炎上する君 の商品レビュー
初 西加奈子がこれでよかったのか悩む1冊。 それが彼女の持ち味なのか、奇抜な1品だったのか。 それによってこの作家への感じ方が変わる。 まーじーで、頭からしっぽまで風邪の時に見て「あ、なんか夢見た。覚えてないけどなんか嫌なやつだったかも…」みたいなテイスト。 元気だしたくて読み始...
初 西加奈子がこれでよかったのか悩む1冊。 それが彼女の持ち味なのか、奇抜な1品だったのか。 それによってこの作家への感じ方が変わる。 まーじーで、頭からしっぽまで風邪の時に見て「あ、なんか夢見た。覚えてないけどなんか嫌なやつだったかも…」みたいなテイスト。 元気だしたくて読み始めたけど、ずーっと味の薄いガムを噛んでいるようでちょっと凹んだ。 ※個人の感想です
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深夜の新宿、ガード下の湿った空気が、排気ガスの匂いと共に肺の奥へ沈殿していく。 終電間際の駅のホームで、私は「丁寧な自分」という厚化粧を剥がせずにいた。一日中、他人の期待という台本通りに、適切な角度で首を傾げ、適切なタイミングで相槌を打つ。そうして完成した「明るい私」という虚像...
深夜の新宿、ガード下の湿った空気が、排気ガスの匂いと共に肺の奥へ沈殿していく。 終電間際の駅のホームで、私は「丁寧な自分」という厚化粧を剥がせずにいた。一日中、他人の期待という台本通りに、適切な角度で首を傾げ、適切なタイミングで相槌を打つ。そうして完成した「明るい私」という虚像が、鏡の中で誰よりも見知らぬ顔をして私を睨んでいる。心はとっくに摩耗して、中空を漂う風船のように、この肉体から離れたがっている。 ふらりと入った、場違いなほど明るい蛍光灯が光る24時間営業の中華料理店。 頼んだのは、何の変哲もない、油の浮いた安価な醤油ラーメンだった。湯気と共に立ち上がる、強烈なニンニクと醤油の匂い。一口、スープを啜る。喉を焼くような熱さが、冷え切った食道を強引に押し広げていく。 その瞬間、自意識の虚構が崩れる。 「死にたい」と「生きたい」が、頭の中で等しい重さのノイズになっていたはずなのに、私の舌は無作法に「うまい」と快哉を叫ぶ。ボロボロになったコートの袖がつゆに浸かっても、拭う気力さえない。けれど、麺を噛み締め、飲み下すという原始的な運動だけが、今の私をこの汚濁した地上へと力強く繋ぎ止めている。 鏡の中の虚像は、もういない。そこにいるのは、ただ、空腹を抱えた剥き出しの胃袋を持つ、一人の動物だ。 救いなど、どこにもないのかもしれない。明日もまた、私は嘘の笑顔を貼り付けて街に出る。けれど、この胃の重み、喉の火傷、そして「飯がうまい」という裏切られることのない事実だけは、私のものだ。 ボロボロになった自分という抜け殻を、温かいスープの熱で内側から無理やり膨らませる。 それが、今の私が私にできる、精一杯の、そして最も残酷で誠実な抱擁だった。 西加奈子先生の「炎上する君」を読んだ。 収録された物語の端々から、剥き出しの「肉体」が私を睨みつけてくる。ストレスで膨らみ、重力を失って空へと消えていく「ある風船の落下」の人々は、嘘の笑顔を貼り付けて浮遊する私の写し鏡のようだった。他者との距離感に怯え、自らの輪郭を疑い、どこにも着地できないまま漂白されていく孤独。 西加奈子先生は、そんな希薄な存在を許さない。彼女は「お尻」や「足首の炎」という逃れようのない身体的な違和感を突きつけ、登場人物たちを無理やり地上へと引きずり戻す。そこにあるのは、綺麗事ではない「意地」だ。絶望の底にいても、自分の肉体だけは自分のものであると認めさせる、暴力的とも言えるほど強靭な人間賛歌。 今の私には、彼女が描くような鮮やかな自己肯定はまだ眩しすぎる。救いなどどこにもないと感じる夜は続くし、明日もまた私は「お道化」の仮面を被って街に消えるだろう。 けれど、あの中華料理店で感じた「飯がうまい」という一点においてのみ、私は彼女の描く世界と、ほんのわずかに、けれど決定的に交差した。自意識がどれほど空転しても、私の胃袋は重力を、熱を、そして「生」を要求する。その無作法な食欲こそが、私にとっての「炎上」であり、この虚構の世界で唯一嘘を吐かない私の「存在」そのものだったのだ。
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誰もがひとりじゃない、誰もが誰かを必要としているんだって感じた よくわかんない不思議な世界観の短編集だったけど、読み終わったらなんか心温まる感じ 舟の街が特に好きだった〜パステルカラーでふわふわした街なのかなって想像した
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想像力が膨らみ脳が喜んでいるような感覚になった。奇妙な話で人間味のある短編集。 「舟の街」の住人の言葉は意味なんてないし、チグハグなのになんだか心にスッと入ってくる。
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西加奈子ワールド。世界観、発想が好き。こういう本があるから、物語っていいなと思える。斜めからの視点なのに、真っ直ぐ誠実さを感じる。不思議な物語の中に、ハッとさせられる感覚があって、登場人物たちがみんな懸命だから、惹きつけられる。これは何度も読み直していきたい一冊になった。
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どの短編も、発想が大胆で視点が斜め上。現代社会の矛盾を軽くひねって見せるような、ちょっと刺さるテーマばかりだった。 なかでも表題作は特別で、2回読み、3回目は10歳の娘に音読した。恋愛ドラマを見れば「オエッ気持ち悪い」と言い、クラスの女子たちの会話にもあまり興味を示さない、まっす...
