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タタール人の砂漠 の商品レビュー

4.3

117件のお客様レビュー

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2023/11/08

この本は、感動することも驚愕することも心温まることなく、しかし悲劇でもない。ずっと何かを予感させるようで、しかし劇的な出来事はほとんど何も起こらずページが進み、気づいたら物語が終わっていた。 正直、すごくいやな小説だなあって思った。自分にだって砂漠の先のタタール人を信じて待って...

この本は、感動することも驚愕することも心温まることなく、しかし悲劇でもない。ずっと何かを予感させるようで、しかし劇的な出来事はほとんど何も起こらずページが進み、気づいたら物語が終わっていた。 正直、すごくいやな小説だなあって思った。自分にだって砂漠の先のタタール人を信じて待ってしまっている所があるのではないかと感じて、主人公のドローゴの人生がどこか他人事ではないようで身につまされる。 こう書くとつまらない小説のように感じるけれど、そんなことはない。ずっと心の隅に不安を感じながらも、いつかドローゴが救われるんでないかと、そう気になって、どんどん読み進めてしまった。不安と期待を感じつつページをめくる読者も含めて一つの小説になっているように感じた。すごく良い読書体験だった。

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2023/11/05

カフカ的な語り口に感傷マゾという取り合わせ。何も起きないが面白い。数年ぶりに実家に戻ってきた主人公の足音に母親が気づかなかったくだりがやたらと印象深い。翻訳も読みやすく、2日間で一気に読んでしまった。

Posted byブクログ

2023/10/21

国境沿いの辺境の砦で30年間監視を続ける男の話。 何の戦いも事件も起こらない。何も起こらない。何も起こらないことがすごい。解説にもあるように、平凡で単調な人生そのものを象徴している。 突然やってくる終わりが来ない限り、この平凡で単調な日々が続いてしまうことにゾッとした。

Posted byブクログ

2023/10/21

イタリア人作家が1940年に書いた小説。 主人公は20代の若き青年将校ジョバンニ・ドローゴ。 士官学校を卒業し、軍隊のエリートとしての人生を歩み始めた彼の目の前には冒険、仲間との友情、甘美な恋など様々な青春が、人生が待ち受けているものと信じて疑わなかった。 そんな彼が配属された...

イタリア人作家が1940年に書いた小説。 主人公は20代の若き青年将校ジョバンニ・ドローゴ。 士官学校を卒業し、軍隊のエリートとしての人生を歩み始めた彼の目の前には冒険、仲間との友情、甘美な恋など様々な青春が、人生が待ち受けているものと信じて疑わなかった。 そんな彼が配属されたのは町から離れた辺境のバスティーユ砦。そこは周囲を岩山が囲い、北の大地には茫漠とした砂漠が横たわるという無味乾燥とした場所であった。 こんな場所で青春の日々を過ごすのは真っ平だと不平を上官に申し立てるが、4カ月だけでもいてみてはどうかと慰留され、とりあえずはそれを飲み込むことにする。。 この小説は何の小説であるかと考えれば、まさしく人生そのものであると言える。 時間の遁走と表現したが、まさにその通り。 いつか意義深い、価値あることが起こるはずだ。自分は何かしら大事な決断をするに違いないと信じながら、日々だけは過ぎていく。 そして仮に重要な事が起きた時には、刻を失したことに気付く。 しかし最後の最後で希望の光を彼は見つける。 希代の名著だと感じた1冊。 背後で重い鉄扉が閉まり、あっという間に閂が掛けられ、引き返そうにも間に合わない。だが、ジョバンニ・ドローゴはその瞬間も何も知らずに眠っているのだった。 窓辺に立ち人々ももう微笑みを浮かべていず、無表情、無関心な顔をしているだろう。

Posted byブクログ

2023/10/17

人生の縮図。夢も叶わない英雄にもなれない人生の浪費がこれでもかと丁寧に描かれ何も起きないことのあまりの残酷さに打ちのめされるほどの共感を覚えるけれど湿気や悲惨さのないカラッとした文体に不思議と哀しくならず、ただただ潔い。これから何度と読み返すだろう超名作。

Posted byブクログ

2023/10/13

人生の虚しさを感じた。 いつか起こるかもしれない幻想だけを思い描いて30年間、閉鎖的な砦で頑張ってきたのに…最後。 一歩を踏み出す大切さも感じるけど、でもその場で耐え続ける大変さも分かる。悲しいコトでもないのに涙が出てくる作品でした。読んでる間ずっと胸がキュッとなる。

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2023/11/12

人里離れた砦に赴任した若者が、単調な数十年を過ごし、待ち望んだ敵襲があっとときには…という、なんとも残酷な物語。栄光を夢見るうちに青春は過ぎ去り死を迎えるという、これは人生の暗喩ということらしいのだが、私自身は自分の人生を冒険に満ちたものと感じており、同感はしない。個人主義が勝ち...

