「大発見」の思考法 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
iPS細胞の山中伸弥氏と素粒子の益川敏英氏の対談。 科学研究の予算を減らし、有望な研究者を鬱病、自殺に追いやる日本、基礎をおろそかにした手品まがいのエセ科学、格差スパイラルが蔓延する日本は、「抽象化」して考える力が足りないのではないか。 「脳や意識の研究が大事だ」と人工頭脳の勉強会を始めたという益川氏、いつかそのお題で小説を書いていただきたいものである。 益川氏が配属された坂田研の雰囲気とそれを作り出す坂田氏の心遣いがいい。全国の保育園から大学院まで全てがこの空気だったら、いじめは起こらないだろうに。 この二人の、真の意味での(怪しいビジネス書やスピリチュアルではない)成功者の言葉には数多くの教訓を見出す。 論文発表の勝ち負けより、助けを必要とする患者が第一 科学研究も、国語力、ディベート力、ディスカッション力 物事の理論性に興味を持ち、面白いと思えるか 抽象化して考える 進路などに迷うフラフラは悪くない、その結果目的が見つかる できないことでも「できる」と言ってみる、「研究をやりたい」という熱意を見せる 実験キットではなく人間にしかできないことがある 自分で「問い」を立てる力、感受性、憧れ、驚き、興奮 「頭からおかしいと決めつけずに、ます実験をやってみよう」 歩きながら考える、眠っている間に考えが進む ゲームのソフトが束になってもかなわないくらい、人間の頭の中には楽しいことがつまっている 自分以外の人とのディスカッションで考えが外に流れ出る 「何もかも一人ではできないんだ」ということを、早く悟る 若い人達のアイディアを邪魔しない 実験にもストーリーがあって、明確な関係が必要 日本では、人から「落伍者になった」と思われるんじゃなくて、本人がそう思っちゃう 基礎科学が人々の実生活に役立つまでには、百年かかる。それくらいのつもりで科学をとらえてもらわないと困る 目先の利益ばかり追求して「早く成果をよこせ」というようなこばかりを言っては、きちんとした研究にならない。「日本人よ、やっぱりいちばんを目指せ」 なぜうまくいかなかったのか、何が足りないのかを、その時点で考えられる限りの可能性を押さえて徹底的に分析する 「これはできそうにない」というものに手を出さないようにすれば、挫折するはずがない。 自分の持っている最大の関心事を、とことん追求する 一番ダメなのは、目標を設定してもそれを意識することなしに、ちょこまかちょこまか動くこと 日本人は概して勤勉ですから、努力は得意だと思いますが、明確なビジョンをつい見失いがち ディスカッション行き詰まったりすると、走って、頭をからっぽにします。考えることを止めるために走る。 「あなた方がやっているのは科学遊びだ。この先に科学があると思ってもらっては困る。もっと基礎科学をきっちり勉強してください」 理系離れは、経済問題にまで立ち入って議論しないと意味が無い 試験を四回やっているのを一回に減らし、一つの試験で四倍ていねいに受験生の能力や適性を見るほうが、よほど多様な学生を採れる せっかちに答えを求めなくても、「これは未来の問題として残しましょう」と言えば、それで済むはず 「これは違う、これは違う、これも違う」と、執拗なまでの検討を重ねた末、「どうしてもこれは排除できない、認めざるをえない」というものだけが残されていく ヘンなことをきちんと受け止め、興味を持ち、追い求めていけば、独創的な自然に助けられて、ひとりでに独創的な次のステップへいける 科学は直接的な意味では生活や社会の役には立たないが、宇宙の成り立ちを考える謎解きは、人々の知的好奇心を刺激し、夢とロマンを与えている 大胆な仮説、緻密な観察、粘り強い実験、クレバーな解析 実験や観察は孤独な作業。逃げ出したくなる誘惑にもかられかねないが、他に代えがたい発見の喜びもある 自然から教えていただくという謙虚な気持ち
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この人達の活動の根源にある意志の力こそ超一流だと思う。 また昨今の『何でも簡単に分かりやすく提示する傾向』に関する批判は、まったくその通り!! 低いハードルばかり跳んでたら、ジャンプ力が低下するばかりでなく、そのうち背だって低くなるから。 その他共感したところ。 ■国語力はすべ...
この人達の活動の根源にある意志の力こそ超一流だと思う。 また昨今の『何でも簡単に分かりやすく提示する傾向』に関する批判は、まったくその通り!! 低いハードルばかり跳んでたら、ジャンプ力が低下するばかりでなく、そのうち背だって低くなるから。 その他共感したところ。 ■国語力はすべての基本。 ■No.1を目指さなきゃダメ。
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家内が買ってきたのを借りて読了。根っこのところは同じで、でも、キャラクターのちょっと違う2人の対談で、面白かったです。「研究者は常に世界を相手にしている」のところ、大学での研究生活を思い出して、ちょっと泣きそうになりました。あと、離婚、転職、挫折、などに際して、日本人は自分で勝手...
