1,800円以上の注文で送料無料

世界屠畜紀行 の商品レビュー

4.3

75件のお客様レビュー

  1. 5つ

    33

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

    14

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/11/22

筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました...

筆者がモンゴルにて、羊を目の前で解体され振る舞われたことをきっかけに「屠畜」に興味を持ち、海外と国内の屠畜の現場を回ったルポです。文庫で450P以上と長いですが、各国の屠畜を通じて文化人類学、歴史、動物の情動、宗教観、日本特有の差別の構造にも触れ、興味が途切れることなく読めました。 オリジナルの単行本は2007年に発表されてますが、それ以前にも屠畜・屠殺を題材にした本は多く出版されています。しかし屠畜をこのようなポップな装丁、感性、文体で本にしたことは凄いと思います。当時話題になりましたし、多くの人の価値観への見事なカウンターとなったのではないかと想像します。 文体および文中の著者の振る舞いは、よく言えば天真爛漫、悪く言えば(著者ご本人も文中で書いてますが)不躾で、著者の素直なリアクションが伝わってきます。素直ということは当然、著者のバイアスもそのまま文中に現れるので、動物愛護の気持ちの強い人などからしたらケンカを売られているように感じる物言いも見られます。そのあたりは読者の好みによりますね。 基本的には、動物が気絶させられたり、ノドを捌かれ吊るされたり、皮を剥がされたりする場面においても終始ネガティブな反応はほぼなく、ワクワク!な筆者ですが、文中で一箇所だけ著者が「かわいそう」と思う場面があります。それは肉の需要量に応えるため、人工授精によって牛を増やしている現実に触れた時です。人間の都合で自然な繁殖である「交尾」をせずして生涯を終える牛がいるということを知った時の筆者の心情はワクワク!の時と対照的で印象に残っています。 日本の食肉文化の歴史は世界的に比べて浅く、そのうえ現代は家畜を飼う一般家庭も少ない。「動物を殺して生きている」という感覚は極限まで薄められています。ベジタリアンではないわたしとしては、動物がどういう風に肉へと加工されていくのかを見ずして美味しい思いだけするのはフェアではないと思ったので(フェアにはなり得ないとも思っていますが)、屠畜の現場の動画を目を逸らさずに視聴しました。おそらくその動画は動物愛護的観点に偏った編集がされていて、外国の特に残酷なものであったと思いますが…。あとはお肉を食べられることに感謝を忘れないようにしようと思います。 個人的な話ですが、わたしの幼少期に母は移動販売業をしており、顧客の中にたまたま屠畜場で働く人がいて、学校を終えたわたしの送り迎えのついでに仕事のため2、3回ほど屠畜場へ母はわたしを連れて行きました。そこでわたしは初めて吊るされた大きな枝肉を見て、「本当にあの『牛』が『お肉』になるんだ」と悟ったことを読後に思い出しました。そして今思えば母は屠畜業に対する差別がなかったのかもしれないと気づき、今更ながら母を尊敬しました。 日本の屠畜場は世界に比べて衛生面ではトップクラスであり(その分めちゃくちゃスタッフさんが働いてくれている)、日本産の肉を食べられていることはとてもありがたいことだと改めて感じました(ま、食肉偽装という別の問題はあるでしょうけれど…)。

Posted byブクログ

2021/09/18

世界を旅しながら屠畜について考えられる本 イラストが結構沢山あって状況がイメージしやすく お肉メインのお手軽世界旅行ができる 日本の場合だけでなく海外での事例も食文化に触れながら 生き物をつぶすことについて知れる なかなか屠畜なんてテーマで世界旅行する人は居ないだろうけど ...

世界を旅しながら屠畜について考えられる本 イラストが結構沢山あって状況がイメージしやすく お肉メインのお手軽世界旅行ができる 日本の場合だけでなく海外での事例も食文化に触れながら 生き物をつぶすことについて知れる なかなか屠畜なんてテーマで世界旅行する人は居ないだろうけど ひとつのテーマを持って世界を回るのって楽しそう 読後感がクレイジージャーニー観たあとみたいな感じ あと読んでると色んなお肉食べたくなる

Posted byブクログ

2021/09/14

 世界各国の屠畜事情、どのような動物をどのような事情でつぶして食肉に仕立てるか、屠畜に関わる職業とそれらへの差別はどうなっているのか、などに取材した内容。  著者の「差別とはなにか」「『動物をつぶす』ことが『残酷』とはどういうことか」という疑問への真摯な姿勢と、屠畜という職業への...

 世界各国の屠畜事情、どのような動物をどのような事情でつぶして食肉に仕立てるか、屠畜に関わる職業とそれらへの差別はどうなっているのか、などに取材した内容。  著者の「差別とはなにか」「『動物をつぶす』ことが『残酷』とはどういうことか」という疑問への真摯な姿勢と、屠畜という職業への愛が伝わってくる本だった。  「食育」に興味のあるかた、また「食べること、食べられること」に関心のあるかたにおすすめしたい。

Posted byブクログ

2021/05/03

ーー屠畜という仕事のおもしろさをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった。(p.461 あとがきより) 2007年初版、2011年に文庫化されて以来、すでに14版。筆者の目的は十分に達せられているように思える。何せ、面白い。そし...

