リリエンタールの末裔 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
2012 4/18読了。有隣堂で購入。 だいぶ前に買ったものの、ハヤカワ文庫のサイズ変更に伴い革製ブックカバーがかけられず、風呂で読めないためにずっと放置していた本。 そろそろ読まにゃ、と思い読了。面白かったのでさっさと読めば良かった。 表題作を含む4つの短編・中編を収録した中短編集。 どの話も技術と人の関わりについて扱っていて、でもそのトーンは話によって振れる。 ・「リリエンタールの末裔」 『華竜の宮』や『魚舟・獣舟』の世界の話。高地に住み、背中に鳥の脚のような腕を持つ民族出身の主人公が、空を飛ぶ夢を叶えるために差別や貧困と戦いつつ、特注のグライダーを手に入れ、実際に飛ぶまで。 タイトルから考えるような不吉な方向にはいかず、多くの含みはあるものの凄い爽やかな感じで終わる。 ・「マグネフィオ」 一転して近未来の日本が舞台。社員旅行中の事故で人の顔や図形識別能力を失った主人公と、同じく周囲とのコミュニケーション能力を失った同僚、そして同僚の妻で主人公の片想いの相手の3人を主役に据える。 同僚の内面を磁性体アートで見られるようにすることでなんとか彼の内面を感じようとする妻。さらに人工神経の埋め込み主述によって意識を取り戻した彼と、同じく識別能力を取り戻した主人公を見て、妻はある実験を思いつく。 ・「ナイト・ブルーの記録」 無人深海探査船の操縦士が、神経接続して操っているうちに機械を身体の一部のように認識する能力を獲得し・・・という話を、その元同僚の回顧録として語る。 ・「幻のクロノメーター」 18世紀ロンドン。航海中の経度測定のために、できるかぎり狂いの少ない時計(クロノメーター)の開発に取り組むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議な事件について、住み込みで家政婦をしていた主人公(エリー)の視点から描く。 今の世界とは少し違う顛末をたどる世界のお話であり、同時に正確な時計を作ることにすべてを賭けた人物の凄みを描いた話。 最後の「幻のクロノメーター」で語られる人と技術について(技術がもたらす感動を味わってしまったら人はそれから離れられないだろう、的な)が、全編に通じる話でもあるかな、と思った。 だからこそこの話が最後に収められていることに意義がある、とか。 あらためて大変おもしろかったので、文庫落ちを待たずに『華竜の宮』買っちゃおうかなあ・・・
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「空」買い。 飛ぶことを夢見る少年。 心の動きを見ようとする人たち。 拡張された感覚の先を見渡す男。 刻まれる歴史の水平線を見据える職人。 彼らを歯車として動く物語の、 リアルとの誤差はいかほどか——。 * とても読みやすいSFだった。 表題作は著者の別作品のスピンオフ...
「空」買い。 飛ぶことを夢見る少年。 心の動きを見ようとする人たち。 拡張された感覚の先を見渡す男。 刻まれる歴史の水平線を見据える職人。 彼らを歯車として動く物語の、 リアルとの誤差はいかほどか——。 * とても読みやすいSFだった。 表題作は著者の別作品のスピンオフなのだが そんなことは一切関係なく楽しむことが出来たし、 続く3作の中・短編も、おのおの独立した雰囲気を持つ物語で 様々な世界観が堪能できた。 自分はやはり「リリエンタールの末裔」が好きかなー 空ってとても魅力的
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『華竜の宮』と同じ世界を扱った短編集。 小躍りして購入したが、読んで少しがっかり。 文明や技術や、種としての人の進化という諸々の設定は おもしろすぎる。 でもSF小説としての世界観の紹介に終始して、 ストーリーとしては単調なものが多い気がする。 次回作に期待。
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「華竜の宮」と同じ舞台の表題作「リリエンタールの末裔」が、とても良かった。 新しい土地で飛んでみたいという気持ち。 様々な困難に直面しても夢を諦めないチャムの姿を見て、 「魔女の宅急便」を思い出したのは私だけでしょうか…(笑) 「幻のクロノメーター」は18世紀ロンドンを舞台に...
「華竜の宮」と同じ舞台の表題作「リリエンタールの末裔」が、とても良かった。 新しい土地で飛んでみたいという気持ち。 様々な困難に直面しても夢を諦めないチャムの姿を見て、 「魔女の宅急便」を思い出したのは私だけでしょうか…(笑) 「幻のクロノメーター」は18世紀ロンドンを舞台に、 マリン・クロノメーターの開発に一生を捧げる一人の男のお話。 SFを上手く絡めている所が本当に上手いです。 上田さんの作品は、どれももっと読んでいたい、 この世界にもう少し浸っていたいと思わせてくれる吸引力があります!
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収録作品の全てを面白いを感じたわけではありませんでしたけれど、表題作「リリエンタールの末裔」はグライダーで空を飛んでいる自分には本当に胸を打つ作品でした。 現実世界にも飛ぶためには色々クリアしなければいけない事がたくさんあって、それを乗り越えられるかどうかと悩む時もあります。そ...
