文明崩壊(下) の商品レビュー
ジャレド・ダイアモンド氏の作品は2作目。前作「銃・病原菌・鉄」は文明の発展の物語だが、本書は逆。崩壊の物語。個人的には本書の方が面白いような。「文明崩壊」――かつて隆盛を極めていた社会はなぜ崩壊し消滅したのか。数々の文明崩壊の実例を検証し、共通するパターンを導き出していく。中米の...
ジャレド・ダイアモンド氏の作品は2作目。前作「銃・病原菌・鉄」は文明の発展の物語だが、本書は逆。崩壊の物語。個人的には本書の方が面白いような。「文明崩壊」――かつて隆盛を極めていた社会はなぜ崩壊し消滅したのか。数々の文明崩壊の実例を検証し、共通するパターンを導き出していく。中米のマヤ、北米のアナサジ、東ポリネシアのイースター島、グリーンランドのノルウェー人入植地などを題材に歴史上から消滅した社会が陥った恐るべき共通の崩壊要因を解明する。下巻に入るとやや地球環境破壊の話が主軸になっていくが、そこで取り上げられるのは江戸時代の日本、ティコピア島、中国やオーストラリアなど。資源、環境、人口、経済格差など複雑化する要因を整理し崩壊の因子を探り出す。そして現代人の目指すべき方向性を呈示する。下巻の449ページに『現在では、日本の木製品輸入が第三世界の熱帯雨林破壊の最大要因となっている。』と書いてありショックを受けた。地球環境破壊は他人ごとではない。我々の日常の中にも破滅の因子が含まれているという事。地球環境について考える現代人必読の書。詳細→ https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou24102.html
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過去の文明崩壊の過程、また文明を維持した社会の過程を検証しつつ、現代の環境問題について警鐘を鳴らす。崩壊した文明の事例はイースター島、ピトケアン島とヘンダーソン島、アナサジ族、マヤ、グリーンランドのバイキング。これらの文明が崩壊した要因を、自ら招いた環境被害、気候の変動、他社会と...
過去の文明崩壊の過程、また文明を維持した社会の過程を検証しつつ、現代の環境問題について警鐘を鳴らす。崩壊した文明の事例はイースター島、ピトケアン島とヘンダーソン島、アナサジ族、マヤ、グリーンランドのバイキング。これらの文明が崩壊した要因を、自ら招いた環境被害、気候の変動、他社会との敵対関係、他社会との友好関係、文化的な姿勢の5点にまとめている。一方で、ニューギニアの高地、ティコピア島、江戸時代の日本を取り上げ、これらの(少なくとも一部の)要因を解決し、持続した社会を営んでいることを紹介してもいる。 上述の文明崩壊の要因は、現代文明の崩壊の要因にそのまま適用しうる。一方で、過去における文明崩壊と決定的に異なる点は、現代文明は、世界が一つの干拓地(ボルダー)となっている点であると著者は指摘する。現代のほうが圧倒的に人口が多い。科学技術の威力は甚大である。世界は全体がつながっている。どこかの国が上述の要因を惹起させると、その国だけでなく世界中に影響を及ぼす。そのような状況が同時多発的に進行している。このまま手をこまねいていると、現代文明全体が崩壊しかねない。本書の主張は、極めて深刻だ。。 一方、著者は警鐘を鳴らすだけでなく希望も見出している。もちろん、我々が弛まぬ努力をすることが大前提であるが・・・。 20年前に書かれた著作であるが、これらの問題は必ずしも解決に向かってはおらず、例えば気候変動などは顕著に悪化している。地政学的なリスクも増えている。我々一人ひとりの影響力は小さいかもしれないが、弛まぬ努力が必要であると感じる。環境を意識した消費行動、企業への働きかけ、仕事上での立ち回り、投票行動、政治家に環境問題に関心があることを伝え続ける、施策を提言する・・・。いつも意識することは難しいが、私も含めこうしたことを少しでも実行する現代市民が増えていくことが希望ある未来の醸成につながるのだろう。
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上巻に続いてのボリューム、環境悪化が引き起こした人類文明崩壊の歴史を振り返り、繰り返さないための提言をまとめる。この国で、今の政治家で、実行することなどおよそ不可能なのだろうが、一歩ずつ前に進んでいきたい
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上巻に続き、下巻では近代以降の社会についての話が多く書かれていました。 自らの環境を滅ぼし、滅亡する社会は現代にもつながっており、このままいくと世界で多くの社会が衰退すると警鐘が鳴らされています。 それを防ぐには、個人一人ひとりが、そういう意識を持って政治や社会に対して、行動を...
