱗。 もしこの現代になってアルコールが発見されたら、恐らくアルコールの摂取そのものが認可されないだろうというのは、確かにその通りと納得。 あとがきに書いてあるが、化学物質と聞くと世間一般には危険、汚染、悪者といったネガティブなイメージしか湧かないかもしれない。しかし、この世の人々の生活は全て化学物質・化学反応の進化の上に成り立ってるんだという著者の熱い思いには、同じ化学者として大いに賛同いたします。
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やばい。これはすごく面白い。興味深い。 炭素由来と言って簡単に思いつくのは鉛筆やダイヤモンド、せいぜい石炭だろうか。 現代の科学においては、有機物といえば炭素化合物になるのだそうな。私の中では有機物は生命が元になっているもの、無機物はミネラルなどの鉱物系のイメージだった...
やばい。これはすごく面白い。興味深い。 炭素由来と言って簡単に思いつくのは鉛筆やダイヤモンド、せいぜい石炭だろうか。 現代の科学においては、有機物といえば炭素化合物になるのだそうな。私の中では有機物は生命が元になっているもの、無機物はミネラルなどの鉱物系のイメージだったので驚いた。 つまり、石炭は言うに及ばず、ガス、石油も炭素化合物なのである。 いやいや、それだけじゃない。でんぷん質、砂糖……我々が生きていくために、炭素は必要不可欠なのである。 人間が狩猟民族から農耕民族に代わり、穀類の争いが始まり、産業革命がおきてからはエネルギーをめぐる戦争が起きている。 オイルショックから温暖化問題、PM2.5など、未だに炭素からは離れられないし、楽観も出来ない。 炭素という切り口で、幅広く化学をめぐる歴史や実学を学べる。しかも大変興味深く面白いというすごい本。文章も読みやすいのでお勧め。 説明が分かりやすく豊富なので、化学が苦手でも小学校の理科レベルの知識があれば大丈夫です。たぶん。
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面白かった。 地球上にほんの僅かしかない炭素が、むっちゃ影響力持ってることが良く判る。 炭素化合物が人に取ってどの位大切なのかはまあ普通として、それぞれの化合物が、歴史を動かして来た視点が良いのだ。 ただ、難点はタイトルで、読めばなるほどかもしれんが、タイトルから内容の面白さが想...
面白かった。 地球上にほんの僅かしかない炭素が、むっちゃ影響力持ってることが良く判る。 炭素化合物が人に取ってどの位大切なのかはまあ普通として、それぞれの化合物が、歴史を動かして来た視点が良いのだ。 ただ、難点はタイトルで、読めばなるほどかもしれんが、タイトルから内容の面白さが想像し辛く、もうちょっと売れるタイトルにしてあげたら良かったのに。
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宇宙はもちろん,地表・地殻を見てもごく僅かしかない炭素。にもかかわらず,この元素は驚くほど多様な化合物を構成する主役であり,生命に欠かせない。食糧,薬物,エネルギーの三部構成で綴る有機化学と人類の歴史。 化学がテーマではあるけれど,歴史的雑学的知識が豊富に紹介されてて(むしろそっ...
宇宙はもちろん,地表・地殻を見てもごく僅かしかない炭素。にもかかわらず,この元素は驚くほど多様な化合物を構成する主役であり,生命に欠かせない。食糧,薬物,エネルギーの三部構成で綴る有機化学と人類の歴史。 化学がテーマではあるけれど,歴史的雑学的知識が豊富に紹介されてて(むしろそっちがメイン),亀の子苦手でも全然大丈夫。
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生命・文明のキープレイヤーである「炭素化合物」という視点からみる歴史・人類史。本著の主要参考文献達からエピソードを拾い上げたような内容だが、サイエンスライターの著作だけあり、程よく知的好奇心をくすぐる範囲でまとまっており、スラスラと読める。炭素が歴史上いかに決定的な役割を演じ、こ...
生命・文明のキープレイヤーである「炭素化合物」という視点からみる歴史・人類史。本著の主要参考文献達からエピソードを拾い上げたような内容だが、サイエンスライターの著作だけあり、程よく知的好奇心をくすぐる範囲でまとまっており、スラスラと読める。炭素が歴史上いかに決定的な役割を演じ、これからも重要な役割を担っていくかがよくわかる。人口増による消費エネルギーの増加とその弊害に対応する重要かつ欠かせないファクターが化学の進歩であると改めて実感。炭素化合物の保持や技術が今までもこれからも争いを生み、勝敗を決していく。
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タイトルはちょっとごついが、炭素にまつわる科学史が非常に分かりやすく書かれていた。佐藤氏は一度講演をお願いした経験があり、話がとても面白い方だったけど、文章でも話の引き出しが多く最後まで飽きなかった。オーランチオキトリウム頑張れ!
