深い疵 の商品レビュー
ドイツの警察小説。 厚みのある事件背景。 読み応え十分の一冊。 次作「白雪姫には死んでもらう」も楽しみだ。 ナチスというものが、どれだけの深い疵をドイツ国民に与えたものか、このようなエンタメ作品でもうかがい知ることができる。 軽々に使っていい言葉ではない、と改めて思う。 本作...
ドイツの警察小説。 厚みのある事件背景。 読み応え十分の一冊。 次作「白雪姫には死んでもらう」も楽しみだ。 ナチスというものが、どれだけの深い疵をドイツ国民に与えたものか、このようなエンタメ作品でもうかがい知ることができる。 軽々に使っていい言葉ではない、と改めて思う。 本作とは関係ない話だが、少し前のとある政治家の発言を思い出したもので…。
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ドイツで人気の警察小説の初紹介。 オリヴァーとピアの出てくるシリーズとしては3作目。 評価の高い作品からということのようです。 ホロコーストを生き延び、アメリカで大統領の顧問にまでなった92歳の老人ゴルトベルクが殺された。 司法解剖で実はナチスの親衛隊員だったことがわかる。生き...
ドイツで人気の警察小説の初紹介。 オリヴァーとピアの出てくるシリーズとしては3作目。 評価の高い作品からということのようです。 ホロコーストを生き延び、アメリカで大統領の顧問にまでなった92歳の老人ゴルトベルクが殺された。 司法解剖で実はナチスの親衛隊員だったことがわかる。生き延びるために過去を偽っていたのだ。 警察署長は政治に関わるまいと、オリヴァーに部下を帰すように命令。 (えっそんなことありうるの!?と驚いていると) 何と連邦上層部からも停止命令が来る。 被害者家族は有力なコネがあるらしい。 老人の手帖に名前が残っていたヴェーラ・カルテンゼーは地元の名士で、聞き込みもすぐには出来ない。 ホーフハイム警察の主席警部オリヴァーは、名字をフォン・ボーデンシュタインという貴族。 いつもきちんとした背広とネクタイという格好で、性格も穏やか、仕事を持つ妻との間に3人の子がいて、年の離れた末っ子はまだ赤ちゃん。 妻も貴族で、その関係から上流階級の捜査も進めていくことに。 (ドイツの貴族って?イメージなかったです) 部下の警部ピア・キルヒホフは2年前に離婚、10ヶ月前に今の恋人に出会った。 元夫は気難しい性格で、よく我慢したと今になって思っている。 元夫ヘニングはフランクフルトの監察医で、司法解剖の第一人者、ピアの依頼ですぐに現場に来てくれたのだが。 オリヴァーとピアは二人とも感じはよく、事件関係者の不幸とは好対照な境遇。 ユーモアもあって楽しく読めますが~ある意味、幸せすぎて感情移入しにくいかも?というのが3作目から翻訳したための弱点ってところかな。 捜査本部も設けられないまま、オリヴァーらは困難な捜査を始めます。 老いても一家に君臨する女実業家ヴェーラ。 長男のエラルドは大学の教授で若く見え今も女性に人気があるが、母親とは不仲。 事業を継いでいる次男は、地味だが母親に尽くしている。 娘は議員となっている野心家。 トーマスはヴェーラに長年仕えた秘書だが、放り出されて恨み、一計を案じている。 ヴェーラの旧友や一家の庶子、関係する人たちの間で、連続殺人事件の様相となっていくが‥?! 次々に視点が変わる構成で、ややわざとらしいミスリードも含め、ヒントはちりばめられています。 ドイツ人の名前が覚えにくい点がなければ、重層的な構成はとても面白いんだけど。 ネレという作者名が女性とは気づかず、途中であれっもしかしてと思いました。 訳文はお見事で、登場人物の個性を生き生きととらえています。 後半でわかったことは、あまりにも深い疵だった‥ スリルとずしっと来る読後感も含め、読み応えがある作品でした!
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2007年ドイツで起こった連続殺人の話。 かつて強制収容所の生き残りのユダヤ人と思われてた老人が殺され、実はナチスの親衛隊員だったことが判明する。 その後次々と殺人が起こり、被害者と関係のある人物として必ず一人の女性実業家ヴェーラ・カルテンゼーとその一族カルテンゼー一家が浮上して...
