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小銭をかぞえる の商品レビュー

3.7

90件のお客様レビュー

  1. 5つ

    13

  2. 4つ

    33

  3. 3つ

    24

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    2

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2011/05/22

 5冊目の西村賢太。『焼却炉行き赤ん坊』というタイトルを見た時には戦慄が走った。ついにやりやがったかと思わずにはいられなかったが、流石にそんなことはなかった。  いつもなら主人公のイカレ具合にぐいぐい引っ張られる同著者の小説だが、『焼却炉~』では珍しく女性側に「こいつやべえよ」と...

 5冊目の西村賢太。『焼却炉行き赤ん坊』というタイトルを見た時には戦慄が走った。ついにやりやがったかと思わずにはいられなかったが、流石にそんなことはなかった。  いつもなら主人公のイカレ具合にぐいぐい引っ張られる同著者の小説だが、『焼却炉~』では珍しく女性側に「こいつやべえよ」という気持ちを抱いてしまった。石女のことを考えたらそんなことは口が裂けても言えない(むしろ石女とも言えない)のだけど、人が抱く痛切な悩みは、傍から見たら喜劇的に映ってしまうこともままある。  翻って著者に眼を向けてみる。全てを晒して私小説・・・などと何かの宣伝で見たが、あくまで小説と言うスタイルを採っている以上。全てを晒しているなどと言うことは絶対にない。田山花袋だって、弟子の残り香がする蒲団をくんくんしただけでは済まなかったのかもしれない。  晒されていない物が何なのかは分からないが、それだけにまだまだ他の小説にあたってみたい作家だと思っている。

Posted byブクログ

2011/08/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

もし映像でのみこの物語を見ることができなかったら どれほど鬱屈とした気分になるだろう。 こんなサイテー男と同居している女にも嫌悪感しか感じないだろう。 けれど 西村賢太の圧倒的な文章力によって、何かが足りない者同士が一緒に生活していく哀れで無様な物語を、けして陰鬱に思わせない。 「俺」の会話の文体は、時にドラマの『渡る世間は鬼ばかり』のようであり、時に時代劇のようだ。この手前勝手なサイテー男に「僕という男はすっかり手持ち無沙汰になってしまうな」などと言われると可愛らしく思えてしまうからタチが悪い(笑)。 又、筆者が好んで使う「根が~に出来ている」という言い回しが可笑しくて、物語の展開がいかに悲惨で救いようがなくとも滑稽な面白みを味わうことになるのだ。 小銭を数える女も、それを見ている男も等しく哀れで滑稽だ。 けれど、人と暮らすという事、生活するという事は、滑稽な姿をさらけ出して、許しあうと言うことの繰り返しなのだと思う。

Posted byブクログ

2011/05/03

201105 焼却炉行き赤ん坊 小銭を数える の二本立て。 ・大事にしている資料に何かしてやろうなぞいう気持ちは、てんから持ち合わせてはいなかったのかもしれぬ。 それを逆の立場だったらそうした陰険な復讐を〜 と、自分の色眼鏡でしか相手の気持ちを測れない。 というのは程度の...

201105 焼却炉行き赤ん坊 小銭を数える の二本立て。 ・大事にしている資料に何かしてやろうなぞいう気持ちは、てんから持ち合わせてはいなかったのかもしれぬ。 それを逆の立場だったらそうした陰険な復讐を〜 と、自分の色眼鏡でしか相手の気持ちを測れない。 というのは程度の差はあれ、誰にも当てはまる問題であって、 だからこそ、物語は人の数だけ生み出される。 という、ちょっと、本筋とはそれた感慨を抱いたのだけど。 この作者の本は数を読むとどんどん立体的になっていくので中毒のようです。 郵便局員は苦役列車ですよね。

Posted byブクログ

2011/04/26

金がなくて、短気で、モテなくて、どうしようもない男の話なんだけど、赤の他人だということもあり興味がそそられてしまう。 自虐ネタもここまで酷いと笑えねーよwwwって笑っちゃう感じ。 まぁ当人と実際の付き合いがなくて、小説として読んでいるからこそ笑えるんだけど。 この小説は筆者の人...

