母の遺産 の商品レビュー
日本語が綺麗で目にはご馳走だったが、内容は、母にがんじがらめにされている私にはいかんせんしんどかった。 所詮フィクション、と苦笑した部分も散見した。 けれど、順番でいけば母親が先に逝くということを再認識させてくれたのは、大いに評価する。
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主人公のもんもんとした思いに息苦しくなりながら、久しぶりに「物語」をよんだなあ、という感じがする作品だった。うすっぺらい小説が多い中でたまにこういったこってりした?ものに出会うと嬉しくなる。 ラストの(こんなにうまくいくか?と思いつつも)解放感と希望の光?にほっとしたが、まさに最...
主人公のもんもんとした思いに息苦しくなりながら、久しぶりに「物語」をよんだなあ、という感じがする作品だった。うすっぺらい小説が多い中でたまにこういったこってりした?ものに出会うと嬉しくなる。 ラストの(こんなにうまくいくか?と思いつつも)解放感と希望の光?にほっとしたが、まさに最近ほぼ寝たきりとなった祖母を眼前にした母にはリアルすぎて今は勧められない。 母娘の、縛り縛られる愛憎関係は、そのまんま日本の家族の有り様なのだと思う。 「金色夜叉」がからんでくるところは、なんだか滑稽感があった。
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母親と、主人公と姉の関係が、何とも理解できない感じだったのは、作者の描いている世界があまりに、私の環境と違うからなんだろうなと思いました。 主人公の夫の育った環境のほうが、わたしには理解しやすかった。 とはいうものの、主人公が、母親に振り回されたり、なやまさせられたりしている...
母親と、主人公と姉の関係が、何とも理解できない感じだったのは、作者の描いている世界があまりに、私の環境と違うからなんだろうなと思いました。 主人公の夫の育った環境のほうが、わたしには理解しやすかった。 とはいうものの、主人公が、母親に振り回されたり、なやまさせられたりしていることには、共感というか、同情というか感じました。 作者の体験を交えてとのことだけれど、おそらく、この介護のシーンだろうか。
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読売新聞連載中に読んでいたのに、途中で朝日に変えたので続きを読みたかったのがようやく読めた。ごうつくな老母の介護とその死。娘は母の死を永らく望んでいた。
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人生折り返した今、子育てで教育資金のことが先に気になるけど、それが済んだら我が身のことが現実問題になるのね。それに夫婦、家族問題。私の人生幸せだったと思えるよう、今を大切に積み重ねていかねば…。最後端折って読んだせいか、切なくなってしまったなぁ…。
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かなり哀しいけど、かなり現実的な話。大げさではなく、似たようなことは、どの家庭にもある。癖のある母の言動と諦めのような、同調するような娘たちの対応。リアルに我が家にもあるような。
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本屋さんのポップに惹かれて図書館で予約。長い事待ちました。 境遇は全然違うけど、女なら分かる夫への感情、同性の母親への想い、介護の辛さ、堂々巡りの気持ちが描かれていて普通なら退屈になるはずなのに全く退屈だと思わずに読めた。 ドロドロしたあらすじなのに、登場人物の感情がすんなり入っ...
本屋さんのポップに惹かれて図書館で予約。長い事待ちました。 境遇は全然違うけど、女なら分かる夫への感情、同性の母親への想い、介護の辛さ、堂々巡りの気持ちが描かれていて普通なら退屈になるはずなのに全く退屈だと思わずに読めた。 ドロドロしたあらすじなのに、登場人物の感情がすんなり入ってくるのと美しい風景描写のおかげで、清々しい感じでした。 女性には是非お勧めします。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
美津紀は大学の非常勤講師。大学教授の夫は海外で若い女と同棲しているらしい。 自身の不定愁訴に苦しむ中で、我が侭し放題に生きてきた母の介護がズシリとのしかかる。 家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きている。それなのに母は死なない。自分を裏切っている夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」と祈りながらの介護が無間地獄に思えてくる。 母との確執、姉妹の確執、夫への恨みを抱えながらの介護。 そして美津紀は箱根へ一人旅に・・・。 現代を生きる50代女性の切実なシンデレラストーリーであるとともに、尾崎紅葉の「金色夜叉」が新聞小説として読売新聞に掲載されていた明治30年代から3.11の前日までにわたる、祖母、母、そして美津紀の三代に渡る女性の大河小説のようでもある。
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母娘の確執、姉との関係、介護、終末医療、浮気と離婚、リアルな悲しい内容だが読まずにはいられなかった。
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激しく面白く、興奮して読み、大満足で読了。大好きです。満点です。 何より、文章が素敵です。 どこがどう、と詳しく言うには勉強と分析が必要なので割愛。 別に普通の現代文章だけど、ほのかに日本語としての美意識や機能性、といったものが根底にあることが香ります。なんていうか、背筋...
