1,800円以上の注文で送料無料

タタール人の砂漠 の商品レビュー

4.2

121件のお客様レビュー

  1. 5つ

    48

  2. 4つ

    44

  3. 3つ

    16

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2023/08/26

読了後、人生訓を得たのか何なのか良くわからない感情に襲われた。不思議で魅力的な一冊。安部公房のライト版。

Posted byブクログ

2024/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人生の報われなさが、ぎゅっと詰め込まれてた。 ファンタジー物だと勘違いしたまま読み始めた。 まず、砦に着くのまだかな〜と思い、読むのを諦めそうになる。 砦に着いたら着いたで、なにもやることがない。 すぐ、町に帰ろうと思うけど、少し滞在しないと町に帰れないことがわかる。 そうこうしているうちに、町に帰るタイミングを失い、砦の生活に慣れていく。 この辺りで、読者と主人公の気持ちが完全に一致していることに気づく。 砦に着くまでの道のりが長くて退屈だったのも、砦での生活が単調で退屈だったのも。読むのやめようかな?と思うくらいに退屈だった。皮肉のようだけど、あまりにもリンクしていて面白い。 砦に残っている人たちは、「いつか敵が攻めてくる」、という希望に縋りながら生活しているということがわかる。主人公も、心のどこかでそれを望んでいる。 砦での生活も数年が経ったある日、砦の兵士たちが北の荒野に敵が現れたと騒ぎ始める。 どんよりと、同じ日を繰り返すばかりだった砦での生活の描写から一転、浮き足立つ兵士たちの姿が面白い。 兵士たちの希望も虚しく、敵ではなく隣国の国境調査隊であったことが判明する。 浮き足立つ兵士たちとは違い、まさかそんなことがあるまい、と攻撃要請をしない大佐。でも、そんな大佐も待っていたんだろうなぁという描写があって面白い。 敵が現れた?!から、敵じゃなかった、まで、感情の起伏が激しくて、一番の盛り上がり。 でもまたその盛り上がりが落ち着くと、いつもの何も無い退屈な日々。 また数年経ったころ、主人公が砦へ行く道で若者とすれ違う。それは砦に向かってくる途中の部下だった。つい最近自分も砦に向かう途中、上司に出会ったと思いきや、もう立場が逆転していることに気づく。 このシーンでもハッとして、こうやって年月が過ぎていくんだ、としみじみ。 ついに、本当に、敵が現れたときには主人公は老いていて健康ではなくなっていて、増兵の寝泊まり部屋確保のために砦を追い出されることに。 結局戦うことはできず、砦での一生を終える。 町に帰る途中の宿で病気が悪化し、町には帰れずに宿で死と戦う。 それで良かったのか?と思うけど、死と戦っているときの主人公はなんだか嬉しそう。

Posted byブクログ

2023/10/09

士官学校を卒業して期待に胸膨らませながら赴任した先は辺境の砦だった。国境にはタタール人の砂漠と呼ばれる荒涼とした荒地がひろがる。国境警備に就いたドローゴ、砂漠の向こうからいつ敵が攻めてくるかもわからない。それを迎え撃つのが使命なのですが、何も起こらないと鬱になりそう。 一般人の多...

士官学校を卒業して期待に胸膨らませながら赴任した先は辺境の砦だった。国境にはタタール人の砂漠と呼ばれる荒涼とした荒地がひろがる。国境警備に就いたドローゴ、砂漠の向こうからいつ敵が攻めてくるかもわからない。それを迎え撃つのが使命なのですが、何も起こらないと鬱になりそう。 一般人の多くが夢を追いかけて経験するであろう人生の挫折や絶望、受動的に何かに期待して生きるってこんな感じなんだと思いました。 どんな生きたかも選択できる社会環境の中、掴んだものは掌からこぼれ落ちてゆく砂なのか、多くのものを呑み込んでしまう砂嵐なのか、いつ攻めてくるかも解らないまま無駄に時間だけがすぎてゆく。 映画のようにちょうど良いタイミングでラストがくるといいのだけど、エンドレスに流れる時間は4ヶ月が過ぎて2年、4年、15年、30年とあっとゆう間に過ぎてゆく。 追いかけてする後悔か、諦めてする後悔のどっちを選ぶって問われたら。若い頃は呑気に構えていたのだけど、時間が有限だと感じるようになった今ではできる限りジタバタ過ごしてみたいと感じてしまう。 余談ですが、 何処の砂漠なんだろうってグーグルの衛星写真みてたらアフリカ大陸の北部は鮮やかな砂色、えっ子供の頃みたアフリカ大陸の地図より砂漠化進んでるような景色に唖然としました。