人里離れた砦に赴任した若者が、単調な数十年を過ごし、待ち望んだ敵襲があっとときには…という、なんとも残酷な物語。栄光を夢見るうちに青春は過ぎ去り死を迎えるという、これは人生の暗喩ということらしいのだが、私自身は自分の人生を冒険に満ちたものと感じており、同感はしない。個人主義が勝ち得た現代人ならではの見方であって、20世紀初頭にはほぼありえなかったのだろうか。それとも私の感じ方もまた幻想なのだろうか。

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2023/08/26

読了後、人生訓を得たのか何なのか良くわからない感情に襲われた。不思議で魅力的な一冊。安部公房のライト版。

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2024/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人生の報われなさが、ぎゅっと詰め込まれてた。 ファンタジー物だと勘違いしたまま読み始めた。 まず、砦に着くのまだかな〜と思い、読むのを諦めそうになる。 砦に着いたら着いたで、なにもやることがない。 すぐ、町に帰ろうと思うけど、少し滞在しないと町に帰れないことがわかる。 そうこうしているうちに、町に帰るタイミングを失い、砦の生活に慣れていく。 この辺りで、読者と主人公の気持ちが完全に一致していることに気づく。 砦に着くまでの道のりが長くて退屈だったのも、砦での生活が単調で退屈だったのも。読むのやめようかな?と思うくらいに退屈だった。皮肉のようだけど、あまりにもリンクしていて面白い。 砦に残っている人たちは、「いつか敵が攻めてくる」、という希望に縋りながら生活しているということがわかる。主人公も、心のどこかでそれを望んでいる。 砦での生活も数年が経ったある日、砦の兵士たちが北の荒野に敵が現れたと騒ぎ始める。 どんよりと、同じ日を繰り返すばかりだった砦での生活の描写から一転、浮き足立つ兵士たちの姿が面白い。 兵士たちの希望も虚しく、敵ではなく隣国の国境調査隊であったことが判明する。 浮き足立つ兵士たちとは違い、まさかそんなことがあるまい、と攻撃要請をしない大佐。でも、そんな大佐も待っていたんだろうなぁという描写があって面白い。 敵が現れた?!から、敵じゃなかった、まで、感情の起伏が激しくて、一番の盛り上がり。 でもまたその盛り上がりが落ち着くと、いつもの何も無い退屈な日々。 また数年経ったころ、主人公が砦へ行く道で若者とすれ違う。それは砦に向かってくる途中の部下だった。つい最近自分も砦に向かう途中、上司に出会ったと思いきや、もう立場が逆転していることに気づく。 このシーンでもハッとして、こうやって年月が過ぎていくんだ、としみじみ。 ついに、本当に、敵が現れたときには主人公は老いていて健康ではなくなっていて、増兵の寝泊まり部屋確保のために砦を追い出されることに。 結局戦うことはできず、砦での一生を終える。 町に帰る途中の宿で病気が悪化し、町には帰れずに宿で死と戦う。 それで良かったのか?と思うけど、死と戦っているときの主人公はなんだか嬉しそう。

Posted byブクログ

2023/10/09

士官学校を卒業して期待に胸膨らませながら赴任した先は辺境の砦だった。国境にはタタール人の砂漠と呼ばれる荒涼とした荒地がひろがる。国境警備に就いたドローゴ、砂漠の向こうからいつ敵が攻めてくるかもわからない。それを迎え撃つのが使命なのですが、何も起こらないと鬱になりそう。 一般人の多...

士官学校を卒業して期待に胸膨らませながら赴任した先は辺境の砦だった。国境にはタタール人の砂漠と呼ばれる荒涼とした荒地がひろがる。国境警備に就いたドローゴ、砂漠の向こうからいつ敵が攻めてくるかもわからない。それを迎え撃つのが使命なのですが、何も起こらないと鬱になりそう。 一般人の多くが夢を追いかけて経験するであろう人生の挫折や絶望、受動的に何かに期待して生きるってこんな感じなんだと思いました。 どんな生きたかも選択できる社会環境の中、掴んだものは掌からこぼれ落ちてゆく砂なのか、多くのものを呑み込んでしまう砂嵐なのか、いつ攻めてくるかも解らないまま無駄に時間だけがすぎてゆく。 映画のようにちょうど良いタイミングでラストがくるといいのだけど、エンドレスに流れる時間は4ヶ月が過ぎて2年、4年、15年、30年とあっとゆう間に過ぎてゆく。 追いかけてする後悔か、諦めてする後悔のどっちを選ぶって問われたら。若い頃は呑気に構えていたのだけど、時間が有限だと感じるようになった今ではできる限りジタバタ過ごしてみたいと感じてしまう。 余談ですが、 何処の砂漠なんだろうってグーグルの衛星写真みてたらアフリカ大陸の北部は鮮やかな砂色、えっ子供の頃みたアフリカ大陸の地図より砂漠化進んでるような景色に唖然としました。

Posted byブクログ