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菜食主義者 の商品レビュー

4.1

64件のお客様レビュー

  1. 5つ

    19

  2. 4つ

    27

  3. 3つ

    8

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

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2024/09/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ようやく読めました、ハン・ガン!! いろいろな友人に「まずは菜食主義者で」と言われて手に取ったのだけど、面白かった。。読了感は重いのだけど軽く、切なく身を切られるようなところもあれば、ほのかに日の光が射していつつあくまで感じるのは無機質な冷たさだけというような、なんとも言えない感じ。でも私はこういう感覚に私を落としてくれることを文学に期待しているので、よい作家にまた一人出会ってしまったな…と満足です。もう少し他の作品もいろいろ読んでみたいなと思います。 「菜食主義者」「蒙古斑」「木の花火」の三本立てで、難しいけど選ぶなら「蒙古斑」が一番好きでした。その次は「木の花火」かな。「菜食主義者」内で語られる「夢」から菜食になるのは一定分かりつつ、いわゆる精神障害はそこまで"重くない"のかなと思っていたが、「木の花火」でのヨンヘは完全に食を拒絶していて、真っすぐに死に向かっていくのが、姉視点から読むと理解不可能で、やるせなさというか無力感に打ちのめされる。作品を通して、姉であるインヘの人生がハードモードすぎ。。 「蒙古斑」 …まぶしい照明の下で彼女は長く横たわっていた。彼は注意深く彼女の上に体を重ねた。Jの体と彼女の体がそうであったように、今、二人の体は重なり合った花のようだろうか。花と獣と人間が入り混じった一つの体のようだろうか。… すべてが完璧だった。思い描いたとおりだった。彼女の蒙古斑の上に彼の赤い花が閉じては開く動作を繰り返し、彼の性器は巨大な花芯のように彼女の体の中を出入りした。彼は戦慄した。最も醜くて、同時に最も美しいイメージのぞっとする結びつきだった。目を閉じるたびに、彼は自分の下半身を染めて腹と股までを濡らすねばっこい草の青い汁を見た。… 永遠に、これらのすべてが永遠に……と彼が耐えがたい満足感に体を震わせたとき、彼女は泣きだした。… このイメージは絶頂も終わりも許さないまま繰り返さなければならなかった。沈黙の中で、その悦楽の中で、永遠に。…(p.184-185) ここのセックスの描写のイメージの美しさが圧倒的で私は好きだった。 「木の花火」 …夢の中でね、お姉さん、わたしが逆立ちをしたら、わたしの体から葉っぱが出て、手から根が生えて…土の中に根を下ろしたの。果てしなく、果てしなく…股から花が咲こうとしたので脚を広げたら、ぱっと広げたら…(p.236) …ごはんなんて食べなくてもいいの。生きていける。日差しさえあれば。 何を言ってるの。自分が本当に木にでもなったと思ってるの?植物がどうして話すことができるの。どうして考えることができる。 ヨンヘは目を輝かせた。不思議な笑みがヨンヘの顔を明るくした。 お姉さんの言うとおり…もうすぐ、言葉も考えも全部消えるの。もうすぐよ。 ヨンヘはくすくすと笑い出しては大きな息をした。 本当にもうすぐよ。少しだけ待って、お姉さん。(p.244-5) 書かれている通り、ヨンヘの魂は一足飛びに越えてしまって、それをこちら側から見ながら、自分ももしかしたらああなっていたかもしれない、自分の一部は一緒に飛び越えているのかもしれないと姉妹だから感じるのを見るのは、経験したこともないのにわかる気がした。 すぐ影響されて韓国料理を食べながら記す。

Posted byブクログ

2024/08/21

植物になりたい女性とその家族を描いた小説 菜食主義や拒食症によって周りが翻弄されると同時に、その病というか状態自体は目的や手段でもなく、何か各人に問いを投げかけるようなものであった。 肯定も否定もなく、正解も不正解もない現実をうまく表現している作品で、心の豊かさを取り戻せる作...

植物になりたい女性とその家族を描いた小説 菜食主義や拒食症によって周りが翻弄されると同時に、その病というか状態自体は目的や手段でもなく、何か各人に問いを投げかけるようなものであった。 肯定も否定もなく、正解も不正解もない現実をうまく表現している作品で、心の豊かさを取り戻せる作品。 ただし、内容はかなり暗めなので、読み手のマインド状況もいい時に読むべき作品。 抗えないもの主義主張と、それを受け入れられない周囲という対比が印象的で、何が幸せなのか?何が不幸せなのか?常に問いを投げられているような感覚を持った。 日本の純文学を思い起こす素晴らしい作品

