科学的とはどういう意味か の商品レビュー
ミステリ作家にして某国立大学工学部の研究者であった著者が、科学的に物事を捉えることの意義を説いた一冊。 現在のマスコミや多くの人達は物事を「印象」や「感傷」によって捉え、事象の要因を自ら考えることを避けているのではないか、というのが著者の見方。 科学というのは、他者によって再...
ミステリ作家にして某国立大学工学部の研究者であった著者が、科学的に物事を捉えることの意義を説いた一冊。 現在のマスコミや多くの人達は物事を「印象」や「感傷」によって捉え、事象の要因を自ら考えることを避けているのではないか、というのが著者の見方。 科学というのは、他者によって再現できることを条件として組み上げられた「方法」であり、人々の生活をより豊に暮らしやすくすることを目的とした「システム」。多くの人々が科学的な思考をすることによって、より社会を望ましい方向に導くことができる。 科学的な思考をするには、どうすれば良いか? まずは、マスコミ等が発表する事実に疑問をもち、情報を広く集めて、自身で吟味すること。そこから問題意識が芽生え、より深く自身で考えようとする。 自分自身は理系であり、物事の原理的に捉えようとする姿勢は常に意識しているつもりであるが、つい深く追求することが疎かになり、抽象的な言葉だけで解ったような気持ちとなってしまう。 まず、何か疑問をもった事があれば、マスコミ報道を鵜呑みにせず、 自分で情報を収集して考えることを、少しずつでも始めたいと思う。 ----------------------- ・一部の専門家がすべてを決めることはできない。だとすると、大勢の人が非科学的な思考をすれば、それが明らかに間違っていても、社会はその方向へ向ってしまう。 ・「科学から目を背けることは、貴方自身にとって不利益ですよ」そして「そういう人が多いことが、社会にとっても危険だ」ということである。 ・名称を知っていることと、それを理解していることは同義ではない、という認識を常に持たなければならない。 ・マスコミの報道を見ていると、この「印象」「主観」情報の比率がどんどん高くなっているのではないかと感じる。 ・多くの人は、そこにある対象を見て、どう感じれば良いのか、どう考えれば良いのか、どう対処すれば良いのかということを考えたくないのだ。 ・答えをごく簡単にいえば、科学とは「誰にでも再現できるもの」である。また、この誰にでも再現できるというステップを踏むシステムこそが「科学的」という意味だ。 ・自然環境を破壊しているものは、科学ではなく、経済ではないのか。 ・一方、方法を習得した者は、同種の他の問題を解決する能力を持っている、と理系の人は評価する。 ・したがって、個人においても、科学的であるためには、あらゆるものを疑い、常に「本当にそうなのか?」と自問することが大切である。 ・どんな分野であっても、何が問題なのかを常に知ろうとしなかればならない。その姿勢が、ものごとを全身させるといっても良い。
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「理屈はいいから」「文系だから詳しいことは分かりません」「科学が環境を破壊した」「技術者(科学者)は理屈ばかりで人間味に欠ける」などと言ってしまう方に読んでもらいたい1冊。 震災の後に書かれたということで、震災絡みで具体的な例が挙がっているのでイメージしやすい。 書いてることは全...
「理屈はいいから」「文系だから詳しいことは分かりません」「科学が環境を破壊した」「技術者(科学者)は理屈ばかりで人間味に欠ける」などと言ってしまう方に読んでもらいたい1冊。 震災の後に書かれたということで、震災絡みで具体的な例が挙がっているのでイメージしやすい。 書いてることは全く難しくなく、優しく誠実に書かれてる。
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マスコミや権威者の言うことを鵜呑みにすることなく 自ら常に疑問に持ち、考えることが人生における リスクを避けることになる。ついつい、「言葉」を 知ることで満足してしまっている自分にとって 良い警鐘になった。
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文系の人がこれを読んで納得するか微妙ですが,理系の人が読む本ではないですね。 研究室に配属になったばかりの大学生が読むと良い本かも。
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科学的思考が現代に生きる人々にとって、もはや生きるために必要なものであるという主張には頷くし、科学が再現性のある現象を取り扱って多くの人々によって検証して問題を解決するための方法であるという定義にも異議はない。 しかし、私には第1章「なぜ科学から逃げようとするのか」という章での...
