わかりあえないことから の商品レビュー
副題にもあるとおり「コミュニケーション能力とは何か」という話を、演劇を通してコミュニケーション教育を教育現場で実践している平田オリザさんの自己啓発(?)本。 教育現場で使っている手法を紹介し、その方法に込められた意味を彼の劇作家としての経験談やさまざまな事例から説明している。 ...
副題にもあるとおり「コミュニケーション能力とは何か」という話を、演劇を通してコミュニケーション教育を教育現場で実践している平田オリザさんの自己啓発(?)本。 教育現場で使っている手法を紹介し、その方法に込められた意味を彼の劇作家としての経験談やさまざまな事例から説明している。 個人的には、コミュニケーション教育のなんたるかを知っているわけでも、教育現場にいるわけでもないので、これがすぐに活かせる…というわけではないけれど、書かれているエピソードや事例に考えるタネがたくさんあったし、自分の生活の中のほんのちょっとした閉塞感打開へのヒントがあって面白かった。 何度も読み返せば、そのたびごとに違う部分に気が付けそうな気がするので、何度か読み返してみようと思う。 ちなみに、この本を読んだきっかけは田淵くんが推薦していたから。いろいろな分野へ興味を広げるヒントをくれる人だよなぁ。
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何事も「わかった」と思うことはキケン。「わかりあえない」のを前提に仕事でもプライベートでも、どう一歩を踏み出すかかな。
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演劇という観点からコミュニケーション特に対話にポイントを絞って、教育に切り込んでいってる。シンパシーではなくエンパシーへとか実際に行われている教育の現場からの体験談など興味深い事例が多々あって、分かりやすく興味深かった。
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劇作家で演出家の平田オリザさん。演劇の話から、現代の日本におけるコミュニケーションのあり方を考えていく姿勢は、「なるほど」と思わされます。新書大賞の第4位を受賞しているのも納得です。 特に、教育との関わりで演劇やコミュニケーションについて書いている辺りは、興味深かったです。「単...
劇作家で演出家の平田オリザさん。演劇の話から、現代の日本におけるコミュニケーションのあり方を考えていく姿勢は、「なるほど」と思わされます。新書大賞の第4位を受賞しているのも納得です。 特に、教育との関わりで演劇やコミュニケーションについて書いている辺りは、興味深かったです。「単語で喋る子どもたち」とか、「メチャクチャに教えた方がいい」とか、面白いですね。今の学校教育の発想を根底からひっくり返すような著者の提案は、今の時代のニーズに応える意味でも、教育をよりダイナミックに展開していくという意味でも、必要なことかもしれません。
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一気に読了。最近、日本語教育ど真ん中ではない分野の本から示唆を得たり、考えさせられることが多い。 以下、心にひっかかった部分の引用。 「もともと口語体で書かれた台詞を、さらに自分の言葉に近づけ、地方の場合には方言も取り入れてオリジナルのテキストを作っていく。このことで、生徒たち...
一気に読了。最近、日本語教育ど真ん中ではない分野の本から示唆を得たり、考えさせられることが多い。 以下、心にひっかかった部分の引用。 「もともと口語体で書かれた台詞を、さらに自分の言葉に近づけ、地方の場合には方言も取り入れてオリジナルのテキストを作っていく。このことで、生徒たちは、格段に発語しやすいテキストを手に入れる。」(p.52)…会話の自然さってなんだろ?ということを考える上でも、ここの話はヒントになる。 「私たちは、西洋料理を食べるためにナイフとフォークの使い方を学ぶ。しかし、ナイフとフォークがうまく使えるようになったところで人格が高まるわけではない。人格の高潔な人間が、必ずナイフとフォークがうまく使えるわけでもない。マナーと人格は関係ない。(中略)コミュニケーション教育は、人格教育ではない。」(pp.149-150)…耳が痛くなってしまった… 「同じ日本語を話していても、私たちは一人ひとり、違う言葉を話している。(中略)contextは、本来は文脈という意味だが、ここではもう少し広い意味で、『その人がどんなつもりでその言葉を使っているか』の全体像だと思ってもらうといい。」(p.161)…前後を読むと、ここに引用したことの意味が入ってくる。 