リリエンタールの末裔 の商品レビュー
テクノロジーへの強い憧れと悲哀が詰まった短編集です。 孤独とひきかえに手に入れた、機械によって拡張された感覚がもたらす美しくて驚きに満ちた世界。 『ナイト・ブルーの記憶』が一番好きです。 感じたことのない感覚や見たことのない世界を自分の想像の中で経験することができる・・・SFの楽...
テクノロジーへの強い憧れと悲哀が詰まった短編集です。 孤独とひきかえに手に入れた、機械によって拡張された感覚がもたらす美しくて驚きに満ちた世界。 『ナイト・ブルーの記憶』が一番好きです。 感じたことのない感覚や見たことのない世界を自分の想像の中で経験することができる・・・SFの楽しさを再確認しました。
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成長物語、ラブストーリー、歴史物、とSFが上田さんによって融合させられるとこんな世界になるんですね。社会問題や現代の技術の発展に警鐘を鳴らしながらも、ファンタジックで美しさも感じました。短編ですが十分味わい深く期待を裏切らない出来でした「リリエンタールの末裔」:“華竜の宮”の設定...
成長物語、ラブストーリー、歴史物、とSFが上田さんによって融合させられるとこんな世界になるんですね。社会問題や現代の技術の発展に警鐘を鳴らしながらも、ファンタジックで美しさも感じました。短編ですが十分味わい深く期待を裏切らない出来でした「リリエンタールの末裔」:“華竜の宮”の設定の中、空を飛ぶ事を夢見る少年の話。「マグネフィオ」:日本で、ある装置によって人の心を体現できる話。「ナイト・ブルーの記録」:海洋無人探査機の話。「幻のクロノメーター」:18世紀ロンドンの時計職人の話。
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リリエンタールの末裔ってタイトルがかっこいい。夢を叶えるために、理不尽な差別を受けながらも、自分の生活を強い意志でやり通して行く姿は勇気をくれる。けど、この差別や暴力のシーンこそが本を飛び出て最もリアリティがあって苦しい。考えさせられる。短編で終わってしまうのがもったいないな。こ...
リリエンタールの末裔ってタイトルがかっこいい。夢を叶えるために、理不尽な差別を受けながらも、自分の生活を強い意志でやり通して行く姿は勇気をくれる。けど、この差別や暴力のシーンこそが本を飛び出て最もリアリティがあって苦しい。考えさせられる。短編で終わってしまうのがもったいないな。この先チャムはどうなるの?知りたい。他の短編も突飛な設定ながら、人間の心の深いところをくすぐる内容。華竜の宮のハラハラドキドキ感に比べると、ちょっと物足りなかった。
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テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。 民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベル...
テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。 民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベルの精度でときを刻む時計を世に送り出す職人の生涯。 繊細で美しい機械を媒介に、感情や思い、願いを増幅させる人間たち。その具現化がここで追い求められたテーマであり、その中心を担うのが人間の叡智たる科学でありマシンであろう、そんなふうに読み進めていた。 すべてを読み終えて振り返ると、それら、物語のど真ん中に据えられたはずのマシンたちは実は一様に脇役であることに気づく。実際にマシンで実現したいものは、対人間であればいともたやすく日々のなかに埋没される感覚だったり、人間が創り出した虚栄心や競争だったり。マシンで補強してまで希求する人間の欠乏感が、すべての根っこなのかもしれないと。 喪うから、求める。 喪うことができるのはそもそも存在していたからであるが、関係や感情、思いを元に戻し得るかの問いは物理と違って常に質量保存の法則が及ぶべくもない。しいていえば可塑性・可逆性の問題であるはずなのだ。だがここにでてくる登場人物たちはみな一様に、とにかく足りないパーツを埋めればなんとかなる、と、単純な足し算を律儀に繰り返す。あるものはひたすらに時計を作り、あるものは死にゆくものを触り、という具合に。 科学をベースにしながらも上田作品が繊細でしなやかなのはおそらくは、そのせいであろう。優美に詳細に生み出された科学の粋を尽くしたマシンたちは、あえて人への随意性を要件とされずに、人に柔らかにおもねる。 さいごの短編は、ことさらに丁寧に読んでいただきたい。実際の人知と科学に、人とのつながりとファンタジーを詰め込んだ、まさに白眉。 硬質な骨組みにしなやかな肉をまとった、優しいマシンたち。 そうか科学はこんなにも、甘やかでいとおしい、あたしたちの隣人、だったんだ。
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久しぶりにSFを読みました。かつ、上田さんの作品は初めてです。 裏表紙の解説に載っているように、人間と科学技術の関係性、在り方について書かれた短編集で、考えさせられました。どの作品も論理的に組み立てられていて読みやすかったです。登場人物も、技術やモノづくりに熱心に関わっており、...
