タタール人の砂漠 の商品レビュー
2026.04.11 Xでバズっていたので、購入してみた。森見登美彦さんの言葉が帯にあり、やはり面白そうと思う。 そんな軽いきっかけで読み始めたが、この作品の重い雰囲気は僕の日常の生活にも染み出してくるような、僕の現実との境界が曖昧になるような体験であった。 北から現れるであろ...
2026.04.11 Xでバズっていたので、購入してみた。森見登美彦さんの言葉が帯にあり、やはり面白そうと思う。 そんな軽いきっかけで読み始めたが、この作品の重い雰囲気は僕の日常の生活にも染み出してくるような、僕の現実との境界が曖昧になるような体験であった。 北から現れるであろう敵を、一読者の私すら今か今かと待ち望むも、時間が淡々と過ぎていく。その期待感は、ドローゴが抱くものときっと変わらぬ大きさであり、ここまで読者にソワソワする感覚を持たせる技法が読書でできることに驚いた。大きな戦争の予感や砦を舞台にしながら、ほとんどの描写は半径5m以内の小さくきめ細かいものである。読者が飽きてきそうなタイミングで時折起こるイベントも肩透かしであり、砦の兵士と同様にこのまま何も起こらず小説は終わるのだろうと予感させる。が、最後に待ちに待った敵が現れるも、時すでに遅し。漠然とした期待感に生かされた人間も寿命には勝てない。砦を離れるドローゴの悔しさを腹の底から共感する。しかし、最後の最後にドローゴの心境の転換、死へ向き合う姿勢になんだか清々しさを感じる。結局、人生で大きなことを成し遂げられたか(戦果をあげたか)なんて死を前にしてはちっぽけなことなのかもしれない。 漠とした期待感を抱き、それゆえに不安を抱き、時に諦観し、時に奮起し、それでもその大半はつまらぬ日常であり、時だけは平等に過ぎていく。仲良い人でも一定離れれば再開した時には昔のように仲良く話せないのは、時間が経つとはそういうことだから。それでも今を共に生きる、近くにいる人間との時間を日々大切にしていくことが、人にできる唯一のことでそれは尊いことなのだ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公がなかなか目的地につかず、退屈な描写がダラダラ続き、クヨクヨと思い悩んでる様子が事細かに描かれるのが、最初は煩わしく思えた。なのに、ある時から急に面白くなるのである。 物語のテンポは変わらないし、ドローゴは年を取る以外の変化がほぼない。なのに、なぜか読むのが心地よい。 それは主人公が絶望的な環境に慣れてしまったタイミングだったのだと思う。物語が進むほどに時の流れが雪崩のように加速するのだけど、ドラマティックなことは何も起こらないのがすごい。ほっこりもしないし血湧き肉躍る展開もない。なのに面白い。不思議だけど、誰の人生も実はそういうものなのかもしれない。 不安と孤独と焦燥に苛まれつつも、ほんの少しの希望にしがみつきながらドローゴは年を取っていく。惨めに青春を空費し、最後まで特筆するような功績もあげられず物語から去っていく。あまりにも救われない主人公だが、読後の余韻は決して暗くなかった。と今は思っている。再読したら落ち込むのかも。 稀有な作品に出会えてとてもうれしい。
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描こうとしたのは人生そのものだ、という解説があったけれど、それが腑に落ちてしまうような、面白いけれど怖い小説。 人は幻想を見る。未来の可能性を軽く考えながら、慣れていく。普通や、日常や、常識に慣れていってしまう。気がついたときには、私もどこへも行けなくなってしまうのではないかと、...
描こうとしたのは人生そのものだ、という解説があったけれど、それが腑に落ちてしまうような、面白いけれど怖い小説。 人は幻想を見る。未来の可能性を軽く考えながら、慣れていく。普通や、日常や、常識に慣れていってしまう。気がついたときには、私もどこへも行けなくなってしまうのではないかと、うすら寒い気持ちになった。
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自分から動かずに、いつかきっとと希望を持つことの虚しさを感じた。 自ら行動して初めて、希望は叶えられるのだと思う。
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(基本的に)何も起こらない物語である。 しかし、読み手にとっては非常に面白いものであった。ゲタゲタと笑う面白さではない。 本書において描かれる主人公の、いや人間の人生の、何かしようとも何をしないでも過ぎ去る時の残酷さが読み手の心に突き刺さってくる。読み終えてもしばらくそのトゲ...
