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わかりあえないことから の商品レビュー

4.1

319件のお客様レビュー

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  3. 3つ

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2013/02/17

劇作家の平田オリザ氏が、自身の演劇教育の体験を通じて、コミュニケーションの難しさや奥深さについて考察している。この著者の本は何冊か読んでいるし、講演を聞きに行ったこともあるのだが、この本を読んでようやく彼の立ち位置がハッキリ分かった。実にまっとうな考えの持ち主である(今までかなり...

劇作家の平田オリザ氏が、自身の演劇教育の体験を通じて、コミュニケーションの難しさや奥深さについて考察している。この著者の本は何冊か読んでいるし、講演を聞きに行ったこともあるのだが、この本を読んでようやく彼の立ち位置がハッキリ分かった。実にまっとうな考えの持ち主である(今までかなり誤解していた)。コミュニケーション能力とは、会話の「冗長率」を自在に操る能力であるとする著者の主張は、私にとって目からウロコであった。コミュニケーションの齟齬は、言葉には表れない背景知識の些細な違いから生じるというのも経験的に頷ける。 さらに、著者は以下のように主張する。日本では、伝統的に、言葉を尽くさず「分かり合う」「察し合う」文化が育まれてきた。しかし、このようなコミュニケーションスタイルを持つ国は世界では少数派である。グローバル化が進行する世界において、自分たちが少数派であることは意識せざるを得ない。そもそも日本人の価値観も多様化しており、これまでのように察し合うようなことは難しくなりつつある。コミュニケーションのダブルバインドは、日本人の宿命である、と。 私は、国語の授業で「この時の主人公の気持ちは?」と問われても「そんなこと分かるわけない」としか思えなかったし、先生が「人の気持ちの分かる優しい子に・・・」なんて言い出したら気分が悪くなるような子供だった。本書で展開された国語教育・学校教育批判は、このような画一性の強制を批判するものであり、素直に拍手を送りたいと思う。もっとも、著者が一部の小学校で実験的に行っている新しい「表現教育」も、あまり受けてみたい気はしないのだが…。

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2013/02/13

なにげなく手に取った。 読んで大正解! ロジカルに、説得力を持って語られていて、 インテリジェンスも溢れている。 演劇人というと、感性に頼ってという人ばかりなんだろうなと 勝手に想像していたが、著者が学究肌で、視点もよいため、 大学からハントされたのも頷ける。 なかなか、かなり良...

なにげなく手に取った。 読んで大正解! ロジカルに、説得力を持って語られていて、 インテリジェンスも溢れている。 演劇人というと、感性に頼ってという人ばかりなんだろうなと 勝手に想像していたが、著者が学究肌で、視点もよいため、 大学からハントされたのも頷ける。 なかなか、かなり良い出来だと思います。 もっと、掘り下げて知りたいと感じました。

Posted byブクログ

2013/02/11

わかりあえない中で、少しでも共有できる部分を見つけたときの喜びから、コミュニケーションがはじまるという言葉に惹かれ、 国語や演劇に関する部分は、新しい発見もあり面白く読めた。 が、結局何が言いたいのかよくわからず、この本自体がダブルバインドのような気がしてきたところに、 最...

わかりあえない中で、少しでも共有できる部分を見つけたときの喜びから、コミュニケーションがはじまるという言葉に惹かれ、 国語や演劇に関する部分は、新しい発見もあり面白く読めた。 が、結局何が言いたいのかよくわからず、この本自体がダブルバインドのような気がしてきたところに、 最終的に、ダブルバインドを認識し向き会おうとしめくくられたので、少し腑に落ちた感じ。 けど、ダブルバインドによって、統合失調症やらひきこもりになるという説を堂々かいている点は勉強不足だろう。暴力的な解釈としか思えない。第1、2次産業の雇用問題に言及している点も、具体的でなく稚拙な印象。 2013.2.11

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2013/02/12

表現をする、伝える、コミュニケーションするということは、人間が生活していく以上、決して避けて通れない事柄である. そして多様化した社会を生きていく上で求められるコミュニケーション能力は同様に多様化している. そのような厳しい状況で、自分をしたたかに演じ分けられる人間を育てていくこ...

表現をする、伝える、コミュニケーションするということは、人間が生活していく以上、決して避けて通れない事柄である. そして多様化した社会を生きていく上で求められるコミュニケーション能力は同様に多様化している. そのような厳しい状況で、自分をしたたかに演じ分けられる人間を育てていくことが教育の目的だと著者は言う. 表現者としてはもちろん、教育者としての使命感が全面に押し出されているが、この本の良さは決して強引に自説を押し付けずに軟らかい提案で色々なエッセンスを教えてくれているところだ. 表現や伝えるということが演劇のプロの視点から語られているので、今までに考えたことがなかった視点も多く述べられており、知的刺激に満ちた作品であった. 「コミュニケーション能力が低下しているのではなく、今の子どもたちは競争社会に生きていないのでコミュニケーションに対する欲求、必要性が低下しているのではないか.」 「伝えたいという気持ちは、伝わらないという経験からしか起きてこない」 「全体のコミュニケーション能力が上がっているから、一定数の口下手な人たちが目立っているだけではないか」 「コミュニケーション教育は、ペラペラと口のうまい子どもを作る教育ではない.口べたなこでも、現代社会で生きていくための最低限の能力を身につけさせるための教育だ.・・・コミュニケーション教育に、過度な期待をしてはならない.その程度のものだ.その程度のものであることが重要だ.」 「世間で言うコミュニケーション能力の大半は、たかだか慣れのレベルの問題だ.20歳過ぎたら、慣れも実力のうちなんだよ」

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2013/02/10

コミュニケーションって難しいですね。十年たっても分かり合えず。教育行政の失政としてコミュニケーション教育の放棄を挙げ、これが雇用問題にもつながっているとのこと。

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2013/02/09

感想:演劇家の平田オリザさんの著作。コミュニケーション能力UPのマニュアル本ではなくて、コミュニケーション能力の考え方について述べた本。 読むとコミュニケーションに関して考え方が一気に変わる。いわゆるパラダイム転換が起きる。 これまで正しいとされてきた考え方は、 ・人と人は必ず...

