猫を抱いて象と泳ぐ の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
少年 リトル・アリョーヒン。チェスプレーヤー。 祖母 祖父 弟 インディラ 象。三十七年間、デパートの屋上で子供たちに愛嬌を振りまきながら一生を終えた。 ミイラ ボックス・ベッドの壁と壁に挟まって出られなくなった少女。 マスター バスの中に住む男。 ポーン マスターが飼っている猫。 アレクサンドル・アリョーヒン 伝記上のプレーヤー。ロシアのグランドマスター。 事務局長 パトロンの令嬢 ミイラ 広い額に尖った顎、黒々とした瞳とカールした睫毛、潤んだ唇、真珠色の肌、耳の脇で二つに結ばれた真っ直ぐな髪。パシフィックホテル専属の手品師の娘。 総婦長 キャリーバッグ老人 老婦人 S氏 国際マスターの称号を持つ。 キング 決して追い詰められてはならない長老。全方向に1マスずつ、思慮深く。 クイーン 縦、横、斜め、どこへでも。最強の自由の象徴。 ビショップ 斜め移動の孤独な賢者。祖先に象を戴く。 ナイト 敵味方をくの字に飛び越えてゆくペガサス。 ルーク 縦横に突進する戦車。 ポーン 決して後退しない、小さな勇者。
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唇が閉じられた状態で生まれた少年が、バスの中に住む"マスター"からチェスを教わり、やがて、からくり人形の中でリトル•アリョーヒンとしてチェスを指すようになる。 マスターの死や、デパートの屋上に展示されていた像のインディラが大きくなり過ぎて降りられなくなった逸...
唇が閉じられた状態で生まれた少年が、バスの中に住む"マスター"からチェスを教わり、やがて、からくり人形の中でリトル•アリョーヒンとしてチェスを指すようになる。 マスターの死や、デパートの屋上に展示されていた像のインディラが大きくなり過ぎて降りられなくなった逸話などから、大きくなることに恐怖を覚え、自分は小さいままでいることを望んだリトル•アリョーヒン。 その人生は謙虚で静かだったが、相手に姿は見せなくても、その棋譜は美しく、相手の記憶に残るものだった。 不思議な設定ながら、心に染みたストーリー。チェスをやってみたくなった。
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◼️ 小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」 予想外の内容だった。さる著名作家によく似ている。こんな人日本にいたのかと。 柔らかな、しかし、ん?象と?となるタイトル。おそらくプールで泳ぐ時なんらか象に関係した夢想があるのかな、穏やかな現代小説か児童小説っぽいものかなというイメージのま...
◼️ 小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」 予想外の内容だった。さる著名作家によく似ている。こんな人日本にいたのかと。 柔らかな、しかし、ん?象と?となるタイトル。おそらくプールで泳ぐ時なんらか象に関係した夢想があるのかな、穏やかな現代小説か児童小説っぽいものかなというイメージのまま入ったら、まったく違った。短編集「アンジェリーナ」は読んだことがあったけどこんな幻想的な長編だとは。 途中からこれはポール・オースターにそっくりだ、という気がしてならなかった。最後まで。 リトル・アリョーヒンとのちに呼ばれる少年は成長して巨大化したためデパートの屋上から降りることができず一生をそこで過ごしたいう象の話、壁に押し込められて抜け出せなくなり、ミイラとして塗り込められてしまった少女の話に強い印象を受け、象とミイラを友人として考えるようになる。 少年はプールでバス運転手の水死体を発見し、バス会社の寮を訪ね、庭のバスに住んでいる寮の巨躯の管理人(マスター)にチェスを習う。マスターはスイーツを作り食べるのが趣味で、バスの入り口から出れなくなるのではと少年は危惧していた。やがてチェスに熱中した少年はチェス版の下に潜り込み、マスターが飼っていた猫のポーンを抱いてチェスを指すスタイルになっていった。運命は容赦なく降りかかり、やがて少年は人形に潜みチェスをするようになるー。 チェスを習熟した少年、喪失、大きな傷、旅立ち・・成り行きに任せる中で少年は自らのありたい道を見つけ、家族と、とりまくり人々の善意に辿り着く。 特殊な設定を組み上げ、大人の作為や避けられない別離をベースに、微妙でまっすぐな少年の心を浮き立たせて描写している。また、チェスの世界を掘り下げて物語の重要な背骨としてときにユーモラスに活用しているさまは小憎らしいほどだ。