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夜想曲集 の商品レビュー

3.7

119件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    41

  3. 3つ

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  4. 2つ

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2024/03/28

「ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーとその妻の絆とは—ほろにがい出会いと別れを描いた「老歌手」をはじめ、うだつがあがらないサックス奏者が一流ホテルの特別階でセレブリティと過ごした数夜を回想する「夜想曲」など、音楽をテーマにした五篇を収録...

「ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーとその妻の絆とは—ほろにがい出会いと別れを描いた「老歌手」をはじめ、うだつがあがらないサックス奏者が一流ホテルの特別階でセレブリティと過ごした数夜を回想する「夜想曲」など、音楽をテーマにした五篇を収録。人生の夕暮れに直面して心揺らす人々の姿を、切なくユーモラスに描きだしたブッカー賞作家初の短篇集。」 収録作品: 老歌手 降っても晴れても モールバンヒルズ 夜想曲 チェリスト 中島京子・選 カズオ・イシグロ作品は ①『浮世の画家』(飛田茂雄訳/ハヤカワepi文庫) ②『わたしを離さないで』(土屋政雄訳/ハヤカワepi文庫) ③『夜想曲集ー音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(土屋政雄訳/ハヤカワepi文庫) 「濃厚な語りで圧倒的な世界を構築する長編には、新作が出る度驚かされる。一方、著者が「こういうものが好きな人」のために書いたという『夜想曲集』は、イシグロのブラックユーモアがさく烈する短編集で、こちらもちょっと病みつきになるおもしろさがある。」 (『作家が選ぶ名著名作 わたしのベスト3』毎日新聞出版編 毎日新聞出版 p48 中島京子・選 カズオ・イシグロ より)

Posted byブクログ

2024/03/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

カズオ・イシグロの作品を読むのはこれで三作目。 これまで読んだ二作の長編(「私を離さないで」と「遠い山なみの光」)と異なり、今回は短編集でした。これまた全く作風が異なり、エンタメ寄りの味わいのある作品集でした。器用な方なのですね。 ・・・ そんな短編集の中で私が一番気に入ったのは「降っても晴れても」ですかね。 英語教師としてフラフラしつつ?今はスペインで教えている主人公(50ちょいのおっさん)が、大学時代の仲間の元へ遊びに行く話。 この二人(夫婦)とも世間でしかるべく出世を果たした模様。ただし来てみると人柄も何となく変わり、どうにも不穏な空気。諸々聞くと、主人公氏は二人のこじれた仲を取り持つべく呼ばれた模様。彼は孤軍奮闘するさなかで、物事がうまく運ばないという不穏さを引きずりつつ、徐々にユーモラスなテイストが混じりつつ進行してゆく模様は技ありでありました。 ・・・ なお、それ以外の短編もなかなか良かったです。 因みに解説によると、夫婦仲というテーマが一つ。もう一つは音楽とのこと。特に前者では明言されない不穏な夫婦仲を描く様子がどれにも挿入されており良かったですね。お尻がむずむずしてくる感じ。 一応以下、簡単に。 「老歌手」・・・一発飛ばした歌手が、再ヒットを目指し愛する妻と別れるために用意した儀式とは。行き過ぎた資本主義ショービズ界と純朴な共産圏出身の若者とのギャップがスパイスに。 「モールバンヒルズ」・・・アーティストを目指す若者が田舎でカフェを営む姉夫婦の居所で過ごす日々。そこで出会うプロの演奏家夫婦とのふれあいを描く。 「夜想曲」・・・これも良かった。才能は十分、ルックスだけ欠けた男。妻に出ていかれ、その代わりに整形費用を出すという元妻。とうとう離婚も整形手術も承諾した男は、術後に一流ホテルで日々を過ごす。隣室にはご意見番的芸能人が手術後の安静のため過ごしており、彼女の勢いに次第に翻弄されてゆく。ドタバタ系。 「チェリスト」・・・決してチェロを弾かない「大家」が指導する、才能ある若手チェリストの話。若手チェリストの、師匠を見る目と揺れる心の具合。これもまたなかなか良かった。 ・・・ ということで、イシグロ作品、三作目を読了しました。 三作品読んで感じたのは、氏の「不穏」の表現の秀逸さです。Uneasinessとでも言いましょうか。嫁が普通のふりして怒っている時に似ています(似ていません)。 明示的ではなく、説明的でもなく、人物はしっかり描かれているのに、何だか尻が落ち着かんのです。 こういう「味の効かせ方」もあるのか、と感心した読書体験でした。他の作品も続けて読んでみたくなりました。

Posted byブクログ

2024/01/22

なんかお洒落な感じの短編集だった。人生の黄昏的なところを描く人なのかな。ちょっと沁みるところもある。夫婦関係が悪化する様子とか。 若いとき読んだ「日の名残り」はものすごい退屈だったけど、今読んだら面白いのかな。クララ~は面白かったし。

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2024/01/14

4冊目のカズオ・イシグロの作品である。 カメレオンのように作風を変えられる、“ひとり映画配給会社”と私は彼を呼んでいる。 そのイシグロは、実は音楽にも精通していて、シンガーソングライターを目指していたこともあったとか。そんなところから生まれているのがこの短編集で、5篇をひとつとし...

