盤上の夜 の商品レビュー
数ページ読んで「あ、好き」と久しぶりに思わされた。 とにかく表題の盤上の夜に心を掴まれた。由宇の囲碁に対する思い、相田と由宇の関係や、紡ぐ言葉がとにかく美しい。 語り部がジャーナリストという立ち位置も絶妙。由宇と相田の描写をしっかり描きつつ、適度に謎を残す距離感がまた物語の美し...
数ページ読んで「あ、好き」と久しぶりに思わされた。 とにかく表題の盤上の夜に心を掴まれた。由宇の囲碁に対する思い、相田と由宇の関係や、紡ぐ言葉がとにかく美しい。 語り部がジャーナリストという立ち位置も絶妙。由宇と相田の描写をしっかり描きつつ、適度に謎を残す距離感がまた物語の美しさに一役買っていたように思った。 素晴らしい作家さんに出会えて嬉しい。他の作品も読みます。
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麻雀はやったことがある程度、将棋やチェスはルールがわかる程度という自分の事情もあるのでしょうが、麻雀を題材にした「清められた卓」が一番面白く、囲碁の話は感覚器官という点で興味深かったのですがとにかく知らないので読みにくくて残念でした。ルールを知らなくてもぐいぐい引っ張ってくれる何...
麻雀はやったことがある程度、将棋やチェスはルールがわかる程度という自分の事情もあるのでしょうが、麻雀を題材にした「清められた卓」が一番面白く、囲碁の話は感覚器官という点で興味深かったのですがとにかく知らないので読みにくくて残念でした。ルールを知らなくてもぐいぐい引っ張ってくれる何かが欲しいという感じです。碁と麻雀以外の3編も決して読み易いということはないのですが読み終わってみるとどれも好みだったので余計にそう思います。コンピュータと人間との関係など興味深いことも多く別の形の作品に触れてみたいと思いました。
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少しのSF的な要素を加え、各種のゲームの使い手を主人公とした短編集。すごい、現代的な、そして進化を含んだ未来を射程にした作家を見つけたと感じた。素人の私でも、異能の人びとが見る、峻厳な、恐ろしい世界を、垣間見させてくれる。
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囲碁将棋麻雀その他ボードゲーム&ギャンブルをいっさいやらぬ私(将棋の駒の動きくらいならわかる)が読んで「本書は面白いのか?」と聞かれれば、小指で鼻くそほじりながら、 「うーん、まあ……そうですなぁ……しかし困りますなぁ、北朝鮮のミサイル問題は」などとやる気のない感想しか出ないのは...
囲碁将棋麻雀その他ボードゲーム&ギャンブルをいっさいやらぬ私(将棋の駒の動きくらいならわかる)が読んで「本書は面白いのか?」と聞かれれば、小指で鼻くそほじりながら、 「うーん、まあ……そうですなぁ……しかし困りますなぁ、北朝鮮のミサイル問題は」などとやる気のない感想しか出ないのはしょうがないことで。 なんとなれば本書はそんなボードゲームが主役なのだから、 「いっや~、あたいはこういうゲームの知識は全然ないんだけど、それでもグイグイ引き込まれましたわ~。まさに巻置く能わざる」なんてな人がいたら、「あんた何カッコつけてんの? この本はそこ、わからんと高揚せえへんで」と突っ込みを入れてしまうだろう。 というわけで、呑み屋で初めて知り合った人が勧めるままに読んだものの、私の趣味ではありませんでした(でも一応全部読んだ)。 知識のある人はワクワクしながら読めること請け合い!(などと安請け合い)
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表題作を読んで、なにこれ、すごい、と思い、そのまま、一作ずつわあ、すごい、すごい、と思いながら読み進めた。 ものすごく緻密な小説だと思う。 チャトランガはもとより、将棋も碁も麻雀もチェッカーも、およそボードゲームには疎いのだけれど、ルールも知らないまま読んでしまったくらい、引き込まれる。 古代インドから、近未来(?)まで、舞台は様々だけれど、情報のだしかたがとても巧みで、すごく奥行のある物語。 表題作「盤上の夜」と、「象を飛ばした王子」が特に好きだった。前者はどこまでも透明に澄んだ、深い交わりが印象的だったし、後者はねじれのように、交わりそうで交わらない、触れ合えるくらい近くにいるのに膜一枚を隔てて決して触れ合えない、その孤独が切なかった。 読んでいる時頭に浮かんでいたのは、囲碁繋がりで遠田潤子さんの「月桃夜」と、米津玄師さんの「アイネクライネ」。
