ソロモンの偽証(第1部) の商品レビュー
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700ページ以上を読みましたが、まだ第一部です。 クラスの中でも目立たなかった不登校の生徒の遺体が、クリスマスの朝に学校の敷地内で発見された。 事件か事故か自殺か…。 割りと早い段階で、自殺であることが明らかになる。 けれどそれは殺人事件であると、告発状が届く。 その後次々と不審な事件・事故が起こり…。 というところまでで700ページ。 ものすごく丁寧に書き込まれているので、登場人物はかなり多いけれども、混乱することなく読み進められる。 ごくごく普通の中学生たちも、心の中をのぞいてみれば、さまざまな感情が誰にも、本人にも気づかれないように折りたたまれている。 結果的に中学生たちは大人を信じきれなくなって、自分たちで真相を解明しようとする決意表明のところで第一部は終わっているのだけど、では、彼らの周辺の大人たちはそんなに信ずるに足りない存在だったのか。 確かに一部の父兄は、子どもの教育を放棄しているとしか思えない行動を取ったり、親の思いで子どもをがんじがらめにしていることに気づけなかったりするし、彼らの担任の先生はあまりにも教育者としての自覚に欠けていたけれど、少なくとも校長先生や養護教諭の尾崎先生、少年課の佐々木刑事などは繊細な子どもたちの気持ちを傷つけないように適切に配慮していたと思う。 それなのに「がっかりです」と子どもたちに言われちゃったら、やりきれないなあ。 どうすればよかったのだろうか。 死体を発見した、野田健一。 彼は自殺した柏木卓也のクラスメートではあったけれど、特別仲がいいわけではなかった。 そして、かれは自分自身の大きな問題に直面していた。 それは、親を殺して自由になるということ。 体も心も弱い母と、それを黙って受け入れるだけの父。 万が一親の期待を裏切ってしまったら、母の心は耐えられないだろうから、最初から期待されないよう目立たぬようひっそりと生きてきた彼。 我慢して我慢して我慢して、家庭に波風を立てないように、親の負担にならないように、我慢して我慢して我慢して。 親はそこまで彼のことを思いやってくれていただろうか。 環境を変えるために仕事をやめてペンションを経営するという父。 環境を変えることは絶対に母には耐えられないはずなのに、それに気づかないふりをして夢を語る父にいらだち、我慢ばかりを強いる両親に絶望し、そのくびきから解放されて自由になるためには両親を殺すしかないと思いつめる健一。 このパートが、読んでいて一番苦しかった。 自殺した柏木卓也は病弱で学校も休みがち。 クラスでも全然目立たない子だった。 両親が彼を生活の中心にしているとき、彼の兄である宏之は求めても得られない両親の愛情に苦しみ、そんな自分を弟が冷笑していることに気づく。 弱くておとなしい柏木卓也は、実にシニカルで冷酷な面を持っていることを、一部の人たちは気付いていた。 ではなぜ彼は自殺したのか? これはあくまで現時点での私の想像だけど、自殺することでこの世に痕を残したかったのかなと。 私も子どもの頃体が弱くて何度か入院をしたけれど、教室にいても存在感のない私が入院なんてしたら、そのまま存在がないことになるんじゃないかと思ったことが何度かある。 いてもいなくても同じなら、いなくていいんじゃない?って。 そのくせ、無邪気に子ども時代を謳歌しているクラスメートを「子どもだな」と見下すような、鼻持ちならない自意識ももっていて。 「どうせ私のことなんかすぐに忘れるくせに」と思うのは、「私を忘れないで」の裏返し。 いや、たった2週間の入院なんで、忘れられることはないのだけど。 でも、私がいない間に、何事もなく時間が過ぎていくっていうことに、ものすごく焦りを感じていたのは事実だ。 だから、非常に主観的な想像だけど、学校で死ぬということで、学校にかかわるみんなの心に、たとえ嫌な思い出としてでも残りたかったのかと。 そんな風に感じた。 救いのある終わり方だといいなと思いつつ、第一部を読了。
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物語の語り手が何人もいて、しかもそれぞれの人間関係や家族関係、その時その時の心情などを細かく書いてありました。しかもかなりリアルに。その中でも、一人の少年がある計画と対峙した時の様子には、鳥肌が立ちました。こんなの想像の世界だけで書けるものなのかと、驚きました。ただ、負の感情が多...
