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の商品レビュー

3.6

228件のお客様レビュー

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2012/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

このかたが現役のときに生きていてよかった。 中村さんの作品は、ほんとうにほんとうに、共感する部分が多すぎて、 とても質の高い日記を読み返しているような、不思議な感覚がある。 後味の悪いこの作品ですら、自分でも気持ち悪くなるくらい入り込んでしまって、最後の最後に、踏みとどまったはずの欲求を、納得したはずの結論を、あっさりとひっくり返してどん底まで落下していくラストシーンは、とてもじゃないけど常態では読めなかった。比喩じゃなく呼吸が苦しくなった本。 最新作の迷宮はまだ積読。 きっといつも通り救われない。

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2012/09/05

淡々と、確実に、なにかが迫る感じ。 最後どうなるのだろう…と思いながら読んだ。 「銃」もいいけど併録の「火」がとても良かった。涙が出そうになった。

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2012/08/28

短い文章で淡々と、細かすぎるくらい丁寧に主人公が自分を客観的に語っていく。 初めはその客観的な文と、主人公の会話部分から想像される人物像とのギャップに少し戸惑い、西川という人間が上手く定まらない。 しかし、この本を読み進めるのが辛いなどということはない。 銃を手にいれたことで主人...

短い文章で淡々と、細かすぎるくらい丁寧に主人公が自分を客観的に語っていく。 初めはその客観的な文と、主人公の会話部分から想像される人物像とのギャップに少し戸惑い、西川という人間が上手く定まらない。 しかし、この本を読み進めるのが辛いなどということはない。 銃を手にいれたことで主人公は初めて安定するのだが、その時の主人公の感情は自分も身に覚えがあるものだからかもしれない。 こういう本も個人的には全然あり。 むしろとても面白いと思った。

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2012/08/03

「銃」は主人公はどこか不安定な存在であるから、人を殺す点において絶対的存在である銃に魅せられたのかもしれない。現実における充足を求めながらも、最後は自らが望まない選択をしてしまう悲劇。意識と無意識。このまま平穏に終わるのかと思いきや!衝撃的なラストでした。 併録の「火」はとある女...

「銃」は主人公はどこか不安定な存在であるから、人を殺す点において絶対的存在である銃に魅せられたのかもしれない。現実における充足を求めながらも、最後は自らが望まない選択をしてしまう悲劇。意識と無意識。このまま平穏に終わるのかと思いきや!衝撃的なラストでした。 併録の「火」はとある女の独白。奇麗な火に魅せられてから、自ら悪へと足を踏み入れ、そこに快楽を得られないという。独白のせいもあるけどマイワールド全開。エゴの極み。でもきらいじゃないな。

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2012/07/26

純文学と言うとどこか達観したような、あるいはキザな言い回しが横行した小説を思い浮かべる人が多いだろうが、この本は後書きで作者自身が書いている通りとてつもなくエネルギッシュな文章で、冷静さと狂気と言う相反する感情を併せ持った複雑な人間の心情を上手く描き切っていて非常に読ませる小説だ...

純文学と言うとどこか達観したような、あるいはキザな言い回しが横行した小説を思い浮かべる人が多いだろうが、この本は後書きで作者自身が書いている通りとてつもなくエネルギッシュな文章で、冷静さと狂気と言う相反する感情を併せ持った複雑な人間の心情を上手く描き切っていて非常に読ませる小説だった。 ただ表題作は膨大な一人称による地の文で、主人公が銃に惹かれている事は充分に分かったが、何故そこまで惹かれるのかを主人公自身に語ってもらいたかった。そこのメカニズムを論理的でなくても語ってくれさえすれば、 より主人公に感情移入して狂気に向かう彼に没頭出来たと思う。 一方併録された短編は完全に主人公が狂気に振り切ってる作品で半分ホラー状態。 精神科医らしき人物に主人公が自身の半生を独白していくスタイルで、30ページほどの物語とは思えないほど濃密な作品。どちらかと言うとこちらの方が好みだった。

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2012/07/26

文庫になっていたので買って読みました。 異様に客観的な一人称で書かれる物語が、最初は違和感なのだけど、話が展開していくうちに納得になって、最後には胸が痛いほど切なくなる。 単なる『社会と折り合えてない若者』ではなく、銃と主人公の純粋な関係性の変遷を描き出していて、ネタとしてはあり...

文庫になっていたので買って読みました。 異様に客観的な一人称で書かれる物語が、最初は違和感なのだけど、話が展開していくうちに納得になって、最後には胸が痛いほど切なくなる。 単なる『社会と折り合えてない若者』ではなく、銃と主人公の純粋な関係性の変遷を描き出していて、ネタとしてはありがちなのに、新鮮!

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2012/07/17

圧倒的な文章の力を感じました。 ここまで力強く魅力的な文章に初めて出会いました。 何と言っていいのかわかりませんが、とにかく私は「圧倒」されました。 中村文則さんの作品は初めて読みました。 これからほかの作品も読んでいきたいと思います。

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2012/07/11

「(凶悪事件の加害者について)あんなことをする子だとは思いませんでした。まじめで、おとなしくて、近所の人にあいさつもできますし……でも、何を考えているのか分からないと思うことはありましたねえ…。」 報道番組で、このような受け答えを聞くことが多い。凶悪な事件を起こしておきながら、...

「(凶悪事件の加害者について)あんなことをする子だとは思いませんでした。まじめで、おとなしくて、近所の人にあいさつもできますし……でも、何を考えているのか分からないと思うことはありましたねえ…。」 報道番組で、このような受け答えを聞くことが多い。凶悪な事件を起こしておきながら、反省の色がない(本気で反省してるのか分からない)犯人。彼/彼女らはとても不気味な存在だ。でも、それがなぜ不気味なのか、よく分からない。本書を読んで、なぜ不気味なのかが分かった気がする。それはたぶん、「加害者本人もよく分かっていないから」なんだろう。 『1Q84』のなかにチェーホフの引用があった。曰く「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない」と。そして、銃が本来持つ目的は「殺人」だ。つまり、『銃』は、終幕が殺人である他ないのである。もし、それを防ごうとするならば、「良心」や「理性」が「本能」や「運命」に克つしかないだろう。 ところが、主人公「私」には、そういった人間的な感情が不十分であるように思われる。だから、葛藤がないわけではないが、結局のところ「銃→殺人」という定式どおりに進んでしまう。そう、「私」は引きずられているだけなのだ。

Posted byブクログ