1,800円以上の注文で送料無料

紙の月 の商品レビュー

3.8

367件のお客様レビュー

  1. 5つ

    56

  2. 4つ

    166

  3. 3つ

    90

  4. 2つ

    13

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2019/02/21

銀行の契約社員、梅澤梨花が1億円を横領し、海外へ逃亡した。 学生時代、ちょっと仲の良かった友人、木綿子。 ちょっと付き合ったことのある男性、和貴。 社会人になってからちょっと関わりのあった女性、亜紀。 それぞれが、「梨花は、そんな大それたことをする人だったろうか?梨花にどんな変化...

銀行の契約社員、梅澤梨花が1億円を横領し、海外へ逃亡した。 学生時代、ちょっと仲の良かった友人、木綿子。 ちょっと付き合ったことのある男性、和貴。 社会人になってからちょっと関わりのあった女性、亜紀。 それぞれが、「梨花は、そんな大それたことをする人だったろうか?梨花にどんな変化があったのだろうか?」と回想する。 梨花自身も、逃亡先であれこれと考える。「どうしてこんなことになったのだろう?何がきっかけだったのだろう?」 ごくごく普通の学生生活を送り、ごくごく普通に就職し、ごくごく普通に結婚し寿退社した。 あまり自己主張することもなく、けれど、「今の私は、本当の自分のほんの一部分でしかない。いつしか自分の一部分が、すっかり自分自身になってしまうのではないか」という漠然とした恐怖を感じていた。 そういうみたされない部分を、買い物や、若い恋人との非日常的な「夢のような」逢瀬で満たしていくうちに、「こっちが現実で、日常が夢なのかもしれない」と倒錯していく。 非日常で見上げる月は、三日月。きっとポキッと折れそうな、はかない月だったのだろう。 満たされない日常は誰にだってある。木綿子にも、和貴にも、亜紀にも、そして私自身にも。 それを埋めるための方法が、買い物に走るか、浮気になるか…。私は非日常を求めて“旅”になるのだけれど、幸いなことに日常と非日常が倒錯することはない。 けれど、これはきっと紙一重。 「私をここから連れ出してください」 最後に梨花がつぶやいた言葉。 ここまで大事件になってしまい、自分ではどうにもできなくなった悲しさ。歯止めをかけるのは自分自身なのに、人間って弱いものだなぁ。

Posted byブクログ

2019/02/16

どの作品も日常が少しのきっかけで暗転する様や表面と心の中ではまったく違った想いが交錯している様を描いているが、どうも作った感が否めない。 そんなドラマチックなことが世界中のあちこちで起こったら大変だろうなと感じたぐらいで。。。 わが身に降りかからないだけで世間ではよくあること...

どの作品も日常が少しのきっかけで暗転する様や表面と心の中ではまったく違った想いが交錯している様を描いているが、どうも作った感が否めない。 そんなドラマチックなことが世界中のあちこちで起こったら大変だろうなと感じたぐらいで。。。 わが身に降りかからないだけで世間ではよくあることなのかもしれない。 普通の人が日常を逸脱したくなった時に読んでみると案外戒められるのかも?

Posted byブクログ

2019/01/16

 もう10年前の作品である。銀行員が、主婦の非正規雇用社員が、顧客の金をネコババつまり横領する話を、その主婦の心の動きを小説にした作品である。  最初はすぐ返すつもりでとか、些細なことから、などをそのまま小説にしてあるので、事の流れや主人公の心のうちまでもが、想像通りに進展してい...

 もう10年前の作品である。銀行員が、主婦の非正規雇用社員が、顧客の金をネコババつまり横領する話を、その主婦の心の動きを小説にした作品である。  最初はすぐ返すつもりでとか、些細なことから、などをそのまま小説にしてあるので、事の流れや主人公の心のうちまでもが、想像通りに進展していて驚きや意外性はほとんどない。推理小説でもサスペンスでもないから、そんなものは必要ないかもしれないが、読後の印象が残らないのだ。  何か実際の事件をヒントに書いたのではないだろうか。事実は小説より奇なり、と言うくらいで現実を超えるのは手練れの作家でも難しいのだろう、と勝手に決めつけてしまった。

Posted byブクログ

2018/12/08

専業主婦だった梨花が銀行でパートで働きだし、横領し顧客の孫に貢ぐお話し。 旦那が毎度、俺の方が稼ぎが多い感を醸し出してくる感じが嫌だった。 ちょっとしたキッカケだったのに歯止めがきかなくる。 実際にもありそう。

Posted byブクログ

2018/11/15

勤務先の銀行の顧客預金を横領し、逃亡した梅澤梨花の顛末。 学生時代、真面目な梨花に憧れていた岡崎木綿子 離婚して前向きになった時に料理教室で梨花に出会った中条亜紀 梨花の元彼の山田和貴 梨花と他3人の回想を含め、人が生きていく上での苦悩、葛藤、妥協を緻密に描き、梨花の...

