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わかりあえないことから の商品レビュー

4.1

318件のお客様レビュー

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    93

  2. 4つ

    118

  3. 3つ

    47

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2014/07/18

いま、日本で求められている「コミュニケーション能力」には、二つの矛盾した意味合いがこめられている。ひとつは、異文化社会のなかで、他者を認め、自分の意見を主張する能力。そしてもう一方は、言葉なしで「空気を読む」能力。後者も大切な日本の美学だが、こうしたコミュニケーションは世界ではマ...

いま、日本で求められている「コミュニケーション能力」には、二つの矛盾した意味合いがこめられている。ひとつは、異文化社会のなかで、他者を認め、自分の意見を主張する能力。そしてもう一方は、言葉なしで「空気を読む」能力。後者も大切な日本の美学だが、こうしたコミュニケーションは世界ではマイナーだと知ることがまず必要。前者の欧米的なコミュニケーション能力を身につけるのに必要なのは、マナーを知ること、そして慣れである。コミュニケーション能力と人格は関係ない。 こうしたこととは別に、ロボットにはできない人間の本当のコミュニケーション能力とは、コンテクストを読み解く力。相手が近しい相手であればあるほど、ここにずれが生じやすい。分かり合える前提でなく、分かり合えないことから。 著者の分野である演劇の話が多数出てくる。演劇では、他者になりきるのではなく、他者を理解した上で自分がどれだけ近づけるかを考え、自分の領域を広げ作業をする。また仲間と演じるなかで、一人一人のイメージをひとつのコンテクストにまとめあげる作業をする。そうしたことこそ、多文化コミュニケーションのために必要な訓練であるといえる。 といった内容。ハッとすることがいくつかあったが、うまくまとめられない。よい本だった。 20140718

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2014/07/16

この本全体を通じて、著者の使う言葉のよどみなさが非常に心地よかったです。読んだ後に雑味が残りませんでした。内容だけではなく文体にも説得力を感じたのは、それだけ内容が整然としていたからなのでしょう。コミュニケーションとは何かを、この美しい日本語の連なりを通じて考えさせてくれたことを...

この本全体を通じて、著者の使う言葉のよどみなさが非常に心地よかったです。読んだ後に雑味が残りませんでした。内容だけではなく文体にも説得力を感じたのは、それだけ内容が整然としていたからなのでしょう。コミュニケーションとは何かを、この美しい日本語の連なりを通じて考えさせてくれたことをありがたく思いました。

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2014/07/12

コミュニティの解体から、コミュニケーション能力が求められる状況が生まれている。 その一方で、相変わらず社会では察する能力も求められる。 この「ダブルバインド」の中で、「わかりあえない」ことを前提に、お互いの持つコンテクストをすり合わせて「対話」しましょう、と説く。 本書の骨格は、...

コミュニティの解体から、コミュニケーション能力が求められる状況が生まれている。 その一方で、相変わらず社会では察する能力も求められる。 この「ダブルバインド」の中で、「わかりあえない」ことを前提に、お互いの持つコンテクストをすり合わせて「対話」しましょう、と説く。 本書の骨格は、だいたいこんな感じだったかと思う。 対話するには、「基礎体力」が要る、その通りだと思う。 でも、実際、自分自身にもその粘り強さがない。 それに、社会にも何か最近不寛容な空気がただよっていて、むしろ平田さんが望むようなものとは違う方へ進んでいる気がする。 ところで、個人的にはこの本を読んで、牧野成一さんという人に再会した。 本書を読む直前に読んだ東照ニさんの『なぜ、あの人の話に耳を傾けてしまうのか』の冒頭で引用されていた人だ。 本書を読んで、プリンストン大学に長年務めた日本語教育の重鎮であることを知った。 また機会があれば、この牧野さんの本も読んで見たいと思う。

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2014/07/06

演劇人の視点から、多文化共生の時代のコミュニケーション能力を考える。 「みんなちがって、たいへんだ」という言葉が心に残る。 みんなちがって、みんないいだなんて、いいだ悪いだ言われる筋合いないから。みんなちがって、だからコミュニケーションは大変だ。一緒にやっていくのは大変だ。 そ...