リトル・アリョーヒンにとっての大事なもの、が言葉を超えて実感できる。 妖しさ、怪しさの海底から自然豊かで辺鄙な土地で織りなされる心のケアへ。異世界にも見える舞台装置の転換も鮮やかだ。少年の決断がより映えて見える。 ちょっと離れて見ると、奇妙にも見える少年の人生と判断。しかしそこに描かれているのは理解されなさ、誰にもある、自分にとっての宝物の体験〜それは多くの場合消えてなくなってしまう〜、初恋と傷、人生のハイライト的な生活と、心で感じる善意という、一般的な経験値に敷衍化されている。 哀しく小さな、しかし確かに価値のある、短い人生。幻想的な仕掛けもGOOD。良い読書でした。
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チェスの詩人とゆうワードだけで楽しそうな本だが、途中から何がなんだかわからなくなり、一応最後まで読んだものの、物語の把握までは断念。もう一度読んだら楽しくなるのかなー、と淡い期待を抱いて、今回は終了。
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チェス指しからくり人形の裏でチェスを指し続けた男のお話 以下、公式のあらすじ --------------------- 「大きくなること、それは悲劇である」。 少年は唇を閉じて生まれた。手術で口を開き、唇に脛の皮膚を移植したせいで、唇に産毛が生える。そのコンプレックスから少年...
チェス指しからくり人形の裏でチェスを指し続けた男のお話 以下、公式のあらすじ --------------------- 「大きくなること、それは悲劇である」。 少年は唇を閉じて生まれた。手術で口を開き、唇に脛の皮膚を移植したせいで、唇に産毛が生える。そのコンプレックスから少年は寡黙で孤独であった。少年が好きだったデパートの屋上の象は、成長したため屋上から降りられぬまま生を終える。廃バスの中で猫を抱いて暮らす肥満の男から少年はチェスを習うが、その男は死ぬまでバスから出られなかった。 成長を恐れた少年は、十一歳の身体のまま成長を止め、チェス台の下に潜み、からくり人形「リトル・アリョーヒン」を操りチェスを指すようになる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作。 --------------------- 実在のチェス世界王者「盤上の詩人」と称されるアレクサンドル・アリョーヒンのような棋譜を残す少年の一生 大きくなることを拒み、毛の生える唇を閉じ、表舞台に出ることもなく、からくり人形の裏でチェスを指し続けた「リトル・アリョーヒン」 最後は、チェス好きが入居する老人専用マンション「エチュード」でその生涯を閉じる この物語は「静謐」という言葉がしっくりくる 小川洋子さんは「人質の朗読会」を読んだときも思ったけど、登場人物の置かれた状況の印象と、描写される雰囲気の乖離がある 限られた居場所の中で生きているように感じられるが、実際はチェスを通じて自由に生きていたようにも思える ミイラが更衣室に消えていくところは、読んだときには不穏な空気を描写から感じるだけだったが 後に明かされる真相に胸が痛む 服の修復をしていたし、ミイラは知ってたって事だよな エチュードで、手紙のチェスのやり取りは素敵だと思う その道の達人とも成れば、指す手によって様々な情報を読み取れるようになるのでしょうねぇ だからこそ、終局後にとったミイラの行動の後を想像すると悲しい リトル・アリョーヒンにとって棋譜は芸術品なのかもしれない 博士の愛した数式は、数学を美術品のように描写しているように感じたし 小川洋子さんはこんな表現がよく似合う 途中で気付いたけど、登場人物の名前が出てこない 他の評者の仕方にしても、特定の国や地域を類推できるような情報がないので、どこの国でも通じるものになっている 時代に関しては近代以降なのはわかる程度 これは、物語の賞味期限が長い作品だなぁと思った あと、どうでもいいけど 祖母の布巾は探偵ナイトスクープを思い浮かべた あの番組、家族が昔から愛用しているものが汚いのでという依頼がたまに来るよな
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小川洋子さんの世界へ。 優しく静謐でありながら、力強さも感じる世界観に、いつも静かに圧倒されている気がします。 「大きくなることは、悲劇である」 そう信じる11歳の身体のまま成長を止めた少年。 少年とマスターがチェスを指す、穏やかで濃密な時間がとても好きでした。 折に触れ、マス...
