錯覚の科学 の商品レビュー
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錯覚の科学 私たちの脳は生存に役立つように進化しているのであって、現代の複雑化した社会ではいろいろな不都合を抱えている。本書はそんな主旨から、人の脳が起こす錯覚を5つに分けて、具体的な事例を交えながら解説している、とても良質な科学解説書です。 5つの錯覚とは。 * 記憶の錯覚(記憶は正確でなくゆがむことがある) * 自信の錯覚(自信がありそうな態度を実力があると勘違いしてしまうことがある) * 知識の錯覚(見慣れたものに対して十分な知識をもっていると思ってしまうことがある) * 原因の錯覚(実際には関係がないことに因果関係を見いだしてしまうことがある) * 可能性の錯覚(能力は簡単な方法で伸ばすことができると思ってしまうことがある) 具体的な事例では、間違った証言で冤罪を作ってしまったこと(記憶の錯覚)や、能力がない人ほど自信過剰であること(自信の錯覚)、専門家と呼ばれる人でも十分な知識を持っていないことがあること(知識の錯覚、今般の原発事故で専門家の能力の無さが露呈していますが・・・)、はしかの予防接種によって自閉症になると思い込んでいる人が多いこと(原因の錯覚)、モーツアルトを聴くと能力がアップすると思い込んでいること(可能性の錯覚)などがあげられています。特に、原発事故の因果関係に関して、今後様々な”原因の錯覚”による問題が提起されて来そうなので、特に注意深く見ていく必要を感じました。 こういった錯覚に陥って問題行動を起こさないためにも、まずこういう脳の傾向を理解して、立ち止まって自分の認識を確認する、そんな態度が必要であることを実感した良書でした。 竹蔵
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・視界に入っていても注意が他に向けられていれば驚くほど目立つようなものでも見落とすという「注意の錯覚」 ・明確に思い出せて自信のあることでも覚え間違いをしていたり、知らず記憶が書き換わってしまう「記憶の錯覚」 ・自信のある人は本来の実力と関係なく信頼があるように見えてしまうという...
・視界に入っていても注意が他に向けられていれば驚くほど目立つようなものでも見落とすという「注意の錯覚」 ・明確に思い出せて自信のあることでも覚え間違いをしていたり、知らず記憶が書き換わってしまう「記憶の錯覚」 ・自信のある人は本来の実力と関係なく信頼があるように見えてしまうという「自信の錯覚」 ・人は自分が分かってるはずと思っているよりも実は本当に理解っていることは少ないのだという「知識の錯覚」 ・ある結果から遡れる時系列における前の出来事を直接的な原因であると決めつけ、間違った因果関係を見つけてしまう「原因の錯覚」 ・人間の脳には使われていない部分が眠っていて僅かな刺激で覚醒するはずだという「可能性の錯覚」 人間には様々な錯覚があることを豊富な実験から引いてきている。参考文献のページがめちゃくちゃ分厚い。 人間は根拠もなく自分の脳内で見えている世界を信じてしまうが、それは大いなる誤りだということを山ほどの根拠でもって提示しているのが本書だ。客観的な事実とは隔たりがあるにも関わらず自信満々な人が多いのも手に負えない。 人間の脳が当てにならないことを踏まえて、音声や映像や画像に残したり、思い込みや思想に偏りのないAIに計算してもらったりするのが確かなのかな〜。 あと、「自信の錯覚」の項で、話し合えば話し合うほど正解からズレてしまうのは悲しいなと思った。能力よりも自信のある人の考えにその場の力学は左右される。話し合うよりも、その場にいる全員が持ち寄ったものを合計して割ったほうが正解に近くなるのだ。人間社会がより良い方向になるように、人間の脳も進化しないかなあ。
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素人感覚でしかなかったけど、運転中のハンズフリーも同じように危険だとわかってスッキリした。どう考えたって注意が散漫になっているのに、なぜOKなのか未だに不思議だ。
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はじめに 思い込みと錯覚の世界へようこそ 実験1 えひめ丸はなぜ沈没したのか?―注意の錯覚 実験2 捏造された「ヒラリーの戦場体験」―記憶の錯覚 実験3 冤罪証言はこうして作られた―自信の錯覚 実験4 リーマンショックを招いた投資家の誤算―知識の錯覚 実験5 俗説、デマゴーグ、そして陰謀論―原因の錯覚 実験6 自己啓発、サブリミナル効果のウソ―可能性の錯覚 おわりに 直感は信じられるのか?