演劇人の視点から、多文化共生の時代のコミュニケーション能力を考える。 「みんなちがって、たいへんだ」という言葉が心に残る。 みんなちがって、みんないいだなんて、いいだ悪いだ言われる筋合いないから。みんなちがって、だからコミュニケーションは大変だ。一緒にやっていくのは大変だ。 それでも一緒にやっていかざるをえないなら、日本人の自分という凝り固まった仮面を捨てて、相手に応じたいろいろな自分が必要になる。 ありのままの自分を晒せという圧力と、コミュニケーション能力、協調性を身につけろという圧力は、ダブルバインドとして若者を身動きできなくしている。 「演じさせられている」と感じるのではなく、「演じることを楽しむ」したたかな子どもを育てたい。 自分自身の生き方もまた然り。

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2014/07/02

日本の企業が人事採用にあたって学生たちに求める能力、つまり従来型のコミュニケーション能力と表向きに必要だとされる異文化理解能力とによって起きるダブルバインドの話が面白かった。 医療の場で患者からの問いかけにどのような対応をするのが優秀な医師、看護婦なのか。 コンテクストを理解する...

日本の企業が人事採用にあたって学生たちに求める能力、つまり従来型のコミュニケーション能力と表向きに必要だとされる異文化理解能力とによって起きるダブルバインドの話が面白かった。 医療の場で患者からの問いかけにどのような対応をするのが優秀な医師、看護婦なのか。 コンテクストを理解することの大切さがわかる。 「いい子を演じることに疲れない子どもを作ることが、教育の目的」。これ、かなり心に響いた。

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2014/06/14

わかりあえる、か、わかりあえない、か。どっちを前提にコミュニケーションをしていくか。僕は後者なんですよね。それで、共通項を探っていくけどもそれで万事がわかりあえたような錯覚はしないし、わかりあえないと感じれば排除するというムラ社会的な行為はしない。たぶん、これからもそうやって生き...

わかりあえる、か、わかりあえない、か。どっちを前提にコミュニケーションをしていくか。僕は後者なんですよね。それで、共通項を探っていくけどもそれで万事がわかりあえたような錯覚はしないし、わかりあえないと感じれば排除するというムラ社会的な行為はしない。たぶん、これからもそうやって生きていきます。

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2014/06/10

この本は考える人のための良い素材である。コミュニケーションが出来る状況など無いとするところから論じている点が面白い。 工学では、材料を料理した形でアウトプットすることが多い。この本は逆で読み手に考えさせるような語り口であり衝撃を受けた。劇作家とは受け手に預けるのが上手いのだなと感...

この本は考える人のための良い素材である。コミュニケーションが出来る状況など無いとするところから論じている点が面白い。 工学では、材料を料理した形でアウトプットすることが多い。この本は逆で読み手に考えさせるような語り口であり衝撃を受けた。劇作家とは受け手に預けるのが上手いのだなと感心する。 ビジネスマンの多くは、結果を求めるものだが、その際には情報をドンドン切り捨てる。筆者はこの切り捨てられるものをノイズと称しているが、それはある価値観での判断のマナーであり、それが正しいとは限らないのにそこを疑わないということへの問題提起だと思った。 過去、結論の無い本は無駄なものだと思っていた。この本では、アンドロイド、ロボット、教育、会社での研修など話も多岐に渡るが、ひとつのことを様々な視点で記述している。下手な言葉や記述にしないからこそ、伝わるものがある。 手段に飛びつくのではなく、より深い洞察により、より本質を見つけ問題を解決したい人には、新しい視座、演劇に携わる人のものの見方、を体験できる。