上巻に続き、下巻では近代以降の社会についての話が多く書かれていました。 自らの環境を滅ぼし、滅亡する社会は現代にもつながっており、このままいくと世界で多くの社会が衰退すると警鐘が鳴らされています。 それを防ぐには、個人一人ひとりが、そういう意識を持って政治や社会に対して、行動を起こすことだと書かれていました。 普段の生活の中で、なかなか意識にのぼらないことですが、こうして知ることによって、少しでも行動を変えることができる気がします。 一般市民の強い意志によって、持続可能な社会を選択することができるはずです(具体的には政治の政策や企業を選別すること)。
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下巻では以下の内容が紹介されていました。まず環境問題を解決した事例を、トップダウン型、ボトムアップ型の2類型にして、前者の例としては江戸時代の日本(徳川幕府)、後者の例としてはニューギニア高地、ティコピア島を挙げています。トップダウン型とは、要は時の権力者が環境保護的な策を上から...
下巻では以下の内容が紹介されていました。まず環境問題を解決した事例を、トップダウン型、ボトムアップ型の2類型にして、前者の例としては江戸時代の日本(徳川幕府)、後者の例としてはニューギニア高地、ティコピア島を挙げています。トップダウン型とは、要は時の権力者が環境保護的な策を上から強制的に執行するということであるのに対して、ボトムアップ型とは、島民全員が環境問題の長期的な危険性を認識して全員で行動するというパターンです。 そして、現代の社会の事例としてルワンダ、ドミニカ共和国とハイチ(同じ島の東西をわけあっているが社会経済状況に大きな差異がある)、中国、オーストラリアが紹介されています(中国、オーストラリアはともに環境面での深刻な問題が主題としてとりあげられている)。 個々の章で書かれていることは、事象説明としては極めて面白いのですが、ダイアモンド氏が、社会の崩壊を招く要因としてあげている5つの条件、つまり1)環境被害、2)気候変動、3)近隣の敵対集団、4)友好的な取引相手、5)環境問題への社会の対応、ですが、この5つにあてはめて説明されている箇所はどうにも最後まで腹落ちしませんでした。おそらく心のどこかに「本当にこの5つだけなのか?」という疑問や「この5つはMECE(Mutually Exclusive, Comprehensively Exhaustive)なのか?」という疑念が晴れていないからだと思います。ですから私個人の感想は、「個々の章に書かれていることは面白いが、著者が挙げている文明崩壊の5要因については何かモヤモヤしている」という感じです。
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結局のところ、過去の文明が崩壊した理由を極端に単純化するならば、それは其処に"住めなくなった"からということになろう。住めなくなる理由は色々あるのだろうが、兎も角結論的にはこれに尽きる。 然しながら人間がもといた場所から撤退(或いはそれが不可能な場合に...