2007年ドイツで起こった連続殺人の話。 かつて強制収容所の生き残りのユダヤ人と思われてた老人が殺され、実はナチスの親衛隊員だったことが判明する。 その後次々と殺人が起こり、被害者と関係のある人物として必ず一人の女性実業家ヴェーラ・カルテンゼーとその一族カルテンゼー一家が浮上してくる。 結末は終盤にさしかかってくると予想がつくが、それまで一族の関係図を理解するのに時間がかかった。 真相がわかったあとは、それなら連続殺人をしても仕方が無いと思ってしまうほどの動機である。題名の深い疵の意味が理解できる。 ストーリーと結末は面白く読めたが、刑事二人組の様子が描かれたところがおもしろくない。プライベートの感情が仕事まで影響を及ぼし、刑事としてそれじゃダメだろうとがっかりさせられた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
これは!正直!面白かった!ぜひ!読んで!と、全部 感嘆符を付けて、周囲に勧めてまわりたい。ドイツの黒歴史がベースになったミステリーものでした。 勝手な印象で、ミステリー小説は割と内容が薄いイメージを抱いていたのだけど、これは時間軸も大きく動く上に、登場人物も多岐にわたる。いつもの(これ誰だっけ…)状態は発生しつつも、それはいいから先に進もうと思わせる魅力がありました。 ドラマ化してほしいな〜!これは!絶対!と思ってIMDb検索したら、オリバー&ピア シリーズの第1作『いけすかない女(Eine unbeliebte Frau)』と第4作『白雪姫には死んでもらう(Schneewittchen muss sterben)』はテレビ映画化しているようだ。やはり今作はちょっと映像化難しいのかなぁ。 http://www.imdb.com/name/nm5506218/?ref_=fn_al_nm_1 (ドラマの俳優さんの写真みたら、オリバーもピアもイメージと違った。。。) はやくシリーズ全5作の残り4作を読みたい!
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自分の出自がわからない苦悩は計り知れず、またその真実も想像の上をゆく。巧妙に偽っても長い時を経て過去が風化しても自分の行いのツケはくるのだと思い知らされ、負の歴史が重い影を落とす話だった。 犯人の心の内、もう少し知りたかったな。 先読みした『白雪姫には死んでもらう』もそうだったが...
自分の出自がわからない苦悩は計り知れず、またその真実も想像の上をゆく。巧妙に偽っても長い時を経て過去が風化しても自分の行いのツケはくるのだと思い知らされ、負の歴史が重い影を落とす話だった。 犯人の心の内、もう少し知りたかったな。 先読みした『白雪姫には死んでもらう』もそうだったが、男女の思考や行動の特徴が明快で国境を越えてあるある~と頷いてしまう。
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現代のドイツで、アメリカに移住していたアウシュヴィッツの生存者が、処刑のような格好で殺された死体が見つかります。 傍には謎の数字があり、続いて起きた殺人事件では、ユダヤ人のはずの被害者にSSであることを示す刺青のあとが見つかります。 被害者たちが親しかった女性実業家がなんらかの鍵...
現代のドイツで、アメリカに移住していたアウシュヴィッツの生存者が、処刑のような格好で殺された死体が見つかります。 傍には謎の数字があり、続いて起きた殺人事件では、ユダヤ人のはずの被害者にSSであることを示す刺青のあとが見つかります。 被害者たちが親しかった女性実業家がなんらかの鍵を握っていると思われますが、有名人であるためなかなか捜査できず、主人公の警察官コンビは四苦八苦しながら真相に近づいていく……という警察物です。 出だしからはユダヤ人問題を扱った話かと思われましたか、そうではありませんでした。 普通の警察ミステリです。 だからこそ謎解き部分は日々の捜査の経過が繰り返されると言った、やや単調なもので、組織にありがちな上下関係の確執なども含まれています。 本屋大賞にノミネートされた、という話を聞いたので読んでみましたが、正直なところ「それほど面白いか?」という感想です。 面白くないわけではないし、読んで損するわけでもないですが、他にももっと面白い海外物はあると思うのですが……
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途中までは面白そうな作品だなあと思ってしまったが、 浅い人物描写と、おざなりな物語の展開に興醒した。 ドイツでは定番のネタなんだろうし、 エンタメミステリとしたら、これで良いのだろうが。
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著者はドイツ人女性ミステリ作家。 本書を含め、オリヴァー&ピアの警察小説シリーズを(訳者の後書きによれば)5冊発行しており、シリーズ4冊目が販売された後は「ドイツミステリの女王」と呼ばれているそうです。 また彼女のデビュー方法がちょっと変わっており、上の後書きによれば、当初、著...