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2014/05/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まずこの本を読もうとおもった、理由。 昨今コミュニケーション能力というのが声高に、求められている。何故今になって求められだしているのか、すごく気になっていた。ここ八年、新卒に求める条件の一位として君臨している、コミュニケーション能力は、9年前の新卒には十分備わっていたということでもあるのか というとも気になっていた中で、根源的に、コミュニケーション能力とは何か考える機会をくれたのがこの本である。  まず内容をまとめると、  社会で求められているコミュニケーション能力とは、大まかに言って、自分の意見を発言する主体性や、異文化理解や、価値観の異なる相手との相互理解なのだけれども、一方で、暗黙のうちに、会社の雰囲気を読む、上司のいうことを聞くなどといった相反している状況にある。そういった中で、新卒の混乱し、むしろ内向きへと行ってしまうという。個人的にそれが、「最近の若者はなにを考えているのかわからない」とか「コミュニケーション能力がひくい」といわれる所以なのかと思った。  さて、著者はこの異文化理解、相互理解のために、「演劇」を推奨している。自分とは違う、もちろん価値観がちがう役を通して、お互いのコンテクストをすり合わせることができるからだ。  著者はこれを柔軟な小中学生にむけて、授業を現在も行っているという。これがいわゆる「コミュニケーション教育」である。 そして、著者は「社交性」を最後に紹介している。 日本では協調性を重んじ、完全に互いを分かり合えていないとコミュニケーションとしない雰囲気がある中で、社交性とは「わかりあえない人同士が、どうにかして共有できる部分を見つけてそれを広げていく」能力として定義している。これも、やはり演劇ではどうしても必要な能力だと。どんなに嫌いな演者とでも、舞台にたてば幕が下りるまでは笑顔でいたりとそういう能力が必要だからだそうだ。  コミュニケーション能力が求められている中で、どう能力をとらえて、伸ばしていくかを紹介しているこの本は、僕に大学でやりたいことをひとつ示してくれたと思う。

Posted byブクログ

2014/04/27

(以下引用) かつて「分数ができない大学生」という言葉が話題となった。しかし、これは言葉として正確を期すなら、少し間違っている。「分数のできない大学生」ではなく「分数を忘れてしまった大学生」と言わなければならない。本当に分数ができなかったら、その学生は進級、進学できなかったはずだ...

(以下引用) かつて「分数ができない大学生」という言葉が話題となった。しかし、これは言葉として正確を期すなら、少し間違っている。「分数のできない大学生」ではなく「分数を忘れてしまった大学生」と言わなければならない。本当に分数ができなかったら、その学生は進級、進学できなかったはずだから。 問題は、これまでの日本の学校教育は、この「短期的記憶」しか問うてこなかったという点だ。分数は期末試験までできればいい。英単語は大学受験まで覚えていればいい。学校での学びと、社会で有用な知恵がほとんど連結してこなかったから。(P.67) 両国にいまだに嫌韓、半日の感情も、こういった近親憎悪的な事例、あるいはそこに由来・派生する事柄が多くある。日韓だけでない。世界中を見渡しても、隣国同士は仲が悪い。その原因の一つは、文化が近すぎたり、共有できる部分が多過ぎて、摩擦が顕在化せず、その顕在化しない「ずれ」がつもりつもって、抜き差しならない状態になったときに噴出し、衝突を起こすという面があるのではないか。(P.167)

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2020/05/01

請求記号 S361.45-ゲン-2177(新書) 資料番号 300272945 新潟医療福祉大学図書館 蔵書検索(OPAC) https://library.nuhw.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&...

請求記号 S361.45-ゲン-2177(新書) 資料番号 300272945 新潟医療福祉大学図書館 蔵書検索(OPAC) https://library.nuhw.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=1000065461&opkey=B158832372628912&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=50&list_sort=0&cmode=0&chk_st=0&check=0

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