マンチュリアン・リポート の商品レビュー
天子蒙塵を読み終えたので、マンチュリアン・リポートへ遡り 以前読んだ時は取っ付きにくくて読むのに苦戦したけど、今ならごくごく飲み込める こんなに面白かったとは
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関東軍が仕掛けた張作霖爆殺事件について、陸軍の不正を訴えた志津中尉が天皇陛下の命を受けて調査に乗り出す。 未だに謎が多い張作霖爆殺事件だが、本人は知っていながら、敢えて死を選んだようにも見えた。 浅田次郎のシリーズは龍玉を軸にして描かれているようにも見えた。
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「蒼穹の昴」シリーズ第4弾。 「満州報告書」 張作霖を乗せた列車爆破の真相は‥。 つらくて悲しい時代なので、読んでいて苦しかったです。 どうして止められなかったのか、どうしてこういう流れに流されていってしまったのか。 いくつかのリポートの間にある、爆破された蒸気機関車の生い立...
「蒼穹の昴」シリーズ第4弾。 「満州報告書」 張作霖を乗せた列車爆破の真相は‥。 つらくて悲しい時代なので、読んでいて苦しかったです。 どうして止められなかったのか、どうしてこういう流れに流されていってしまったのか。 いくつかのリポートの間にある、爆破された蒸気機関車の生い立ちと思いが、悲しみを深めます。 そして4作通して生き抜いていく西太后に仕える宦官・李春雲の人生を思うと心が締め付けられます。
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天皇の命令で、張作霖の暗殺の真相を探るべく満洲へ向かった主人公。調査の過程を天皇へのレポート形式で綴るとともに、暗殺に利用された機関車が語る。 なんでこの形式にしたのかが疑問。凝った設定ではあるが、創作感が強すぎてファンタジーに感じられてしまう。蒼穹の昴焼き天上の虹が非常に良い...
天皇の命令で、張作霖の暗殺の真相を探るべく満洲へ向かった主人公。調査の過程を天皇へのレポート形式で綴るとともに、暗殺に利用された機関車が語る。 なんでこの形式にしたのかが疑問。凝った設定ではあるが、創作感が強すぎてファンタジーに感じられてしまう。蒼穹の昴焼き天上の虹が非常に良いので、そのシリーズとしては残念。
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23.09.06~23.09.18 真実ってどこにあるんだろう。どれが真実なんだろう。 正義って何だろう。 人によって、立場によって、異なるのはわかる。 でも、それを自分の身に都合のよいように解釈するのは、どうなんだろう。
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やっと中国史シリーズ読了。 この時代のこと、あまりよく知らなかったし考えたこともなかったけれど改めて興味を持つことができた。 浅田さんの作品はなんとゆーか、誰も悪者にしないとゆうか。悪いやつでも実はね…といった人間らしさが描かれていて、そうゆうところが本当に好き。
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やっと浅田次郎の中国シリーズ、全て読めました。 これは、読み直しですね。 読めば読むほど面白くなる感じです。
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行こう、雨亭。鉄路はどこまでも続いている。皇帝でも総欖把でも大元帥でもない永遠の少年を乗せて、私は走りたい。それこそ鋼鉄の公爵の名にふさわしい、栄光の旅だと信ずるから。 張作霖が爆殺されてから一年後、昭和天皇の密命を受けてなぜ彼は殺されたのかを探る軍人の報告書と、彼を乗せた豪華...
行こう、雨亭。鉄路はどこまでも続いている。皇帝でも総欖把でも大元帥でもない永遠の少年を乗せて、私は走りたい。それこそ鋼鉄の公爵の名にふさわしい、栄光の旅だと信ずるから。 張作霖が爆殺されてから一年後、昭和天皇の密命を受けてなぜ彼は殺されたのかを探る軍人の報告書と、彼を乗せた豪華機関車のモノローグが交互に挟まる蒼穹の昴シリーズの10巻目。巻を増やすごとに面白くなっていきます。 吉永中佐が大好きです……当時からこうやって引き裂かれた人はたくさんいたはずなんだ……雨亭が中佐に最後にかけた言葉も好きです…… どうか最終章まで読んでいただきたい……あの「ああ……」としか言えない感覚を多くの方に味わっていただきたいです。
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報告書形式で張作霖が爆殺された事件の真相に迫る話。淡々と進んでました。なるほどそんなところに爆弾仕掛けてたのかーと歴史の勉強になりました。 シリーズが長編、謎解き、長編、謎解きの交互できて、その謎解きターンでした。
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浅田次郎『マンチュリアン・リポート』(講談社、2010年)は張作霖爆殺事件(満州某重大事件)の真相に迫る歴史小説。『蒼穹の昴』シリーズ第四部である。日本史と中国史が重なる事件である。 日本では張作霖は軍閥の親玉という程度の扱いとされがちである。このために、その殺害もそれほど大き...
