小銭をかぞえる の商品レビュー
同棲した女性が、ぬいぐるみ心酔し、徐々にそれが煩わしくなり主人公と口論、暴力へと発展し最終的には女性が大事にしていたぬいぐるみを引き裂き無残な結末を遂げる「焼却炉行き赤ん坊」と、自費出版の経費が必要となり、同棲した女性の父から金を借り、更には旧友からも金をせびる「小銭を数える」。...
同棲した女性が、ぬいぐるみ心酔し、徐々にそれが煩わしくなり主人公と口論、暴力へと発展し最終的には女性が大事にしていたぬいぐるみを引き裂き無残な結末を遂げる「焼却炉行き赤ん坊」と、自費出版の経費が必要となり、同棲した女性の父から金を借り、更には旧友からも金をせびる「小銭を数える」。両作とも無残な結末を迎えることになるが、女性への暴力、そして自分の描いている通りに行かず、苛立つ主人公の描写は素晴らしい。人間だれしも、暴力的な要素を持っているだろう。それを包み隠さず綴れる作者の敬意を表したい。
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二編続けて同棲中の恋人を攻撃(口撃)していたのでちょっと食傷気味です。 あまりに身勝手な動機(自己中心的な思考)は滑稽でもあるものの、ただの未成熟なオヤジの文学的な日記になっているのが残念かな。
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町田康の推薦文に惹かれて 初、西村賢太。 さいてーの男すぎて むかつくけど 笑えてくせになりそう ほかのも読んでみよう
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
芥川賞作家西村賢太氏の作品『小銭をかぞえる』を読了。2編の短編が収められている作品だが、2編とも私小説である。作者のことはご存知の人も多いかもしれないが最近では珍しい無頼派だ。定食につかず、志だけは高く、また男女関係ではとてもクラシックな亭主関白系であるという絶滅危惧種のような男性らしい(メディアにでている情報なので本当かどうかはわからないが。。)二つの作品はそういった著者の無頼ぶりが赤裸々に描かれている。読者は主人公=著者のとんでもないだめだめぶりを読まされる訳だが、これが不思議にダメージが残らない。普通あまりにワイルドすぎる人の情報に接すると結構疲れるのだが、西村賢太作品を読んでも倦怠感はないし驚くぐらいにすっきりした読後感が残る。なぜだかはわからない。かれの人間性な訳はないだろうし、その辺りが知りたいからこれからも彼の作品は読んでしまうかもしれないとも思った。そう意味では不思議な作品だ。
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「小銭をかぞえる」は藤澤清三の自費出版のために金策に右往左往する貫多の姿が印象的だ。作品を通して一貫しているのは貫多の自分本意な態だ。筆者も敢えてそうしているであろうほど、清々しいほどのクズっぷりだ。書店店主を恫喝し酒の力を借りて曾て旧友を訪問し借金を迫り同居人を自分勝手な論理で...
「小銭をかぞえる」は藤澤清三の自費出版のために金策に右往左往する貫多の姿が印象的だ。作品を通して一貫しているのは貫多の自分本意な態だ。筆者も敢えてそうしているであろうほど、清々しいほどのクズっぷりだ。書店店主を恫喝し酒の力を借りて曾て旧友を訪問し借金を迫り同居人を自分勝手な論理で捻じ伏せる。しかも金策をしているわりにはこの男に本質的な危機感はなく無駄遣い甚だしい。悲劇も突き詰めれば喜劇になるが、まさにその味わいである。 しかし「焼却炉行き赤ん坊」は頂けない。従前の作品は、実体を超越した自己として「貫多」を描き出し、私小説ながらリアリティが欠如した大正~昭和初期のような香りが漂っていた。本作は貫多と秋恵の日常風景に照準が置かれ生活感が前面に出ている。そのため病床に臥す同居者に暴挙を働く場面などは妙に棘がある。これまで貫多の小市民的で且つどこか他人事風な描写がユーモラスを生み出し、どこか愛らしさや親しみを齎していたが、単に短気で暴力的な男に成り下がってしまっているのが残念だ。「小銭をかぞえる」も同様。筆者の筆力の向上と私小説というのが裏目に出て、何か秋恵に異様なまでの悲壮感と同情心を抱いてしまう結果になった。
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「焼却炉行き赤ん坊」、「小銭をかぞえる」の2作が収載されている。両作品とも、自分勝手で男尊女卑の考え方が色濃いダメダメな男が主人公。文体がとても個性的で、一昔前の小説に見られるような表現が多用されている。内容的にも文体的にも昔の話の印象を受けるため、文学作品としては受け入れやすい...