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去年あたりに読んだのを再読。 『錯覚』とはいうものの、視覚野を超えて脳の限界・誤解についても言及している。 具体例として挙げられるのが、どれも有名な事件で、人間の脳の錯覚とはどれほどのものなのか、非常に分かりやすく、示唆に富んでいる。 誰にでも勧められる良書。
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本書では6つの錯覚について書かれている。 注意の錯覚、記憶の錯覚、自信の錯覚、知識の錯覚、原因の錯覚、可能性の錯覚。やはり興味深く読めたのは注意の錯覚だった。実際にゴリラの動画を見たが、事前情報なしでゴリラに気付けたかは自信がない。人はこれ程までに視野内に捉えていても認識出来ない...
本書では6つの錯覚について書かれている。 注意の錯覚、記憶の錯覚、自信の錯覚、知識の錯覚、原因の錯覚、可能性の錯覚。やはり興味深く読めたのは注意の錯覚だった。実際にゴリラの動画を見たが、事前情報なしでゴリラに気付けたかは自信がない。人はこれ程までに視野内に捉えていても認識出来ないものなのかと驚いた。どおりで事故が減らないわけである。 記憶の錯覚もハッとさせられた。自分では間違いと記憶している事も、他者から違うと指摘された事がある。恐らく都合の良い様にねじ曲がった記憶だったのだろう。 錯覚には気をつけたい。
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他人が自分に興味を持っていると思って、 服装を気にしたり、髪型を気にしたりしている。 しかし、思っている以上に人は自分のことを見ていない。 その実験をご紹介しよう。 あなたは大学キャンパスを歩いている。 その途中、地図を広げて道を探している様子の男性に出会った。 男性が近寄ってきて、あなたに図書館の場所を尋ねる、 あなたが地図で位置を示しながら道を教え始めた時、後ろから声がした。 そして数名の職人たちが、「すみません、通ります」と言いながら、 大きな木の扉をかかえて、あなたと男性の間を強引に通り抜けた。 彼らが行ってしまった後、あなたは道案内を終えた。 その時あなたは、扉を抱えた職人たちが通り過ぎる間に 道に迷った男性が別人に入れ替わったのに気づいただろうか。 入れ替わったのが、服装が違い身長に10センチ近く差があり、 体格も声も明らかに違う男性だったとしたら? この実験の結果は半分以上の人が気付くことはなかった。。。 そしてさらに、「相手が入れ替わったのを見落とすなんて、ありえない」と言った人に 助手が声をかけて実験への参加を呼びかけ、案内した。 その際に助手が途中で入れ替わったが気付く人はいなかった。。。 しかし例外として、男女や人種の違いはほとんど気付くというデータがある。 なので過剰にミリ単位で髪型を気にしたり、 服装のことを気にするということは時間の無駄ということになる。 しかし、反対に言えばそこの細かいこだわりに気付くことができれば 良い印象が与えられるのではないだろうか。
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原題は、The Invisible Gorilla and other ways our intuitions deceive us. つまり、直感的な判断は、間違っていることが多いという内容。取り上げられているのは、 注意の錯覚 他のことをやりながらだと、よくある動作は問題な...
原題は、The Invisible Gorilla and other ways our intuitions deceive us. つまり、直感的な判断は、間違っていることが多いという内容。取り上げられているのは、 注意の錯覚 他のことをやりながらだと、よくある動作は問題なく行えるが、予期しない物事を認識することができない 記憶の錯覚 記憶を定着させる過程で、「あるべきこと」が本当にあったと記憶してしまうこと 自信の錯覚 自身は他人も自分自身も騙してしまう 知識の錯覚 高度の専門的知識を持ていると思われている人は、自分でも実際より真実を知っていると思い込んでしまう 原因の錯覚 偶然の一致や相関関係を因果関係と誤認する 可能性の錯覚 訓練することによって脳の能力は開発・向上できる。しかし。その効果は、訓練した分野の活動に限られ、脳の活動全般が向上するわけではない。たとえば、数字の記憶能力を訓練しても、英単語を覚える能力は向上しない。
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見ているものを脳が見ていない。 自信が錯覚を起こさせる。 サブリミナル効果はない。実験のウソ。 脳トレは効果がない。
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人間の認知能力、記憶力がいかにあてにならないかを痛感させられる書。脳を衰えさせたくなければ、所謂脳トレでなく、週に3回ほど30分以上のウォーキングがいいというのは目を引いた。相関関係と因果関係の取り違えなど、グラッドウェルの著書も取り上げながら問いかけているところなども興味深い。
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