世界屠畜紀行 の商品レビュー
屠畜方法も屠畜に関しての考え方も国、地域、人種、宗教などによってさまざま。 屠畜から多様性を学べる稀有な本。
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著者の本は2冊目だ。初読みは『身体のいいなり』で、サバサバした筆致に好感を持った。本書は題名どおり世界の屠畜の現場を踏んでの紀行文。そして、屠畜にまつわる差別を探求する目的もある。私たちは牛、豚、鶏、羊などの獣肉を食べて生きている。しかし、自分で解体処理して……というのは稀だろう...
著者の本は2冊目だ。初読みは『身体のいいなり』で、サバサバした筆致に好感を持った。本書は題名どおり世界の屠畜の現場を踏んでの紀行文。そして、屠畜にまつわる差別を探求する目的もある。私たちは牛、豚、鶏、羊などの獣肉を食べて生きている。しかし、自分で解体処理して……というのは稀だろう。死と同じく、屠畜から目を逸らしていられる「世界」に住んでいるからこそ、経済動物と言われる生き物の命を無駄にしてはいけない。米国の、システム化された屠畜が生む差別にも考えさせられた。
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牛、豚、ラクダやヒツジ。世界の屠畜現場のルポ、現場というか、家庭でやっているところはそこに入っていったりする。 「肉」を作る人たちはなぜ差別されたり、ひどい場合で同じ人間としてみてもらえないのか?という疑問を持ちながらすすむ。文化によっては屠畜をする人はすごいと思われていて、大き...
牛、豚、ラクダやヒツジ。世界の屠畜現場のルポ、現場というか、家庭でやっているところはそこに入っていったりする。 「肉」を作る人たちはなぜ差別されたり、ひどい場合で同じ人間としてみてもらえないのか?という疑問を持ちながらすすむ。文化によっては屠畜をする人はすごいと思われていて、大きな違いがある。日本など先進国ほど、その現場と食卓が遠くなっているんだなと。 また、いかに日本の施設が衛生に気を使っているかなど、知らないことばかりで恥じ入るような気持ちになる。肉を食べずに生きてはいけなくなっているのに。農業や漁業についても、広い目で見れば同じ問題を抱えているのではないかと思う。 おいしいものを食べた本はたくさんあるのに、肉や野菜や魚が店に届くまではブラックボックスのようだ。そこにも誇りをもって働く人がいる。
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濃いね、濃いよ。バリ島に行きたくなった。今は豚を捌く頁を読みながら、豚チューシューと豚挽肉そぼろが入った豚背脂の油そばを食している
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「思想強っ」 著者の考えなのか、解放同盟系の出版社・編集の意向 なのか、はたまたその両方なのか分からないが、「屠畜関係者に対する差別は依然としてある」前提で話が進み、著者の問題意識にのれない。 ただ、命を頂く行為を社会から見えないようにすることはいかがなものかと思う。その点は...
「思想強っ」 著者の考えなのか、解放同盟系の出版社・編集の意向 なのか、はたまたその両方なのか分からないが、「屠畜関係者に対する差別は依然としてある」前提で話が進み、著者の問題意識にのれない。 ただ、命を頂く行為を社会から見えないようにすることはいかがなものかと思う。その点は同意。 屠畜を各国、文化圏から描写した内容は興味深く、良かった。
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世界における屠畜と屠畜を職業とする人たちを追ったルポ。 日本やインドにおいては屠畜を職業とする人達への差別が大きく関わる話だけど、差別の辛さ等に焦点を当てるのではなく屠畜そのものの面白さについて語っているから楽しく読めた。 この本が最初に出たときから20年近く経っているけど、変...
世界における屠畜と屠畜を職業とする人たちを追ったルポ。 日本やインドにおいては屠畜を職業とする人達への差別が大きく関わる話だけど、差別の辛さ等に焦点を当てるのではなく屠畜そのものの面白さについて語っているから楽しく読めた。 この本が最初に出たときから20年近く経っているけど、変わったところも大きいのかな。
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生き物がどう殺されていくのか知りたくて読んだ。 主題としては「なぜ日本では屠殺業を営む人が差別されているのか、他の国でもそうなのか」というルポ。 私自身は「人間に殺されて可哀想だな、でも私も肉好きだしな…」という想いはあり、ただ屠殺業に従事する人に対して残酷だとか感じたことは一度...
