猫を抱いて象と泳ぐ の商品レビュー
「大きくなること、それは悲劇である」と唱えた主人公が、大人が作り出した暗く汚い世界から逃げて、純粋なお話のままで終わったのが良かった。「海底にだけ沈んでいる必要はないのです。」という老婆令嬢の台詞が印象に残った。 題材のチェスの様に、冒頭から出てきた人や物が後から意味を成して現れ...
「大きくなること、それは悲劇である」と唱えた主人公が、大人が作り出した暗く汚い世界から逃げて、純粋なお話のままで終わったのが良かった。「海底にだけ沈んでいる必要はないのです。」という老婆令嬢の台詞が印象に残った。 題材のチェスの様に、冒頭から出てきた人や物が後から意味を成して現れてくるのが緻密で、美しい文章だった。チェスやったことないけど。
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最後の1ページを読み終えた後、彼が生きた世界を想像して余韻に浸らざるを得ないような作品。 全編を通して、何となく悲しくて心細いと感じる。 しかし、私達が満ち足りてないと感じるような状況でも、リトル・アヒョーリンにはチェスという誰にも揺るがせない芯がある。 そして彼の小さな居場...
最後の1ページを読み終えた後、彼が生きた世界を想像して余韻に浸らざるを得ないような作品。 全編を通して、何となく悲しくて心細いと感じる。 しかし、私達が満ち足りてないと感じるような状況でも、リトル・アヒョーリンにはチェスという誰にも揺るがせない芯がある。 そして彼の小さな居場所はいつもチェスと人の温かさで満たされていたと読み終えて気づく。
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スラスラは、読めなかった。 やっと読み終えた感じ。 物静かな物語で、夢にでてきそうな想像力を掻き立てる不思議な内容。 個性的な登場人物(動物)の描写が秀逸で、独特な世界観だった。 こういう作品が純文学というのか?
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天使のようなリトル・アリョーヒンと悪魔のようなオスカル・マツェラート。11歳と3歳。盤下とスカート。チェスとブリキの太鼓。
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類稀なチェスの才能が見出され、人前に出ることなくプレイすることで、そこから醸し出される詩の美しさにひたる。そんな主人公の心情が綴られていく。 祖父母に育てられた少年リトル・アリョーヒン。デパートの屋上で出会った象、仔象のときに屋上に連れられ見せ物として活躍、成長して動物園に送られ...
類稀なチェスの才能が見出され、人前に出ることなくプレイすることで、そこから醸し出される詩の美しさにひたる。そんな主人公の心情が綴られていく。 祖父母に育てられた少年リトル・アリョーヒン。デパートの屋上で出会った象、仔象のときに屋上に連れられ見せ物として活躍、成長して動物園に送られる段階になって、その大きさゆえ、エレベーターに乗せられず屋上で生涯を全うする。アリョーヒンの住む家は、隣家とわずかな隙間で接するように建っているが、そこに少女が迷い込み出られなくなってミイラと化した噂を信じ、大きくなることへの恐怖を覚える。廃車になったバスを見つけ、そこに潜りこみ、住み込んでいた肥った元運転手と出会う。この出会いが少年の人生を決める。ここでチェスを覚え、チェス盤の下に潜り、頭のなかの世界でプレイをする術を身につける。成長して大きくなることに恐れを抱きながら、自分を狭い空間に押し込めることで、小さな体を保つ。このバスの住人であり師匠であった人物はあまりにも肥り過ぎたため、亡くなってからバスを解体しないと取り出せない現場を目の当たりにして、少年はますます大きくなることの恐怖を増す。チェスの腕が買われ、チェス盤の下に隠れて姿を現さない、その奇妙なプレイスタイルとともにチェスの世界に浸っていく。小さな体と特異なスタイルは、その活躍の場が変わりながらも、決して変えることなく、彼を理解する祖父母の愛情、チェスを通して出会った老婆、少年のなかでミイラと同一視される少女との優しさ溢れる交流を通して、満たされていく。ひっそりと生き続けた少年の思いは、チェスで紡ぎ出される詩とともに、クライマックスへと導く。幸せとは何か、生き方とは何か、読後に深く余韻が残される。
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小川洋子さんの作品は初めて読みました。 文章もとても美しく、このままずっとこの本の海の中を漂っていたかったです。 リトル・アリョーヒン、象のインディラ、ミイラ、猫のポーン、4人で漂う小さな海底に、自分もいつしか一緒に漂っていました。マスターや総婦長、老婆令嬢など、どの登場人物も優...
小川洋子さんの作品は初めて読みました。 文章もとても美しく、このままずっとこの本の海の中を漂っていたかったです。 リトル・アリョーヒン、象のインディラ、ミイラ、猫のポーン、4人で漂う小さな海底に、自分もいつしか一緒に漂っていました。マスターや総婦長、老婆令嬢など、どの登場人物も優しい空気に包まれていて、チェス盤、駒、駒袋、布巾、甘いおやつ、白衣など、その登場人物たちの大切なもの、象徴するものその全てがとても印象的でした。 また彼らと素敵な言葉の海を漂いたくなったら再読しようと思います。
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チェスを題材にした静かな物語。クライマックスがヘッセの『車輪の下』に似てたり、作風もどことない外国文学感があった。最後ミイラが間に合えば…と寂しく感じたけど、それも含めて、世の中に存在する仕方ない事情を受け容れることを伝えているように思った。
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※このレビューにはネタバレを含みます
優しい繊細さをかかえた少年の全部を見ていたものとしてあまりに切なく悲しいと思ってしまうのは私のエゴなんだろうと思いました。チェスに美しいと思える人になりたい。 彼の唇が、どんな計らいで閉じられてうまれたのか考え続けたいと思いました。
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チェスの才能に恵まれた少年の生涯の記録。 彼の指すチェスは勝敗の次元を超え、芸術と称されるほどにまで昇華される域に達します。 そんな彼が歩んだ道のりは、喜びや悲しみで彩られ、人によってはその濃淡の感じ方に差が出てくると思いますが、それとは別に温かさも感じてました。 私は本を...
チェスの才能に恵まれた少年の生涯の記録。 彼の指すチェスは勝敗の次元を超え、芸術と称されるほどにまで昇華される域に達します。 そんな彼が歩んだ道のりは、喜びや悲しみで彩られ、人によってはその濃淡の感じ方に差が出てくると思いますが、それとは別に温かさも感じてました。 私は本を読むようになって15年ぐらいが経ちますが、読みながら愛しさを感じた本は本作が初めて。 Tさんの思いの丈が書かれたコメントに惹かれて本作を手に取りましたが、とても良い出会いになりました。Tさんに感謝を。ありがとうございました。
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Audibleで読了。 「リトル・アリョーヒン」として生きた主人公。 作中で本名が出てこなかった。 伝説のチェス棋士にちなんで名前をもらい、 自動チェス人形の中でチェスを打つ。 「大きくなること、それは悲劇である」とある通り チェスと出会ったことで主人公の 身体、精神、世界...
Audibleで読了。 「リトル・アリョーヒン」として生きた主人公。 作中で本名が出てこなかった。 伝説のチェス棋士にちなんで名前をもらい、 自動チェス人形の中でチェスを打つ。 「大きくなること、それは悲劇である」とある通り チェスと出会ったことで主人公の 身体、精神、世界、全てが狭いなかだった。 リトル・アリョーヒンとしてきっと幸せだったはず ただ1人の人間としてどうだったんだろう… そう思うと読みながらいろんな感情が出てきた。
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