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ゴールデンスランバー の商品レビュー

4.2

1595件のお客様レビュー

  1. 5つ

    608

  2. 4つ

    585

  3. 3つ

    229

  4. 2つ

    53

  5. 1つ

    11

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2023/11/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いやあ、いいです。ホントいい。 今年は伊坂氏の作品を集中的に読み、ここまで本作含め16作(!)読んできました。出来るだけ年代順に読んできたつもりですが、その中では本作が一番ぐっときました。いやあ実に面白かった。 洒脱な表現と情景描写はもとより、テーマ、ストーリ展開、キャラ設定、全てが好みかも。 ・・・ まず、個人的に、この陰謀論的ディストピア的な展開が好み。 当然のことながら本作はフィクションですが、国家が個人を本気でハめようとすることって、きっとあるのだろうなあと思うんです。作中でも取り上げられていたとおり、有名なケネディ大統領暗殺の犯人オズワルドとか(さらにはオズワルド殺しも)。 個人情報(いわゆる個人情報のみならず、ネットへの投稿、通信状況、ケータイの位置情報など)が容易に権力者によって収集・管理・アクセスされ、さらには捏造されることもが可能な社会。マスコミやネットを通じて醸成される根拠なき確信と熱狂。名もなき群衆の無責任な盛り上がりが濁流のごとき暴力となり個人への打撃を与える。 もう、ひりつきながら読んでいました。 度々あとがきで、フィクションですと断りながらも、ありそうな具合が絶妙で怖い。例えば、自衛隊や警察は、当然の事ながら上官の指揮命令系統には絶対だと思います。むしろその命令に疑問を持つようだと、組織として機能しないでしょう(まあ会社も一緒ですが)。このような場合、主人公青柳のごとく冤罪者に対して、コミュニケーションを持とうとしないわけです。無関心。聞く耳を持たない。国家で唯一暴力が保証される団体がコニュニケーションを拒否して飛びかかってくるのですから、これは怖いことですよ。主人公青柳みたいに逃げるしかないですよね。 なお、このようなディストピア的な作品というと、伊坂作品では「魔王」とそれに続く「モダンタイムス」がありますが、本作はまた少し毛色が異なる作品ですが面白いのでこちらも是非。本作のほうがやや明るめなテイスト。 ・・・ また、節の区切りの前後で同じセリフを使いつつ、全く異なる時間軸へ移行するというのも、伊坂氏らしい小憎らしいトランジションでした。 「ここは本当に俺の知っている仙台なのかな?」と青柳逃走中のタクシーで運転手に語らせて節が終わり、次節は再び「ここは本当に俺の知っている仙台なんすかね?」と、ほぼ同一の表現で開始し、10数年前の学生時代の後輩カズに語らせる。同じ表現をつかい、緊迫感も状況も全く異なる場面に展開する。このような連関が作中に幾つかありました。 それと、エンディングについて。主人公青柳がその後どうなったのかは、書き尽くさずに余白・余韻を醸して終わっていたところも良かったですね。「ロック」岩崎さんがキャバ嬢との浮気がばれたシーンと、青柳父が事件後に「痴漢は死ね」の送信元不明の手紙をもらったシーンですね。晴子娘が親指でエレベータの開閉ボタンを押す男に気づくシーンとかもそれですね。 あと、構成というと、一度読み終わってから再度初めのあたりの第三章「20年後」を再読することをお勧めします。改めてディストピア感を味わえます。 ・・・ そして、やはり人物設定が私好み。 どこぞの伊坂作品の解説にあったのですが、作品のキャラにはどこかまっとうな倫理観が通底しています。世の中が殺しにかかってきているのに、倫理観を失わない。 首相殺しの冤罪をかぶせられた青柳は、巻き込んでしまった道行く人には実に済まなそうです。 青柳を取り巻く登場人物も同様。 疑問であることにはきちんと声を上げる。皆が簡単にやばい・怖いと軽々しく発言するのに対し、意見する。なかなかできないことです。 例えばそれは、結婚して子供までいるのに、危険を冒して、微妙に青柳を助ける元カノの樋口晴子。どう見ても青柳とは犯人とは思えず、樋口とともに青柳を信じる後輩カズとその彼女。テレビ取材に立ち入られ、「とっとと逃げろ」と息子宛てにカメラに語る青柳の父。 このほか、友達の助けの電話に、電話口で「課長、これから有給いいですかぁー」とさっぱり言ってしまう平野昌や、常にロックかロックじゃないかの判断しかしない宅配ドライバーの岩崎など、愛すべきキャラが多かったと思います。 ・・・ ということで、今のところ、私の中でナンバーワン伊坂作品となりました。 伊坂作品が好きな方はもとより、SFやディストピア設定が好きな方、仙台が好きな方(相変わらず仙台が舞台)は楽しめると思います。

