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夜想曲集 の商品レビュー

3.7

119件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    42

  3. 3つ

    36

  4. 2つ

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2024/05/13

カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『...

カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。 『夜想曲集』(2009年)は、「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」という副題が付いた、初の短編連作集。どの物語も、人生の後半や終盤にある人物が、自らの過去(=夕暮れ)を、ジャズ、クラシック、ポピュラーなどの音楽とともに振り返ります。 この連作短編集を読んで私は、自分が若い頃にこの本に出会ったならば、今とは違い、ストーリーの展開や場面設定の巧妙さにばかり感嘆しただろうと思います。しかし、人生も優に半ばを過ぎ、振り返る時間が堆積した今、私がこの短編集から読み得たのは、感情の渦に巻かれ、愚かしい選択を繰り返してきた人間の、それでも肯定する他ない人生への愛着でした。 いずれにせよ、これが私の人生だった。そしてこれからもそれは同じ――。作家と出身地を同じくする私は、身勝手にも、遠いイギリスからそんな激励をもらった気持ちなのです。(K) 紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2012年1月号掲載。

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2022/08/07

短編。男女の関わりと、音楽を絡めた作品群。一作目の老歌手が好き。相手への気持ちと自分の有りたい姿を切り離して、違う道に進むのが哀愁ただよいつつも気持ちが良い。

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2022/08/20

短編集。‥‥の割に情報量が多い。一気に読むと疲れるかもしれない。ユーモアは感じたが、いつものすっとぼけたような趣きは感じられなかった。

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2022/06/05

音楽と夕暮れをめぐる五つの短編集 相変わらず靴の中に小石が入ったような 微妙な違和感は相変わらず 音楽のオチがついてるのはそのうちの二編 長年連れ添った妻にヴェネツィアで唄を捧げる 『老歌手』、不思議な才能をもつ美女との レッスンを繰り返す『チェリスト』が好き

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2022/06/02

チェロの師匠の話が衝撃で面白かった。 船と歌のシーンは、ロマンティックなムードの情景が頭に浮かび、印象に残っている。 素敵だった。

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2022/03/11

夜想曲集(2009)の時代背景は、訳者後書きによるとイシグロの言葉では「ベルリンの壁の崩壊から9.11まで」を想定しているそうです。予定していたもうひとつの短編は、想定した時代がズレたため収載しなかったとの事で、時代設定はイシグロさんにとっては重要だったと分かります。 全ての作品...

夜想曲集(2009)の時代背景は、訳者後書きによるとイシグロの言葉では「ベルリンの壁の崩壊から9.11まで」を想定しているそうです。予定していたもうひとつの短編は、想定した時代がズレたため収載しなかったとの事で、時代設定はイシグロさんにとっては重要だったと分かります。 全ての作品が音楽と翳りのある男女のお話です。情景がどの作品でもリアルに感じられるので、私は彼らのすぐそば、ゴンドラの上、わざと散らかされた部屋、スイートルーム、モールバンヒルズ、、でやり取りを息を潜めて聞いているような感覚になりました。 素敵な恋愛小説だと思います。 しかし、イシグロさんの小説はどれをとっても同じのが無いですね。また違う作品も読みたい、読了後はイシグロロスになってしまい、中毒の様相を呈してきてます。 図書館にて。

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2022/01/22

カズオ・イシグロ氏の初短編集。「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」は、どれも夫婦や男女の微妙な関係や人生における変化を音楽をキーワードに綴られた、個性と雰囲気あふれる作品ばかり。著者の「五篇を一つのものとして味わってほしい」という言葉にも納得、シングルカットではなく、アルバムとして...

カズオ・イシグロ氏の初短編集。「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」は、どれも夫婦や男女の微妙な関係や人生における変化を音楽をキーワードに綴られた、個性と雰囲気あふれる作品ばかり。著者の「五篇を一つのものとして味わってほしい」という言葉にも納得、シングルカットではなく、アルバムとして美しく秀逸なCDを聴いたような読後感があった。それぞれに異なる都市の映像も目に浮かぶよう。個人的には冒頭の「老歌手」が印象深かった。ちなみにここに出てくる人物が他の一篇に出てきて「おっ!」と思うのも楽しかった。

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2022/01/12

「日の名残り」「わたしを離さないで」のカズオ・イシグロによる、音楽をテーマにした5作の短編集。著者の言う通り、5作は個別の作品でありながらも根底に流れているテーマのようなものは繋がっている。 それは主人公らしき人物の描写に表れている。皆一様に招かざる人か、あるいは本人が望んでな...

