私とは何か の商品レビュー
・分人はすべて、「本当の自分」である。私たちは、しかし、そう考えることができず、唯一無二の「本当の自分」という幻想にとらわれてきたせいで、非常に多くの苦しみとプレッシャーを受けてきた。どこにも実態がないにもかかわらず、それを知り、それを探さなければならないと四六時中そそのかされて...
・分人はすべて、「本当の自分」である。私たちは、しかし、そう考えることができず、唯一無二の「本当の自分」という幻想にとらわれてきたせいで、非常に多くの苦しみとプレッシャーを受けてきた。どこにも実態がないにもかかわらず、それを知り、それを探さなければならないと四六時中そそのかされている ・リアルとネットとの間に、本当と虚構との境界線を引くことは間違いである。 ・近代以降、訴訟は具体的な行為に対して行われる。しかし中世の魔女裁判では、あいつは魔女らしい、といったうわさなどに基づいて、その人物の存在そのものに対して訴訟が起こされた ・相手の個性を尊重して文人化する。私たちは尊敬する人の中に、自分のためだけの人格を認めると、うれしくなる。他の人とは違った接し方をしてくれることにいたく感動するものだ。ロボットと人間の最大の違いは、ロボットは今のところ、分人化できない点である ・人との出会いが人生を変えるということはよく言われるが、それは言い換えるならば、自分が抱いている分人の中で、どういう分人が最も大きくなるか、ということだ。私たちは、足場となるような重要な分人を一時的に中心として、その他の分人の構成を整理することもできる ・快活で楽しい自分になれると思える分人こそを足場として、生きる道を考えるべきだ。学校での自分と放課後の自分とは別の分人だと区別できるだけで、どれほど気が楽になるだろう ・私という存在は、他者との相互作用の中にしかない。他者を必要としない「本当の自分」というのは、人間を隔離する檻である。 ・不幸な文人を抱え込んでいるときには、一種のリセット願望が芽生えてくる。しかし、この時にこそ、私たちは慎重に、消してしまいたい、生きるのをやめたいのは、複数ある分人の中の一つの不幸な分人だと意識しなければならない。 ・誰かといる時の分人が好き、という考え方は、必ず一度他者を経由している。自分を愛するためには、他者の存在が不可欠だという、その逆説こそが、分人主義の自己肯定の最も重要な点である ・持続する関係とは、相互の献身の応酬ではなく、相手のおかげで、それぞれが、自分に感じる何か特別な居心地のよさなのではないだろうか ・愛とは、相手の存在が、あなた自身を愛させてくれることだ。そして同時に、あなたの存在によって、相手が自らを愛せるようになることだ。 ・その人と一緒にいる時の自分が好きかどうか ・全く矛盾するコミュニティに参加することこそが今日では重要なのだ
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ひとりの人間=個人ではなく、分人の集合体で成り立っているという考え方が斬新に感じつつ、自分のなかで言い表せなかった感覚が鮮明に言語化された感触を強く感じた。 相手や環境によって強く現れる自分の中の分人が変わる感覚は誰もが実感できるのではないかと思う。 平野啓一郎作品にはこの分人の...
ひとりの人間=個人ではなく、分人の集合体で成り立っているという考え方が斬新に感じつつ、自分のなかで言い表せなかった感覚が鮮明に言語化された感触を強く感じた。 相手や環境によって強く現れる自分の中の分人が変わる感覚は誰もが実感できるのではないかと思う。 平野啓一郎作品にはこの分人の考え方が散りばめられているのを知って、他の作品を読むときにも新しい視点で見られそう。
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自分の中でのモヤモヤを言語化してもらえて腑に落ちた。わかりやすく説明されているのが良い。改めて自分に置き換え考えたときに、涙が出て感謝したい気持ちになった。この気持ちをシェアしたいと思い、友達に何冊か配った。
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本当の自分が存在するのではなく、それぞれの立場の自分がそれぞれ存在し、その存在の比率によって自分が形作られているという考え方。 「貴方といる時の私が好きだから、貴方といたい」なんて言われたら、もうずっと一緒にいますよね。
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個人ではなく分人という考え方を取り入れることで気持ちが楽になる感覚があった。しんどい気持ちは個人としてではなく、ある場面での分人としてしんどくなるのであって、そうやって区別できると楽になる。
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分人というコンセプトが正しいか、は問題ではなく、これに救われる人はたくさんいると思う、一つの視点を与えてくれた
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同作者「本心」を読み終えた後で本作を読むと、この頃考えていたアイディアを下地にして本心という作品ができたのだと知って興奮した。小説家の新書を読むという体験は初めてだったが、著者が日頃考えていることがどのようにして小説に反映され、またその後の作品や価値観に影響を与えるのかについて体...
同作者「本心」を読み終えた後で本作を読むと、この頃考えていたアイディアを下地にして本心という作品ができたのだと知って興奮した。小説家の新書を読むという体験は初めてだったが、著者が日頃考えていることがどのようにして小説に反映され、またその後の作品や価値観に影響を与えるのかについて体系的に知ることが出来たのは面白かった。 愛や死などのテーマも、分人という新たな視点から考察していくプロセスが新鮮だった。 執筆により分人という概念への思索を深めていったという、その思考の軌跡を辿るためにも次は「ドーン」を読んでみたいと思う。 個性は分人の構成比率で決まる、ということを念頭に、自分が好きな分人を育み、その分人を養う相手を尊重して生きていきたい。
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・よくもまあこんな手近な概念に、これほどの思索を巡らせられたものよ(褒) ・各々の小説を読みたくなってくる、てか、小説を書く事を思索のための手段にしてそうなのが凄い
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個人を分解したさらに小さな単位に、 「分人」という名称を与えたことで、新しい考え方を提起した一冊。 人間関係や幸せに生きるためにはというヒントが書かれていて、とても納得できた。
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小さい頃から「この子といる自分とあの子といる自分が全く違う。でもどっちも無理して演じている自分ではなくて、どっちも苦痛ではない。じゃあ私って多重人格なのかな。」と感じることがよくあった。この話をある友人にしたとき「どっちも本当のあなた。」と言って貰えて救われたのを覚えている。そ...
小さい頃から「この子といる自分とあの子といる自分が全く違う。でもどっちも無理して演じている自分ではなくて、どっちも苦痛ではない。じゃあ私って多重人格なのかな。」と感じることがよくあった。この話をある友人にしたとき「どっちも本当のあなた。」と言って貰えて救われたのを覚えている。その友人に勧められたのがこの本。なるほどそういうことかと納得した。納得したし、もっと自分を好きになるために色々な人と関わって、自分を更新したいと思った。 今まで人生であまり悩んだことがなかった私が、最近は職場での人間関係に悩んでいる。遡ってみれば、職場がつまらないと悩み出したのは一人暮らしを始めてからな気がする。一人暮らしを始める前後で仕事内容も職場も変わっていないのに、今更人間関係で悩むなんて何故だろう?と疑問に感じていたが、おそらく自分が好きな家族との時間、つまり家族といるときの分人の私の比率が減ったことが要因なのだろう。 だから何だ、という話かもしれないが、悩みの原因と改善方法が明確になったから良かった。さぁ、一人暮らしを辞めよう。笑
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