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からまる の商品レビュー

3.7

64件のお客様レビュー

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2011/04/03

名前も知らない、かたつむりを飼う女。天窓がある部屋に、彼女が出入りするにまかせる日々を送っていた筒井だったが・・・「まいまい」 いつも男たちにいいようにされてしまう田村。「クラゲの血って何色なの?」彼女の問いに答えられる人は現れるのか・・・「ゆらゆらと」 趣味の釣りをしていた...

名前も知らない、かたつむりを飼う女。天窓がある部屋に、彼女が出入りするにまかせる日々を送っていた筒井だったが・・・「まいまい」 いつも男たちにいいようにされてしまう田村。「クラゲの血って何色なの?」彼女の問いに答えられる人は現れるのか・・・「ゆらゆらと」 趣味の釣りをしていたら、見知らぬ女子高生につきまとわれ・・・「からまる」 大嫌いな篠田さんの子供を孕んだ19の秋。鎧に覆われた中に満たされる液体がこぼれても、きっとあの人がまた満たしてくれるだろう・・・「あししげく」 金魚を死なせてしまった本当の訳と、海辺で出会ったおじいさん。星の砂が教えてくれた、とても大事な事・・・「ほしつぶ」 華奈子を焼きつくす炎を見せた男。その熱を失いたくはなかったのに・・・「うみのはな」 病院で出会ったキリンレモン好きな老人・大原さん。彼が女医の葛月に残した「ファイブ・スター」の意味は・・・「ひかりを」 以上7編の短編集。 千早さん、『魚神』でデビューして、次の作品もちょっとどろっとした作品集だったから、今回の出だしのあっさり加減に少し驚き。 「ふーん、今回はまっとうな現代ものかぁ・・・」といささか拍子抜けの感もあったのですが、読み進めていく内にそんな自分は甘かったと反省。 やっぱり千早さんの作品はどこか独特なのですねぇ。 今回は登場人物が少しずつリンクしていくんですが、後の方になればなるほど各キャラのバックボーンが見え隠れして、ひとつひとつの作品がすごく味わい深くなっています。 私のお気に入りは「ほしつぶ」。 ジジコンなので、この作品に出てくるおじいちゃんにノックアウトでした。 こんな風に、胸に抱えるもやもやを温かく包んでくれる人がそばにいたらしあわせだな。 彼が残した言葉は、いいものがたくさんありました。 「わかるはずがないんだよ、私たちには。自分がどうなるかも、自分が何であるかも。だから、私たちは祈るしかない。命が大切であって欲しいと願うしかない。でもね、君はこうして星の砂に出会えた。きれいだって思えただろう。小さな痛みや死も知ることができた。今はまだ何が正しいかわからなくても、君の胸は痛んだ。それが大切なのだと、わたしは思うよ」 「世界は美しくないかい?」 「彼らは海底の星なんですって。地味に見えるナマコもね。海の底で光を望んでいる。動くから生き物なんじゃなくて、どんなかたちでも生きるから生き物なのだとおもいますよ」 最期まで生きようとした大原さんだからこそ発することができる、胸に響く言葉たち。 今後も彼の言葉をいくども思い返す事があるかもしれないな。

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2011/03/30

登場人物が少しずつ繋がっていてひとつの話しの主人公がバトンを渡すように周りの人間次の話しのが主人公になって各々の視点で語られる連作短編集。 リレー小説と言うんだろうか割とよくあるパターンなんですがそれぞれの登場人物が抱える悩み、喜び、悲しみがうまく描きだされてると思う。 それぞれ...

登場人物が少しずつ繋がっていてひとつの話しの主人公がバトンを渡すように周りの人間次の話しのが主人公になって各々の視点で語られる連作短編集。 リレー小説と言うんだろうか割とよくあるパターンなんですがそれぞれの登場人物が抱える悩み、喜び、悲しみがうまく描きだされてると思う。 それぞれの話しに出てくる無脊椎動物と人間との絡み合わせ方もとってもよく出来ている。 デビュー作が幻想的で恥美的なファンタジーで二作目がちょっとホラー風味な寓話めいた物語だったんで幻想ホラーファンタジーの作風にすすむのかと思いきや現代のリアルさを感じさせる物語で千早さんのこれからの可能性がさらに広がった感じがしました。 幻想っぽくはないけれどどことなく危険なぞくっとさせる彼女独特な雰囲気はこの短編集でもしっかりと味わうことができます。 中でも屈折した少年の心を描いた「ほしつぶ」とそれに繋がる華奈子の話しの「うみのはな」が秀逸でした。

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2011/03/28

この作家のことは知らなかったが、帯に池澤夏樹氏が高評価なコメントを載せていたので、読んでみた。 『からまる』というタイトル通りの物語で、七編の連作短編のそれぞれの主人公がすべてつながっており、孤独を気取っている人々もみな誰かとからまりあい生きているという主題である。 非常に向日性...

この作家のことは知らなかったが、帯に池澤夏樹氏が高評価なコメントを載せていたので、読んでみた。 『からまる』というタイトル通りの物語で、七編の連作短編のそれぞれの主人公がすべてつながっており、孤独を気取っている人々もみな誰かとからまりあい生きているという主題である。 非常に向日性の強い作品で、2008年に小説すばる新人賞を受賞してデビューしたばかりの作家のようだが、児童文学に進んでいく可能性があるんじゃないかと思いながら読んだ。

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2011/03/07

7つの短篇連作。登場人物は皆、日常の中で寂しさ、不安、孤独を感じている。でも、ふとした人との出会いや関わりによって癒されていく…人は一人では生きていけない事を再認識させてくれる。「ふがいない僕は空を見た」が心揺さぶる、こちらは心染みる作品!ラストはどれも救いがあり爽やかな読後感で...

7つの短篇連作。登場人物は皆、日常の中で寂しさ、不安、孤独を感じている。でも、ふとした人との出会いや関わりによって癒されていく…人は一人では生きていけない事を再認識させてくれる。「ふがいない僕は空を見た」が心揺さぶる、こちらは心染みる作品!ラストはどれも救いがあり爽やかな読後感でした♪

Posted byブクログ