結局のところ、過去の文明が崩壊した理由を極端に単純化するならば、それは其処に"住めなくなった"からということになろう。住めなくなる理由は色々あるのだろうが、兎も角結論的にはこれに尽きる。 然しながら人間がもといた場所から撤退(或いはそれが不可能な場合には全滅)せざるを得ない理由の最たるものが環境破壊だという事は疑いようの無い事実である。 SDGsが叫ばれる今日を本書は二十年前から予見していた。今こそ再び繙かれる可き本なのだろう。 嘗てのマヤやイースター島も、或いは孤立無援の絶海の孤島も、限りある資源を食い潰した為に滅ばざるを得なかった。 翻ってグローバリゼーションの極致に在る現代は如何。いま我々は地球という大きなひとつの孤島の資源を食い潰しているに過ぎない。その結果、地球は軈て"住めない孤島"に変わって行く。 若しも何処か一つの大国が滅んだとして、他の多くの国々が無関係ではいられないだろう。幾つかの小国は共倒れになって滅び、また、他方では別の大国はその他の大国と激しい競争を始めるだろう。或いはそれは武力による抗争に発展し、また幾つもの小国が巻き添えに滅んでいくだろう。 而してそれは現に行われている。 グローバリゼーションの紐帯と資本主義社会は豊かさと滅びを等しく世界に齎すだろう。 仮に世界の勢力図が書き換わった時、最早世界中何処にいても我関せずを決め込む事は出来ない。誰もが絶滅の危機に瀕した当事者なのだ。そのことを個人のレベルで自覚することこそが文明崩壊を回避する第一歩なのである。
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27年前の執筆である・・些かの時間的ずれがあるものの、基本的理論は決して揺るぎのない素晴らしいモノ。 多種多様の 事例から導かれる論理は整理されており、反しょうも記されていて 読み易いが、上下巻を読み下すのはとてつもないエネルギーを要した。 日常的仕事に影響が出るほどに。しか...
27年前の執筆である・・些かの時間的ずれがあるものの、基本的理論は決して揺るぎのない素晴らしいモノ。 多種多様の 事例から導かれる論理は整理されており、反しょうも記されていて 読み易いが、上下巻を読み下すのはとてつもないエネルギーを要した。 日常的仕事に影響が出るほどに。しかし、義務として読まねばならぬものと考えるが・・もっとも読んで欲しい国民、政治家はロシア・中国そして北朝鮮だと思う。 ついでシリア・ベネズエラ 地球号に乗り込んでいる乗客は思想信条に食い違うもの有れど、最終的には「海に向かうレミング集団」とみてしまうのは余りにも悲観的だろうか。
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メモ→ https://twitter.com/nobushiromasaki/status/1484426270637125632?s=21
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上巻は、崩壊した文明の話であったが、下巻は、環境破壊の憂き目にあったが、ボトムアップ、トップダウンの方法でなんとか持ち直したティコピア島、日本の話
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本書はアメリカで2005年の出版。マイケル・ポーターがハーバードビジネスレビューに「共通価値の戦略」の論文を掲載したのが2011年。それからCSVという言葉が一般化し、SDG'sとかESG投資とかもどんどん意識されるようにはなっていますが、そのはるか前に著者は、企業と公...
本書はアメリカで2005年の出版。マイケル・ポーターがハーバードビジネスレビューに「共通価値の戦略」の論文を掲載したのが2011年。それからCSVという言葉が一般化し、SDG'sとかESG投資とかもどんどん意識されるようにはなっていますが、そのはるか前に著者は、企業と公共性の関係について先駆けた視点を持っていました。それが第15章「大企業と環境」の章。「わたしは予測する。過去にそうだったのと同じように、未来においても、一般市民の姿勢の変化こそが、企業の環境に対する振る舞いの変化に必須の要素となることを。」この厳しいオプティミズムが、ジャレド・ダイアモンドの魅力です。確かに一歩一歩、彼の予測は実現しているようにも思えます。しかし、今回の感染症の問題により最終章で語られる「世界はひとつの干拓地」というグルーバルな問題意識がナショナルな防衛意識で、また分断されそうな予感もします。自らを「慎重な楽観主義者」と呼ぶ彼の朝日新聞5月8日のインタビューをもう一度、読もうと思います。
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