浅田次郎『マンチュリアン・リポート』(講談社、2010年)は張作霖爆殺事件(満州某重大事件)の真相に迫る歴史小説。『蒼穹の昴』シリーズ第四部である。日本史と中国史が重なる事件である。 日本では張作霖は軍閥の親玉という程度の扱いとされがちである。このために、その殺害もそれほど大きな話ではないように思われがちであるが、中華民国(北京政府)の国家元首であった。国家元首を殺害しており、由々しき事態である。この重大性は現代日本では軽視されている。 視点人物は日本軍の中尉である。物語は治安維持法改悪への反対から始まる。張作霖爆殺事件と無関係に見えるが、「治安維持法の改正と爆殺事件は、けっして無縁ではないよ。国民の自由を奪わんとすることと、他国の領土を奪わんとすることは、同じ悪魔の発想だ」と説明される(105頁)。警察法改正反対運動が起きた2022年も参考になる。 中国人は「この国の人々は余分なことをしようとはしないが、報酬の分だけは必ず働く」と評される(104頁)。「頑張ります」という昭和の精神論根性論に毒されていない。IT業界では中国へのオフショア開発が盛んであるが、納得できる評価である。田中芳樹『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーは中国系の設定であるが、給料分だけ働くことにこだわっていた。 本書は鉄道乗務員について以下のように説明する。「当時の鉄道員は労働者というよりも、文明の最先端にある技術者であり、特権階級であった」(128頁以下)。労働者と「文明の最先端にある技術者」は相容れないものとすることは労働者のイメージに偏見がある。労働者であり、かつ、「文明の最先端にある技術者」となる。 夏目漱石『坊っちゃん』の坊っちゃんは四国の旧制中学校の教師を辞職して街鉄の技手となった。坊っちゃんは公務員的な出世主義では敗者となるが、それは公務員組織の価値観であり、当時は文明の最先端にある技術者と言えるだろう。 近代中国史の屈辱は阿片戦争に始まる。依存性薬物の阿片を輸出し、清国民を阿片漬けにして、それを清国政府が取り締まると侵略戦争を始めた。この上なく非倫理的な侵略である。 『蒼穹の昴』シリーズの別の書籍には以下の記述がある。「仮に近代資本主義と植民地主義が不可分の関係にあるとしても、阿片戦争はあってはならぬ蛮行だった」(浅田次郎『兵諫』講談社、2021年、137頁) 阿片は20世紀になっても中国社会にまん延していた。本書では阿片中毒患者の病棟が描かれる。「禁断症状なのか痛みによるのか、ただならぬ唸り声や悲鳴や、壁を叩いたり蹴ったりする物音があたりに響き渡っていました」(199頁)。 一方で、この時代の中国人からは日本人は依存性薬物を否定すると評価されている。「日本人が阿片窟に出入りすることはないのです。阿片窟どころか、日本人には阿片を悪とする道徳があるので、王は阿片呑みの日本人さえ知らなかった」(202頁)。実際の日本は阿片に潔癖ではなく、日本軍は阿片を資金源にした。漫画『ゴールデンカムイ』の悪玉の軍人は阿片を密売していた。 21世紀の日本では危険ドラッグが社会問題になったが、危険ドラッグの原料の多くは中国から輸入されたものであった。「危険ドラッグの製造拠点として11府県の13カ所が摘発された。全てのケースで中国から原料が輸入されていた」(「危険ドラッグ摘発5.6倍の706件 14年、中国から原料輸入増」日本経済新聞2015年3月5日)。19世紀や20世紀前半にイギリスや日本が中国に依存性薬物を販売したが、21世紀には逆転している。日本人に依存性薬物を悪とする道徳がないと大変なことになる。 志津中尉は「大丈夫ですか」と質問し、相手から以下の反撃を受ける。 「大丈夫、か。妙な言葉だ。そう訊かれたって、まさかもうだめだとは言えまい」 「正直なところ、ちっとも大丈夫ではない。貴様の立場はわかるが、あれこれ詮索するのはもう勘弁してくれんか」 志津は「この明らかな病人から証言を引き出そうとしたおのれを恥じた」(272頁)。 表面的には相手を心配しているような風で「大丈夫ですか」と質問し、実際は相手に「大丈夫です」と答えることを強要させることは卑怯である。まともな倫理観を有しているならば志津のように恥じることが正しい。
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