「焼却炉行き赤ん坊」、「小銭をかぞえる」の2作が収載されている。両作品とも、自分勝手で男尊女卑の考え方が色濃いダメダメな男が主人公。文体がとても個性的で、一昔前の小説に見られるような表現が多用されている。内容的にも文体的にも昔の話の印象を受けるため、文学作品としては受け入れやすい。しかし、現在社会に当てはめると、あまりにもむちゃくちゃな実態であり、女性の読者などは引いてしまうのではないか、とも感じた。過激な言い回しが出てくる一方、話の展開という点では驚きが少なく、ちょっと物足りなさを感じた。
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ハードコアパンクである。 平成の無頼な文士としての面目躍如。 人でなしっぷりが凄まじい。 こういう知人は持ちたくないねぇ。 芥川賞作家でテレビのコメンテーターとしても名を上げているにも関わらず生活にさえ窮する状況なのかと首を捻ったが、これは出世前の話だった。 作品のキモは、藤澤清...
ハードコアパンクである。 平成の無頼な文士としての面目躍如。 人でなしっぷりが凄まじい。 こういう知人は持ちたくないねぇ。 芥川賞作家でテレビのコメンテーターとしても名を上げているにも関わらず生活にさえ窮する状況なのかと首を捻ったが、これは出世前の話だった。 作品のキモは、藤澤清造全集の刊行遂行を理由とした身勝手な行動の自己正当化とその非常識な思考回路。 あぁ、もう酷いと思いながら、ところどころに挟み込まれる古本についての薀蓄に分野は異るものの同じコレクターとしての心理をくすぐられ理解を示してしまうのには我ながら困ってしまった。 彼女さんの実家への金の無心とそれにまつわるいざこざの罪滅ぼしに池袋西武のレストラン街で一人前1,500円也の高級焼きそば(しかし、高いよなぁ)を食おうと出掛けておきながら、時間潰しに入った古本屋で見つけた古本を手に入れるために高級焼きそば代と彼女さんの持ち金に手をつけるというくだりとかさ。 中古品は一期一会だからハズせないんだよ。見送って何度悔しい思いをしたことか。 まぁ、それはさておき。 なんだかんだ言いつつも彼女さんの描写がいじましく可愛らしい。でもなぜか脳内では、“女性器の形状に出力される「3Dプリンタ用のデータ」を他人に送信したとして逮捕・勾留されていた女性漫画家「ろくでなし子」さん”をキャスティングしてしまいました。
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【本の内容】 女にもてない「私」がようやくめぐりあい、相思相愛になった女。 しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は緊張をはらんだものになっていく。 金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、女が溺愛するぬいぐるみが悲惨な結末をむかえる「焼却炉行き赤ん坊」を...
【本の内容】 女にもてない「私」がようやくめぐりあい、相思相愛になった女。 しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は緊張をはらんだものになっていく。 金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、女が溺愛するぬいぐるみが悲惨な結末をむかえる「焼却炉行き赤ん坊」を併録。 新しい私小説の誕生。 [ 目次 ] [ POP ] 彼女がぬいぐるみに愛情を注ぐことに嫉妬・激怒し、暴言・暴力をふるう男(「焼却炉行き赤ん坊」)。 生活費を彼女にたかりながら、高価な古書に金をつぎ込み、みみっちい金勘定をする男(表題作)。 9割は筆者の投影という、いかんともしがたいダメ男をねちっこく描く。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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内容は、冴えない漢と女の痴情のもつれ、寂しい懐事情という取るに足らないもの。でも「生活」を書くってのはそういうことなのかもしれない(とはいえ、私小説タッチの主人公の生活は、大半の人のそれとはかけ離れているけれど)。文体というか語りの調子、台詞回しが心地よくてするする読めてしまう。...
内容は、冴えない漢と女の痴情のもつれ、寂しい懐事情という取るに足らないもの。でも「生活」を書くってのはそういうことなのかもしれない(とはいえ、私小説タッチの主人公の生活は、大半の人のそれとはかけ離れているけれど)。文体というか語りの調子、台詞回しが心地よくてするする読めてしまう。こういう作家が同時代にいるってだけで、ちと幸せになる(ちょっと大袈裟?)。
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初めて西村賢太の文章を読んだのは、名前は忘れたが文芸誌の連載で、日記調に書かれたものであった。 その連載の文章がなんとなく気にかかってはいたものの中々手を出せず、苦役列車は入手済みではあるが未読で、さて今回この短篇を購入した後押しは解説が町田康であったからである。 感想からズバ...
初めて西村賢太の文章を読んだのは、名前は忘れたが文芸誌の連載で、日記調に書かれたものであった。 その連載の文章がなんとなく気にかかってはいたものの中々手を出せず、苦役列車は入手済みではあるが未読で、さて今回この短篇を購入した後押しは解説が町田康であったからである。 感想からズバリ言えば、西村賢太、面白い! 不穏な、苦笑まじりのニヤニヤ笑いがこみ上げて来る。 町田康の言葉を借りて言えば、体裁を整えずに書かれているのにめっちゃ面白い。 我が儘で男臭く、妙な信念があり、女を愛しつつやはり自分の激高的感情に抗えずカッとなり、あとから少し後悔する、そんな西村賢太の己を等身大に、残酷なまでに等身大に描いた私小説。 これから他の作品も読みあさって行きたい。
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