神様2011 の商品レビュー
東日本大震災を受けて、デビュー作「神様」を題材に「ポスト震災」「ポスト福島第一原発」を描く。既存作を題材にして改変を行うことで、日常の在り方が変わってしまったこと、そしてそれは二度と戻ることがないことを描き出した方法論が見事だと思う。実際、10年が経っても東日本大震災、福島第一原...
東日本大震災を受けて、デビュー作「神様」を題材に「ポスト震災」「ポスト福島第一原発」を描く。既存作を題材にして改変を行うことで、日常の在り方が変わってしまったこと、そしてそれは二度と戻ることがないことを描き出した方法論が見事だと思う。実際、10年が経っても東日本大震災、福島第一原発の事故は消し難い傷跡を残しているのだから。
Posted by
残念なことに私の人生、 川上弘美さんの「神様」を 知らずにやってきました。 しかしこれ読んで、 ちょっと凄味を感じています。 自身のデビュー作である「神様」を、 2011年の3月の末に、あらためて書いたという「神様2011」 そこには、「あのこと」として、あの時に起こったこと...
残念なことに私の人生、 川上弘美さんの「神様」を 知らずにやってきました。 しかしこれ読んで、 ちょっと凄味を感じています。 自身のデビュー作である「神様」を、 2011年の3月の末に、あらためて書いたという「神様2011」 そこには、「あのこと」として、あの時に起こったこと。 原発事故以前の幸せな「神様」を原発事故以降の「神様2011」として新たに書いたのですね。 その行動力に驚きました。「神様2011」は、2011年の6月にはすでに、「群像」に発表されている。。 詩人の斉藤倫さんがブックガイドに紹介したものを読んだのが、この作品を手にしたきっかけですが、 紹介文にはこうあります。 _ずれてしまった、いわば、平行世界の、残酷な「神様」がありました。それを読んでしまえば、私たちはあの幸福には、再び戻れない。もう純粋に楽しむことはできない… ずれてしまった現実に、小説をずらし返すことで、異議を唱えていく。ものがたりで、のような激しく、厳しいことができるのだと… 私は物凄い不安に襲われました。 コロナ以前とコロナ後の今、またはこれからの世界は こんな風にまたずれてしまったんじゃないかと。。
Posted by
今は新型コロナウイルそればっかりになっているが放射能の脅威もこの国には変わらずにあって。聞き慣れない単位や物質がたくさん頭の中を回っていたあの当時を思い出す。ウランの神様か。あきれてるかな。自分勝手にいろいろやり過ぎた人間に。穏やかに手の届く範囲で暮らせればそれでいいのに。自然な...
今は新型コロナウイルそればっかりになっているが放射能の脅威もこの国には変わらずにあって。聞き慣れない単位や物質がたくさん頭の中を回っていたあの当時を思い出す。ウランの神様か。あきれてるかな。自分勝手にいろいろやり過ぎた人間に。穏やかに手の届く範囲で暮らせればそれでいいのに。自然な姿では暮らせなくなってしまう日が来るのかもしれない。抱きしめ合うことを躊躇してしまうのか。既にもう毎日マスクが当たり前の世の中になっている。
Posted by
本当によかった あとがきで泣いてしまった もともと神様は読んだことがあったので、神様2011だけ初見。 “意地でも、「もうやになった」と、この生を放りだすことをしたくないのです。だって、生きることは、それ自体が、大いなるよろこびであるはずなのですから。” 川上作品は一見世紀...
本当によかった あとがきで泣いてしまった もともと神様は読んだことがあったので、神様2011だけ初見。 “意地でも、「もうやになった」と、この生を放りだすことをしたくないのです。だって、生きることは、それ自体が、大いなるよろこびであるはずなのですから。” 川上作品は一見世紀末や退廃的な匂いのするSF系の設定が多いけど、根本はどれも生きていくうえでの意志みたいな、意識みたいなものが感じられていたのだけど、このあとがきを読んでそれが確信に変わったし、改めてこういうところが好きなんだよな〜と思えた
Posted by
川上弘美さんの作品を知ったのはまだ数年前ですが、 1993年に書かれた「神様」が…ほんわかして優しくて大好きです。 その後、2011年に「神様2011」が「あのこと」をベースにした神様の物語が書かれています。 あのこととは、2011年東日本大震災による福島原発事故。わたしは、震災...
