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神様2011 の商品レビュー

3.9

115件のお客様レビュー

  1. 5つ

    33

  2. 4つ

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  3. 3つ

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  4. 2つ

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2011/09/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

神様という短編だけ入った本。 前半に以前収録されたままの神様、 後半にあのことがあった後の神様2011。 「神様」、大好きな物語だった。くまと散歩に出るという突飛な設定 なのに平和でほのぼのとしてて、温かく でも生きていくことの大変さや悲しみもあって。 この作品から急激に川上弘美さんが好きになり、以前に 出ていた作品、以後の作品すべて買いそろえている。 絶対にはずれのない作家としてすごく信頼している。 神様2011を読んで、一見平和な日常が切り取られているのに 防護服や、ガイガーカウンター、今日の線量など、リアルな 言葉が少しだけちりばめられていて、悲しかった。 悲しいけど、あのことをなしにすることは出来なくて、 あのことと折り合いながら生きていかなくてはいけない。 日常はずっと続くと思っている人間の甘さを 震災はすべて打ち砕いて流していってしまった。 それがすごくリアルに書かれている。 才能のある人はその人なりの、ない人だってその人なりの 震災のとらえ方、自分が今出来ることを行うという姿勢は 変わらないのだけれど、川上弘美さんは才能のある人として あのことを絶対に人々に忘れさせない手段を選んで実行したのだと思う。 平和な日常があのことという震災によって 360度変わってしまった。ほとんどの人が放射性物質や放射能の ことについて専門用語まで知ってしまった。後戻りはできないし なかったことにもできない。あのことを忘れないで日常を 続けていくしかないのである。 作者の自分への怒りがちりばめられている神様2011、 ぜひみんなに読んでほしい。絶対に震災を忘れないために。

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2011/09/22

「くまにさそわれて散歩に出る」。私の好きな人が、こよなく愛する、この掌編を、川上弘美は震災/原発事故を経た世界を舞台に、書き換えた。散歩に行って、世界に触れて、熊の神様に思いを馳せる。筋書きは一緒なのだが、「今」の世界では、セシウムだの防護服だのが登場する。 後書きで触れられる「...

「くまにさそわれて散歩に出る」。私の好きな人が、こよなく愛する、この掌編を、川上弘美は震災/原発事故を経た世界を舞台に、書き換えた。散歩に行って、世界に触れて、熊の神様に思いを馳せる。筋書きは一緒なのだが、「今」の世界では、セシウムだの防護服だのが登場する。 後書きで触れられる「ウランの神様」を思う記述が秀逸。人間が矩を外して使った結果、世界の片隅でひっそりと存在していた物質が、この世を騒がせている事の、「ウラン」の哀しみ!想像力の広がり。これぞ物語。

Posted byブクログ

2011/09/22

「神様」が「神様2011」として再登場。 「神様」においてのほほんとした光景があったのに 「神様2011」ではのほほんさが鋭く突き刺さる。 防護服を着たひとたちとすれ違う、ゆっくりと走るクルマ。 「あのこと」以来ニッポンはちょっとぎくしゃくしている。 「神様2011」の最後はなん...

「神様」が「神様2011」として再登場。 「神様」においてのほほんとした光景があったのに 「神様2011」ではのほほんさが鋭く突き刺さる。 防護服を着たひとたちとすれ違う、ゆっくりと走るクルマ。 「あのこと」以来ニッポンはちょっとぎくしゃくしている。 「神様2011」の最後はなんだか泣ける。 川上弘美の静かな怒りがあります。

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2011/10/03

川上弘美にしてはテンションが高い。というのが第一印象。後半であ、テンションというものではなくて静かな怒りだ、と気付いた。あとがきにもそれがあらわれていて頷いた。あのできごとは川上弘美の文章をゆさぶるほどのちからがあるくらいのものなんだなあと思いなおしてしみじみふるえた。(ふるえる...

川上弘美にしてはテンションが高い。というのが第一印象。後半であ、テンションというものではなくて静かな怒りだ、と気付いた。あとがきにもそれがあらわれていて頷いた。あのできごとは川上弘美の文章をゆさぶるほどのちからがあるくらいのものなんだなあと思いなおしてしみじみふるえた。(ふるえるところが、ちがう?)

Posted byブクログ

2021/06/04

「あのこと」以降を描く川上弘美の問題作!くまにさそわれて散歩に出る──93年発表のデビュー作を福島原発事故を受け改編。「いま」を生きる意味を問い、「群像」発表時から大きな反響を呼んだ問題作!

Posted byブクログ