科学的思考が現代に生きる人々にとって、もはや生きるために必要なものであるという主張には頷くし、科学が再現性のある現象を取り扱って多くの人々によって検証して問題を解決するための方法であるという定義にも異議はない。 しかし、私には第1章「なぜ科学から逃げようとするのか」という章での教育問題の記述がどうしても許容できないため、基本的な内容には賛同しつつも星3にした。 なぜ科学から逃げる子供の心理を確たる証拠も示さずに決めつけようとするのか。児童生徒の学習の意欲というのも教育学の見地から研究される立派な研究課題であり、科学的な思考で原因を追及して解決していかなければならない。刈谷剛彦などが代表的な例だろう。 著者は建築、特に流体工学が専門であるから、教育学の領域にあるトピックをうまく説明できないのは当然である。しかしそれならばいっそ断言を避けるか内容を削るべきだ。思いこみを捨てるべきだと筆者本人も記述している。 本書が科学から逃げてきた人々のために書かれた書籍だとしたら、当の読者たちのことを非科学的にとりあつかって果たして良いものだろうか。私には、この章があるために本書の主張そのものの説得力が失われてしまったように感じた。
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「文系だから」聞くだけでイラっとする。 その背後にあるのは理解を諦めた思考停止。 それに対して「科学は楽しいよ」「それは間違っている」などの方法ではなくて、「知らないと損をするよ」と説く。 3月11日の震災後に書かれたので、影響を多分に受けているが、その際にも知らないと命を...
「文系だから」聞くだけでイラっとする。 その背後にあるのは理解を諦めた思考停止。 それに対して「科学は楽しいよ」「それは間違っている」などの方法ではなくて、「知らないと損をするよ」と説く。 3月11日の震災後に書かれたので、影響を多分に受けているが、その際にも知らないと命を落とす、という例が出されている。 津波のメカニズムを知っているだろうか。 今まで知らなかったが、通常の波とは全く異なる。 「堤防があるから大丈夫」は本当なのか? その一点のみでも、「津波のメカニズムは知っている人が対策をしてくれればよい」とは考えることが出来ないことがわかる。 「結論は?」「大丈夫か大丈夫じゃないかだけ教えて」など、過程を知らなくても結論だけわかれば良いと考える傾向がある人にこそ読んでほしい。 本書は厳しいわけではない。 どれだけ損をするかがわかるだけなのだから。
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森氏の作品を読んで理系人間に憧れて、数学の本を読み始めるようになったのですが、それこそが理系コンプレックスの現れてだったんですね。 けれど、この著書的に言えば、自分の物事の捉え方、考え方が理系の思考と同一だと分かったのが嬉しかった。 少しは憧れていた理系人間に近づけたのかも。
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「他者による再現可能性」、これに尽きると思う。 他者から批判されたり、覆されたりするのをおそれて、隠し立てするのはまさに「科学的」の正反対にあることなのですね。
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ごくごく当たり前のことが書かれているだけ。分からない人、分かろうとしない人がたくさんいて、悪いことにそういう人達がマスメディアなどで一定の影響力をもっている、と。 記者会見場で、分かるように説明して、と曰う記者さんは分かろうとするつもりなどさらさらない、と。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とても面白かった。 理系出身者としては納得。(意識してないと、ついつい安易に非科学的に流れる自分がいます。) 津波は超高潮だというのは言われてみればその通り。(対策を認識し直さないと・・・) こちらのこの本に対する書評も一読の価値あり。 (科学が人の幸せのため、というところは小飼 弾 氏に一票。 http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51708664.html
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