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蜘蛛女のキス の商品レビュー

3.9

46件のお客様レビュー

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2020/04/30

ブエノスアイレスの官房で同室となったゲイのモリーナが、政治犯のバレンティンに様々な映画のストーリーを語る。ナレーターはおらず、2人の会話でストーリーが構成される。 モリーナが語る映画のストーリーと、それに相槌を打つバレンティン。誰かと会話をすること、誰かに見た映画の内容を話し、こ...

ブエノスアイレスの官房で同室となったゲイのモリーナが、政治犯のバレンティンに様々な映画のストーリーを語る。ナレーターはおらず、2人の会話でストーリーが構成される。 モリーナが語る映画のストーリーと、それに相槌を打つバレンティン。誰かと会話をすること、誰かに見た映画の内容を話し、ここが好きだった、この雰囲気は好きじゃない等と他愛もない話をすることの心地よさを思い出させてくれる。 軽快な語り口の中で、バレンティンが政治犯であるこや、今も改革を企んでいることの重さが埋もれる。ロマンチックなモリーナとロジカルで厳格なバレンティンという、違う境遇で出会ったらきっと相入れなかっただろう2人が不思議な絆を築いていく。 南米文学のとっかかりとして軽い一冊。

Posted byブクログ

2017/10/25

モリーナとヴァレンティン、2人の人物による全編ほぼ対話形式でストーリーは進みます。 冒頭、映画のあらすじを語り合う場面で始まりますが意見はさっぱり噛み合いません。せっかく順を追ってモリーナが話しているにも関わらず、何かとヴァレンティンが話に水を差します(当方女のためついモリーナ寄...

モリーナとヴァレンティン、2人の人物による全編ほぼ対話形式でストーリーは進みます。 冒頭、映画のあらすじを語り合う場面で始まりますが意見はさっぱり噛み合いません。せっかく順を追ってモリーナが話しているにも関わらず、何かとヴァレンティンが話に水を差します(当方女のためついモリーナ寄りの視点に)。物語を読み進めていくと、テンポの良い会話の端々から両人が「特殊」で「閉鎖的」な状況下にいることが浮かび上がってきます。 モリーナは自分に課せられた任務を背負いながらも一人に寄り添い、信頼を寄せて力になろうとします。不貞腐れたり、心配したり、怯えたり、喜んだり、幸せに満ちたり…純粋で感情豊かなモリーナは無性に愛くるしく魅力的で、終始感情移入しました。革命に殉じ使命に燃えていたヴァレンティンは次第にモリーナへ心を開いていきます。時に恋人、時に母のような深い愛情をみせるモリーナに聖母マリアを重ねてしまったのは私だけでしょうか。 手放しのハッピーエンドが訪れないことは覚悟していましたが苦しいほどの切なさを感じます。刹那的な安らぎは暗闇にいた彼らを彩りました。時代に人生を左右された2人。しかし、時代に人生を左右されなければ交じることのなかった2人でもあります。 儚く短い夢を見た彼らが、最期に幸せな画を思い浮かべたと信じたい。

Posted byブクログ

2017/10/22

ほぼ会話だけでストーリーが展開していく構成がとても好み。独房の中、確かに心が通い合う様は恋愛のようであり、慈悲のようであり、慰め合いのようであり。

Posted byブクログ

2016/06/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人生に無駄な時間はどのくらいあるだろう? たとえばお気に入りの映画を見る時間は、生きることに関係ないから無駄なんだろうか? 物語の冒頭の、純粋な革命闘士であるバレンティンは「無駄だ」と一蹴するかもしれない。でもやっぱりこの物語で最高なのはロマンス映画を語る間のモリーナだし、理想主義者のバレンティンは、彼女の影響をうけて、ラストはそれはもう感傷的でロマンティックな幻に救済される。そもそも、革命闘士なんかやってる時点で別方向にロマンチストだったんだろうね。 でも、どうしてこんなにモリーナは魅力的なんだろう。 彼女だけじゃなくて、映画好きの人はなんでか魅力的だ。知識量や表現力に加えて、映画を語るその人自身がひとつのエンターテイメントになってしまっているのかな。まさにモリーナみたいな、明るくて表現豊かな映画好きを知っていたから。 後半でモリーナとバレンティンがそういう関係になってしまったのが残念だった。ゲイとノーマル男性だから面白かったのになぁ… 最後まで友人として付き合って欲しかった。

Posted byブクログ

2016/02/22

なんで人が話す映画の話をえんえん聞かされなきやならないんだ?と思いながら読んでた。主観的でたまに戻って話す、途中で映画の部分を飛ばしたくなった。獄中だけち食べ物の描写が思い入れある。肉や砂糖漬けフルーツ、紅茶がこんなに美味しそうで幸せを表現するものとして書かれるなんて。そしてラン...

なんで人が話す映画の話をえんえん聞かされなきやならないんだ?と思いながら読んでた。主観的でたまに戻って話す、途中で映画の部分を飛ばしたくなった。獄中だけち食べ物の描写が思い入れある。肉や砂糖漬けフルーツ、紅茶がこんなに美味しそうで幸せを表現するものとして書かれるなんて。そしてランプの作る影がこんなに大切に映るなんて。二人の性的描写はわかる人にしかわからないように書いていたのかな。何が起こってるのかいまいちわからなかった。

Posted byブクログ

2015/12/30

10/4 読了。 政治犯の青年バレンティンと同性愛者で未成年淫行犯のモリーナは、同じ牢に収容されていた。映画好きのモリーナは、毎晩消灯のあと、お気に入りの映画のストーリーを微に入り細に入り語って聞かせる。シニカルなバレンティンは話に茶々を入れてモリーナをうんざりさせたが、ある日の...