ーー屠畜という仕事のおもしろさをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった。(p.461 あとがきより) 2007年初版、2011年に文庫化されて以来、すでに14版。筆者の目的は十分に達せられているように思える。何せ、面白い。そして、職人さんへのリスペクトが溢れている。 雑誌『部落解放』の連載だということを知らずに読んだので、のっけから「白丁差別」の話が来ることに「?」となったけれど、読んでいるうちに「なるほど」と腑に落ちた。けれど、冒頭に引用したように、本書の焦点は「屠畜の面白さ」。さまざまな国や文化によって違うこと、共通すること、そしてなにより肉は美味しいということ。美味しい肉になるまで、大変な手間がかけられているのだということ。 知らなかったなぁ、ということが満載だった。自分の中の忌避感にも向き合わざるえなかった(私はどうしても馬肉が食べられない)。食文化への偏見、職業への偏見にも向き合わざるをえなかった。アニマルウェルフェアや動物愛護にどうして自分が胡散臭さを感じてしまうのかについても考えることができた。臭いものには蓋をして生きている自分を感じざるを得なかった。 屠畜への忌避感ゆえか、アニマルウェルフェアの観点からか、畜産が非経済的で環境負荷が高いとするSDGsの観点からかはよくわからないけれど、バイオ肉や代替肉の研究は盛んなようだ。それの行き着く先はユートピアだと研究者と企業は言い、ディストピアだと『オリクスとクレイク』(マーガレット・アトウッド)は言う。本書を読んで思うのは、人間の本性を受け止め損ねたらディストピアコースなんだな、っていうこと。芝浦屠場の移転話も持ち上がっているみたいだけれど(今はどうなんだ?)「そんなにこぎれいに暮らしたいのかあ。」という筆者の感想に同感。人間は生きもの。人工物のクリーンさが理想?除毛して、除菌して、除臭して、視界から消して??生き物を殺して食べている、お肉大好きな生き物だという事実も抹消??生存に必要な範囲を超えた「清潔」を徹底追及して、生きものやめて、一体、何になるつもりなのかしら???クリーチャー????

Posted byブクログ

2021/03/14

肉を食べるということは、命を奪うことであるの当然ことである。それを知って肉を食べて生きているわけで、 屠畜(または屠殺)に焦点をしぼって、 日本を含めた世界各国の屠畜のやり方や、 屠畜に対する意識を読めておもしろかった。 もともとは「部落解放」という本に連載されていたそうで、 日...

肉を食べるということは、命を奪うことであるの当然ことである。それを知って肉を食べて生きているわけで、 屠畜(または屠殺)に焦点をしぼって、 日本を含めた世界各国の屠畜のやり方や、 屠畜に対する意識を読めておもしろかった。 もともとは「部落解放」という本に連載されていたそうで、 日本での「穢れ」という意識についても言及されている。 また、アニマルウェルフェアという、家畜の人権みたいのについても考えさせられるが、 もちろん僕自身はこれからも肉を食います。

Posted byブクログ

2021/03/03

食べるために動物の命を奪い解体する。人が生きるために必要な行為が時と場所により差別される。世界の屠畜を取材、豊富なイラストで解説した作品。 詳細なイラストと装丁が何より魅力の一冊。あまりに細かく老眼には少々厳しい。 臭いもあれば血もある現場、通訳ガイドかみ怯んでも筆者は全く平...

食べるために動物の命を奪い解体する。人が生きるために必要な行為が時と場所により差別される。世界の屠畜を取材、豊富なイラストで解説した作品。 詳細なイラストと装丁が何より魅力の一冊。あまりに細かく老眼には少々厳しい。 臭いもあれば血もある現場、通訳ガイドかみ怯んでも筆者は全く平気である。 日本から韓国、モンゴル、アメリカなど世界を取材、良質のノンフィクション。

Posted byブクログ

2020/10/04

屠畜っていうと、牛や豚などを「殺して肉にする」エグいと思われるテーマです。獣医師にとっても、と畜検査員になりたい!と免許取得後の第一選択にしていることはまずないんじゃないかと個人的には思うわけですが、本意・不本意の別なく、と畜検査員になられた方にはぜひ一度お手にとって眺めていただ...

屠畜っていうと、牛や豚などを「殺して肉にする」エグいと思われるテーマです。獣医師にとっても、と畜検査員になりたい!と免許取得後の第一選択にしていることはまずないんじゃないかと個人的には思うわけですが、本意・不本意の別なく、と畜検査員になられた方にはぜひ一度お手にとって眺めていただけると良いのではないかと思います。 僕はこの本を読んで、自分の仕事であると畜検査がより一層好きになりました。

Posted byブクログ

2020/09/12

なかなかしつこく屠殺について調べていて、興味深く読んだ。 しかし、この本も相当前の本だから、今は事情も変化しているんだろうな。 ちなみに、私は、著者と同じく、屠畜と動物愛護は別物だと思うし、肉食べてる以上、屠畜には敬意を払うべきといつも思ってる!

Posted byブクログ

2020/07/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

テーマは良い。中身も好き。 時系列順に書いてるようでそうでもない(のか後から振り返ってごちゃ混ぜに比較して書いてるのか)のでわかりにくいところがある。一番最初に日本を載せたほうがいいのでは。もしくは●ページに後述してますが、と書いてほしい。消化不良で全部読むの不快。 実際のメインの説明よりも通訳さんとか案内してくれる人の感想が多く感じるのもちょっと微妙。

Posted byブクログ

2019/11/24

世界の”屠畜”模様のレポート。 元は、被差別部落の職業差別レポートだったはずだけど、 いつの間にやら、屠畜レポートに。 家畜を食品にする、難しくてありがたい職業だけど、 宗教、文化、食生活、政治で、いろんな立場に。 とにかく、お肉食べる時は「いただきます」を ちゃんと言いましょう...

世界の”屠畜”模様のレポート。 元は、被差別部落の職業差別レポートだったはずだけど、 いつの間にやら、屠畜レポートに。 家畜を食品にする、難しくてありがたい職業だけど、 宗教、文化、食生活、政治で、いろんな立場に。 とにかく、お肉食べる時は「いただきます」を ちゃんと言いましょう。

Posted byブクログ