ゴールデンスランバー の商品レビュー
☆4.3 仙台に凱旋パレードのため訪れた金田首相が、ラジコンによる爆弾で暗殺された。 マスコミによると犯人は青柳雅春で、仙台市内を逃げ回っているという。 二年前、青柳はアイドル宅に押入った泥棒を捕まえたことで一躍有名になっていたこともあり、一気に全国にその詳細が知れ渡る。 そし...
☆4.3 仙台に凱旋パレードのため訪れた金田首相が、ラジコンによる爆弾で暗殺された。 マスコミによると犯人は青柳雅春で、仙台市内を逃げ回っているという。 二年前、青柳はアイドル宅に押入った泥棒を捕まえたことで一躍有名になっていたこともあり、一気に全国にその詳細が知れ渡る。 そして様々な証言や監視カメラの映像から、青柳が犯人だと思われる証拠が次々と発見され報道されてゆく。 しかしそれは巨悪の企みによって着せられた濡れ衣であった。 明らかにおかしい動きをする警察や、世間の目から青柳は懸命に逃げ続ける… もう単なる物語とは言えない現実を見てしまった昨今なので、事件をテレビで見ているだけの自分は同じ間違いをしてしまわないかという方に気持ちが行ってしまう。 青柳がどこまでもそのままの青柳だったからこそ、ここまで切れそうな糸を何とか繋いで繋いでたどることができたんだろう。 最初に警告をしてくれた森田がいなければ、なんともあっさりと片付けられてしまい、すべてが闇の中だったところから本当にここまで頑張ったものよ。 散りばめられた何気ない(青柳にとっては切実に帰りたいあの日の)思い出が、日常の中で大切にしてきた大事な人達が、今この時の青柳のための助けになるピースとなる。 その信頼がとても尊いと共に、当たり前に示されることに救われる思いがする。 結構長めの作品でもそうは感じさせず、その逃亡のスピード感にのってどんどん読み進められる流石の作品。 とても楽しかった。
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伊坂幸太郎さんの作品を読んでみたいなと思い、数ある作品の中からこの本を選んだが、自分にぴったりだった。会話文の多い文と、うざくない文体の描写や、オチもある程度はスッキリするが心地よい未解決のもやもやしたものも残る後味の良い作品だと思った。あとがきからわかる伊坂さん自身の偉そうにし...
伊坂幸太郎さんの作品を読んでみたいなと思い、数ある作品の中からこの本を選んだが、自分にぴったりだった。会話文の多い文と、うざくない文体の描写や、オチもある程度はスッキリするが心地よい未解決のもやもやしたものも残る後味の良い作品だと思った。あとがきからわかる伊坂さん自身の偉そうにしない感覚というものを文章から感じられた。結末がスッキリしすぎたり、どんでん返し!のようなものが多くミステリーは得意ではなかったが他の本も読んでみたいと思う。
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主人公が首相殺害の犯人に仕立て上げられるという、自分がその立場になったら絶望しかないと感じるストーリーですが、ハラハラだけでなくユーモアや伏線回収などの要素も豊富でとても作り込まれた作品だなと思いました。登場人物はそれぞれ自分の正義や信念と強い意志で行動していて、魅力的でした。
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首相が暗殺されて、主人公がなぜかその犯人にされ必死に逃走する話。あらすじを読むだけでそそられるぼくの大好物なストーリーでした╮(^▽^)╭ 現実の日本と若干異なる選挙制度や強引な展開は気にしません! 人物視点や時系列をこまめに切り替えて描かれているので、飽きずに読み...
