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これはペンです の商品レビュー

3.3

92件のお客様レビュー

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  3. 3つ

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2024/10/18

徹底して円城は理系の人で、その人が文章を書くとこうなるのか……。 思考の羅列のような、延々と続く思考の垂れ流しのような……。

Posted byブクログ

2022/07/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本を読む行為というのは、本当にただその文章を読んで読み終わることだけではない、と強く思う。 この本は長く読み進まなくて、面白いけど途切れ途切れにしか読めなかった。 さて、昨日(2022年5月26日)、私は「届かない手紙を書くこと」などをテーマにしたトークイベントと哲学カフェに参加した。 そこで語られたのは、書いても必ず言い足りないし、言いすぎること、誰かに宛てて手紙を書くと書きやすいが、その誰かは自分でもいいこと、書くことで形が見えて理解できてくること、書くことで後に残すことが出来ること、なんてことを話し合っていた。 さて、今日、私は、終盤に差しかかったこの本を読み始めた。 あれ…この話はもしかして、昨日の「書くこと」の話の別バージョン?書いても書いても辿り着けない、記述しきれない人間、という存在の話なの? 正しいかどうかは分からないし、そもそも小説に正解はないと思うのだけど、自分の中でそんな風にすごく腑に落ちてしまった。 昨日の今日で読まないと多分こんなふうには思っていない。今日というタイミングがなせる技というか。何かに導かれるように読むことがままあって、なぜ今日読んでみようと思ったのか、不思議でならない。 二編目 ・良い夜を持っている Have a good night これは、美しい風景を持つ思考実験である。 全てを記憶してしまう能力を持つゆえに、自分が無限に重なり何が自分か分からなくなっていく父。 では、自分を理解するためには、自分ではない外側を作るしかない、と自分に理解できない言語を自分の外側に築き続ける行為。 "夢の外に出るには、思考を外に出さねばならない。自閉した表の中では全てが広がり続けるだけだ。" "あらゆる思考が風景として進行してしまうならば、風景についての思考はその外に置くより他ない"と。 そうしてできた言葉の壁の作り方を再現するように、あるいはほどくように、その息子は言葉の自動生成を試みる。 と、ここまできて、これは先の物語の前段か、と分かる。そこから急に、先の物語もこの物語も焦点を結び始める。 言葉は、書けば書くほど真実をすり抜ける。 記憶は、重なれば重なるほど現実から離れていく。 ということか、と思うけれど、どうしても理詰めでは最終的に理解出来なくてイメージだけが次々と浮かび、なんとなくわかった気になってしまう。 自分がわからない父も 父がわからない息子(叔父)もどこか切なくて やりきれなくて、でも語られる風景や想いは美しい。 これは下手に頭で理解するものでもなさそうに思えて、ただ繰り返し繰り返し、言葉を読んでいた。随分長いこと。 確かにそこにあったのだ。父も、叔父も。 それが、赤いビー玉となって、姪の元からこぼれ落ちるのだ。

Posted byブクログ

2019/11/21

2篇とも、自然科学の知識に立脚した思考実験のような形をしつつ、登場人物の情感がうまく描き出されてる。円城さんの作品はどれも始めは「なんだこれ?笑」という感じなのに、あるところから急に面白く感じてしまう。

Posted byブクログ

2018/12/17

2本の中編が収められた一冊。 一本めは書くことに執着する叔父とのやり取りを姪が書く話。 二本めはその叔父の一人語り。 結末で示されるある形がそのまま本書の登場人物にもあてはまる。 衒学のような煌めきが心地よく、なんだかタルホを思いだす。

Posted byブクログ

2018/10/08

142: '12.8.27 購入。感想は未記入ですが、文字と言葉と思考、書き記すことについて書かれた、難解だけど読んでよかったと思える物語でした。

Posted byブクログ

2018/07/26

私向けではなかった。ので星3だが、だからと言って、優れていないというわけではない。誰かにとってはどストライクに響くタイプの作品だな、と感じた。

Posted byブクログ

2018/02/13

 円城塔らしいというか、シンプルな着想から膨らませていったらしい中編2篇を収録している。この作家は短編の印象が強く、前述のような創作手法は短編では有効だが、中編だとどうだろうと危惧していたけれど、これはこれでよくできている。  表題作『これはペンです』では、文字を書くという行為自...

 円城塔らしいというか、シンプルな着想から膨らませていったらしい中編2篇を収録している。この作家は短編の印象が強く、前述のような創作手法は短編では有効だが、中編だとどうだろうと危惧していたけれど、これはこれでよくできている。  表題作『これはペンです』では、文字を書くという行為自体に記述内容が影響を受けるという着想を膨らましていった物語。そのアイデアを膨らませる際に、円城節とも呼びたい奇妙な情感が混ぜ込まれてくる。基本的に理念先行型の登場人物が多いのだけれど、理論だった行動の隙間にうまく感情がチラリと見えるようになっている。例えば、DNAで書かれた叔父からの手紙をシーケンサで解読したら炭疽菌の断片とテロの犯人の予想がコーディングされていて、姪が「ひどい目にあった」と手紙で叔父に抗議する文面。ここは絶対にニヤニヤしながら書いているだろう。また、レシピのように繰り返し書かれる文面があることに叔父が今更気がついて料理にもハマるというエピソードも可愛らしい。理系人間が垣間見せるお茶目。  題材や設定は科学やプログラミングなどから取られることが多く、私にとっては親しみやすい。確立済みの概念につけられた名称は、それを理解している人にとっては、深い意味を瞬時に伝達する合言葉になるからだ。キーワードひとつで、円城氏が表現したかったアイデアや状況が、スッと入ってくるので助かる。  後半の中編『良い夜を待っている』は、完全記憶を整理するのに常人とは異なる記憶法を用いていた父親の手記を息子が読みながら回想する話。「これはペンです」の叔父がこの時の息子にあたるのだろうと匂わせる記述があるが(タイプライターのくだりなど)確証はない。奇妙な記憶を持つがゆえに独特の形で表現されているけれど、これは紛れもなく家族、特に妻への愛情の物語だ。この人は本当に、SFのアイデアを使って感情を書くのが上手い。