どの短編も、発想が大胆で視点が斜め上。現代社会の矛盾を軽くひねって見せるような、ちょっと刺さるテーマばかりだった。 なかでも表題作は特別で、2回読み、3回目は10歳の娘に音読した。恋愛ドラマを見れば「オエッ気持ち悪い」と言い、クラスの女子たちの会話にもあまり興味を示さない、まっすぐなタイプの娘。20分以上かかったけれど、「面白い」と笑ってくれて、どこか共感する部分があったようだ。今は同じ空気を持つ友達が身近にいないけれど、いつか自然に分かり合える人に出会えるといいと思う。 短編は、魅力的な世界ほど唐突に終わってしまう。その“あっさり”がさみしくて、もっとこの奇妙で楽しい世界に浸っていたかった。
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短編集。 タイトルが気になって読んでみたのだが、 かなりエキセントリックな内容。 全体的に偏見が強くいろんなことが唐突で、 性的なことへの言及も多く自分には合わなかった。 『太陽の上』はタイトルは面白いが、のっけから 中華料理屋のアルバイトに対しての偏見が激しすぎる。 人の営みの戯言をメモするのが個人的には気持ち悪い。 『空を待つ』 拾った携帯に届いた勝手に見るどころか返信までするなんて 不気味すぎるし この話にも唐突に性交云々と出てきて嫌な気持ちになった。 『甘い果実』 自分の物ではない雑誌に爪で傷をつけるのが非常識だ。 タイムカードを丸一日押し忘れたなら兎も角、退勤時に忘れて 給料がもらえなくなるのはブラックが過ぎる。 かと言って勤務中にばっくれるのも凄いし、 変装してその店に行ける根性も凄い。 『炎上する君』 この作品でも自分の性別がなんなのかという話が出てくる。 足が燃えている男が出てくる話で、タイトルから想像した話ではなかった。 『トロフィーワイフ』は郵便屋さんに手を出そうとするのが気持ちが悪いし 『私のお尻』 設定は面白かったし、自分のお尻に嫉妬するのもわかるが これも自認がよくわからない人が出てくる。 『舟の街』も正直よくわからない。 『ある風船の落下』はそれなりに面白かった。
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実写観てから原作読みました。 原作の方が好きでした。 西さんの本にすごく助けられている身なので、 又吉さんの解説で泣きました。
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足が燃えている男に恋をして、当然のように自分の足が燃えているのが面白かった。 他人と等間隔で生きる、傷つかないように生きることが望んでいることなのか?という言葉が印象的だった。 自分は「地上」で傷つくことを恐れずに生きたい。 超自然的な風船としてただ浮遊したくはない。
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不思議でヘンテコで切ない8編だった。 サラッと読めて、最後にはじんわりと心が温まる。 「トロフィーワイフ」はひとつだけ話の雰囲気が違っていて異色かなと思った。労働を知らない祖母と孫の優雅な生活を、ずっと眺めていたくなる。でもこうやって夫に愛でられていたのだろうと思うと複雑な気分だ。おっとりした祖母はおとぎ話の中の眠り姫のようだった。 ラストの「ある風船の落下」は思いがけずグッとくる話。誰かを必要として、自分も誰かに必要とされることで、長い人生を勇気を持って生きていけるものなのかもしれない。 8編に共通するのは、あくまでも人間というものを信じているという点だった。紆余曲折を経て自分らしく生きていく登場人物たちを見ていると、励まされているような気持ちになってくる。これだけ自由でもいいんだよと。
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