木洩れ日に泳ぐ魚 の商品レビュー
同じ部屋で暮らしていて、ついに明日から別々に生活するようになった男女の一夜の語らいの中で、兄妹という関係だけでなく別の秘密が明らかになる。男女の緊迫した心理状況の鋭い描写にどんどん引き込まれる。
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ミステリーちっくではあるけど、何となくネタは想像できる展開なのでミステリー小説ではないかな。 どちらかというと、この番組ではみんなの〜叶わぬ恋にお悩みのエピソードと一緒になんたらかんたらが主題かな。 禁断の恋が禁断でなくなった瞬間に恋で無くなる怖さ。 そんなに急に気持ちがしぼんじゃうことは、あると思います。やっぱり恋は盲目って真理。
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アパートの一室で一組の男女が一晩かけて話をするだけのストーリーであるにも関わらず、中だるみすることもなく緊迫感をもって読み進められるのは、偏に作者さんの筆力の為せる技だろうなぁと。二人の視点で二人の記憶や思考を交互に描いているので、お互いの腹の中や思惑がありありと見えて、うすら...
アパートの一室で一組の男女が一晩かけて話をするだけのストーリーであるにも関わらず、中だるみすることもなく緊迫感をもって読み進められるのは、偏に作者さんの筆力の為せる技だろうなぁと。二人の視点で二人の記憶や思考を交互に描いているので、お互いの腹の中や思惑がありありと見えて、うすら寒さを覚えます。相変わらず、文体はあまり得意ではないのですが、けど巧いなぁ。
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もぬけの殻となった部屋の中で語り合う男女。 最後の晩に、2人はある思いがけない真実に気づいてしまう。 ダブル主人公形式で語り手が交互に入れ替わりながら話が進んでいく。2人は曖昧な記憶の中で、かつては愛し合ったはずの相手を疑い、怯え、憤る。 舞台・日時は変わ...
もぬけの殻となった部屋の中で語り合う男女。 最後の晩に、2人はある思いがけない真実に気づいてしまう。 ダブル主人公形式で語り手が交互に入れ替わりながら話が進んでいく。2人は曖昧な記憶の中で、かつては愛し合ったはずの相手を疑い、怯え、憤る。 舞台・日時は変わらないのだが、互いの思いと記憶を探っていく中で話は進展し、様々な形で苦々しい感情を味わうことになる。 その真実については十分予想しうる範疇ではあるのだが、 それを確信した2人の感情はどこか歪んでおり、きれいに収まりきらないところが生々しい。 絶望するほど叶わぬ恋を、絶望するほどの圧倒的な感情描写で描ききってくれた。 追記:両者の闇に包まれた感情を互いの視点から描くところからHUNTER×HUNTERのキメラアント編を連想した。 (同意はあえて求めない。)
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これからまさに別れ話を始めようとする一組の男女の、一夜の心の中。二人はそれぞれに相手が殺人を犯したのではないかと疑っていて、別れ話の中ではっきりさせたいと思っているのだが、思いがけない二人の過去も明らかになっていく。登場人物も少なく、場面の変化も回想シーンのみ。気持ちの描写だけで...
これからまさに別れ話を始めようとする一組の男女の、一夜の心の中。二人はそれぞれに相手が殺人を犯したのではないかと疑っていて、別れ話の中ではっきりさせたいと思っているのだが、思いがけない二人の過去も明らかになっていく。登場人物も少なく、場面の変化も回想シーンのみ。気持ちの描写だけでよく1冊の本になったなあ、と思う。初めての恩田陸。こういう本もありだけど好みではなく、楽しめなかった。
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これは何のジャンルになるのだろう。ミステリーのようなロマンスのようなサスペンスのような、でもどれとも違う雰囲気を持つ作品でした。きっと意識的にそうしているのだと思う。 主人公であるカップルがある事件から別れを選び、部屋を引き渡す前日の一晩に探り合い、議論し、確認し合いやがてそれぞれが一つの結論に辿り着く。というお話。 本屋のPOPはどんでん返しな展開を煽るような内容で、実際それに興味を惹かれて手に取ったわけで作品の読み易さ、スピード感の大部分はこういったミステリー部分が大きく寄与している事は間違いないのだけど、この物語の本質はどちらかと言えば人間の情とか憐憫、恋愛の本質とか男女の恋愛観といった人間の内面を掘り下げる事がテーマのような気がした。 人間関係、とりわけ男女関係においては「どちらがより相手に依存してるか」によって力関係がシーソーのように上下するものですが、山岳ガイドの死の真相と並行して、アキと千明のどちらがより相手を深く愛しているのか。というポイントもシーソーゲームのように危うく揺蕩っていきます。 既に別の女性と住むことが決まっている千明と、プロポーズまでされた別の男性と別れ自暴自棄になっているようにすら見えたアキ。 勝負としては完全に女性側が不利な展開でしたが、山岳ガイドの死と自分達の出生の謎が解けた途端、千明への想いは自己愛の投影と障害のある恋愛によるものに過ぎなかったと気付いてしまい、一切の未練が急に断ち切られる描写は女性作家にしか描けない巧みさだったと思います。 そして表面的には別の女性が家で待っている「勝者」である千明ですが、実はその家を牢獄のようだと気付き将来に起きる破滅的な別れを予感してしまっていて、アキへも実は未練タラタラな所が男ってそうだよな。と思いつつ、妙に共感して辛くもあり。笑 それにしても恩田さんの作品はどれも読みやすくて、ハズレが無いなぁ〜。
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不思議な感じの小説でした。 恩田陸さんの小説は今回久々に読んだのですが、以前に読んだ「夜のピクニック」、「ドミノ」などの作品とはまるで違った感じで、これはこれでありだなと思いました。 主人公2人の視線で、一晩の出来事を回想を交えながら進んでいく感じと、ミステリーなのでしょうがある...
不思議な感じの小説でした。 恩田陸さんの小説は今回久々に読んだのですが、以前に読んだ「夜のピクニック」、「ドミノ」などの作品とはまるで違った感じで、これはこれでありだなと思いました。 主人公2人の視線で、一晩の出来事を回想を交えながら進んでいく感じと、ミステリーなのでしょうがある意味で恋愛小説(爽やかでは無くドロドロした感じの)っぽいところもあるなど、読んでいて引き込まれました。
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この本はすごかった……。書店で帯付きで、恩田陸の隠れた名作のようなことを書いていたので、お目当てのものと一緒についでに買ったようなものだったけれど。 本当に描写が上手で、夜を徹して関係がぼろぼろになってしまった男女2人が、今まで目を背けていた秘密に向き合う、もったりと過ぎていく時...
この本はすごかった……。書店で帯付きで、恩田陸の隠れた名作のようなことを書いていたので、お目当てのものと一緒についでに買ったようなものだったけれど。 本当に描写が上手で、夜を徹して関係がぼろぼろになってしまった男女2人が、今まで目を背けていた秘密に向き合う、もったりと過ぎていく時間の感覚や、過去を思い出す、部屋の空気のなんとも言えない居心地のわるさ、重苦しさ。物事が連鎖して次々と、思い出したくない過去が溢れてきて、なにか大きな力に暴かれていく不快さ。 読んでいて息苦しくなり、重々しさにとても疲れます。でも、最高。
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別々の道を歩むことになった男女がアパートの一室で最後の夜に語り合う。 たった数時間の出来事なのに幼少期から現在に至るまでの長いストーリーが見えた。少しづつずれていた記憶からたてられる仮説、憶測。そして真実とは。 引き込まれて読めたけれど、もっと劇的ななにかを期待してしまった。
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