蜘蛛女のキス の商品レビュー
2人の会話劇という今まで読んだことのない形式で展開される話だった。モリーナの話す映画の描写が毎回とても細かく、記憶力が凄すぎる。映画の内容がメタファーになって2人の間柄に反映されているように感じた。映像を言葉で伝えるのがうまくて、その場面を想像しやすい。言葉の表現力の凄さを改めて...
2人の会話劇という今まで読んだことのない形式で展開される話だった。モリーナの話す映画の描写が毎回とても細かく、記憶力が凄すぎる。映画の内容がメタファーになって2人の間柄に反映されているように感じた。映像を言葉で伝えるのがうまくて、その場面を想像しやすい。言葉の表現力の凄さを改めて感じた。
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タイトルは知っていても、読んだことがない本はたくさんあります。本作もそんな本の中の1冊でした。ベストセラーになった小説だということは知っていたのですが、インパクトのある題なので、無意識に敬遠していたのかもしれません。 物語は、誰かがある映画の内容を、ほかの誰かに話して聞かせて...
タイトルは知っていても、読んだことがない本はたくさんあります。本作もそんな本の中の1冊でした。ベストセラーになった小説だということは知っていたのですが、インパクトのある題なので、無意識に敬遠していたのかもしれません。 物語は、誰かがある映画の内容を、ほかの誰かに話して聞かせている場面から始まります。最初は話し手が誰で、聞いているのが誰なのかわかりません。その場所がどこなのかも不明です。でも、物語が進行するうちに、やがてそれが、モリーナとバレンティンという二人の男の会話だということがわかってきます。 モリ―ナは未成年者に対する性行為で懲役8年の刑を宣告されたゲイ。バレンティンは社会主義運動の政治犯として逮捕された革命家です。ふたりは同じ牢屋に収監されているのです。 この小説は、ほぼ全編がこのふたりの対話形式で綴られています。途中、モリ―ナと所長の面談場面や、モリ―ナに関する報告書などが挿入されますが、それもほんのわずかです。いわゆる「地の文」にあたる箇所は、まったくありません。 ちなみに、ここで話されているのは、『キャット・ピープル』という1942年に公開されたアメリカ映画です。監督はジャック・ターナー、主演はシモーヌ・シモンでした。この映画は1982年にリメイクされ、そのときの監督はポール・シュレイダー、主演はナスターシャ・キンスキーです。 小説の中で語られる映画は全部で6本ありますが、実在するものとそうでないものがあるようです。 モリ―ナは寝物語に、あるいはバレンティンの体調がすぐれないときに、かつて観た映画のストーリーを話して聞かせます。それ以外にも食料や飲みものを分け与えたり、バレンティンが病気のときには寝ずの看病をしたりと、献身的な態度で尽くすのでした。 こうした暮らしの中で、ふたりの心情が徐々に変化していく様子が、巧みに表現されています。 作者のマヌエル・プイグはアルゼンチン出身の作家です。この物語には、当時の軍事独裁政権が背景にあると考えられます。作者自身が、亡命を余儀なくされ、アメリカ、メキシコなどを転々としながら作品を書き上げたことからも、そのことが想像されます。 物語の後半、バレンティンはモリ―ナに対して「あんたはえらく優しいから、真っ先に他人のことを考えるんだ。自分のことは二の次にしてね。そこのところは誇りにすべきだよ」と声を掛けます。しかしモリ―ナは「でもそれは公平なことなの?(中略)いつでもあたしには何ものこらないってこと…あたしはいまだかつて、本当に自分のものを持ったことがないってことよ(中略)あたしの人生、いつ始まるのかしら?何かがあたしのものになるのは、あたしが何かを持てるのは、一体いつなの?」と返します。 この会話が、物語の核心部のひとつであるように思えます。 その後、物語は悲劇に向かって進んでいくのですが、「起きたことはそのまま受け入れる、それができなくちゃいけない、そして自分に起きたいいことは大事にする。たとえ長続きしなくてもだ。というのも、永遠に続くことなんて何もないからだよ」と語るバレンティンの言葉は、理想を掲げる革命家にしては軽過ぎます。 モリ―ナと一緒に過ごすことで、バレンティンのアイデンティティや価値観が崩壊しているのです。革命というと言葉は、響きは良いかもしれませんが、彼の思想はとても薄っぺらいものだったように感じられました。 挙句ふたりは非業の最期を遂げるのですが、バレンティンに比べてモリ―ナの方が、少しは得るものがあったのではないでしょうか。 この物語は、政治的抑圧に反逆を試みるバレンティンと、ホモセクシュアリティ―であるがゆえの弾圧に耐えるモリ―ナを同時に描くことで、深い意味を生じさせています。 戦うことの虚しさ、生きることの切なさが問われているようにも思えました。けっきょく世界を複雑にしているのは、人間なのですね。 https://note.com/b_arlequin
