夢違 の商品レビュー
「らせん」みたいで,これでは賞は獲れないな~野田浩明は夢判断だ。G県の小学校でクラス全員が白昼夢に悩まされて教室から校庭へ出て倒れ,その後に悪夢を見るようになったという事件が起こり,夢札を分析することになったが,どれもこれも似た内容で,一塁で惜しくもアウトになる野球やサッカーの情...
「らせん」みたいで,これでは賞は獲れないな~野田浩明は夢判断だ。G県の小学校でクラス全員が白昼夢に悩まされて教室から校庭へ出て倒れ,その後に悪夢を見るようになったという事件が起こり,夢札を分析することになったが,どれもこれも似た内容で,一塁で惜しくもアウトになる野球やサッカーの情景の後に,何かが教室に入り込むのに怯えるというものだった。一人の女子だけが三本脚のカラスの着ぐるみの胸元に女性の顔が覗く鮮明な夢を残していたが,彼女は山全体が桜色に染まる風景を頭に焼き付けており,女性の顔は浩明と懇意にしていた古藤結衣子としか思えない。結衣子は予知夢を見ることが知られており,不安に駆られた彼女は婚約者の弟である浩明を呼んで眠るのだが,最後の予知夢は炎に包まれる大惨事であり,北関東で行われる上司の葬式に出掛けようとした高速道路のSAで竜巻による大惨事に彼女自身も巻き込まれたのだ。結衣子の消息は不明,死亡したものと判断されたが,どこかに生存していると思っている人間は少なくない。そんな中,奈良の小学校で児童と教師80名が神隠しに遭うという事件が発生する。結衣子の遠縁のフリーライターは結衣子も神隠しに遭い,それから予知夢を見るようになったという。結衣子の古い夢札を見ていると,昔から禍事を夢見ているのが分かる。奈良に濃い霧が出た夜信号待ちをしていた車からドライバーが消え車が炎上した。結衣子の目撃情報がある天理へ向かうレンタカーで霧の中を通ると霧の中に失踪した少年の姿が見えた。警察庁から派遣されている岩清水が遂に打ち明ける話は,結衣子の希望で体内にチップを埋め込んでモニターを続けていたが,あの事故の時にチップ自体が消え去ったが,最近チェックすると弱い信号を送り続けているのだ。夢判断を職にしている人間は夢と現実の境をなくす夢札酔いをし,昔から馴染んだ結衣子の幽霊を見ていると感じているが,結衣子は事故の衝撃で未来へトリップしてしまったのだろう。3月12日吉野の蔵王堂に行くと,行方不明の小学生が現れ,あの人の頭の中にいたのだという。GPSを手掛かりに車を走らせると木蓮寺という廃寺に結衣子はいた。しかし,起きているのは数日に一度となり,今は夢の世界が殆どとなっている。この世が結衣子にとっては辛い場所であるからを浩明は分かっていた。結衣子は自分の見る恐ろしい夢を変える方法を探していたのだ~ 読み始めてからも主人公の名前も定着せず,話題の中心となる女性を巡る不可解な事件の内容も分からずという按配で,あれ?読み飛ばしていたのだろうか?という不安を感じさせる。名字は後で,事件の内容も中段ではっきりするのだが,読者に不安を与えるという意図があるならば大成功だ。SFとオカルトっていうのは馴染めないなぁ・・と思っていたが,読んでいる時期の変な夢を憶えていて,あれあれ影響を受けているぞっと自覚する。この本のタイトルは「ゆめたがえ」かと思い続けていた
Posted by
夢が、可視化された世界。 予知夢をみる女性は、本当にしんだのか? 相変わらず面白すぎてやめられない。(オチはいつも通り(笑)) そういえば「獏」は海外ではなんと呼ばれるんだろう。
Posted by
著者の「光の帝国」や宮部みゆき「燔祭」が好きな方には楽しめる一冊ではないでしょうか。「夢」という現象のとらえ方に超能力プラスアルファで量子論的なところもさりげなく含まれているような気もします。
Posted by
まさに恩田ワールド。 夢か現か幻か…「何か」の気配にぞくぞくしながら読みました。 …んが、最後がなんだか肩 透かし。 恩田さんにはこの手を何度も喰らってるんだが、ラストまでの吸引力が好きで、読んじゃうんだよなぁ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
久々に出た恩田陸の新作。ジャンルとしてはSFとサスペンスが融合した作品。しかし、ネタバレすると淡い恋の物語という感じの話。舞台はH市と奈良県が主体となるのだが、その情景が自然と思い浮かばせる所が恩田先生は上手い。また、夢札という今回のキーとなるギミックも読んでいるうちに分かるように上手く表現されている。流石に長年の経験と読書の数がこれらの表現を可能にしている。ただ、今回はどちらかというと文学よりの作品。エンタメ作品を期待していた自分にとってはちょっとがっくしの部分はある。今度は恩田先生の極上のエンタメ作品を期待。
Posted by
夢を可視化、面白いとグイグイ読めたんだけど尻すぼみな感じ。 たくさんの子供たちが泣いていた理由がいまいち分からないし オカルトな感じなのかと思いきやラスト恋愛に持っていったのが残念。
Posted by
+++ 夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。予知夢を見る女、結衣子。俺は幽霊を視ているのだろうか?そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った...
+++ 夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。予知夢を見る女、結衣子。俺は幽霊を視ているのだろうか?そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符合を見出す。悪夢を変えることはできるのか。夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは―。人は何処まで“視る”ことができるのか?物語の地平を変える、恩田陸の新境地。 +++ 正夢、悪夢、予知夢、などなど、夢にもさまざまあり、いい夢を見た日はいいことがあるような気がするし、悪夢にうなされて目覚めた朝は不吉な思いに囚われることもある。とらえどころがないからこその夢、という気もするが、本作の世界では夢は可視化でき、医療現場で利用されているのである。そんな世界で起こった子どもたちの集団パニックや神隠し。予知夢を見る女・結衣子が見ていた夢やその死と関係があるのか、いまになってあちこちで目撃情報があるのは彼女になにか伝えたいことがあるのか。夢のようになかなか全貌を現さない真相に興味をそそられ、結衣子や子どもたちの夢と自分の夢が交錯しているような浩章の身に寄り添いながら読み進めるうちに、自分も夢と現の狭間でゆらゆらしているような心地にさせられる。曖昧なものを鮮明にすることについて考えずにはいられない一冊である。
Posted by
不穏な雰囲気よりも、夢をデータ化して保存し、いつでもそれを再現することができる機会を発明した、という発想にとても惹かれました。作者もいろんな夢を見ているのかな。
Posted by
恩田さんらしい、ミステリー・ホラー・ファンタジーの要素が詰まった作品。ラストは「ん?!」というかんじでどちら側の話なのか掴みきれませんでしたが、流れは楽しめた。装丁はホラー寄りなので枕元に置いて眠ることはできなかった。怖がりなので。
Posted by
そういえば直木賞候補作にもなった恩田陸の夢違。幻想系小説で恩田ファンタジーの定番とも言える作品だから読み続けてきたファンには物足りないが、あいかわらずリーダビリティの高い作品。まだまだいけるね、この人。
Posted by