深い疵 の商品レビュー
ドイツミステリの女王と呼ばれているノイハウスの日本デビュー作(シリーズ3作目)。ホロコースト、ナチス・ドイツといった過去の大戦と現在を絡めたストーリー運びが凝っていて、重厚感があり、クライマックスでの対決シーンではハラハラさせられた。登場人物もそれぞれ豊かな造形で、特に主人公の女...
ドイツミステリの女王と呼ばれているノイハウスの日本デビュー作(シリーズ3作目)。ホロコースト、ナチス・ドイツといった過去の大戦と現在を絡めたストーリー運びが凝っていて、重厚感があり、クライマックスでの対決シーンではハラハラさせられた。登場人物もそれぞれ豊かな造形で、特に主人公の女性刑事ピアがキュートで魅力的。
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良質の警察ミステリ。物語の方向性はシンプルなのだが、中身は濃くて、色んな要素が複雑に絡み合っている。根っこの深さに驚愕するなかれ。矢継ぎ早に出てくる人名と地名に混乱しないように。 名門一家、隠された過去、ナチス──陰惨さを予想させるキーワードがベースになっているが、冒頭からの事...
良質の警察ミステリ。物語の方向性はシンプルなのだが、中身は濃くて、色んな要素が複雑に絡み合っている。根っこの深さに驚愕するなかれ。矢継ぎ早に出てくる人名と地名に混乱しないように。 名門一家、隠された過去、ナチス──陰惨さを予想させるキーワードがベースになっているが、冒頭からの事件が派手に前進することで謎解きとのバランスが保たれおり、想像したような重苦しい雰囲気にはならない。 中盤辺りですでに満腹なのに、そこから更に方向転換をして突っ走るスタミナに翻弄させられた。そして“疵”の意味でクラッシュする。小説と割り切っていても、あの時代だったらアリだったかもと、ナチを知らないだけに想像力だけ逞しくなり、そしてしばし凹む。作中のナチに対して、もう少しこってりしたアプローチがあるのかと期待したが、人物造形のピースとして扱われてるようだった。もう一点残念だったのは、真犯人が判明するプロセス。それまでの捜査はなんだったのか? 本作品はシリーズ三作目。四作目もすでに刊行が決まり、評価次第では一作目から順に訳すとのことだが、前作で何かあっただろうなと思わせる人物間のやりとりが出てくるので、もったいぶらずに順番に読ませて欲しいところではある。今年は警察ミステリの当たり年かな?
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登場人物 A が あらわれた! A は ミスリード を つかった! 登場人物 B が あらわれた! B は ミスリード を つかった! 登場人物 C が あらわれた! C は ミス(以下省略) … これがNくらいまであると思ってほしい。苦痛! でもそんな苦痛を吹き飛ばすシー...
登場人物 A が あらわれた! A は ミスリード を つかった! 登場人物 B が あらわれた! B は ミスリード を つかった! 登場人物 C が あらわれた! C は ミス(以下省略) … これがNくらいまであると思ってほしい。苦痛! でもそんな苦痛を吹き飛ばすシーンが地下室で待っていてくれて、星を四つもぎ取っていく。 胸に一はけの鮮烈さを遺す作品。
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「深い疵」 ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第2次大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第2、第3の殺人が発生。被害者の...
「深い疵」 ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第2次大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第2、第3の殺人が発生。被害者の過去を探り、犯罪に及んだのは何者なのか。 オリヴァー&ピアのコンビが連続殺人事件を追う独警察小説シリーズ。キーワードはドイツでは大きな意味と歴史を持っている「ナチス」「ユダヤ」と言う言葉。この「深い疵」ではまさにその意味と歴史が深く刻み込まれています。 きっかけは高名高齢なユダヤ人が殺害された事件。それは普通の殺人事件と思われたが、被害者がナチスの隊員だったこと、カルテンゼー家というこちらも高名な一族が関係していたこと、そして謎のメッセージ16145が残されていたことから次第に事件が普通の事件ではなくなっていく・・・。さらに、カルテンゼー家に恨みを持つ複数の人物も現れ、オリヴァーの天敵まで登場して、事件は更なる混迷に・・・ という展開です。登場人物が多く、カルテンゼー家には何やら悪が潜んでいそうで、更にオリバーもピアもそれぞれ色々抱えているので、読みながら様々な箇所に気を取られました。しかし、そんな中でも一番はやはり「犯人の動機と連続殺人事件に潜むもの」です。 犯人の動機には悲しい過去があり、そして真犯人(殺人事件の被害者の多く)には許しがたい過去と人間が持ち、発揮し得る最大の悪がありました。特に、悪に関しては「何故ここまで残酷なことをしていていながら、ここまで落ち着いているのか」とピアが犯人を見て思うのですが、私も同感です。また、ピアは同時に「犯人の犯行を立証して、真犯人を追い詰め、罰を与えたい」という感情を抱き、犯人側に立って事件の真相を追いますが、この点も私は同意したいと思いました。それほど、真犯人の残虐性は許しがたいです。 また、一連の殺人事件と同時に別の事件も発生していきます。実はこの別の事件には今回の犯人ではない別の人間が関わっているのですが、そこにあるのは嫉妬や執念を超えた悪です。まさしく人間の嫌な部分が潜んでいる事件ばかりでした。 それでも読むことを止めなかった理由は「ピアが私の思いを代弁してくれたこと(刑事として人間として悪を見ていた)」と「犯人を捜すという推理小説の醍醐味(と思う)が存分に込められていた」からです。特に「犯人は誰なのか」という点に関しては、登場人物が多い上、彼らの視点での物語も進行し、更に様々な箇所に「こいつが犯人ではないか」というミスリードトラップが仕掛けられているので、非常に厄介です。 しかし、オリヴァーとピアの捜査が綿密に描かれている為にそこまで置いてけぼり感も無く、個人的な推理が楽しめます。ちなみに、私は犯人が外れました。まさか、そこに繋がるなんて・・・という伏線もありで、著者の強さを感じます。 シリーズ作品ではあるけれど、この1冊でも十分楽しめる作品です。次と前作が読みたくなる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
う〜ん、面白かった! 最初は、この読者に隠しているようで隠していないマルクスとエラルドの関係の書き方が不思議だったけど、途中で成る程なぁと納得。 最後はめでたしめでたし……なんだけれど、ユッタみたいな人物が結局のうのうとしているなんていう苦々しさもあったりして、きっとそれがまた小説としていいんだと思う。 しかし、ヴェーラが過去の悪事の証拠を延々残しておいたのが解せない。傲慢な人物というのはそういうものなのか。 それとも、過去の記憶が曖昧になって、嘘に綻びが出るのを防ぐ為だったとかだろうか。
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