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
長い!読みにくい!1割位読んだあとは流し読みした。 アルゼンチンの刑務所で同室になった同性愛者モリーナと政治犯バレンティンが少しずつ心を通わせていく話…なのだが、モリーナが毎晩語る映画のあらすじが長くて長くて…分かりにくいし… ほとんどが囚人2人の会話文で進んでいく。 以下、ネタバレ モリーナは看守からバレンティンについて仲間達について聞きだすようスパイをさせられていた。 刑務所側はバレンティンの食事に毒を入れるなどして彼を弱らせようとしていたが、モリーナは母からの差し入れとしてまともな食事を手に入れバレンティンに与える。 本編の9割位のところでようやく心を開いたバレンティンはモリーナへ仲間達の秘密を伝える。 その頃、モリーナは出所することになる。 出所したモリーナは、警察から監視&盗聴されていた。バレンティンの仲間と連絡をとり(?)待ち合わせ場所へ行くと警察が現れ、それを見た仲間たちに組織の秘密を守るため銃で狙撃されモリーナは死んでしまう。←出所後の動向は新聞記事のような書き方でこれまた読みにくかった。
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映画見たいな。 面白かったけど、余計なものが多かったようにも感じる。 でも、それがなかったらつまらなかったりするのかな。 だから、映画で見たい。
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2024.12.20から読み始め2025.1.5読了。 ずっと観たいと思っている映画の原作で、こちらもずっと読みたいと思っていた…映画は未見のまま40年経とうとしています… スペイン語を習い始めたことも、より原作に近づけたきっかけ。 おおよその登場人物は知っていたが、なぜ表紙に黒...
2024.12.20から読み始め2025.1.5読了。 ずっと観たいと思っている映画の原作で、こちらもずっと読みたいと思っていた…映画は未見のまま40年経とうとしています… スペイン語を習い始めたことも、より原作に近づけたきっかけ。 おおよその登場人物は知っていたが、なぜ表紙に黒猫が?それがわかっただけでも収穫… 大変読みやすいです! モリーナがとても魅力的ですが、アルゼンチンという国事情を考えながら読むと、本当に息苦しい。 小説なので、モリーナのラストは、ほっとしています。危惧していたとおりの結果ではあるけれど、バレンティンのことを裏切らずに済んだ…バレンティンへの愛に殉じたと言える… 最後にバレンティンを介抱しているのは誰なのか? 所長? 看守? そこが分からなかった。 長い長い注も良かった。今年の1冊目が今年のNo.1かも… フィクションに、さらにフィクションを重ねる手法(モリーナが語る映画も含め)、好きです。 新年早々、読めて良かったです。 映画は観ないかも。ラストシーンが違うらしいので。でも、ウィリアム・ハートのイメージは参考になりました。ウィリアム・ハートも亡くなってしまった…ラウル・ジュリアもかなり前に。 EL BESO DE LA MUJER ARAÑA(1976) 1976年を昨日のように感じることの出来る私(笑)。だって、小学生中学年でしたから!世の中のことが見えてました。 でもラテンアメリカは厳しい時代だった。さすがに当時はそれを実感はしていなかったです。 英米、ドイツ、フランス、ロシア、日本…それぞれの文学も読み切れていないのに、ラテンアメリカ文学にもより触りたくなり…ああ…と思う2025年の始まりです。 バレンティンがお腹壊すシーンが気の毒でした。
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恩田陸「spring」を読んで、作中に登場する作品として興味を持ち、読み始めました。 三浦しをんの解説を読んで、ようやく理解する手がかりをもらえたように思います。 モリーナが映画について語り、バレンティンがあいづちを打ったりツッコミを入れたりしながら物語は進んでいきます。モリーナ...