(基本的に)何も起こらない物語である。 しかし、読み手にとっては非常に面白いものであった。ゲタゲタと笑う面白さではない。 本書において描かれる主人公の、いや人間の人生の、何かしようとも何をしないでも過ぎ去る時の残酷さが読み手の心に突き刺さってくる。読み終えてもしばらくそのトゲは取れず、読後の余韻というかたちをもって、しばらく本書で描かれていた残酷さに思いを馳せてしまう。 残酷ということで言えば、本書において、希望を持つことが、呪いにかけられ、そこから逃れられなくなり、人生の歩みを止めてしまうものであるように描かれていたことも印象的である。 いやー、怖い本でした。人が生きていくのってなんなんだろうなって考えてしまいます。
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淡々としている中世の軍人さんの話。 世界観やゆったりした時間の流れは秀逸です!なかなか話が進まないけど、進み出したらラストまでノンストップ! 石橋を叩いて渡らない人には刺さる内容かなぁー。 人の価値とは、、うーん。再加熱した理由も分かる昔の名作でした。
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文章が美しく、描写される風景のすべてが幻想的。 ずっと何か起きそうで、実際には何も起きず、その過程で期待と落胆とが続くようなドゴールの砦での生活、人生が描かれる1冊。 「つまり、われわれにだって何か価値のあるものが常に巡って来ているんだ。(中略)おそらくわれわれはあまりに多く...
文章が美しく、描写される風景のすべてが幻想的。 ずっと何か起きそうで、実際には何も起きず、その過程で期待と落胆とが続くようなドゴールの砦での生活、人生が描かれる1冊。 「つまり、われわれにだって何か価値のあるものが常に巡って来ているんだ。(中略)おそらくわれわれはあまりに多くを期待しすぎるのかもしれない、実際にはなにか価値のあるものがわれわれにも常に巡ってきているのに」─────
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X(Twitter)で絶賛するポストを見かけて、興味を抱きました。 読んでみよ、と思ったら書店では売り切れ。ネットで注文してみたら、ご用意できませんでした、とキャンセルされることが2回ありました。 でも、絶版ということはなく、話題になったことが好機だったのかたまたま増刷の機会だ...
X(Twitter)で絶賛するポストを見かけて、興味を抱きました。 読んでみよ、と思ったら書店では売り切れ。ネットで注文してみたら、ご用意できませんでした、とキャンセルされることが2回ありました。 でも、絶版ということはなく、話題になったことが好機だったのかたまたま増刷の機会だったのか、正規ルートでちゃんと入手することができました。 この前に、弩級のエンタメ作品「プロジェクトヘイルメアリー」を読んで興奮していたので、それとの対比で最初はなかなかこの作品に馴染めませんでした。 何か起きるの起きないの?!なんなの?と。。 でもじわじわ…描かれている空気感と真綿で首を締めるような感じで変わっていく(気付く)ことがあり、その構成?進め方に感心しました。 ゆで蛙の法則というのか。 帯に万城目学さんコメントがあり、そんなに面白いんだ!と思ったのですが、万城目学さんも、森見登美彦さんの本も一冊も読んだことがなく、その方々の「面白い」のベクトルを私はわかっていなかったかもしれません。。 帯のようなテンションにはならなかったため…。 プロズドチモ辺りを読んでいる時…、「ショーシャンクの空に」が思い起こされました。 刑務所に長く居て、そこが居場所になりすぎたため娑婆に馴染めず……というエピソード。 閉ざされた場所?外界から遮断された場所?独自に形成される常識や適応して改変されていく価値観。 自分は大丈夫なのか…?という不安と、会社の一部に対しての疑念はもしかしてその通りなのかも、とドキドキしました。 自分の仕事、ブルシットジョブじゃないかと虚無る時がある。 人の生死とかに役立つわけではないのに、業界的にはお金がよく動く。 どうでも良いことに労力を割いているんじゃと思う時もいる。 仕事が生きがいになっていないかなというくらい会社にいる人がいる。 会社でいい顔してストレス貯めて家族に当たったり、心身を回復するのに社外でお金使ったりたくさん寝たりすることがある。 会社ってそんな大層なものか?と思う時もある。 表向きうまくやるために感情を押し殺して、上司と部下という力関係があると真実も口にできない。部下がへいこらすることで、歪な優越感でどんどん視野狭窄になっていく上司…。それでも現在のパワーバランスから逆らうことが出来ない。変な空間、と思うこともある。 いい人もいるし、心から助けられることもあるから完全に否定はできないしやめないけれど。 会社は閉ざされた空間で、社内と社外では、価値観も評価も変わる。 会社で偉そうにしている人、重宝されているように見える人も、 雑用係として重宝しているだけで、その人が友達も恋人もいなければ、陰で馬鹿にするとかあるのかな。 会社は一部なだけで、そこに懸ける必要はないのか…? どう生きていくか、の舵取りや意識、流れ着いたところで頑張って生きていく、のもいいけれど自分で選択して楽な方に逃げない、体力がある内にあらがってみるのも大事なのかも。
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可哀そうなドローゴ なんとも空しい生涯なのでしょう 砦の湿った埃っぽい空気感がすごく伝わってきました ドローゴは不運だったのか、幸せだったのか どうか幸せだったと思ってほしい
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