Posted byブクログ

2015/12/29

今、ここにいる私が、誰かが読んでいる本の中の登場人物ではないなんて、どうして断言できるだろう? 私は本当に「紙の上に書かれた人間」ではなく、「実在する人間」だろうか? 物心ついた頃から、そんな風に思いふけることがありました。 青い空の向こうには、私が本を読んでいる時に紙面を覗...

今、ここにいる私が、誰かが読んでいる本の中の登場人物ではないなんて、どうして断言できるだろう? 私は本当に「紙の上に書かれた人間」ではなく、「実在する人間」だろうか? 物心ついた頃から、そんな風に思いふけることがありました。 青い空の向こうには、私が本を読んでいる時に紙面を覗き込んでるように、「誰か」が私を見下ろしているんじゃないか。 その「誰か」はもしかしたら、神様と呼ばれる「作家」なんじゃないか。 うーん、昔の私、かなり哲学してますね〜(笑)。気づいたらそんなことを考えることもなくなりました。ちょっと寂しいぞ(笑)。 “叔父は文字だ。文字通り。” そんな書き出しで始まる本作を手に取ったのも、何となく上記のような私がかつて持っていた世界観に近いストーリーなのかしら、という期待があったからです。 さーて、SF苦手だけど本作はどうかな〜とワクワクしながら読み始めたら。 なんか…難しい…??汗 難解な単語やフレーズがあるわけではないんですが、意味を飲み込めなくて前の文章に繰り返し戻ってしまうこと数回でした。 この感覚…伊藤計劃リターンズではないか?!またしても途中で断念するパティーンか?!と危惧しましたが、何とか読了できました。良かった良かった。 文章以外でも特筆すべきは人物の描写でしょうか。 人間性を排し、徹底的に記号化した登場人物をシステマチックに動かしてる感じ、とでも言えばいいのかな。 とにかく血の通った「人間」が描かれていないように感じました。 その表現方法を、「面白い」、「つまらない」、「相性の問題」と切って捨てるのは何だか違う気もする。 すごく気になるけど、まだ私には理解できないんでしょう。もしかしたら本当に単純に好みの問題かもしれない。 とにかく一冊で判断はできないので、読書体力のある時にもう一冊読んでみます。 伊藤計劃も、もう一回チャレンジしてみようかしらん。 Amazon引用〜 叔父は文字だ。文字通り。文章自動生成プログラムの開発で莫大な富を得たらしい叔父から、大学生の姪に次々届く不思議な手紙。それは肉筆だけでなく、文字を刻んだ磁石やタイプボール、DNA配列として現れた――。言葉とメッセージの根源に迫る表題作と、脳内の巨大仮想都市に人生を封じこめた父の肖像「良い夜を持っている」。科学と奇想、思想と情感が織りなす魅惑の物語。

Posted byブクログ

2015/09/04

初円城塔作品。 取り急ぎ掲題作の「これはペンです」のみ読了。 文系の私は時折完全おいてきぼりになるような、超絶理系的な本だったと思う。文章が。内容も。発想も。論文書いてたんだろうなー…笑 ファンタジーらしくないけど、ファンタジーでいいのだろうか。森見好きに円城塔もおすすめ、み...

初円城塔作品。 取り急ぎ掲題作の「これはペンです」のみ読了。 文系の私は時折完全おいてきぼりになるような、超絶理系的な本だったと思う。文章が。内容も。発想も。論文書いてたんだろうなー…笑 ファンタジーらしくないけど、ファンタジーでいいのだろうか。森見好きに円城塔もおすすめ、みたいなのをどこかで見て手に取ったんだけど、前々世界観別物じゃねーか!と突っ込まずにはいられない。間違いなく、好みの分かれる作家さんだと思う。 最初の手紙読んで、うわー無理かも…とたじろいでしまいましたが全然無理じゃなかった。突拍子もない発想。文章が独特で、他の作人のようにすらすらと流していけないのでちょっと苦しかったけど、でも慣れたら大丈夫。 お話が勢いづいてきた!と思った矢先にエピローグみたいに終わってしまって、尻すぼみ感が否めずちょっと残念。。。とはいえ、他の本も読んでみようかなと思える魅力のある作品でした。 この人がどういう視点や考え方を持つ人なのか、すごく気になった。小説よりもエッセーとかでその人となりに触れてみたい作家さん。 もうひとつも読んだら更新します。 -- 文章の自動生成装置を発明し、突飛な素材で自在に文章を生み出す叔父と、その姪の物語「これはペンです」(芥川賞候補作)。存在しない街を克明に幻視し、現実・夢・記憶の世界を行き来する父と、その息子を描く「良い夜を持っている」。書くこと、読むことの根源を照らし出し、言葉と人々を包み込む2つの物語。

Posted byブクログ

2015/07/25

芥川賞作家の円城塔の作品。なんとも表現しずらい不思議な作品でした。難解といえば難解なのだがなんとなくふんわりした柔らかさのある作品。ストーリを追うというよりも文章ひとつひとつを理解するのがなかなか難儀。芥川賞受賞作品も読んでみたいが、どうしようか・・・。

Posted byブクログ