川上弘美さんの作品を知ったのはまだ数年前ですが、 1993年に書かれた「神様」が…ほんわかして優しくて大好きです。 その後、2011年に「神様2011」が「あのこと」をベースにした神様の物語が書かれています。 あのこととは、2011年東日本大震災による福島原発事故。わたしは、震災のニュースを見、大きな衝撃を受けたが、原発事故のことは、あまり意識の中になかった(というか、わからなかった)。 最後の川上弘美さん自身の「あとがき」は、まるで川上さんが話しておられるような語り調で、背筋が伸びる気がした。非常に訴えを感じた。怒りと受容にも似た。 本の中の前述の「神様」の文は、原文そのまま。 後の方の「神様2011」は、くまとの楽しい一日が、あのことがあって変ってしまった日常に加えて描いてある。例えばくまが防御服を着ているところとか。 日本は大きく変わってしまったけれど、日常は続いてゆく。怒りは最終的に自分自身に向かってくるのだが、(中略)それでもわたしたちは、それぞれの日常を、たんたんと生きてゆくし、意地でも「もうやになった」と、この生を放り出すこともしたくない。だって、生きることは、それ自体が、大いなるよろこびであるはずなのですから。 と締めくくってある、この文章は(よく思うのは、川上さんの書かれるものはラストは生きることの素晴らしさを訴えているように感じる)、原発のみならず、今起きているコロナ禍に向けてのエールにも感じる。
Posted by
世界が変わってしまった。神様に抱きしめられて、いや、神様を抱きしめてか?立ちのぼってくるこの「ニオイ」。川上弘美さんが、世界はここにあるといっている。 そんなふうに、世界を去後していると、高橋源一郎さんが「非常時のことば」で案内してくれていた。スゴイ。納得! https://...
世界が変わってしまった。神様に抱きしめられて、いや、神様を抱きしめてか?立ちのぼってくるこの「ニオイ」。川上弘美さんが、世界はここにあるといっている。 そんなふうに、世界を去後していると、高橋源一郎さんが「非常時のことば」で案内してくれていた。スゴイ。納得! https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002140000/
Posted by
2011年3月11日に東日本大震災が起こり、川上弘美は3月中にこの小説を書き、自ら出版社に持ち込んだ。掲載されたのは「群像」2011年6月号だから、5月初旬発売で原稿の締切はおよそ4月20日あたり。刊行された小説として福島の原発事故をとりあげた最も早いもののひとつだった。本書に...
2011年3月11日に東日本大震災が起こり、川上弘美は3月中にこの小説を書き、自ら出版社に持ち込んだ。掲載されたのは「群像」2011年6月号だから、5月初旬発売で原稿の締切はおよそ4月20日あたり。刊行された小説として福島の原発事故をとりあげた最も早いもののひとつだった。本書にはこの時に発表された「神様 2011」の前に「神様」というタイトルの短編がおさめられている。並置されていると言うのが正しい。ぼくは2012年になったくらいか、当時勤めていた会社の同僚女性に本書を、短いし読みやすいだろうなと考えて、貸した。神戸の出身で阪神淡路大震災を経験していて、東日本大震災のすぐあとに東京へ引っ越してきたひとだった。 「神様」は川上のデビュー作だ。『神様』(中公文庫)のあとがきから引用する。 〜” 表題作『神様』は、生まれて初めて活字になった小説である。 「パスカル短篇文学新人賞」という、パソコン通信上で応募・選考を行う文学賞を受賞し、「GQ」という雑誌に掲載された。 子供が小さくて日々あたふたしていた頃、ふと「書きたい、何か書きたい」と思い、二時間ほどで一気に書き上げた話だった。 書いている最中も、子供らはみちみちと取りついてきて往生したし、言葉だって文章だってなかなかうまく出てこなかった。でも、書きながら「書くことって楽しいことであるよなあ」としみじみ思ったものだ。「めんどくさいけど、楽しいものだよなあ、ほんとにまあ」と思ったのだ。 あのときの「ほんとにまあ」という感じを甦らせたくて、以来ずっと小説を書いているように思う。 もしあのとき『神様』を書かなければ、今ごろは違う場所で違う生活をしいていたかもしれない。不思議なことである。 やはりこれもなにかの「縁(えにし)」なのだろう。と、『神様』に登場する「くま」を真似て、わたしもつぶやいてみようか。 (後略)” 「神様」の書き出しは、 くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである。 「神様 2011」の書き出しもまったく同じだ。川上はデビュー作を改変して発表した。お茶の水女子大学理学部生物学科を出てから田園調布雙葉高校の理科の先生もしていたひとは、東日本大震災の直後から「原子力」に関する勉強をはじめる。本書のあとがきから。 〜” 1993年に、わたしはこの本におさめられた最初の短編「神様」を書きました。 熊の神様、というものの出てくる話です。 日本には古来たくさんの神様がいました。山の神様、海や川の神様、風や雨の神様などの、大きな自然をつかさどる神様たち。田んぼの神様、住む土地の神様、かまどや厠や井戸の神様などの、人の暮らしのまわりにいる神様たち。祟りをなす神様もいますし、動物の神様もいます。鬼もいれば、ナマハゲもダイダラボッチもキジムナーもいる。 万物に神が宿るという信仰を、必ずしもわたしは心の底から信じているわけではないのですが、節電のため暖房を消して過した日々の明け方、窓越しにさす太陽の光があんまり暖かくて、思わず「ああ、これはほんとうに、おてんとうさまだ」と、感じ入ったりするほどには、日本古来の感覚はもっているわけです。 震災以来のさまざまな事々を見聞きするにつけ思ったのは、「わたしは何も知らず、また、知ろうともしないで来てしまったのだな」ということでした。(中略) 2011年の3月末に、わたしはあらためて、「神様 2011」を書きました。原子力利用にともなう危険を警告する、という大上段に構えた姿勢で書いたのでは、まったくありません。それよりむしろ、日常は続いてゆく、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性を持つものだ、という大きな驚きの気持ちをこめて書きました。静かな怒りが、あの原発事故以来、去りません。むろんこの怒りは、最終的には自分自身に向かってくる怒りです。今の日本をつくってきたのは、ほかならぬ自分でもあるのですから。” 本書を貸した当時の会社の同僚だった女性は、すこしして、もう一度この本を貸して欲しいと言った。小ぶりで可愛らしい本なのだ。川上はデビュー作を書き換えて、もう一度原点から歩こうと考えたんじゃないかとぼくは思う。原子力開発にまつわる諸問題、あらゆる面からまだいっこも解決していないことを覚えていますか?
Posted by
「神様」は以前読んだときと同じく、不思議でぽかぽかしたお話で好きでした。 「神様2011」と並べられることで、「あのこと」が起こって変わった日常と、それでもここで生きていくわたしのくまとのひとときが心に迫ってきます。 2011年からは何年も経ちましたが、薄れさせてはならない思いで...
「神様」は以前読んだときと同じく、不思議でぽかぽかしたお話で好きでした。 「神様2011」と並べられることで、「あのこと」が起こって変わった日常と、それでもここで生きていくわたしのくまとのひとときが心に迫ってきます。 2011年からは何年も経ちましたが、薄れさせてはならない思いです。 あとがきも好きです。
Posted by
著者のデビュー作。 くまと私が散歩するファンタジー。 熊の神様が印象的。 微笑ましくて、クスッと笑えるストーリー。 気軽に何度でも読み返したくなる本。 非日常体験よりも、 日常でちょっと楽しかったことを重ねていく方が 安心して幸せな気持ちでいられる。 今回、新たに作品が加...
著者のデビュー作。 くまと私が散歩するファンタジー。 熊の神様が印象的。 微笑ましくて、クスッと笑えるストーリー。 気軽に何度でも読み返したくなる本。 非日常体験よりも、 日常でちょっと楽しかったことを重ねていく方が 安心して幸せな気持ちでいられる。 今回、新たに作品が加えられているのだが、 (タイトル神様のあとに2011が追記されているように) 原発事故後を時間軸に置かれている。 同じ登場人物、同じ場所、同じシチュエーション。 けれども日常そのものが変わってしまった。 著者のあとがきが印象的。 「日常は続いてゆく、 けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう 可能性をもつものだ。」
Posted by
短編。ファンタジー。 ショート・ショートと言ってもいいくらい短い作品。 クマと人間の交流。不思議。 ここにも震災の影響が。
Posted by