「東日本大震災以降、リーダーの資格ということが多く問われてきた。(中略)通常、そういった場面で言われるリーダーシップとは、人を説得できる、人々を力強く引っ張っていく能力を指す。しかし、私は、これからの時代に必要なもう一つのリーダーシップは、こういった弱者のコンテクストを理解する能力だろうと考えている。(中略)私は、自分が担当する学生たちには、論理的に喋る能力を身につけるよりも、論理的に喋れない立場の人びとの気持ちをくみ取れる人間になってもらいたいと願っている(pp.182-183)」…そういう自分でありたい。 「発話がうまくいかない場合、その原因を個人にのみ帰するのではなく、いったい、そこは話しかけやすい環境になっているのかを問うていく考え方だ。(中略)コミュニケーションをデザインする、コミュニケーションの環境をデザインする、という視点を持つことだ。」(pp.189-191)…細川英雄の主張と共通したものを感じた。 「ここで言うエンパシーとは、『わかりあえないこと』を前提に、わかりあえる部分を探っていく営みと言い換えてもいい。」(p.200) 「いままでは、遠くで誰かが決めていることを何となく理解する能力、空気を読むといった能力、あるいは集団論でいえば、『心を一つに』『一致団結』といった『価値観を一つにする方向のコミュニケーション能力』が求められてきた。しかし、もう日本人はバラバラなのだ。さらに、日本のこの狭い国土に住むのは、決して日本文化を前提とした人びとだけではない。だから、この新しい時代には、『バラバラなままで、どうにかしてうまくやっていく能力』が求められている。私はこれを、『協調性から社交性へ』と呼んできた」(pp.206-207) 「心からわかりあえることを前提とし、最終目標としてコミュニケーションというものを考えるのか、「いやいや人間はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない」と考えるのか。『心からわかりあえなければコミュニケーションではない』という言葉は、耳に心地よいけれど、そこには、心からわかりあう可能性のない人びとをあらかじめ排除するシマ国・ムラ社会の論理が働いてはいないだろうか。」(p.208) …正直、目からうろこだった。でも、素直に納得。 「多文化共生とは何か。それは、企業、学校、自治体、国家など、およそどんな組織も、異なる文化、異なる価値観、異なる宗教を持った人びとが混在していた方が、最初はちょっと面倒くさくて大変だけれども、最終的には高いパフォーマンスを示すという考え方だろう。」(p.216)…この定義、面白い。正直。
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わかりあう必要はあるのか? コミュニケーションが重視される時代だ。コミュニケーションがうまくできない人は、コミュ障などといって、社会的に不利なポジションであることが広く認識されているように思う。一方で、世の中ではコミュニケーション上手な人たちが幅を活かせている。さて、果たしてコ...
わかりあう必要はあるのか? コミュニケーションが重視される時代だ。コミュニケーションがうまくできない人は、コミュ障などといって、社会的に不利なポジションであることが広く認識されているように思う。一方で、世の中ではコミュニケーション上手な人たちが幅を活かせている。さて、果たしてコミュニケーションとはそんなに大げさなものだったろうか。 言葉、表現について発見のある本。
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ダブルバインド(矛盾)を愉しむ。 社会で演じている役割を楽しむ。 それぞれの“本心”を、わかりあえない中でも、対話と会話の冗長性をコントロールしながら、辛抱強くコミュニケーションを図って行く事が求められる。 “ベテラン医師の「奥さん辛いねぇ」…”の件で、コンテクスト理解の重...
ダブルバインド(矛盾)を愉しむ。 社会で演じている役割を楽しむ。 それぞれの“本心”を、わかりあえない中でも、対話と会話の冗長性をコントロールしながら、辛抱強くコミュニケーションを図って行く事が求められる。 “ベテラン医師の「奥さん辛いねぇ」…”の件で、コンテクスト理解の重要性を痛感させられた。
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よかった!!! 『社会に求められるコミュニケーション能力を育てる』とか、『最近の子ども、若者はコミュニケーション能力がない』とか、、ウンザリするくらい、聞く言葉。そのように言う大人の社会、企業で働く人にはコミュニケーション能力はある?そもそもコミュニケーション能力の定義は? これ...