Posted byブクログ

2024/08/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

夢をきっかけに菜食主義者になり、果てには植物に、木になりたいと願ったヨンヘ そんなヨンヘに、失望や怒りを感じる夫、心配はするが理解はしないヨンヘの家族 義兄は、唯一理解するというところの近くにいたが、世間的に許されることではなかった 最後まで側にいた姉は、理解できないがそれでも気にかけてきた妹との過去を背負って、世話をする。糸が切れかけた時にやっと、自分の植物性に触れるが、動物として生きようとする息子に引き戻される 結局のところ姉は鳥にしかなれない ヨンヘも最後まで植物にはなりきれず 生かそうとする医師達は正しいのかと疑問に思ってしまう 植物の持つ美しさに、静けさに、恐ろしさに魅了されるが決してそれにはなれない人間。 人間は社会的な生き物で、生きていく社会の中での普通から外れたものは狂気と見なされること。社会の在り方について考える

Posted byブクログ

2024/07/20

韓国女性の生きづらさを描いた小説の中でも、圧倒的に心に刺さった。最初はヴィーガンの話かぁくらいだったけど、「木の花火」まで読んで、人ごとではない事に気づく。狂気と正気の境界は曖昧で、姉は子どもがいたことでギリギリ狂気になっていないだけ。自分も何かの拍子に狂気側に行く可能性もある、...

韓国女性の生きづらさを描いた小説の中でも、圧倒的に心に刺さった。最初はヴィーガンの話かぁくらいだったけど、「木の花火」まで読んで、人ごとではない事に気づく。狂気と正気の境界は曖昧で、姉は子どもがいたことでギリギリ狂気になっていないだけ。自分も何かの拍子に狂気側に行く可能性もある、と考えてもっていかれそうになった

Posted byブクログ

2024/07/11

肉、植物。 暴力性を離れて、非暴力の中で生きる。 それは人間の中で生きることをやめるしかないのか。 肉と暴力は分かちがたいほど結びついているのか。

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2024/06/13
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※このレビューにはネタバレを含みます

国際的な評価が固まった本作は、肉を食べることをやめたヨンヘという女性を、夫の視点、義兄の視点、姉の視点で描く連作短編集です。男尊女卑、韓国の男社会、暴力性、当たり前発想による差別など、いろいろなメッセージが込められてるが、特に、ヨンヘが動物を嫌悪し植物を目指す生きざまというか死にざまへの凄まじさが胸に刻まれた。肉を食べなくなることで動物性を否定し、花の絵を全身に描き視覚的な植物と化すものの獣性で精神を失い、最終的に樹木に擬態する、植物として生きる姿、その意味について深く考えさせられた。ハン・ガンは、読むたびに大きなダメージに近い感銘を得るので、癖になりそうです。

Posted byブクログ

2024/05/30

ものすごく独特で鮮やかで想定外の展開すぎて、おもしろかった。一気読みするには重いけど、読み返して反復したくなるような、中毒性がある。 この世に生きていることに違和感をもつ者同士、共鳴し合って、次のステージに翔び立とうともがくところは、なかなか衝撃的だった。感情に支配される死んだよ...

ものすごく独特で鮮やかで想定外の展開すぎて、おもしろかった。一気読みするには重いけど、読み返して反復したくなるような、中毒性がある。 この世に生きていることに違和感をもつ者同士、共鳴し合って、次のステージに翔び立とうともがくところは、なかなか衝撃的だった。感情に支配される死んだような人間から、活き活きとした沈黙の植物になりたいという渇望、彼女にとっては前向きな選択なんだろうな。姉は、しんどさは丁寧に描かれていて、歯がゆさや怒りや憐憫…なんとかリアルの世界に踏みとどまっているギリギリ感が、切ない。

Posted byブクログ

2024/04/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人には奇妙に見えても、自分には普通に思えること、 そんなことって実はよくあることなんじゃないかと思った。 絶妙なバランスで保たれていることが、小さなきっかけで大きく崩れていく感じが、リアルに感じた。

Posted byブクログ

2024/03/18

全3編の連作から成る長編小説。妻が突然肉を食べるのを辞めてベジタリアンになり、その影響で周囲の人間も大きく変わっていく。植物になりたい女性、動物になってしまった男性、自分自身にさえ成りきれなかった女性。一見、到底考えられない思考が多数登場する作品に見えるが、彼らの過去を遡っていく...

全3編の連作から成る長編小説。妻が突然肉を食べるのを辞めてベジタリアンになり、その影響で周囲の人間も大きく変わっていく。植物になりたい女性、動物になってしまった男性、自分自身にさえ成りきれなかった女性。一見、到底考えられない思考が多数登場する作品に見えるが、彼らの過去を遡っていく内に、それが根本に抱える「痛み」から脱却する手段であると分かってくる。 地の文の表現力がとにかくすごい。原作もそうなんだろうけど、これを日本語に落とし込んでる翻訳が素晴らしい。得体の知れない異様な雰囲気が冒頭から漂っていて、村上春樹っぽい耽美的な表現もある。でも作品の世界観的に合っている。 韓国文学って面白いですね。

Posted byブクログ

2023/11/25

日常に潜む狂気、精神異常もしくはそれと紙一重の状態の自分と世界との折り合いをそれぞれがどうつけるか、みたいな心の暗部を抉られる気持ちになるが、何か引き込まれる。

Posted byブクログ