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題名からは意外な流れで有機物(炭素化合物)が歴史に果たした役割を開設している。参考文献の最初に出てくるのが「銃・病原菌・鉄」で2番目が「スパイス・爆薬・医薬品」で似たような雰囲気ではある。他にも参考文献には読んだ本がいろいろ入ってたが帯の「今年度No1のサイエンス本の呼び声!」と...
題名からは意外な流れで有機物(炭素化合物)が歴史に果たした役割を開設している。参考文献の最初に出てくるのが「銃・病原菌・鉄」で2番目が「スパイス・爆薬・医薬品」で似たような雰囲気ではある。他にも参考文献には読んだ本がいろいろ入ってたが帯の「今年度No1のサイエンス本の呼び声!」と言うのはちょっと言い過ぎだろう。化学式はちょっと出てくるがあまり専門的ではない。 序章のアヘン戦争にはじまり、デンプン、砂糖、芳香族化合物(香辛料)、グルタミン酸という食品のグループ、次にニコチン、カフェイン、尿酸(これだけちょっと毛色が違う)、エタノールと言うドラッグ、嗜好品、そしてニトロ、アンモニア(炭素ではないが肥料とニトロの原料)、石油というエネルギー関係そして最後にフラーレンやカーボンナノチューブ、そして人工光合成と炭素の未来の物質までつづく。「スパイス・爆薬・医薬品」が少しづつ関連する物質を紹介していたのに比べると並びは普通。 せっかくなのでなぜか混ざっていた尿酸について。 プリン体はもはや悪者扱いだが実はDNAをつくる構成成分のうち2つはプリン体骨格を持つ。青酸(HCN)とアンモニアという比較的単純な物質を混ぜて加熱すると高確率でできるアデニンに糖とリン酸が結合したのがDNAの構成単位でありアデノシン3リン酸(ATP)は糖の代謝経路にも使われる。このプリン体が酸化して出来たのが尿酸で水に溶けにくく、体内で結晶化すると痛風の原因になる。なんと最古の痛風患者は人ではなくティラノサウルスだそうだ。 歴史上の痛風患者にはアレキサンダー大王、フビライ・ハーン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ニュートン、ダーウィン・・・と錚々たる天才が並ぶ。20世紀に入り知能指数が高い人を調べてみると痛風患者が通常の2〜3倍もいることがわかり、「天才物質」という説が出てきたそうだ。う〜む、因果関係が逆で収入が高くていいもの食ってるだけじゃないのか?と思うのだが。ビールを飲みながらの小ネタとしてはなかなか使えそうではある。
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地球の地表及び海洋の元素分布のうち、重量比にしてわずか0.08%を占めるに過ぎない炭素。しかし、人体を構成する元素のうち、実に18%(水分を除いた体重では50%)がその炭素に占められる。また、これまでに天然から発見され、あるいは化学者たちが人工的に作り出してきた化合物のうち、80...
地球の地表及び海洋の元素分布のうち、重量比にしてわずか0.08%を占めるに過ぎない炭素。しかし、人体を構成する元素のうち、実に18%(水分を除いた体重では50%)がその炭素に占められる。また、これまでに天然から発見され、あるいは化学者たちが人工的に作り出してきた化合物のうち、80%近くまでもが、やはりその炭素を含む有機化合物である。なんとなれ、炭素とは、電荷がプラスにもマイナスにも偏らない不偏不党の存在、いわゆる「元素の王者」なのである。その特質は、互いに何百万個連結しようと、緊密で安定した多様な化学物を作り出すことができるという。特に、炭素を包み込むように結合する水素との組み合わせは、そのたった2種類の元素だけでメタン(ガス)、ヘキサン(ガソリン)、カロチン(ビタミン)、ポリエチレン(プラスチック)等々、全く性質の異なる分子を無限に構成できるほどである。そう、いったい自分たち身体だけでなく、食物(炭水化物、味覚)、嗜好品(ニコチン、カフェイン、アルコール)、医薬品に始まって、衣服、住宅、エネルギー(石炭、ガス、ガソリン)、火薬(ダイナマイト、ニトロ)に至るまで、今日の自分たちの生活は炭素を抜きにして語ることはできない。もとい、炭素をめぐる歴史こそ、生命の歴史であり、人の文明の歴史そのものなのである。恐れ入った炭素文明論ここにあり。わずかな炭素の紡ぐ、その柔らかくてしなやかな結合を紐解くとき、自分たちの新しい未来が覘かれる。
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非常に面白かった。やはり自分は理系なのか、知的好奇心が擽られた気がした。 石油、カフェイン(コーヒー)、エタノール(アルコール)などは個別に興味のある分野なので、また面白い本を探したい。
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