勤務先の銀行の顧客預金を横領し、逃亡した梅澤梨花の顛末。 学生時代、真面目な梨花に憧れていた岡崎木綿子 離婚して前向きになった時に料理教室で梨花に出会った中条亜紀 梨花の元彼の山田和貴 梨花と他3人の回想を含め、人が生きていく上での苦悩、葛藤、妥協を緻密に描き、梨花の転落の様が鮮やかに描かれている。 ドラマチックなエンドではなかったけれど、作家の表現力の豊かさは伝わってきた。 日々起きている事件にも三者三様の理解しがたい事情が隠れているのかもしれない。

Posted byブクログ

2018/10/12

極端なストーリーかもしれないけれど、誰しも梨花さんのように歯止めがかからなくなる危険性はあるのかなぁと思って読んだ。でも、題名にある紙の月って内容の何と結び付けてつけられたんだろう?

Posted byブクログ

2018/10/20

梨花はカード会社でOLをしていた。正文と結婚して退職した。二人だけの生活はだんだんと退屈なものになってきた。そんな時に料理教室で知り合った亜紀に、仕事でもしてみれば、と言われ、銀行のパート職員になった。営業職でお得意さんを回って勧誘をするのだ。梨花は老齢なお得意さんに好かれた。ち...

梨花はカード会社でOLをしていた。正文と結婚して退職した。二人だけの生活はだんだんと退屈なものになってきた。そんな時に料理教室で知り合った亜紀に、仕事でもしてみれば、と言われ、銀行のパート職員になった。営業職でお得意さんを回って勧誘をするのだ。梨花は老齢なお得意さんに好かれた。ちょっとした手伝いも嫌がらずにしてあげるから。そんな日々が変わったのは、あの五万円のお金をお得意さんから預かった封筒から抜いた時だ。すぐに返したが、それから梨花の日々はだんだんと変わっていった。そしてとうとう一億円を横領して海外に逃亡した。

Posted byブクログ

2018/10/09

お金に翻弄される女性たち。彼女たちが執着してるのはお金ではなくて、何か満たされない思いをお金で満たそうとしている。何かカタチのないものを。誰もがほんの少しのきっかけで陥ってしまいそうな怖さ。絶対わたしは大丈夫とは思えない恐ろしさが最後まであった。

Posted byブクログ

2018/06/17

ただ好きで、ただ会いたいだけだった――― わかば銀行の支店から一億円が横領された。 容疑者は、梅澤梨花四十一歳。 二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。 真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。 そんなある日、顧客の孫である大学生の光太...

ただ好きで、ただ会いたいだけだった――― わかば銀行の支店から一億円が横領された。 容疑者は、梅澤梨花四十一歳。 二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。 真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。 そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった・・・・・・。 あまりにもスリリングで、狂おしいまでに切実な、傑作長篇小説。 第二十五回柴田錬三郎賞受賞作。

Posted byブクログ

2018/01/08

2013.10/19 角田さんの紡ぐ物語は、一見すると自分とはかけ離れた女性象を描いているのに、女性心理の暗部の普遍性をついているようにも感じられて、つまり自分も同じ罠にはまってしまいそうな不安をどうしようもなく掻き立てられてしまって、続きを読まずにいられなくなる。「どうしてこん...

2013.10/19 角田さんの紡ぐ物語は、一見すると自分とはかけ離れた女性象を描いているのに、女性心理の暗部の普遍性をついているようにも感じられて、つまり自分も同じ罠にはまってしまいそうな不安をどうしようもなく掻き立てられてしまって、続きを読まずにいられなくなる。「どうしてこんなところにいるんだろう」感のデジャブ。

Posted byブクログ