Posted byブクログ

2023/06/26

ある程度の歳を重ね、よっぽど順風満帆な人生を送ってきたという自負を持つ人でない限り、きっと思うところがあるはず。苦。 だからこそ、若いうちに読んでみて欲しいなとも思う。

Posted byブクログ

2023/06/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

あらすじを見て、ひたすら風景描写がダラダラ続き幾晩も寝落ちしながらなんとか読破モノかと思いきやいい意味で裏切られた。最後まで大したこと起きないんだけどテンポが良い。スイスイ読ませる。まあ自分も含めほとんどの読者は主人公の境遇を可哀想と思いながら主人公よりも起伏のない人生を送ってしまうんだろう。

Posted byブクログ

2023/04/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

昨日と1ヶ月前の区別がつかないような、単調な日常の中で、小さな幻想ともいえる希望にしがみついてい自分を誤魔化していたら、時に追い抜かされてしまう人生のお話。 皆平等に与えられた時の中で積極的に希望を掴みにいかないと、時は風のようにすり抜けて掴めなくなるということを、改めて認識させられた。 客観的に見るとバカなことをやっているなと思うが、自分の生活を思い返してみると、いくつもドローゴと重なる部分があり、このままではいけないと自分の生活を見直すいいきっかけになった。 人生のページを白紙のままめくらず何か記しながらめくっていきたい、そう思わせる素晴らしい作品でした。

Posted byブクログ

2023/04/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『タタール人の砂漠』は、真面目系クズの『人間失格』! 昔、友達が太宰治の『人間失格』を「あの主人公のダメさが我がことのようで、グッっとくるんだよ」と熱く語ってたのを思い出しました。私は「なんでこんなダメなやつが、ダメになる話をわざわざ読まなきゃならんのだ」とまったく共感できなかったわけですが、『タタール人の砂漠』の読後感はまさに「この主人公のダメさが我がことのようで、グッとくる」でした。 主人公のドローゴは、新任将校として辺境のバスティアーニ砦に配属に。はじめは、すぐにでも転任したいと思っていたドローゴでしたが、すぐに砦の日常に慣れてしまい、いつかタタール人が攻めてきて、自分は英雄になれるかもしれないという儚い希望を胸に、変わらない毎日に埋没し、貴重な時間を浪費していきます。ネタバレしちゃうと、最後に本当に敵が攻めてくるのだけど、その時には歳も取って病気しちゃってて、砦からお払い箱になるというオチつき!本当に大した事件も起きず、ほぼずっと砦で同じ生活を繰り返す様が描かれた小説なのですが、その時々の心理描写が、なんかもう…これは日々の私たち…。『人間失格』のように派手に道を外れることはないけれど、臆病で主体性がなくて、優柔不断な真面目系クズの心を抉る一作でした!! すげぇダメなやつが案の定ダメになってく系の小説は、同じダメさを抱える読者を、なんでこうも惹き付けるんでしょうね。「こうはならないぞ!」と気持ちを新たにするも、「自分だけじゃない」「自分はここまで酷くない」と安心するも読者の自由なのが小説のよいところです。

Posted byブクログ

2023/04/09

人生の本質をついていて鈍く重くのしかかる作品でした。 素晴らしい作品ですが、メンタルを結構持っていかれます。それだけインパクトが強かった。

Posted byブクログ

2023/04/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公は砦を守る軍隊の将校 大きな事件は何も起こらないけれど、起こらないこと自体がドラマになっている。 翻訳もすばらしいせいか、とても読みやすく何も起こらない話でもあるにも関わらずページをめくる手が止まらない。 砂漠の砦の空気感、時間の流れが生々しい。 訳者の方のあとがきにもあるように、この砦は人生の比喩なのだろう。 何かを期待しそれにすがりつくことで、 他に選べたかもしれない何かを無にしてしまったかもしれないその恐怖 残された時間を思いあせり絶望する 終盤のジョバンニの姿はとても痛々しいけれどそこに自分自身の姿を重ねてとても辛くなった。 傑作だと思うけど、心が弱っている時にはおすすめできないかも

Posted byブクログ

2023/03/31

幻想小説と言われているが、しかしこれこそが現実ではないか。当初おかしいと思っていたはずなのに、周囲に流され溶け合って、気がつけば最期。何も起きない。しかし起きたときには。ほとんどの人にとって、実はそれこそが人生なのではないか。

Posted byブクログ