感想:演劇家の平田オリザさんの著作。コミュニケーション能力UPのマニュアル本ではなくて、コミュニケーション能力の考え方について述べた本。 読むとコミュニケーションに関して考え方が一気に変わる。いわゆるパラダイム転換が起きる。 これまで正しいとされてきた考え方は、 ・人と人は必ずわかりあえる →わかりあうための手段がコミュニケーション でも実はそうじゃないことを著者は語る。 ・人と人はそう簡単にはわかりあえなくて、どんなに話し合ってもわかりあえない部分、場合だってある →せめてわかりあえる部分だけでも見つけて、広げていくことが必要 →そのための手段がコミュニケーション 考えてみれば、そうだなと思う。自分とどんなことに対しても考え方が同じだったら「わかりあえる」っていえるかもしれないけど、現実的にそんな人なんていないわけで。 どんなに自分と考え方が似てる人でも絶対どこか違う部分があるはず。(A,B,C,D,についての考え方は同じだけど、Eについての考え方は違うっていうのが普通なんじゃないかな) 人と人は「わかりあえる」って思ってる方がきれいだけど、「わかりあえる」って思ってるからこそ、わかりあえなかったときの反動は大きい。相手の考えは間違っていて、どうしてこちらの考えがわからないんだという気持ちにだってなるかもしれない。 戦争が起きるってそういうことが原因だと思う。自分が絶対正しいのに、わかりあえなかった。わかりあえなかったから、もう対話しても無駄。だから武力で無理矢理「わからせる」。 でも「わかりあえない」っていう前提を持っておけば、相手が自分と異なる考えを持ってたとしてもそれを真っ向から否定することはないし、逆に自分の考えをわかってもらえたり、相手の考えを理解できたときの嬉しさは大きい。 これからの時代、何が正しくて、何が間違ってるかなんて誰にもわからない上に、根本的に価値観が違う世界中の人とうまくやっていかないといけない。 だからこそ、人と人はもともと「わかりあえない」っていう前提を持っておくことが大切で、わかりあえる部分が見つかったらラッキーくらいに思っておく方がうまくいくんじゃないかな。

Posted byブクログ

2013/02/12

昨今やたらとコミュ力という言葉を耳にする。 じゃあコミュニケーションってなんなのよ。 その問に新書一冊分の文章で答えてもらったような気がする。

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2013/02/01

コミュニケーション能力が高い人材を求めるとかよくいうけど、どういうことなのか、今の社会で求められる人材を育てるため、演劇をとりいれた教育プログラムとはどういった教育なのか??を実際平田さんが演劇ワークショップをした際の例などで説明してあって分かりやすかった すごく勉強になりまし...

コミュニケーション能力が高い人材を求めるとかよくいうけど、どういうことなのか、今の社会で求められる人材を育てるため、演劇をとりいれた教育プログラムとはどういった教育なのか??を実際平田さんが演劇ワークショップをした際の例などで説明してあって分かりやすかった すごく勉強になりました 他者を受け入れること 当たり前のようで難しい

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2013/01/29

 筆者は前書きで「この本はコミュニケーション教育の勧めではないし、ましてこの本を読んで、コニュニケーション力がつくといったハウツー本ではない」で書いている。確かに、この本を読んで昨今やたらと強調されている「コミュニケーション力」なるものが身についたとは思わない。  ではこの本を読...

 筆者は前書きで「この本はコミュニケーション教育の勧めではないし、ましてこの本を読んで、コニュニケーション力がつくといったハウツー本ではない」で書いている。確かに、この本を読んで昨今やたらと強調されている「コミュニケーション力」なるものが身についたとは思わない。  ではこの本を読んでどうなるかと言うと、「『わかりあえないことから』始めなきゃならないし、それを諦めてはいけない」という本文から染み出てくる筆者の強い思いと共鳴し、コミュニケーションへの意志が自分の中に湧いてくることだと思う。  8章だけでも777円出して読む価値はあると思うので、読んでいない人は読んで欲しい。

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2013/01/24

なんというか、もっと“コミュニケーションをとるためには”みたいなかんじのこと書かれてるのかな、と思ってました。でも、実際は“コミュニケーションとはこういうこと”みたいなかんじ。 「伝えたい気持ち」が足りてない、もしくは「伝える前に周囲が先読みしてしまう」から楽をしてしまう、だから...

なんというか、もっと“コミュニケーションをとるためには”みたいなかんじのこと書かれてるのかな、と思ってました。でも、実際は“コミュニケーションとはこういうこと”みたいなかんじ。 「伝えたい気持ち」が足りてない、もしくは「伝える前に周囲が先読みしてしまう」から楽をしてしまう、だから伝える力もつかない、というようなことが書かれていて、ちょっと痛かったです。 演劇家ならではの観点やコミュニケーション学習方法は面白かったです。

Posted byブクログ