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昔日の客 の商品レビュー

4.5

61件のお客様レビュー

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2015/11/22

私から言わせると、この本の内容は、昭和30年代から40年代にかけて東京郊外にあった“古本屋のオヤジ”の“ざれ言”である。でも通読すると、なぜかほっとする。思わず笑みがこぼれる。 でも、なんでほっとして笑みがこぼれるんだろう?それは息子の関口直人さんが復刊に際して寄せた一文にある「...

私から言わせると、この本の内容は、昭和30年代から40年代にかけて東京郊外にあった“古本屋のオヤジ”の“ざれ言”である。でも通読すると、なぜかほっとする。思わず笑みがこぼれる。 でも、なんでほっとして笑みがこぼれるんだろう?それは息子の関口直人さんが復刊に際して寄せた一文にある「古本屋にとって、面白い時代を生きられた」という点につきるのでは。 自分の好きなことを言って、書いて… もちろん今もそんな生活をしてる人はそれこそごまんといる。けれど今とちがって、このスッキリとした感じは何だろう?って、ちょっと真剣に考えて、自分なりに出した結論は、今と違ってイヤミがない、ということにつきると思う。好き放題言ってても、毒がないし攻撃的でない。頭ごなしに怒る感じじゃない。また何より否定的でない。 今じゃ、たとえばツイッターやブログにちょっと自分の考えを載せたら、それを否定し、さらにその人の人格全てを否定するくらいの勢いの口汚いコメントで毒づかれる時代。作家も古本屋も、そしてあらゆる人が、そんなのにいちいち晒されたら、正直やってられないと思う。 そうではなくて、自分の趣味をさらりと示して、ちょっと言い過ぎ、やり過ぎても、それを軽く笑い飛ばすような雰囲気が、時代のなかに、人々のなかにあったとしか言いようのない描写がこの本にはあふれてる。 (実際、著者の関口良雄さんも、他人へ話すのが好きで、時に商売そっちのけであること(ないことも?)話し込んで奥さんにアキレられたり、飲むのが好きでお酒が入ると民謡を大声で歌いたくなり、高名な作家の前だろうとお構いなしで“いなかっぺ大将”状態になったり、という場面が一度ならず出てくる。)だから、ほっとするんじゃないかな。 時代を時計の針のように巻き戻すことはできないけど、ああいう楽天的な空気って決して悪くないと思うし、他方で、なんでこんなに老若男女すべてがギスギスした攻撃的で排他的な社会になってしまったんだろ?って考えてしまう。だからもし、著者のようなタイプの人が今も「現役」で活躍しているのであれば、批判は可、ダメ出し可、今の常識から照らして疑問の提示も可、だけど「否定」はしないでおきたい。 他人の言うことやることを誰もが徹底的に否定してかかるようになってから、こんな嫌な空気が支配する今の世の中になったとしか思えないから。 著者の関口さんは上林暁さんから「本を愛する人に悪人はいない」と言われ、「こりゃあ悪人になれないぞ」って瞬間に頭に浮かんだって“正直に”書いてる。関口さんのそういう一見、外連味溢れる文章に「それは違うぞ」って思っても、否定から入るのはやめようよ…そういうスタンスならばこの本の外連味が深味となって素直に染みてくるはず。 自分の主張や好みに合うか合わないかってだけで、なんでも物事を二元論で切り分ける時代の空気に息が詰まりそうになってる人に、特におすすめします。 (2015/5/23)

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2015/07/31

手触りのとても好い一冊です。 会わなくても、何年も音信不通でも 心を寄せる相手には、何かが伝わる。 メールや電話は近しいようで どこか遠くに感じるときがある反面、 一枚の葉書が、突然届くことに胸を熱くする。 関口氏のように、心の襞に寄り添えるように ありたい、と願います。

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2020/02/29

2015.7.18 人と人とのつながりの暖かさや優しさ。わたしも日々追及して、自分の道を作って、信頼される仕事人になりたい。

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2015/05/23

「昔日の客」関口良雄 読友さん達が読んでいて、面白そう!と思ったら 図書館にあったので借りてきた。 大正に生まれた古書店の主人が書いた随筆集。 本と人への愛に溢れた、一冊。 店主の少なくないユーモアがとてもあたたかい。 なんでだか、最後に号泣してしまったよ。