家内が買ってきたのを借りて読了。根っこのところは同じで、でも、キャラクターのちょっと違う2人の対談で、面白かったです。「研究者は常に世界を相手にしている」のところ、大学での研究生活を思い出して、ちょっと泣きそうになりました。あと、離婚、転職、挫折、などに際して、日本人は自分で勝手に駄目になったと思ってしまう、良い経験をしただけなのに、のところはちょっと感動。 それにしても、この本のタイトルは全然中身を反映してないです。これはダメでしょう。
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★2012年SIST読書マラソン推薦図書★ 所在:展示架 資料ID:11002082 本を読んで読書マラソンに参加しよう! 開催期間10/27~12/7 (記録カードの提出締切12/13)
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今や知らない人はいない山中教授とノーベル物理学受賞者の益川博士との対談本。 どのようにして目指している発見に到達するか、また日頃どのような生活を送っているか、アメリカと日本の研究環境の違い、など興味深い内容が多岐にわたる。 正反対の辛口な益川氏と穏やかな山中氏、またお互い違う...
今や知らない人はいない山中教授とノーベル物理学受賞者の益川博士との対談本。 どのようにして目指している発見に到達するか、また日頃どのような生活を送っているか、アメリカと日本の研究環境の違い、など興味深い内容が多岐にわたる。 正反対の辛口な益川氏と穏やかな山中氏、またお互い違う分野でありながら二人には共通することも多い。 やはり名を上げる成果を出すためには、寝食を忘れて研究に没頭しなければならないようだ。 日本にはアメリカに引けを取らない優秀な人材が多いが、研究環境で大きくアメリカに差をつけられていることに山中氏はは危惧を語っている。 終章の神はいるのか、で神様を信じている山中氏と無神論者で宗教を否定する益川氏の対談も興味深い。 はたして科学的探究を究極まで極めた時、神と出会えるのだろうか。そう遠くない未来その答えが分かるかもしれない。
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山中伸弥さんのノーベル賞受賞の一報を知って 図書館に予約入れたらすぐ読めました ノーベル物理学賞を獲った益川敏英さんと今をときめくiPS細胞の生みの親・山中伸弥さんの対談集。 対談自体は2010年の8月に行ったようで本の発行は昨年末でした。 今となってはご両人ともノーベル...
山中伸弥さんのノーベル賞受賞の一報を知って 図書館に予約入れたらすぐ読めました ノーベル物理学賞を獲った益川敏英さんと今をときめくiPS細胞の生みの親・山中伸弥さんの対談集。 対談自体は2010年の8月に行ったようで本の発行は昨年末でした。 今となってはご両人ともノーベル賞受賞者となって 夢のビッグ対談になったのだなあと思いますが(^-^) 難しい単語ばかりが飛び交う内容かしら・・・・とちょっとしり込みしつつ読み始めると ぜーんぜん(^◇^) 山中さんのiPS細胞の名前の由来にビックリ@@ さらに大阪弁まるだしなところとかすごく庶民的で親近感が湧くし、なんといっても イケメンですよねェ(*^^*)(←え?そこですか?(笑)) 益川さんは ノーベル賞受賞時に「こんなものは嬉しくない」と言ってマスコミを騒がせたような奔放さがあっただけあって 歯に衣着せぬストレートな物言いが楽しい。 益川さんの【「CP対称性の破れ」の起源の発見】により受賞・・・・って ハ?ナンデスカ?ソレ?って思いますよね。 でも身近な例を出してズブの素人の私にでも分かりやすいように噛み砕きに噛み砕いて解説してくださっている。 それにしても 体中のあらゆる細胞に変化することができる万能細胞という iPS細胞。 例えは荒っぽいけど トカゲのしっぽみたいな感じに再生できちゃう。 これからの医療は明るい!!って思えます。 今、M氏の事件でケチがついちゃったことが残念ですね(-_-;) 他にもお二人の子どもの頃の話や学生時代や研修者としての不遇な日々の話などとても興味深くて面白かった。
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益川先生がノーベル賞を受賞された経緯や,山中先生がiPS細胞を開発した裏話など,色々面白い事が書いてありました.2人の先生の対談を文字に起こしてあり,大変読みやすかったです.
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非常によかった。 親書でここまで面白い本はなかなか見つからないだろう。 これだけの成果を挙げた先生方のエピソードは非常に参考になる。理系の学生なら是非読んでおきたい。
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これは勉強になった。具体的な研究の話ではなく、どういう日常から、発見が生まれるのか、ということがよくわかった。
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よくある、お互いの表面をさわさわとなであう対談と思っていたが(それでもこの両名なら一読の価値有りと思った)、両名ともにかなり突っ込んでの発言があり、楽しめた。 山中氏のうつ告白は、日本の研究環境が、これほどの研究者をしてそこまで落とす、そんなにも劣悪なのかと、やるせなく。 益川氏...
よくある、お互いの表面をさわさわとなであう対談と思っていたが(それでもこの両名なら一読の価値有りと思った)、両名ともにかなり突っ込んでの発言があり、楽しめた。 山中氏のうつ告白は、日本の研究環境が、これほどの研究者をしてそこまで落とす、そんなにも劣悪なのかと、やるせなく。 益川氏の実直なひねくれ者の発想は頼もしく、疑似科学だけでなく科学ごっこをも許さない姿勢は、これから日本人として必要な素養。
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