収録作品の全てを面白いを感じたわけではありませんでしたけれど、表題作「リリエンタールの末裔」はグライダーで空を飛んでいる自分には本当に胸を打つ作品でした。 現実世界にも飛ぶためには色々クリアしなければいけない事がたくさんあって、それを乗り越えられるかどうかと悩む時もあります。それでも主人公チャムが直面する問題はそれよりももっと困難で解決すら不可能に近い物。それでも飛ぶという情熱に生涯を捧げる姿を見たときに、自分も空を見上げていました。 物語の中から勇気を貰えるということもなかなか無いとは思いますけれど、本作はそんな機会に巡り会えた貴重な一冊になりました。
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表題作は、「魚舟・獣舟」の世界と同一の世界で空を飛ぶ若者の話が語られます。小ぶりな短編集ですが、人間と機械の同調による人間側の感覚の変化や宇宙から届いた謎の調査マシーンなどこういったアイデアの種が意外な長編に変身してくれると楽しいなぁ。
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「華竜の宮」の世界に直結する表題作を含める4篇からなる短篇集。 表題作は「華竜の宮」が異世界の話ではなく、地球の将来を描いた作品であったことを改めて感じさせる一編。 続く「マグネフィオ」「ナイト・ブルーの記憶」も直接「華竜の宮」につながる訳ではないが、人間が脳改造を受けて新たなス...
「華竜の宮」の世界に直結する表題作を含める4篇からなる短篇集。 表題作は「華竜の宮」が異世界の話ではなく、地球の将来を描いた作品であったことを改めて感じさせる一編。 続く「マグネフィオ」「ナイト・ブルーの記憶」も直接「華竜の宮」につながる訳ではないが、人間が脳改造を受けて新たなステージへ進んでいく時代を描いた作品。 一転して4作目「幻のクロノメーター」は18世紀イギリスに於いてクロノメーターを開発した職人の話。 4作ともに「技術」と「人間」について深く、上田さんらしく描いた作品。
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好きな作家さんの最新作。 まずは「リリエンタールの末裔」。あの世界が帰ってきた。うれしい。すばらしい。今回の主人公は、背中に鉤腕を持つ高地の新人類。空への憧れがうたわれる。いいなぁ。 次は脳内を見る装置が出てくる「マグネフィオ」なんだが、イマイチ面白くない。続いて既読の「...
好きな作家さんの最新作。 まずは「リリエンタールの末裔」。あの世界が帰ってきた。うれしい。すばらしい。今回の主人公は、背中に鉤腕を持つ高地の新人類。空への憧れがうたわれる。いいなぁ。 次は脳内を見る装置が出てくる「マグネフィオ」なんだが、イマイチ面白くない。続いて既読の「ナイト・ブルーの記録」。義手が自分の手に思えてくるっていう表現では荒いかな? ラストの「幻のクロノメーター」は面白そうな設定であるんだが、クロノメーターにこだわりすぎて面白さが少ない補整型調査機械という発想が面白いだけに、ほかの作品も見たいと思う。 すばらしい「華竜の宮」ワールドは最初の一編だけではあるが、大好きな作家さんの最新作が読めて満足。
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全4話の短編集。 どの話も静かで美しく、それでいて力強く。 こんな技術が、こんな世界があったらいいかも、と思わせてくれるのですが、 どこかゾクッとするところもあってそれがまたイイんです! SFですけれども、説明がわかりやすく読みやすいので、 普段SFを読まない方にもおすすめしたい本です。 「リリエンタールの末裔」 この話の続きが読んでみたいような、 読むのがちょっと怖いような・・・。 世界観が超好みなので、同じ世界を描いているという 「華竜の宮」もぜひ読んでみたい! 「マグネフィオ」 この話で使われる技術がとても興味深い。 でもゾクッとした話NO.1! 登場人物3人の関係がたまらないですね。 「ナイト・ブルーの記憶」 話がどう着地するんだろうと、ドキドキしながら読み進めました。 機械と繋がったことで霧嶋に起こる変化・・・。 それに戸惑いつつ、彼をあたたかく見守る周囲の思いが 心地良くもせつなくって、また良いんだ~。一番好きなお話。 「幻のクロノメーター」 終盤「えー!そうくるの?!」とびっくり。 途中で「?」と思った箇所は、そういうことだったからか!と。 そしてハリソンって・・・そうなんだあ。URLに2度びっくり。 最後の言葉は、今の我々に向けられているような言葉。 なんとも考えさせられます。 (2011年12月23日購入、2012年1月16日読み始め、2012年2月8日読了)
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短編集としては「魚舟・獣舟」よりだいぶ落ちるかなあというのが率直な感想です。 個人的には「マグネフィオ」が一番気に入りましたが、表題作の「リリエンタールの末裔」は、その後の続編を読んでみたいなあと思わせる爽やかな青春小説のような趣がありました。
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