「日の名残り」「わたしを離さないで」のカズオ・イシグロによる、音楽をテーマにした5作の短編集。著者の言う通り、5作は個別の作品でありながらも根底に流れているテーマのようなものは繋がっている。 それは主人公らしき人物の描写に表れている。皆一様に招かざる人か、あるいは本人が望んでないのにこの場所にいる人である。さらに独り身であり、社会的立場が不安定で自分の才能に懐疑的である。 対して彼らが出会う人々の大半は夫婦であり、野心家で社会的に成功することに価値を置いている。しかもある程度自分の才能について確信がある。しかし成功に対するアプローチはバラバラで、それが基になって人間関係が不安定になっている。夫婦という本来安定した関係性が崩れることでその悲惨さがより鮮明になる。そして物語の最後に彼らは変化の瀬戸際に立たされる。この先上手くいくのか、いかないのかは明示されない。ただ彼らが変化するために主人公たちは存在した。そう考えると、主人公たちはただのキッカケだったとも言える。 カズオ・イシグロの作品はあらゆるところに引っ掛かる部分が用意してあり、素直に読ませてはくれない。時には語り手が本当のことを語ってないんじゃないかと疑う場面もある。それは短編になっても同じで、短編だからこそ気になった箇所を何度も読み返せる面白さがあった。 作中にある音楽についてたとえ知らなくても、サブスクですぐに調べて聞ける現代って良いね。

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2022/01/03

来年度の連載を文学談議にしようと思っている。その中の1回にカズオ・イシグロを取り上げたい。しかし、まだ2つの作品しか読んでいない。それで、古本屋で少し安くなっていた3冊を買ってきた。その1冊目。カズオ・イシグロの名前はノーベル賞をとる前から知っていた。村上春樹が新作が出れば必ず読...

来年度の連載を文学談議にしようと思っている。その中の1回にカズオ・イシグロを取り上げたい。しかし、まだ2つの作品しか読んでいない。それで、古本屋で少し安くなっていた3冊を買ってきた。その1冊目。カズオ・イシグロの名前はノーベル賞をとる前から知っていた。村上春樹が新作が出れば必ず読む作家だと言っていたから。「わたしを離さないで」は何かで話題になっていたのを見ていたので、だいたいのストーリーを知った状態で読んでしまった。その後にドラマも観た。そして、「忘れられた巨人」を読んだ。ずいぶんとテイストの違う2冊だが、どちらも徐々に徐々にひき込まれていった。本書は著者にとって初の短編集だという。しかし、それはあちこちで書きためたものを集めたというのではなく、1冊の本のために書き下ろしたのだそうだ。タイトルにもあるように「音楽」が5つの作品を通しての題材になっている。そして、「別れ」あるいはその「危機」が主題となっているようだ。唯一人2つの作品に登場するリンディという女性が言っている。「人生って、誰か一人を愛することよりずっと大きいんだと思う。」本当にそうだろうか。ちょっと気持ちが暗くなる。最も印象的なのは最初の作品。サンマルコ広場のテーブルとゴンドラの上でギターの伴奏に合わせて歌い上げる「老歌手」。2つの光景がいまも目に浮かぶ。いつかきっと行ってみたい。解説で中島京子さんが「笑い」をテーマにあげているが、僕はどうしてもどの作品にも「笑い」を見出すことができなかった。どれもこれも、深くて重いものを感じずにはいられない。

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2021/12/31

文学ラジオ空飛び猫たち第63回。 音楽と才能、人生の夕暮れに直面した人々の姿、夫婦の危機といったことをユーモアたっぷりに描く大人な短編集です。副題は「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」。 この短編集でもカズオ・イシグロ作品に共通して言える、自分は何者かというアイデンティティの問題が...

文学ラジオ空飛び猫たち第63回。 音楽と才能、人生の夕暮れに直面した人々の姿、夫婦の危機といったことをユーモアたっぷりに描く大人な短編集です。副題は「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」。 この短編集でもカズオ・イシグロ作品に共通して言える、自分は何者かというアイデンティティの問題が含まれていて、短いながらも彼の作品の魅力を味わうことができます。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/63-e1ajupc

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