首相が暗殺されて、主人公がなぜかその犯人にされ必死に逃走する話。あらすじを読むだけでそそられるぼくの大好物なストーリーでした╮(^▽^)╭ 現実の日本と若干異なる選挙制度や強引な展開は気にしません! 人物視点や時系列をこまめに切り替えて描かれているので、飽きずに読みやすい作品でした。 なにより、現代政治への痛烈な批判や、メディア・ネットの匿名による書き込みへの批判など、物語を通して、筆者の社会への強烈なメッセージが込められているのが魅力だと思います。 いくつか抜粋しましたが、昨今の社会ニュースを見ていて共感できるフレーズがあるのではないでしょうか?本書が出版されてもう10年以上経過していますが、今もまったく変わっていません(笑) ■「正しいとは、何にとって正しいのか?日本のためであるのか。国民、もしくは党のためであるのか。否、議員自身のプライドにとって、正しい判断だったのだ。」 ■「政治家とか偉い人を動かすのは、利権なんだよ。偉い人は、 個人の性格とか志とかとは無関係にさ、そうなっちゃうんだ。」 →なんでこんな政策進めてるの?って思うことありますよね。きっとどこかの業界の誰かの利益に繋がってるんだろうな…と察します。 ■「思えば俺たちってさ、ぼうっとしている間に、法律を作られて、税金だとか医療の制度を変えられて、そのうちどこかと戦争よ、って流れになっていても反抗ができないようになっているじゃないですか。何か、そういう仕組みなんだよ。俺みたいな奴がぼうっとしてる間にさ、勝手にいろいろ進んでるんだ。前に読んだ本に載っていたけど、国家ってさ、国民の生活を守るための機関じゃないんだって。言われてみれば、そうだよね。」 →戦争とまではいかずとも、すでに実質増税に繋がるような政策はチラホラ見受けられます。政府は国民にぼうっとしていてほしいんですよね。税金の計算方法なんてめちゃくちゃ複雑ですし、悪意があるようにしか見えません(笑) 抜け出すには自分がルールを作る側に回ること、それが勉強することの意義の1つだと個人的に思っています。ちなみに、漫画「ドラゴン桜」でも同様の話が載っていて非常に共感できるのでお勧めです。 ■「名乗らない、正義の味方のおまえたち、本当に雅春が犯人だと信じているのなら、賭けてみろ。金じゃねえぞ、何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。おまえたちは今、それだけのことをやっているんだ。俺たちの人生を、勢いだけで潰す気だ。いいか、これがおまえたちの仕事だということは認める。 仕事というのはそういうものだ。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら、覚悟はいるんだよ。バスの運転手も、ビルの設計士も、料理人もな、みんな最善の注意を払ってやってんだよ。なぜなら、他人の人生を背負ってるからだ。覚悟を持てよ。」 →本書が出版された当時は、まだスマホ登場前なので、SNSが普及した昨今では余計共感しませんか?正義を盾に何をしてもいいと勘違いする輩への対応は泣き寝入りがほとんどであり、その辺の法律の整備やスムーズに個人を特定できる仕組み作りをしっかり進めてほしいですわ。 【その他、気になったフレーズ】 ■「結局、人っていうのは、身近にいる、年上の人間から影響を受 けるんですよ。小学校だと、六年生が一番年長ですよね。だから、六年生は、自分たちの感覚がそのままなんです。ただ、中学校に入れば、中学三年生が最年長です。そうなると、中三の感覚が、自分を刺激してくるんですよ。良くも悪くも。思春期真っ最中の中学三年生が自分の見本なわけです。だから、一歳しか年齢は違わなくても、感覚的には、三歳くらいの差があるんです」 →本筋の話とまったく関係ないけど、すごく納得できたフレーズでしたw ■「イメージというのはそういうものだろ。大した根拠もないのに、人はイメージを持つ。イメージで世の中は動く。味の変わらないレストランが急に繁盛するのは、イメージが良くなったからだ。もてはやされていた俳優に仕事がなくなるのは、イメージが悪くなったからだ。首相を暗殺した男が、さほど憎まれないのは、共感できるイメージがあるからだ」 →CMや広告の力ってすごいんですよね。今ならSNSのバズリやインフルエンサーもなかなかだと思います。 ■「人間の最大の武器は、笑えることではないか? そう言いたかった。どんなに困難で、悲惨な状況でも、もし万が一、笑うことができれば、おそらくは笑うことなどできないのだろうが、笑えれば何かが充電できる。それも真実だ。」 →鶏が先か卵が先か、とりあえず笑顔になれば心がついてくるっしょ!ぼくはそう捉えました。ツライときこそ笑っていたいものです^_^