Posted byブクログ

2023/11/23

何かしら大きな存在に翻弄される 男の物語。 しかしラストまで何なのか存在が わからない。 不条理極まりない物語にも 周りの人たちの救いがあって、 ほっとさせられる。

Posted byブクログ

2023/11/19

学生時代の描写がどれも素敵で、個人的には逃走劇以上に心を掴まれてしまった。 なんで名前の表記がカズ以外全員フルネームだったんだろう?カズも途中でフルネーム出たけど。なにか意味があったのかな?読み込めてなかったかも?最後まで分からなかった。うーん。 こういう事件の裏側で実は全然...

学生時代の描写がどれも素敵で、個人的には逃走劇以上に心を掴まれてしまった。 なんで名前の表記がカズ以外全員フルネームだったんだろう?カズも途中でフルネーム出たけど。なにか意味があったのかな?読み込めてなかったかも?最後まで分からなかった。うーん。 こういう事件の裏側で実は全然違うことが起こっていたっていう話を読むと、普段のニュースもほんとはそうじゃないんじゃないかって思えてくるし、反射的に全部信じるよりそっちのほうがいいんじゃないかと思う。これはニュースだけじゃなくSNSで悪者とされている人とかも実のところは当事者以外は分からないよね。

Posted byブクログ

2023/11/13

前半は少しダラダラと感じるが後半は一気読み! そして前半をまた読みたくなり再読していると、前半の面白さを理解できる。

Posted byブクログ

2023/11/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

十年ほど前に読んだものを再読。 めちゃくちゃ良かった、 ハラハラした、という感想しか覚えておらず、 どんな内容かすっかり忘れちゃっていた。 「ちいさくまとまるなよ」 が読みながら思い出したくらいで。 やっぱり、めちゃくちゃ良かった。 理不尽なものに巻き込まれて、 でもなんとか逃げ切る、 抵抗する、 必死に自分が正しいことをやっていれば、 味方してくれる人がいる、 それらのおかげで生き抜いていくことができる。 伏線回収が巧妙で、 あの仕草あの場面が ここにこう繋がってくるなんて! と、めちゃくちゃ感動。 「痴漢は死ね」の毛筆で感動の大泣きできるなんて、 どこ探してもこの小説だけでしょう。 泣きながら笑えちゃうし。 ラストシーンの 「たいへんよくできました」も大泣き。 ロックだよ。 「俺の荷物、潰されたんだ。」も読み返したら意味が分かった。 保土ヶ谷さんもなー、まさかあの電話とかがこれかっていうね。 ほんとに、よかった。 名言もたくさんあった。 「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」 「おい森田、むしろ、人間の最大の武器は、笑えることではないか?」 「最大の武器は何だか分かる?」「思い切りだよ」 「花火ってのは、いろんな場所で、いろんな人間が見てるだろ。もしかすると自分が見てる今、別のところで昔の友達が同じものを眺めてるのかもしれねえな。」「たぶんな、そん時は相手も同じことを考えてんじゃねえかな。」 「思い出っつうのは、だいたい、似たきっかけで復活するんだよ。自分が思い出してれば、相手も思い出してる」 「名乗らない、正義の味方のおまえたち、本当に雅春が犯人だと信じているのなら、賭けてみろ。金じゃねえぞ、何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。おまえたちは今、それだけのことをやっているんだ。俺たちの人生を、勢いだけで潰す気だ。いいか、これがおまえたちの仕事だということは認める。仕事とはそういうものだ。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら、覚悟はいるんだよ。バスの運転手も、ビルの設計士も、料理人もな、みんな最善の注意を払ってやってんだよ。なぜなら、他人の人生を背負ってるからだ。覚悟を持てよ」 ここもめっちゃ泣けたー! お父さんの愛、深すぎる 「天気がいいとそれだけで嬉しくなるけど、どこかで大変な目に遭ってる人の子も想像してしまう」 このテーマもあったんだな! っていうのが何か思ったんだけど、 忘れちゃった…くやしい。 また今度読もう。

Posted byブクログ

2024/08/31

大傑作 人間の最大の武器は習慣と信頼だ 逃げる過程も読めない展開も面白かったけど、 大学時代の他愛のない会話が何より良かった。 友人、元恋人、出会った人たち、親 みんなが「逃げろ」と。 読者の気持ちにより感情が乗る気がした。 砂漠でも思ったけど、学生時代が尊いんですよ ...