物語の語り手が何人もいて、しかもそれぞれの人間関係や家族関係、その時その時の心情などを細かく書いてありました。しかもかなりリアルに。その中でも、一人の少年がある計画と対峙した時の様子には、鳥肌が立ちました。こんなの想像の世界だけで書けるものなのかと、驚きました。ただ、負の感情が多く、しかもそれもリアル過ぎて途中でしんどくなります。続けて第Ⅱ部はきついので、間に違う種類の本を読んで、気分転換してから、またこの世界に戻って来ようと思ってます。
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やっぱり我慢できずに購入。宮部さんだから、1990年代の時代設計だから書けるし。そうなのか?本当にそうなのか?と自分に疑問をぶつけちいく。
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人間の恐ろしさ。これが人間の世界。清濁併せ呑むとはこのこと。ロジックは人間社会を解決しないんだな、やはり。
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時代設定をバブル末期にしたのは何か意図が?例えば中学生達に携帯スマホネットを使わせたくないとか。大出俊次親子に威張らせるのにちょうどいい時期とか。 津崎校長の選択は間違いではなかったと思うけど。現実にも学校で問題が起きると、無関係な第三者の私たちはどうしても校長を批判的な目で見て...
時代設定をバブル末期にしたのは何か意図が?例えば中学生達に携帯スマホネットを使わせたくないとか。大出俊次親子に威張らせるのにちょうどいい時期とか。 津崎校長の選択は間違いではなかったと思うけど。現実にも学校で問題が起きると、無関係な第三者の私たちはどうしても校長を批判的な目で見てしまう。 大出俊次は中学生なんだよね。それもそんなに頭が良いとは思えない。藤野涼子、柏木卓也は元より、三宅樹理よりも多分頭は回らない。そんな子が、人を殺した後、警察の鑑識を欺けるほどの自殺に見せかける細工ができるか?これが被害者と被疑者がぎゃくだったら、あり得るかもだけど。 本作が映画化された時、樹理役の子は勇気あると思った。女の子なら、涼子か章子あたりをやりたいと思うけど。
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【あらすじ】 クリスマスの朝、中学校の敷地内で同校生徒の柏木卓也の遺体が発見された。現場に不審な点はなく、屋上からの投身自殺として処理される。 三学期初日、告発状が校長と同級生・涼子に届く。卓也の死は大出を核とする不良生徒3名によるものとの密告だった。内容を虚偽と判断した警察...
【あらすじ】 クリスマスの朝、中学校の敷地内で同校生徒の柏木卓也の遺体が発見された。現場に不審な点はなく、屋上からの投身自殺として処理される。 三学期初日、告発状が校長と同級生・涼子に届く。卓也の死は大出を核とする不良生徒3名によるものとの密告だった。内容を虚偽と判断した警察の助言の元、学校側は差出人の女生徒を特定するものの、生徒たちへの悪影響を憂い、部外者の悪戯として沈静化を図る。しかしその計画は、ある恣意的な報道により一変する。 【感想】 三部構成かつ各部の分量は700頁を超す大長篇。本書は第Ⅲ部の学内裁判で取り扱う事件の経過を、様々な視点で綴っている。 第一印象は読むのが大変そう、分量に見合う内容なのかと考えて躊躇した。第I部という事もあり、豊富な人物描写や背景説明、そして伏線が織り交ぜられている。本筋との関係が不明なまま回り道をさせられた気になった。しかし、涼子が学内裁判を計画する辺りから物語の色が変わって俄然面白くなる。お楽しみは第Ⅱ部を読んでね、という事らしい。 告発状の経緯や付随事件の真相は読者に開示されるため、涼子から見ると少々フェアじゃない気もするが、予想を超える展開があるとの前踏れと期待したい。
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さすが、宮部みゆき。 登場人物の人数が半端ない。 でもきちんと把握できてしまうほど それぞれに物語がついてくる。 すごいなぁ。 きちんとその先に営みがみえてくるもんな。 なんていうのかなぁ、歪んだ悪意? そうゆうのを描くのがうまいなぁ。 ただの悪意じゃないのよね、さらに歪んでる...
さすが、宮部みゆき。 登場人物の人数が半端ない。 でもきちんと把握できてしまうほど それぞれに物語がついてくる。 すごいなぁ。 きちんとその先に営みがみえてくるもんな。 なんていうのかなぁ、歪んだ悪意? そうゆうのを描くのがうまいなぁ。 ただの悪意じゃないのよね、さらに歪んでる。 この先どんな結末に向かっていくのか 読むのが楽しみ。 読んでてしんどくもあるけどね。 悪意に当てられるっていうかさ。 ついでに本が分厚過ぎて腕が痛い。
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健一はいい友だちを持ったな。行夫がいてくれて本当に良かった。なかなか物語が展開しないと思っていたら、突然立て続けに事件が起こって驚いた。松子の優しさが悲しい。こんなに優しい子じゃなければ、死なずに済んだのかな。森内先生もかわいそう。
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クラスメイトの死から始まったそれぞれの関係者の様々な想いや思惑.丁寧に書かれて圧倒的な長さだが、ぐいぐい引き込まれる.
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うーん、長い!丁寧に書き込まれていて、人物像は手に取るように伝わってきますが、その分長いです。嫌な奴が後から後から出てきます。 この後どうなっていくのか・・・最後まで読み通せるのか・・
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