激しく面白く、興奮して読み、大満足で読了。大好きです。満点です。 何より、文章が素敵です。 どこがどう、と詳しく言うには勉強と分析が必要なので割愛。 別に普通の現代文章だけど、ほのかに日本語としての美意識や機能性、といったものが根底にあることが香ります。なんていうか、背筋が伸びます。読んでいるだけでわくわくしてくる文章ですね。 日本語の文章、というものが好きな人にはゼッタイにタマラナイ小説です。 僕は個人的に夏目漱石の小説は全体的に好きなので、そういう人にはモウ、何が何だかタマラナイ、という読書になるでしょう。 でも、そうじゃない人でもOKです。うーん、何て言うか、ちょっとは歯ごたえがある、コリコリした、だけど基本的に物語の面白さを味あわせくれる小説。あと、分からないけど、なんとなく知的で、媚びないけど、目だとうともしてない、ツンケンしてもいないような、そういう女性作家の本を読みたい、という場合にも、お勧めです。 内容は、母の介護に振り回されて心身ともに疲労し、そこに夫の浮気というダブルパンチを食らった50代の主人公女性が、お金やマンションと言った、物凄く切れば血が出る具体的なことに悩みながら離婚して独居を始めるまで、のお話。主人公の設定は、一見、作者そのものを思わせるような、海外留学経験がある、大学非常勤講師とか翻訳とかそういう世界で、不安定な収入で生きている人。でも当たり前のことだし、どうでもいいことだけど、多分別に水村さんの実体験ではないと思う(そのものではないと思う) と書くと、「この本はそういう本ではないのだけど」と自分で思ってしまう。この作品は新聞小説だったそうなので、上記したストオリイで一応の娯楽性はある。けれど、主人公の意識の中で、「主人公と姉、そして二人の母、そして祖母」という女三代の歩みや、思いが、合間合間で描かれる。彼女たちの喜びと悲しみの物語でもある。それぞれの時代の、男性との恋愛とか結婚とかについての物語でもある。日本の近代と現代の個人の自我の変遷の物語でもある。昭和~平成の日本を舞台にした、「ボヴァリー夫人」でもあり、「感情教育」でもある。とにかくオモシロイのである。ニンゲンを描いているのであって、ドラマチックな出来事でゴタゴタと繋いでいるのではないのである。 その癖(その癖っていうのも失礼な話しだが)、十分な娯楽性もあって、サスペンスもあり、最終段階での「2100万円のやりとり」は、不意打ちのようにドラマチックな感動だったりする。 これはもう、本当に素敵な小説でした。こんな小説を新刊で読めるなんて、嬉しくて滂沱の涙です(泣いてないけど)。水村美苗さんは、以前に「日本語が亡びるとき」を読んで、あれはあれで大名著だと思った。けれど、小説書きとしてここまでスゴイ人と思わず、読んでいなかった。まず、これから、1作でも2作でも、この人の新刊を読める幸せに感謝! それから、慌てずこの人の旧作を読んでいけることに感謝! こんな小説を書いてくれるのであれば、実際の水村さんがどれだけイヤな人でも良いです。きっとコンナ本を書ける人はイヤな人に違いあるまい。 と、言いつつ、これが万人にお勧めかというと、そうでもないんです。 何しろ、ここに描かれいることは、目を背けたくなる人の老いであり、親の果てしない介護の地獄であり、虚脱と安らぎでしかない親の死であり、遺産を巡るナマナマしくも現実的な金銭の話であり、若くない夫婦の崩壊であり、住居やらローンやら年金やら仕事やらの不安であり、失われた若き日々の、その愚かさへの甘い後悔であり、子供と親とのままならぬ関係であり、不幸であること全般だったりする。 まあそれでも、最後に「私は幸せだ」と呟かせる。最後には春のちょいとした日差しのような暖かさで包んでくれる。 あー、やっぱり素敵な読書だった。 この本は、暮らしている小さな駅前の小さな書店で、ふっと衝動買いしたものだった。やっぱり、アマゾンも電子書籍も良いんだけど、書店という場所は少なくとも僕が生きている間は元気でいて欲しいものです。
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