大傑作 人間の最大の武器は習慣と信頼だ 逃げる過程も読めない展開も面白かったけど、 大学時代の他愛のない会話が何より良かった。 友人、元恋人、出会った人たち、親 みんなが「逃げろ」と。 読者の気持ちにより感情が乗る気がした。 砂漠でも思ったけど、学生時代が尊いんですよ いちいち描写をしないと言葉がなくなってしまうんですよ

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2024/01/21

何もしていなくても、誰かの悪意でここまで追い込まれたのか?怖い話だった。 生きるために逃げることは大事だが、悪いことを考えた人にもしっぺ返しは欲しかった。顔を変えてまで逃げて終わりって… 国レベルで嵌められると、信じてくれる人がいても無力だなと。 ただ、話は面白く映画も見ました❗...

何もしていなくても、誰かの悪意でここまで追い込まれたのか?怖い話だった。 生きるために逃げることは大事だが、悪いことを考えた人にもしっぺ返しは欲しかった。顔を変えてまで逃げて終わりって… 国レベルで嵌められると、信じてくれる人がいても無力だなと。 ただ、話は面白く映画も見ました❗️

Posted byブクログ

2023/11/04

仙台市街地で行われた首相パレードの最中に起きた暗殺事件。 その犯人に仕立て上げられた青柳雅春の逃亡が始まる。 私たちは普段、テレビで中継を見ているだけで、事件の裏側にある事実など知る由もなく、マスコミの流す情報によって、先入観や思い込みを勝手に植え付けられているということに恐ろ...

仙台市街地で行われた首相パレードの最中に起きた暗殺事件。 その犯人に仕立て上げられた青柳雅春の逃亡が始まる。 私たちは普段、テレビで中継を見ているだけで、事件の裏側にある事実など知る由もなく、マスコミの流す情報によって、先入観や思い込みを勝手に植え付けられているということに恐ろしさを感じます。 大学時代に青柳と同じサークルだった森田森吾や樋口晴子、後輩の小野一夫(カズ)、バイト先の轟社長、前にいた運送会社の仲間、逃亡中に味方になってくれた意外な人物たちなどが絡み合って、過去の思い出と現在とを織り交ぜたスリル満点の逃走劇が、読む人をほんとうに飽きさせることなく進んでいきます。 物語の壮大さと、逃亡の最中にも、もう会えなくなってしまった友人たちの揺るぎない信頼性を確信して、最後は思わず泣けてきます。 この本は一度読んだだけで手放すのはもったいないような、面白さの中にも深みのある凄い作品だと思います。

Posted byブクログ

2023/11/04

文庫版の解説者も触れているが、伊坂幸太郎は伏線を綺麗に張り、綺麗に回収するという技術が突出していると思う。 読後、納得感の強い作品。

Posted byブクログ

2023/10/29

旧友と昼食を食べていた樋口晴子は、仙台駅前からの金田新首相就任パレードの中継を見ていたところ、首相の乗った車付近で爆発が起こり、大騒ぎになったことを知る。その直後から元彼である青柳雅春が容疑者として浮上し、悪い噂が次々と上がってきた。一方で青柳雅春は、同じく旧友とファストフードを...

旧友と昼食を食べていた樋口晴子は、仙台駅前からの金田新首相就任パレードの中継を見ていたところ、首相の乗った車付近で爆発が起こり、大騒ぎになったことを知る。その直後から元彼である青柳雅春が容疑者として浮上し、悪い噂が次々と上がってきた。一方で青柳雅春は、同じく旧友とファストフードを食べていたが、車で仙台駅付近まで送ってくれた森田から「逃げろ」と告げられる。 首相暗殺の犯人として追われる青柳雅春。マスコミは容疑者を犯人として悪い噂を流し続け、はめられていく様子を描いていくのだが、青柳雅春の性格から妙にのほほんと緊張感の少ない話となっており、その落差だけでも楽しめる。 一応第2章(最初の章)で一気にネタをまくしたてる形で後日のストーリーを説明するため、途中で内容を忘れるんじゃないかと心配になるのだが、実際には全く問題ない。むしろ、作者が小ネタとして悪乗りしているように見えて微笑ましい。 ほとんどの章が青柳の視点で描かれ、どうやって逃げていくのかと気になるのだが、大学の頃の話などではぐらかされる。ただし、それらも情報操作の一環ではないのかと勘ぐってしまうのだ(前フリでは有るのだが)。 中盤くらいからは2章でどう書いてたっけ?と忘れるくらいにストーリーが進んでいくのだが、普通なら400ページくらいの厚さなのに700ページ足らずというボリュームのため、よく言えば長く楽しめる作品である。 最後はもっとぼんやり終わってくれても良かったかな。エピローグは必要だったのかどうなのか、というところで☆4。今回は貸してくれというリクエストで急いで読んだが、じっくり楽しみながら読むのに向いている作品だ。

Posted byブクログ