久しぶりにSFを読みました。かつ、上田さんの作品は初めてです。 裏表紙の解説に載っているように、人間と科学技術の関係性、在り方について書かれた短編集で、考えさせられました。どの作品も論理的に組み立てられていて読みやすかったです。登場人物も、技術やモノづくりに熱心に関わっており、興味深く面白い作品集でした。 次は表題作「リリエンタールの末裔」の舞台となった長編『華竜の宮』を読んでみたいと思います。
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上田早夕里さんのSF作品はこれが始めて。 全てがものづくりに通じている。 夢がありそれでいてどこか切ない、そんな話たち。異世界のようで私たちの世界にも通じている。逆に現世のようでどこかちがう。不思議な感覚になる。
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収録の短編4本、どれも面白かった。 冒頭から3篇はキーワード、とは違うけれど、花のモチーフが印象的なところで出てきたように思った。睡蓮の形の水上都市、心の動きを視覚化させる磁力の花、脳の中に開く記憶という名の一輪の花。どれも儚く、それ故に美しい。 最後の「幻のクロノメーター」だけ...
収録の短編4本、どれも面白かった。 冒頭から3篇はキーワード、とは違うけれど、花のモチーフが印象的なところで出てきたように思った。睡蓮の形の水上都市、心の動きを視覚化させる磁力の花、脳の中に開く記憶という名の一輪の花。どれも儚く、それ故に美しい。 最後の「幻のクロノメーター」だけ少し毛色が違うように感じたのは、これだけが書き下ろしの新作だったからなのか。 前に『華竜の宮』を読んだ時にも思ったけれど、作者の“人という生き物”に対する視線が愛情があるところがとても好きだと思う。
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人が技術にたくすものとは、矜持か愛か飛躍か信念か。繊細な人物造形と骨太な技術の描写とが調和して、爽やかかつ歯ごたえのあるSF4編と感じた。リリエンタールがとくにお気に入り。矜持を曲げず空を目指した少年とそれを見守る大人たちの姿に電車の中で泣きそうになった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この著者の本を読むのは、このリリエンタールの末裔が初でしたが、読み終わってみるとかなり良作だったと感じます。本の中は、短編で別々のストーリーで構成されていますが、その一つ一つがストーリーの中に吸い込まれていくような魅力があったので、一読で最後まで読んでしまいました。 いくつかの話で構成されている本書の中でも、タイトルにあるリリエンタールのように空を飛びたいと夢を持ち実現させようとする少年の話に、なつかしさと元気をもらえたと感じます。 また、元気がもらいたい時に読んでみようと思います。
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―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。 長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか 18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など 人間と技術の関係を問い...
―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。 長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか 18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など 人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。 長編SF「華龍の宮」を書いた上田 早夕里の短編集 表題作の爽やかな雰囲気好きやなー読んでて澄みきった空気吸ってるような感じやった。 人の心を「見る」装置にまつわる「マグネフィオ」は一転切ない雰囲気やったな。 白乙一が好きな人にはいい感じやと思う。話の構成とかアイデアが似てる。 人と機械が深くつながる未来を描いた「ナイト・ブルーの記録」は描写が詩的で非常に鮮やかやった。 伝記のようなSFのような「幻のクロノメーター」もなかなか素敵。 実在の人物を取り入れつつ、仕掛けもうまく機能してる 世界全体が降ってくるんです。私の上に。
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