生き物がどう殺されていくのか知りたくて読んだ。 主題としては「なぜ日本では屠殺業を営む人が差別されているのか、他の国でもそうなのか」というルポ。 私自身は「人間に殺されて可哀想だな、でも私も肉好きだしな…」という想いはあり、ただ屠殺業に従事する人に対して残酷だとか感じたことは一度もない。本書が書かれてからだいぶ時間も経っているから、差別意識も少しずつ無くなってきているのではないかと思うけど。 家畜がどういう風に私たちの目の前に肉として運ばれてくるのか全然知らなかったので、本書はイラスト付きでわかりやすく解説されているためとてもイメージしやすかった。自分が読んできた本の中でも珍しいジャンルなのでとても勉強になった。正直動画とか写真で見られるかというとなんとも言えない…ので、イラストという点もありがたい。血とか苦手な人でも大丈夫そう。 日本だけじゃなく各国の屠殺文化まで綿密に取材されていて面白かった。 同じ仏教国でも生きるために必要だからと、差別意識などがない国、完全に汚れた仕事だと思われている国…国の数だけ価値観が多様で面白い。 私はお肉が好きだから、しっかり家畜に感謝をして残さずお肉を食べ続けたい。可哀想と思うなら食べないのではなく、命に感謝してちゃんと頂くことが大事だと思う。 ちなみにこの本自体は良い内容だと思うが、著者に関してはちょっと行きすぎというか、殺されるところをワクワクしながら見たりちょっとサイコみを感じてしまう。個人的には家畜を「つぶす」という表現も好きじゃない。
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おもしろい。知らなかったことが盛りだくさん。だけど、自分の目で確認するだけの度胸も胆もないものだから、イラストで充分です。捌かれた後のお肉と料理の紹介が豊かすぎて、新鮮なホルモンを食べに行きたくなります。
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・私が食べているお肉が生きている動物からどのように作られているのか ・屠畜場の重要な役割 動物には病気や不衛生な個体がおり安全に屠り食肉にするには技術や設備が整う屠殺場が重要な役割を担っている。日本で獣畜(牛豚馬羊山羊)を勝手に解体してはいけないのも食中毒や病気の蔓延...
・私が食べているお肉が生きている動物からどのように作られているのか ・屠畜場の重要な役割 動物には病気や不衛生な個体がおり安全に屠り食肉にするには技術や設備が整う屠殺場が重要な役割を担っている。日本で獣畜(牛豚馬羊山羊)を勝手に解体してはいけないのも食中毒や病気の蔓延を防ぐためである。ただ少し前の沖縄では羊と山羊は捌けたらしい。 ・屠殺やその職に関わる労働者に対する国毎のイメージや考え方 面白いなと思ったことが国や宗教によっては屠殺にとても肯定的な考えがあること。 例えばバリのヒンドゥー教徒の考えにお供えとして殺された植物や動物は位が上がり天国に行けたり生まれ変わったらより良い身分になれるとされている。人間の食事も人間へのお供えとそれるので屠殺は良い行為である。 他にもモンゴルの遊牧民はそもそも食は他の生命の犠牲に成り立っているとしてる。 屠殺という職業に関しても一部の宗教的には神様への生贄やお供えとして動物を屠ることが多々あるためその技術は良いものとされている。 ・韓国や中国での犬食文化
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筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました...
筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました。 オリジナルの単行本は2007年に発表されてますが、それ以前にも屠畜・屠殺を題材にした本は多く出版されています。しかし屠畜をこのようなポップな装丁、感性、文体で本にしたことは凄いと思います。当時話題になりましたし、多くの人の価値観への見事なカウンターとなったのではないかと想像します。 文体および文中の著者の振る舞いは、よく言えば天真爛漫、悪く言えば(著者ご本人も文中で書いてますが)不躾で、著者の素直なリアクションが伝わってきます。素直ということは当然、著者のバイアスもそのまま文中に現れるので、動物愛護の気持ちの強い人などからしたらケンカを売られているように感じる物言いも見られます。そのあたりは読者の好みによりますね。 基本的には、動物が気絶させられたり、ノドを捌かれ吊るされたり、皮を剥がされたりする場面においても終始ネガティブな反応はほぼなく、ワクワク!な筆者ですが、文中で一箇所だけ著者が「かわいそう」と思う場面があります。それは肉の需要量に応えるため、人工授精によって牛を増やしている現実に触れた時です。人間の都合で自然な繁殖である「交尾」をせずして生涯を終える牛がいるということを知った時の筆者の心情はワクワク!の時と対照的で印象に残っています。 日本の食肉文化の歴史は世界的に比べて浅く、そのうえ現代は家畜を飼う一般家庭も少ない。「動物を殺して生きている」という感覚は極限まで薄められています。ベジタリアンではないわたしとしては、動物がどういう風に肉へと加工されていくのかを見ずして美味しい思いだけするのはフェアではないと思ったので(フェアにはなり得ないとも思っていますが)、屠畜の現場の動画を目を逸らさずに視聴しました。おそらくその動画は動物愛護的観点に偏った編集がされていて、外国の特に残酷なものであったと思いますが…。あとはお肉を食べられることに感謝を忘れないようにしようと思います。 個人的な話ですが、わたしの幼少期に母は移動販売業をしており、顧客の中にたまたま屠畜場で働く人がいて、学校を終えたわたしの送り迎えのついでに仕事のため2、3回ほど屠畜場へ母はわたしを連れて行きました。そこでわたしは初めて吊るされた大きな枝肉を見て、「本当にあの『牛』が『お肉』になるんだ」と悟ったことを読後に思い出しました。そして今思えば母は屠畜業に対する差別がなかったのかもしれないと気づき、今更ながら母を尊敬しました。 日本の屠畜場は世界に比べて衛生面ではトップクラスであり(その分めちゃくちゃスタッフさんが働いてくれている)、日本産の肉を食べられていることはとてもありがたいことだと改めて感じました(ま、食肉偽装という別の問題はあるでしょうけれど…)。
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