著者はドイツ人女性ミステリ作家。 本書を含め、オリヴァー&ピアの警察小説シリーズを(訳者の後書きによれば)5冊発行しており、シリーズ4冊目が販売された後は「ドイツミステリの女王」と呼ばれているそうです。 また彼女のデビュー方法がちょっと変わっており、上の後書きによれば、当初、著者は自費出版した自著を身近な所で細々と販売していたのですが、販売戦略をたてて自分が経営するソーセージ店のコネを活用。 肉を配達するドライバー経由で近隣の書店に自著を置かしてもらった所、これがヒットしドイツミステリの老舗出版社ウルシュタイン社の目にとまってデビューが決定したそうです。 尚、現時点(2013年6月初旬)では上記シリーズの日本語翻訳版はシリーズ3冊めの本書の他、シリーズ4冊目の「白雪姫には死んでもらう」が出版されています。 シリーズの他の巻、特に1冊め、2冊めは未だ日本語版が出ておらず、訳者によればこれは販売戦略の一環との事で本書と「白雪姫~」がまずまずの売上を見せてからシリーズの他の既刊の翻訳版を出すとか。 商売の都合を考えれば致し方なしなのかも知れませんが、中々のあざとさを感じずにはいられません(笑) では前置きはこの位にして、以下であらすじをご紹介。 アメリカ大統領顧問を務めたことがある男性が自宅にて射殺された姿で発見される。 殺害現場には「16145」とのメッセージが残されており、また解剖の結果、ユダヤ人と思われていた被害者の男性が実はナチス親衛隊の人間であったことが判明する。 この事実が明かになった場合の政治的衝撃を憂慮する上層部が、まるで事件の迷宮入りを狙うかのような動きを見せる中、再び男性の射殺体が発見される。 殺害現場には最初の事件同様に「16145」とのメッセージが残され、今度の被害者も元ナチスの人間であることが判明。 一連の事件が連続ナチス狩りの様相を呈し始める中、被害者たちと有力実業家一族カルテンゼー家とのつながりが見え始める。 捜査にあたるオリヴァー指揮下の捜査11課の面々。 そして、彼らの眼前にカルテンゼー一族を巡る因縁の数々が明らかになってくる。 しかし、オリヴァーの新たな上司として、彼との間に<過去>を持つ女性警視が赴任し・・・・ 主人公の一人、オリヴァー・フォン・ボーデンシュタインの設定は ・貴族 ・既婚(妻:美人、貴族) ・ワイン通 ・常に紳士的 ・しかし同時にゴジップ大好きでもある と言うもので、もう一人の主人公、ピア・キルヒホンの設定は ・バツイチ ・気立てのよい恋人有り ・自分の体型にコンプレックス と言う、特に両者の最後の設定には読者の親近感を刺激する物があるのではないでしょうか。 ストーリーは先の見えないものとなっており、「謎解きこそミステリの命」と言う考えをお持ちの方でも、その点は満足できるのではないかと思います。 とは言え、(決してつまらなかった訳ではありませんが)アメリカ大統領顧問だった人物が元ナチスでしかもユダヤ人と結婚していたと言う設定(正直ちょっと荒唐無稽な感じが・・・)や、上記のキャラクター設定等を見て想像がつく様に、本書を一言でまとめると「大衆文学」となる感じです。 いや、ただの「大衆文学」ではなく、「ザ・大衆文学」と言った所でしょうか。 読んでいて俗っぽさが至る所で感じられるのですが、その一方で練りに練られたストーリー展開。 本書を食べ物に例えると「最高級の食材を使ってマクドナルドのハンバーガーを作りました!」的な印象です。 最高級 なのに マクドナルド この様に不思議な感じがする小説でしたが、娯楽作品としては十二分の作品となっていますので、気軽な読書を楽しみたい時などにおすすめです。
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ドイツ発のミステリは初体験。例によって名前に苦労する。 連続して事件が起こるし、様々な事実も判明するが、いっこうに真相が見えてこない。 真相のボリューム大きいのだ。この真相はいかにもドイツ的なのかと思う。 ドイツには貴族がいることは知らなかった。被害者一族も、主人公の警部も...
ドイツ発のミステリは初体験。例によって名前に苦労する。 連続して事件が起こるし、様々な事実も判明するが、いっこうに真相が見えてこない。 真相のボリューム大きいのだ。この真相はいかにもドイツ的なのかと思う。 ドイツには貴族がいることは知らなかった。被害者一族も、主人公の警部も貴族。日本の華族と違ってヨーロッパの貴族は、大地主、実業家といった感じ。勉強になる。
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またまた面白い警察シリーズもの。しかも、ドイツものと、珍しい。 長編のわりには登場人物らの背景の書き込みが少ないと思ったら、本書はシリーズ3作目だった。 出来の良い3作目でまずは日本の読者の関心を惹いて、今後の出版につなげようという出版社の戦略だそうだ。
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