金がなくて、短気で、モテなくて、どうしようもない男の話なんだけど、赤の他人だということもあり興味がそそられてしまう。 自虐ネタもここまで酷いと笑えねーよwwwって笑っちゃう感じ。 まぁ当人と実際の付き合いがなくて、小説として読んでいるからこそ笑えるんだけど。 この小説は筆者の人生をほぼそのまま書いた私小説。 西村賢太はずっと私小説を書いてきた人で、これからも私小説以外のものを書く気はないらしい。読む前にそれを聞いたときは「ネタ切れするんじゃないか?」と思ったけど、実際読んでみると考えが変わった。 この本に収録されている「小銭をかぞえる」と「焼却炉行き赤ん坊」の2作品だけでも、藤澤清造の全集を刊行しようとしている貧乏で短気な男が恋人と喧嘩して~ってところまでが同じなのに、1冊読んだだけでこの人の人生全てが見通せるわけでもなく、もっと色んな本を通して何回でも見たくなる。

Posted byブクログ

2011/04/19

男が最低すぎてついて行けんかった。。。町田康が書く男は最低でも好きになれるけど、これは無理やったぜ、ごめん。

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2011/04/09

他人だからおもしろい。 彼氏か家族だったら勘弁してほしい、と思う男の話。 カテゴリを、小説にするか随筆にするか、すこし悩んだ。 表題作ともうひとつ、同じ登場人物と思しき主人公とその彼女の話が、収録されている。 主人公の男は金遣いが荒く、荒い割に金を借りる、ひとことでいえば不届...

他人だからおもしろい。 彼氏か家族だったら勘弁してほしい、と思う男の話。 カテゴリを、小説にするか随筆にするか、すこし悩んだ。 表題作ともうひとつ、同じ登場人物と思しき主人公とその彼女の話が、収録されている。 主人公の男は金遣いが荒く、荒い割に金を借りる、ひとことでいえば不届きな男である。その彼女もまた、愛敬と哀愁があるが、すこし変わっていて、なんともいえないリアルな男女の日常の切り取りである。 とにかく、読んでいてむかむかした。むかむかするけど、おもしろいんだなぁ。 私のなかで、男のフォルムは完全にマンガ家の蛭子さん。 ここまで自分をさらけだして小説を書くってのは、すごいことだ。 ただやっぱり、他人事だからおもしろいのでしょう。

Posted byブクログ

2011/04/05

表題作に加えて「焼却炉行き赤ん坊」一編を収録。 どちらもラストの惨めさったらない。タイトルになっているだけあり、小銭をかぞえるシーンの描写は秀逸。 ぬいぐるみを可愛がったり、八つ当たりするのも、結婚できないが故の間接的な児童虐待であろう。

Posted byブクログ

2011/03/29

ぶっきらぼうのようでチャーミングのような古風な独特の語り口が気持ちいい。 併録の『焼却炉行き赤ん坊』の方が面白かった。人としての最低さ加減、 めちゃくちゃ加減がぶっ飛んでいた。解説の町田康も面白かった。 MVP:なし

Posted byブクログ

2011/03/27

とにかく重い。でも時折「プークスクス」となるのはどうしてだろう。 会話に使われている文体がミョーに古めかしくて、おもしろさを助長する。 こんなにサイテーな男はいないはずだと思いたいが、実際にいたら妄信的に愛するかもしれない。

Posted byブクログ

2011/03/15

賢太の小説は若い頃の話と中華レストランでウエイトレスとして働いていた、その親から300万円借りた女性との同棲していた頃の話があるが、今回は後者。 まあ、ほんと、今回も最低な男の話です。芥川賞の受賞コメントで、自分よりもダメな人間がいると思ってくれればといったことを話していましたが...

賢太の小説は若い頃の話と中華レストランでウエイトレスとして働いていた、その親から300万円借りた女性との同棲していた頃の話があるが、今回は後者。 まあ、ほんと、今回も最低な男の話です。芥川賞の受賞コメントで、自分よりもダメな人間がいると思ってくれればといったことを話していましたが、もうこれはなんというか、普通の人にとって自分よりダメなやつがおると思えるようなレベルじゃない。次元が違う。それでも面白く読めるのは、自分を笑ってやろうという客観的な視点があるから。 毎回毎回書いていることは同じだけど、毎回笑える。

Posted byブクログ