小川洋子さんの世界へ。 優しく静謐でありながら、力強さも感じる世界観に、いつも静かに圧倒されている気がします。 「大きくなることは、悲劇である」 そう信じる11歳の身体のまま成長を止めた少年。 少年とマスターがチェスを指す、穏やかで濃密な時間がとても好きでした。 折に触れ、マスターの『慌てるな、坊や』の優しい声が耳によみがえって響く。 やがてリトル・アリューヒンとしてからくり人形を操るようになるが、老婆令嬢とのチェスの時間もまた特別で、文字を追いながら、息を潜め見守るような気持ちでした。 読み終えて、密やかで哀しくもありますが、誇らしく幸せにも感じる。 自分でもこの感情をうまく言い表せませんが、言葉にならない静かな感動に満たされる作品でした。 独特の世界観があるので、好みが分かれる作品かもしれません。 チェスがテーマの小説を読むのは、「エヴァーグリーンゲーム 」に続いて本作が2冊目。 前者のイメージが『動』なのに対し、本作は『静』。 どちらも心動かされる素敵な作品でした。 『よく考えるんだ。あきらめず、粘り強く、もう駄目だと思ったところから更に、考えて考え抜く。それが大事だ。』
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9冊目『猫を抱いて象と泳ぐ』(小川洋子 著、2011年7月、文藝春秋) チェスを題材にした長編小説で、実在したチェス指し人形「トルコ人」に着想を得たストーリーが展開される。 静謐でありながら詩情に満ちる美しい文体で綴られた不思議な世界観は唯一無二。チェス盤を彷彿とさせる二項対立構...
9冊目『猫を抱いて象と泳ぐ』(小川洋子 著、2011年7月、文藝春秋) チェスを題材にした長編小説で、実在したチェス指し人形「トルコ人」に着想を得たストーリーが展開される。 静謐でありながら詩情に満ちる美しい文体で綴られた不思議な世界観は唯一無二。チェス盤を彷彿とさせる二項対立構造が作品全体を貫いており、文章には整理が行き届いている。少々綺麗に均されすぎている感はあるものの、著者の筆力の高さには舌を巻いた。 〈八×八の升目の海、ボウフラが水を飲み象が水浴びをする海に、潜ってゆく冒険だ〉
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自分では見ることができない美しい情景がこの一冊に綴じられているのかと、読み終わったとき、本が好きになった理由がわかった。
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文章があんまり合わず、なおかつチェスに関する知識もないので全然スラスラは読めなかった。 ただ、派手ではないけど謙虚でささやかな幸せが、静かにそこに存在しているかのような物語だった。周りから羨まれるような人生じゃなくても、人生ってこれでいいんだと温かく肯定されているような気持ちに...
文章があんまり合わず、なおかつチェスに関する知識もないので全然スラスラは読めなかった。 ただ、派手ではないけど謙虚でささやかな幸せが、静かにそこに存在しているかのような物語だった。周りから羨まれるような人生じゃなくても、人生ってこれでいいんだと温かく肯定されているような気持ちになれた。
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「とにかく散歩いたしましょう」の中で、取材や執筆について書かれていたので。チェスを題材にしたお話で、試合の場面では「3月のライオン」を思い出す。本筋ではないけど人間チェスのシーンが、暗さと残酷さを孕んで、ぞくぞくする美しさ。終わりの儚さがあとを引く。
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