よかった!!! 『社会に求められるコミュニケーション能力を育てる』とか、『最近の子ども、若者はコミュニケーション能力がない』とか、、ウンザリするくらい、聞く言葉。そのように言う大人の社会、企業で働く人にはコミュニケーション能力はある?そもそもコミュニケーション能力の定義は? これらの問いに演劇の実践から、深めてゆく。 以前、小学校での対話型授業をする仕事をしている方と話していて、『何で対話型授業が日本では身に付かないのか?』と、聞いたら、『学校の先生の会議が対話ではなく、校長先生にご指導いただく場だからなんですよー』と、その人は言っていた。 子どもたちを受け入れる社会のほうに課題があるのだなーと、思った。 それを思い出した。 コミュニケーション能力を求めながら、多様な対話を元にして、事を生み出す社会ではない。その矛盾の中に子どもたちはいることを平田さんも指摘。 『教えない教育』についても書いていた。分からないこととの出会いを受け入れ、対話を重ねていく、対話の基礎力を公教育の中では身につけるべきと言う。自己との対話、内省力もコミュニケーション能力で、アウトプットの質だけで、評価するのはおかしい。 黙っていても、その人の中に価値は生み出されている。 なんとなく、コミュニケーション能力という言葉だけが一人歩きしていて、そのよくわからなさを突いた本。 『先生はえらい』内田樹 にも通じるものがあるなー。 平田オリザさんは、『芸術立国論』もよかった。この方は本質ついたところ言う、よくわかってる人だなーとゆう印象。 -------------------------- 分かり合えない、分かり合えるって言葉で、高校生の頃も思い出した。 高校の頃、同級生とどう会話して、関係をつくったらよいか分からなかった。会話ができない=関係もつくれない、友達つくれない=自分はダメだ。 と、思っており、会話とはただ、ただ空間を埋める飾り、意味のないことと、思えて、周りの楽しそうな輪の中に入れなかった。 そうした自分を慰めることとして、自分に言っていたのが、『人間同士は所詮分かり合えないもの』そう思うことで、自分を納得させていた? それを思い出したなー。 分かり合えないものだと、思うのは変わらないけど、対話から、共感できることはあることがあると知ったのは高校以後。 わかり合わねばならないという前提が人を追い詰めるのかもしれない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
1.平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』講談社現代新書、読了。演劇人の著者よる新しいコミュニケーション論、教育の現場に関わるなかで、ハウツー教育と社会の要求のダブルバインドを踏まえた上で、何が「表現」(コミュニケーション)なのか、認識を一新する。 2.平田オリザ『わかりあえないことから』講談社現代新書。明治以降整備された国語教育は、対話型コミュニケーション創出をしようとしつつ、察し会う「コミュ力」を育む。わかりあえない他者を前提とした「対話」より気心の知れた仲間内会話ばかりを大切にするものへ。それが人を生きにくくしている。 3.平田オリザ『わかりあえないことから』講談社現代新書、会話NGで対話が万能ではないが、空気を読みあう協調性や、定型質問に対する模範解答の陳列が必要なのではない。他者とやりとする「社交性」と、沈黙を含めた多様な表現を認め合うことだ。著者は演じ分ける能力の一つのヒントを見出す。 4.平田オリザ『わかりあえないことから』講談社現代新書。「他人と同じ気持ちになるのではなく、話せば話すほど他者との差異がより微細にわかるようになること。それがコミュニケーション」。鷲田清一・評。鷲田評が著者のコミュニケーション概念の核をなす。読みやすい一冊ながら教育関係者必携。
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『わかりあえないことから』(著:平田オリザ) しばらく積読になっていた本 でも読みだしたら面白くて一気に読んでしまった 例のごとく付箋だらけ(笑) この本は副題の「コミュニケーション能力とは何か」ってのに魅かれて購入 「コミュニケーション能力」についてはいろんな定義があり過ぎ...
『わかりあえないことから』(著:平田オリザ) しばらく積読になっていた本 でも読みだしたら面白くて一気に読んでしまった 例のごとく付箋だらけ(笑) この本は副題の「コミュニケーション能力とは何か」ってのに魅かれて購入 「コミュニケーション能力」についてはいろんな定義があり過ぎて その輪郭が私の中でぼやけていた 平田さんの定義はなんだろうか?って気になった なんだか私が考えていた定義とは違う方向から光を当ててくれた そんな感じ(笑) 面白過ぎて一気に読み終えて、付箋の部分をまた読みなおしてみると また最初から読みなおしたい衝動にかられる・・・ コミュニケーションってもっと自由で、いろんなカタチなんだって叫びたくなった(笑) 今、世間一般的に言われてる?求めらてる?「コミュニケーション能力」って なんだかギュウギュウに無理やり一つの方向性に押し込めて考えようとしている そこからはみ出したら「あの人ってコミュニケーション能力ないのよねぇ」ってなる感じ・・・ でもこの本を読んだら「違う、違う!」って・・・ なんか上手く表現できないけど、この本を読んで軽くショックを受けたなぁ~ p217の みんなちがって、たいへんだ。 しかし、この「たいへんさ」から、目を背けてはならない。 ここがこの本の言いたいことなのかもって・・・ p208 心からわかりあえることを前提とし、最終目標としてコミュニケーションというものを考えるのか 「いやいや人間はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を 見つけて、それを広げていくこならできるかもしれない」と考えるのか ここがp217に繋がる感じがする 世間一般的なコミュニケーション力研修って何だろうか?ってふと疑問になった もちろん、それはそれで、それなりの効果はあるのかも知れないけど・・・・・・・ いやぁぁぁ、ほんと、面白い本! 1回だけじゃ勿体ないから、また通しで読むぞぉぉ~
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