恩田陸「spring」を読んで、作中に登場する作品として興味を持ち、読み始めました。 三浦しをんの解説を読んで、ようやく理解する手がかりをもらえたように思います。 モリーナが映画について語り、バレンティンがあいづちを打ったりツッコミを入れたりしながら物語は進んでいきます。モリーナの立場が明かされ、この人たちは一体どうなっちゃうの!?とはらはらしながら読み進めました。映画の知識があると、なおのこと楽しく読めるかと思います。
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恩田陸の「spring」に出てきたから読んでみたけど、どうやってこれをバレエにするのかさっぱりわからない。
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この本で描かれている映画が見たくなったが、言葉で説明されてしまい、かえって満足したので、見る気は無いような気もする。 モリーナとバレンティンは、映画の語りや謎の病気?を通じて、心を通わせたと私は思ったが、そうではないとする見方もあるらしい。確かに怪しい場面はあったが、最後の方で...
この本で描かれている映画が見たくなったが、言葉で説明されてしまい、かえって満足したので、見る気は無いような気もする。 モリーナとバレンティンは、映画の語りや謎の病気?を通じて、心を通わせたと私は思ったが、そうではないとする見方もあるらしい。確かに怪しい場面はあったが、最後の方では、2人は互いに信頼していたと思うなあ、私は。その方が好きだ。 また、「人生は長いのか短いのか分からないから、自分に起きたいい事は、長続きしなくても、大事にすべき」というバレンティンの言葉は良いなと思った。外から見た自分の人生と、自分自身が感じる自分の人生は、必ずしもイコールではないからだ。
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ラテンアメリカ文学の名作。マルケスは何作品か読んだことがあるが南米文学にはまたこういう側面もあるのだなと懐の深さを感じさせる。中盤までは幻想的で散発的な物語が繰り返される不思議な雰囲気。乾湿と熱情が交じり合う空気。中盤以降は情緒と寂しさを纏った展開となる。唯一無二の世界観を提示し...
ラテンアメリカ文学の名作。マルケスは何作品か読んだことがあるが南米文学にはまたこういう側面もあるのだなと懐の深さを感じさせる。中盤までは幻想的で散発的な物語が繰り返される不思議な雰囲気。乾湿と熱情が交じり合う空気。中盤以降は情緒と寂しさを纏った展開となる。唯一無二の世界観を提示しぐっと引き込まれる作品。
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津村の読み直し世界文学の1冊。タイトルがあまりにも有名なので、蜘蛛女と呼ばれている女が男を絶えず代えているとばかり思っていたらまったく違っていた。監獄に入っている反体制の男性とスパイの男性のやりとりである。スパイの男性が毎日見た映画の話を反体制で逮捕されている男性にすこしずつ話し...
津村の読み直し世界文学の1冊。タイトルがあまりにも有名なので、蜘蛛女と呼ばれている女が男を絶えず代えているとばかり思っていたらまったく違っていた。監獄に入っている反体制の男性とスパイの男性のやりとりである。スパイの男性が毎日見た映画の話を反体制で逮捕されている男性にすこしずつ話していく、その映画のストーリーがメインである。
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