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今更ながらの感があって手控えていたのだが、いや思っていた以上に面白かった、宮内悠介のSF大賞受賞作にして直木賞候補作。 色んなものに才能がない俺だが、例外に及ばずボードゲームの類も全くアカンくて、この作品集に出てくる囲碁・将棋・チェス・麻雀、すべてルールは知っている程度。先を読んで相手の行動を抑制しつつ自分の動きをする、みたいなことが全然できないのだ。 だからこそ、ボードゲームの深遠な世界には憧れがある、将棋や囲碁の深遠なやりとりの向こう側には何かスゲーものが待ってると思い込んでいるし、麻雀の偶然と人為をないまぜにして配列を作っていく奇跡に思いを馳せるのだ。 この作品集は、そうした俺のあこがれの一部をまさに文章化してくれている好作。棋士や雀士やらはきっと俺の知らない深遠な世界を生きているに違いない。それが羨ましくもあり、知らなかったからこそ能天気に生きているんだという安心感もあり…。 追伸:どうやら再読であったよう。自分の読んだ本も覚えてないようじゃ、定石とか捨てハイとか覚えられるわけもなく、これじゃダメじゃん(笑
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盤上の夜 宮内悠介 2012年3月30日初版 2017年8月15日読了 宮内悠介の処女作。 囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋、ボードゲームをテーマに6つの短編から綴られる物語。 チェッカーの話における、「マリオン・ティンズリー」は初めて知りました。こんなにも凄い人物が...
盤上の夜 宮内悠介 2012年3月30日初版 2017年8月15日読了 宮内悠介の処女作。 囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋、ボードゲームをテーマに6つの短編から綴られる物語。 チェッカーの話における、「マリオン・ティンズリー」は初めて知りました。こんなにも凄い人物がいたのかと。6編の中で唯一実際の人物を描いてますがこの本を読まなければ知らないままだったと思う。 随所に人間とコンピューター、コンピューターによる「ゲームの完全解」が出てきて昨今のコンピューターによる進化の脅威を感じさせる一冊でした。千年の虚空でも将棋の完全解という設定が出てきますし。 ちょうど人工知能や、ゲーム理論、将棋の本、先崎学の小博打のススメなどゲームに関する本を読んでいたので関連する内容(シンギュラリティ、囚人のジレンマ、ボードゲームの持つ奥深さなど)が出てきて、知識が繋がっていく感じがしてかなり楽しく読めました。 全体的にダークSF、悲哀、精神的障害の話などもあって暗く、不気味さと言うか怖さも漂わせる内容が多いと思いましたが、含蓄もあり読んでいて続きが気になる面白さがありました。
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なかなか分からなかったところも多かったが、1作目が特に好きだった。元のゲームに精通してればさらに面白いだろうなと。
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ボードゲーム(囲碁、将棋、チェッカー、麻雀、チャトランガ)を題材にした中編集。 SF 短編の賞を取っていますが、幻想小説の風味が強い印象。SF 要素は隠し味って感じです。 表題作を含む囲碁エピソードの幻想性がとても良かったです。 山田正紀賞も取っていますが、思考に関するエピソード...
ボードゲーム(囲碁、将棋、チェッカー、麻雀、チャトランガ)を題材にした中編集。 SF 短編の賞を取っていますが、幻想小説の風味が強い印象。SF 要素は隠し味って感じです。 表題作を含む囲碁エピソードの幻想性がとても良かったです。 山田正紀賞も取っていますが、思考に関するエピソードばかりなので、それも納得。 ある意味、典型的な日本的 SF ではありますね。 麻雀のエピソードについては、ちょっと周囲の反応が極端すぎるんじゃないかという印象を持ちました。 このエピソードだけ、もやもやした感じでしたね。(^^;
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人が考えだしたものが、人のさがを含め、あらゆるものを凌駕して翻弄する。 盤上の遊戯にとり憑かれたものは、宇宙に放り出されたような、もう戻れない異世界迷い込んでしまったような。 世界の広がり。SFのような、まったく違うような。その境界線の危うさこそが、もしかしたら本物のSFなのかも...
人が考えだしたものが、人のさがを含め、あらゆるものを凌駕して翻弄する。 盤上の遊戯にとり憑かれたものは、宇宙に放り出されたような、もう戻れない異世界迷い込んでしまったような。 世界の広がり。SFのような、まったく違うような。その境界線の危うさこそが、もしかしたら本物のSFなのかも。 情念がすごい。 なぜか未だに脳裏に光景がよぎるのは「象を飛ばした王子」。 嗜好にはまって、悶えたのが「千年の虚空」。素晴らしい。
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