銃・病原菌・鉄(下) の商品レビュー
人類史1万3000年という長大な歴史を、タイトルにある「銃・病原菌・鉄」をキーワードにして辿るジャレド・ダイアモンドのベストセラー。 もともと人類が誕生した時点では互いにそれほどの違いがなかったはずが、なぜ今ではこうも多様な人間社会になったのだろうか?という人類史の大きなテーマを...
人類史1万3000年という長大な歴史を、タイトルにある「銃・病原菌・鉄」をキーワードにして辿るジャレド・ダイアモンドのベストセラー。 もともと人類が誕生した時点では互いにそれほどの違いがなかったはずが、なぜ今ではこうも多様な人間社会になったのだろうか?という人類史の大きなテーマを追及する。本書はその下巻。 上巻に引き続き、キーワードは「銃・病原菌・鉄」ですが、下巻ではさらに掘り下げて「文字」や「技術」、「集権化」といったサブキーワードが多く出てきます。また、上巻ではヨーロッパと南北アメリカとの比較が中心でしたが、そこで見てきたパターン(なぜスペインがインカ帝国を滅ぼし、その逆のことが起こらなかったのか)を、オーストラリア、中国、アフリカ大陸へと応用を広げていきます。 「もともと人類が誕生した時点では互いにそれほどの違いがなかったはずが、なぜ今ではこうも多様な人間社会になったのだろうか?」 この時間的、空間的な人類史をたどる謎説きを「銃・病原菌・鉄」というたった3つのキーワードに絞り込むまでに相当な研究が必要だったと思うのですが、もちろん、これは単純化しすぎるという批判もあることは著者も認めています。しかし、彼は本書で答えを解いたとは言っていない。こうしてシンプルに人類史を眺めてみると、新たに見えてくる問題があり、「この場合はどうか?」と最後の方にいくつかの例を挙げながら問いかけ、次の課題に挑む姿勢が感じられます。 考古学、人類学、生物学、地理学、民族学そしてそれらに付随する学問と、彼の豊富なフィールドワークをもって書かれた本書は、一見難しそうにみえて、一般人にも分かりやすく書かれているところが好感的です。
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高度な文明を持つ人と持たない人の違いは環境の違いである、という主張が丁寧に述べられている。読み進めるには相当なエネルギーが必要だけど、興味深い内容が続くので、なんとか最後まで読み進めることができた。
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下巻も面白かった。 内容は、オーストラリア、中国、アフリカの謎。中国は、環境に恵まれていたから、政治的・文化的統一がなされやすかった。が、そのために多様性が無くなりヨーロッパに後れを取った、と。 ここまで人類史を面白く語れる、筆者の博学と筆力はお見事。
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とても面白いが、読むのには骨が折れた なぜ、世界がこうなったかはわかったような気にさせてくれるが、これから世界はどうなるか、世界をどのように把握すべきか、これからどうすべきかを考える材料にはすぐにはできなかった。 これから物事を考える肥やしになるはずと思うことにしよう。でも、...
とても面白いが、読むのには骨が折れた なぜ、世界がこうなったかはわかったような気にさせてくれるが、これから世界はどうなるか、世界をどのように把握すべきか、これからどうすべきかを考える材料にはすぐにはできなかった。 これから物事を考える肥やしになるはずと思うことにしよう。でも、多分もう読み返さないとも思う。
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2016_028【読了メモ】(160430 8:40) 著 ジャレド・ダイアモンド、訳 倉骨彰『銃・病原菌・鉄』下巻/草思社文庫/2012 Feb 10th/"GUNS, GREAMS, AND STEEL -The Fates of Human Societies-&...
2016_028【読了メモ】(160430 8:40) 著 ジャレド・ダイアモンド、訳 倉骨彰『銃・病原菌・鉄』下巻/草思社文庫/2012 Feb 10th/"GUNS, GREAMS, AND STEEL -The Fates of Human Societies-" by Jared Diamond
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「アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されなかったのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。」と裏表紙に書いてありまして、これが本書のテーマであります。その答えは、栽培化・家畜化しやすい動植物の存在、その伝播の容易さ、家畜からの病原菌の取得と伝播、これらの基礎となる気候、...
「アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されなかったのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。」と裏表紙に書いてありまして、これが本書のテーマであります。その答えは、栽培化・家畜化しやすい動植物の存在、その伝播の容易さ、家畜からの病原菌の取得と伝播、これらの基礎となる気候、大陸の大きさ・総人口の違いで、ヨーロッパ人が人間として優秀だからという理由ではない、というものです。もっとも、答えが重要なのではなく、その過程こそが本書を読む理由となりうるものです。 その過程を明らかにするために、著者は莫大なエネルギーをかけて、生物学や歴史学、人類学、言語学等様々な知識・思考をもって書ききっています。本書を読めば、知的好奇心をくすぐられる、というかぶん殴られるような経験をされるのではないかと思います。上述の学問に興味のある方や知的興奮を求める方は、是非読んでみてください。
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すべては、「たまたま」であった、と。 なぜ有色人種は白人に支配されたのか。なぜアジアやアフリカは植民地化されたのか。なぜ産業革命はイギリス以外の地域で起こらなかったのか。農耕・牧畜・流通・気候など、文明の発生・経済発展に必要なさまざまな要因が「たまたま」そこにそろっていたからで、...
すべては、「たまたま」であった、と。 なぜ有色人種は白人に支配されたのか。なぜアジアやアフリカは植民地化されたのか。なぜ産業革命はイギリス以外の地域で起こらなかったのか。農耕・牧畜・流通・気候など、文明の発生・経済発展に必要なさまざまな要因が「たまたま」そこにそろっていたからで、人種的な優位性があったからではない。なるほど。白人がいかに優れた人種で、黒人や黄色人種はその進化の過程と本気でとなえていた学者って一体。
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「人類はなぜ今のような形で発展したのか」という壮大な問に対して本書は一つの仮設を提示したといえよう。育成可能な動植物が農耕文化を発展させて人口密集をもたらし、文字や発明、階層など文明を産み、南北ではなく東西に拡がり、人種ではなく環境の相違が結果生存確率の優劣に繋がり、病原菌と高度...
「人類はなぜ今のような形で発展したのか」という壮大な問に対して本書は一つの仮設を提示したといえよう。育成可能な動植物が農耕文化を発展させて人口密集をもたらし、文字や発明、階層など文明を産み、南北ではなく東西に拡がり、人種ではなく環境の相違が結果生存確率の優劣に繋がり、病原菌と高度な武力を以て侵略し征服や殲滅を行った。 遺伝子的優位論に頼らない、地政学的な史実から検証してロジックを導き繋ぎあわせた壮大な人類史は見事といえよう。下巻は人類の拡がりが主な話題であり、上巻に比べてダイナミズムに欠けるものの、現代の多極化した文明がどう生まれどう滅びどう統合されどう存続しているのかがわかり興味深い。 本書のような史実と仮説を組み合わせた人類史は知的好奇心を擽られて面白い。
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下巻では、文字の発生過程、技術の伝播、社会の成り立ちに言及した後に、様々な具体例を挙げて、今日の世界情勢の偏重は地理的要因によるものだとする筆者の説を補強している。その地理的要因とは、 1,栽培化及び家畜化可能な動植物の分布 2、大陸の伸びる方向や環境上の障壁の有無に起因する伝播...
下巻では、文字の発生過程、技術の伝播、社会の成り立ちに言及した後に、様々な具体例を挙げて、今日の世界情勢の偏重は地理的要因によるものだとする筆者の説を補強している。その地理的要因とは、 1,栽培化及び家畜化可能な動植物の分布 2、大陸の伸びる方向や環境上の障壁の有無に起因する伝播や拡散の速度 3、異なる大陸間の伝播速度 4、大陸の大きさや総人口 の4つである。 上巻で疑問に思っていたことなのだが、「ユーラシア大陸が地理的に人類の発展に有利だった」としているが、であればヨーロッパより古代に進んでいた肥沃三日月地帯や中国のほうが現在の世界権勢を握っていたのでは?という問もエピローグで解消されていた。 肥沃三日月地帯は現状を見ればわかる通り、自然破壊によって食料生産に不向きな土地へと変貌してしまい、権力の中枢がアレキサンダー大王の征服により西方向に移ってしまったのだ。肥沃三日月地帯はヨーロッパより降水量が少なく、自然環境が再生しにくい土地だったので、このような結果に陥ったのだそうだ。 中国に関しては、土地間の地理的結びつきが強過ぎたために、歴史を通じてほとんどひとつの国が中国を支配していた。そのため、近隣国と技術の切磋琢磨がなされず、多くの国が存在したヨーロッパの後塵を拝することとなったのだ。 上下巻通じて、歴史学という文系に思われがちな学問であるにもかかわらず、論拠がしっかりとしており、実は歴史学という学問は非常に科学的なものなのだと認識させられた。
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