10/4 読了。 政治犯の青年バレンティンと同性愛者で未成年淫行犯のモリーナは、同じ牢に収容されていた。映画好きのモリーナは、毎晩消灯のあと、お気に入りの映画のストーリーを微に入り細に入り語って聞かせる。シニカルなバレンティンは話に茶々を入れてモリーナをうんざりさせたが、ある日の夕食後に食あたりを起こし、モリーナに手厚く看病されてからしおらしくなってくる。2人のあいだには次第に友情以上の感情が芽生え始めるが、実はモリーナはバレンティンから政治グループの情報を引き出す代わりに、仮釈放を早めてもらう約束を所長と結んでいたのだった。 モリーナーーーーーーー!!!!!!!刑務所の暗闇がふたりの心を解き放つアジールでもあったという皮肉な設定、モリーナが語る映画のヒロインはみな二面性があり自分のもうひとつの顔を恐れているという技巧の面も素晴らしかったけど、やっぱりこれはモリーナのキャラクターあっての小説でしょう!日本語で端的に言っちゃえばオカマなんだけど、キャラ造形の圧倒的なリアリティ、素晴らしい。最後にバレンティンが頭の中で呼ぶのはかつて付き合っていたヨーロッパ女の名前だけど、脳内での彼女との会話がだんだんとモリーナとのそれにすり替わっていくところで号泣。モリーナは命と引き換えに、どんな形であれバレンティンの心に"残る"ことを選んだのだろう。

Posted byブクログ

2014/11/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] ブエノスアイレスの刑務所の監房で同室になった二人、同性愛者のモリーナと革命家バレンティンは映画のストーリーについて語りあうことで夜を過ごしていた。 主義主張あらゆる面で正反対の二人だったが、やがてお互いを理解しあい、それぞれが内に秘めていた孤独を分かちあうようになる。 両者の心は急速に近づくが―。 モリーナの言葉が読む者を濃密な空気に満ちた世界へ誘う。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2014/10/08

この一冊を読んだだけでまるで何本もの映画を見たような気分になりました。 作中で映画を語るモリーナの描写力は素晴らしく、実際の映画は見たことはありませんが恐らく実作品以上に美しく想像させられていると思う程です。 ハッピーエンドではありませんが胸の中に何時迄も美しい思いと共に残る作品...

この一冊を読んだだけでまるで何本もの映画を見たような気分になりました。 作中で映画を語るモリーナの描写力は素晴らしく、実際の映画は見たことはありませんが恐らく実作品以上に美しく想像させられていると思う程です。 ハッピーエンドではありませんが胸の中に何時迄も美しい思いと共に残る作品です。

Posted byブクログ

2014/04/08

左翼政権と軍事政権がころころと交代する南米の政治状況が背景です。ゲイと左翼政治犯が刑務所で同室となり、もちろん二人の背景は全く違うわけですがモリーナの語る映画のあらすじを通じて二人の関係が濃密に交差していきます。映画でモリーナを演じたウイリアム・ハートの演技が印象的でした。

Posted byブクログ

2013/12/29

 1979年発表、アルゼンチンの作家マヌエル・プイグ著。監房で同室になった同性愛者モリーナと革命家バレンティン。モリーナは映画に詳しくバレンティンに映画のストーリーを語り続ける。主義主張の正反対の二人だったが徐々に互いを理解し合い、そこには愛が芽生えたかに思えたが、モリーナがバレ...

 1979年発表、アルゼンチンの作家マヌエル・プイグ著。監房で同室になった同性愛者モリーナと革命家バレンティン。モリーナは映画に詳しくバレンティンに映画のストーリーを語り続ける。主義主張の正反対の二人だったが徐々に互いを理解し合い、そこには愛が芽生えたかに思えたが、モリーナがバレンティンに近づいたことには事情があった。文章のほぼすべてが二人の会話だけで構成され、映画のストーリーが滔々と語られる。  会話で話が進行していくので、刑務所の話にしてはほとんど生々しい描写はなかった。映画の話の醸す雰囲気のせいでもあるのだろう。ロマンチックで悲しい。同性愛に関しても、文章の影響で肉体的な部分が削ぎ落とされている印象を受ける。そしてそこに見えてくるのは、もっと観念的で本質的な部分、異性愛者と何ら変わりのない愛だ。二人の関係は結局のところ外部の圧力によって引き裂かれしまうのだが、少なくともそこに愛があったことは事実だ。作中でも書かれていたが「自分に起きたいいことは大事にする、たとえ長続きしなくてもだ」ということだろう。そう考えると、バッドエンドを考慮しても、モリーナの人生はそれなりにハッピーだったのかもしれない。  ところで終盤、モリーナは何を思ってバレンティンから情報を教えてもらったのだろう。シンプルに考えたら、すべてがうまくいってバレンティンの助けになりたい、ということだろう。しかし私にはどうも罪滅ぼしの意味が含まれている気がする(何せバレンティンをだましていたのだから)。つまり、すべてが失敗して自分が破滅的な最期を迎えたとしてもそれならそれで満足だ、というようなことだ。

Posted byブクログ