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とりとめのないファミレスでの会話、花火をみながらの告白などの学生時代ならではの日常の描写の美しさと、首相暗殺の濡れ衣にされている現在とのギャップが何とも切なくて胸が苦しくなりながら読んでいた。 読み終わった後、すぐに第三部の事件から二十年後の部分を読み直した。彼が語り手だったんだと気付いて二十年後にも生きていることにまずホッとしたし、先に事件の後のことが語られてから事件当初の状況が明かされるのは改めて面白い構成だなと思った。 また、あくまで筆者(青柳)による考察とはいえ、第二部時点ではまだ出てきてない人ばかりなのにこの第三部で明かされる情報が重要なものばかりで、もう既に最初から読み返したくなっている。失踪して顔を変えた後も青柳はずっと事件の真相を追っていたんだなと分かり感慨深かった。 結果的に真犯人が誰かも、なぜ青柳が候補に選ばれたのかも分からない状態で幕を引いたが、青柳自身の言葉で様々な可能性が語られているあの第三部こそが彼が追い求めた想像し得る真相の全てなのだと思えば不思議と後味は悪くなかった。 お気に入りはテレビの取材を受けて父親が息子を励まし、ちゃっちゃと逃げろと言うシーン。ボロボロ泣いた。警察の児島さんが泣いてるのを見てもっと泣いた。ラストの「痴漢は死ね」の手紙でもボロボロ泣いた。こんなに泣くことになるとは思わなかった。この小説、ロックな男性が多すぎる。 エレベーターで晴子達と一緒になりボタンを親指で押すシーン、「たいへんよくできました」のハンコを娘が押すところも見事な伏線回収で感動してしまった。 ビートルズのAbbey Roadのアルバムを聴きながら余韻に浸っている。
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伊坂幸太郎らしい読みやすくテンポの良い文章。 あっという間に読破。 あくまで青柳が主人公であることは明白でありながらも、視点の変化が誰もが主人公のような気持ちにさせてくれる。全く関係ないかのような短編集であった各話のつながりが明らかになっていき壮大な物語の全容が徐々に浮かび上が...
伊坂幸太郎らしい読みやすくテンポの良い文章。 あっという間に読破。 あくまで青柳が主人公であることは明白でありながらも、視点の変化が誰もが主人公のような気持ちにさせてくれる。全く関係ないかのような短編集であった各話のつながりが明らかになっていき壮大な物語の全容が徐々に浮かび上がってくる感覚を抱く。 そのテーマとしても、厳しい社会批判のように思い、監視社会や利権のような普段視界の外にでてしまうそれらを再認識させられるものであった。「正義」が重んじられる世の中であってほしいと切に思う。
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とても面白かった。 情報過多な時代に情報操作によって陥れられていく。 さらに部外者は犯人に仕立て上げられた人物が捕まればすぐに興味を失う様も描かれており、世間と当事者との比較、現実感の違いが痛切に感じられた。 この作品が書かれたのはテレビから情報を得る時代であるが、現代においては...
とても面白かった。 情報過多な時代に情報操作によって陥れられていく。 さらに部外者は犯人に仕立て上げられた人物が捕まればすぐに興味を失う様も描かれており、世間と当事者との比較、現実感の違いが痛切に感じられた。 この作品が書かれたのはテレビから情報を得る時代であるが、現代においてはSNS上で同じように情報操作による被害は起こっているのではないかと感じた。(首相暗殺ほど世間的には大事ではないにしろ被害者からしたら大事である)
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後書きが印象的だった。 確かに真犯人はわからず得体の知れない何か、のままで終わる。 多分現実も利権やら権力は一般市民には分からないところで汚く、そして首謀なんてもはや分からないくらい複雑に動いてるんだろうなと思った。 親指の伏線はどこで使うんだろうと思っていたので、最後のあのシーンでグッときた。お気に入り。
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ザッツエンターテイメント小説。 映画を映画館で見たけど、なんかよくわからなかった記憶。そりゃあんだけのページを映像化するのは難しい。 回想を挟むタイミングや視点の切り替えなどのタイミングがよかった。非日常感のあるキャラが唐突に現れ、グラスホッパーのような伊坂ワールドを感じた。
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スリル抜群でした 濡れ衣でしかない状況で、なんとかして生き延びようとする主人公と、無実を信じて手助けしてた人たち 最後には顔を変えるという方法になってしまったけれど、みんなが青柳の生を知ってくれて、よかった
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