4冊目のカズオ・イシグロの作品である。 カメレオンのように作風を変えられる、“ひとり映画配給会社”と私は彼を呼んでいる。 そのイシグロは、実は音楽にも精通していて、シンガーソングライターを目指していたこともあったとか。そんなところから生まれているのがこの短編集で、5篇をひとつとして味わうように求められており、すべてミュージシャン(もしくは音楽愛好家)を題材としている。 今まで読んだ中で、最も読みやすい、ムード漂う作品集である。ドラマ性や落ちはなく、人生の一瞬を描く趣向となっている。長編小説とは全く異なる素顔のイシグロの感性が垣間見られた。 主人公は皆、才能はあるが認められておらず、たゆたゆと人生を彷徨っている。読み手も、物思いに耽りながら、カフェで頁をめくるのにうってつけの良書ではなかろうか。 私のお薦めは、コメディタッチの強い中盤3作品よりも、コリッとした読後感のほろ苦さ(これが著者の本領)がある「老歌手」、「チェリスト」。 ヘンな言い方だが、カズオ・イシグロって大家のように思って見てたけど、現代作家なんだよね。

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2023/02/01

これもブックオフで買った。音楽家や音楽を愛する人の短編集。 間抜けだったり、見栄っ張りだったり、強欲だったり… あんまり良い奴は出てこないけど、他作品のように重苦しくはない。もの悲しくはあるけど。

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2022/12/02

常に音楽が流れている短編集。 冷めきった関係を復元しようとする老歌手や、メジャーデビューのために整形手術を受けるミュージシャンとか、設定が微妙に現実離れしているところに面白さがあって、すぐ読めてしまいます。 面白くて品のある短編集です。

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2022/11/23

カズオイシグロの短編集。タイトルにある「夕暮れ」とは、サンセットタイムだけではなく、人生の夕暮れ(中年から初老の世代)とか男女関係の夕暮れ(別れの予感がある状態)を指しているようだ。熟年離婚、旅先での喧嘩、不安を感じる結婚相手など、何かしら影を感じる設定である。 登場人物はいずれ...

カズオイシグロの短編集。タイトルにある「夕暮れ」とは、サンセットタイムだけではなく、人生の夕暮れ(中年から初老の世代)とか男女関係の夕暮れ(別れの予感がある状態)を指しているようだ。熟年離婚、旅先での喧嘩、不安を感じる結婚相手など、何かしら影を感じる設定である。 登場人物はいずれも「若さ」「付き合いたての頃」「才能」への憧れを持っており、やるせなさを織り交ぜながら切ないストーリーが展開する。それでも、コメディの要素が含まれる話も2話入っていて、ユーモアたっぷりの登場人物とぶっ飛んだ展開に驚かされ、思わずクスッと笑ってしまう場面もあった。切ないストーリーでテンションが下がった読み手としては救われる。

Posted byブクログ

2022/11/22

音楽の才能と人生の折り返し。広い世間と身の回りとの違和感を、ユーモアを交えて描く。 同じ作者の短編集で、同じテーマを繰り返す。扱い方や描き方の相違点や共通点を眺めていく楽しみ。五つの短編全てが書き下ろされたということも納得の一冊でした。

Posted byブクログ

2022/09/23

副題は「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」。 全盛期を過ぎた歌手が再起を目指して愛する妻と別れようとする「老歌手」。 音楽の趣味でつながった大学時代の友人夫妻との、今となっては埋めようもない価値観の溝をコミカルに描く「降っても晴れても」。 メジャーデビューに目指し作曲にいそし...

副題は「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」。 全盛期を過ぎた歌手が再起を目指して愛する妻と別れようとする「老歌手」。 音楽の趣味でつながった大学時代の友人夫妻との、今となっては埋めようもない価値観の溝をコミカルに描く「降っても晴れても」。 メジャーデビューに目指し作曲にいそしむ主人公が旅回りの音楽家の夫妻とのわずかな交流の中に、人生のままならなさを感じる「モーバンヒルズ」。 「夜想曲」は、「老歌手」で出てきたリンディが再び登場する。 風采の上がらないサックス奏者が整形手術を受けさせられ、術後を過ごすホテルの隣室に彼女がいる。 二人とも顔を包帯でぐるぐる巻きにされている中で、退屈しのぎに深夜の高級ホテルの中を歩き回る。 なんとなく『ローマの休日』のような、昔の映画にあるロマンチックコメディ風のドタバタ。 が、結末はちょっとほろ苦い。 最終話は、音楽院を出たものの、その後の演奏活動で行き詰っている若手のチェリスト、ティボールの物語。 広場で出会い、彼にレッスンをする謎の女性。 彼女はいったい何者なのか。 才能と教育の問題を考えさせられる。 どの話も、主人公は天才的な音楽家というわけではない。 音楽に関わりながら、時にままならぬ人生を生きる人々だ。 割とドライな筆致でありながら、どこかにこうした人々の哀感がにじんでくる。 すばらしい短編集だった。

Posted byブクログ

2022/09/19

短編集。笑って、しみじみして、唸って、ため息ついてまた笑って。 一番好きなのは「降っても晴れても」。 どれもラストは僕好みだった。

Posted byブクログ