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2015/04/18

又吉直樹さんが良い本だと紹介されていたので、手にとってみました。想像以上に面白く、読みやすい本です。本の装丁そのものも美しく、手にとっているだけで幸せな気持ちになれます。私も「あとがき」を見てウルっときました。是非「あとがき」まで読んで下さい。非常にお薦めの一冊です。

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2015/02/23

読みたくて仕方のなかった1冊。読友さんのご好意で借りられました。図書館ないんだもん。古本屋の店主であられた関口良雄さんがお客様や当時の文壇を賑わせていた方達との交流を描いた、温かな本当に素晴らしい作品でした。本への愛情は然り、著者や纏わる各々の物語をも愛情ある語り口で綴られており...

読みたくて仕方のなかった1冊。読友さんのご好意で借りられました。図書館ないんだもん。古本屋の店主であられた関口良雄さんがお客様や当時の文壇を賑わせていた方達との交流を描いた、温かな本当に素晴らしい作品でした。本への愛情は然り、著者や纏わる各々の物語をも愛情ある語り口で綴られており、静かに静かに胸に染み込んでくるようでした。「父の思い出」の章、巻末のご子息からの関口良雄さんへの思いはタイムリーすぎて必要以上に号泣。復刊された事、巡り会えた事に感謝。復刊を実現した夏葉社さんの本も紹介してもらったので読みます♪

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2015/03/19

2015/02/13読了 又吉おすすめとあり読んでみました。おすすめしてなかったから確実に知ることななく読まなかったであろう。この本を読むことが出来て本当に良かった。素敵な本です。子供の頃から古本屋さんで好きでチャリで古本屋めぐりをしていました。今みたいにブックオフみたいな大型古...

2015/02/13読了 又吉おすすめとあり読んでみました。おすすめしてなかったから確実に知ることななく読まなかったであろう。この本を読むことが出来て本当に良かった。素敵な本です。子供の頃から古本屋さんで好きでチャリで古本屋めぐりをしていました。今みたいにブックオフみたいな大型古本屋がなかった時代で古本屋といえば気難しいジジイがたいがい店番をしていて私が見かけ薄汚い子供だったからか本をペラペラっと確認して、その確認が少しでも長かろうもんなら、激しく咳払いをされ、少しでも立ち読みしようもんなら怒られてました。なので、古本屋のじじいは底意地悪くて陰気で怖いってイメージがあったんですが私が出会ったじじい達もほんとは良いじじいだったんだと思わせてくれる作品です。息子さんのあとがきに涙涙涙.........

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2015/02/09

古書店・山王書房を営んだ関口良雄さんの随筆集。 あしたから出版社 の夏葉社さんが復刊をした、というところから知り手に取ってみた。 その時代の著名な作家たちや、本好きのお客さんたちにも愛された関口さん。 本の出版を前に亡くなってしまったのは無念だったろうなぁと思うけど、あとがきを...

古書店・山王書房を営んだ関口良雄さんの随筆集。 あしたから出版社 の夏葉社さんが復刊をした、というところから知り手に取ってみた。 その時代の著名な作家たちや、本好きのお客さんたちにも愛された関口さん。 本の出版を前に亡くなってしまったのは無念だったろうなぁと思うけど、あとがきを読むと息子さんの思いに泣けます。 さらにその本が数十年後またこうして思いのある人の手で復刊されて…さぞ関口さんも、ご家族も喜ばれていると思います。 とても良い本でしみじみとしました。

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2014/11/20

夏葉社の『昔日の客』は、読んでみたいな…と思っていた本である。こないだ、夏葉社をやっている島田さんの『あしたから出版社』を読んで、2010年の10月終わりに復刊された本を、4年ほど経ってやっと読む。巻頭の「正宗白鳥先生訪問記」から読みはじめて、いい文章やなあと思う。 お酒を飲...

夏葉社の『昔日の客』は、読んでみたいな…と思っていた本である。こないだ、夏葉社をやっている島田さんの『あしたから出版社』を読んで、2010年の10月終わりに復刊された本を、4年ほど経ってやっと読む。巻頭の「正宗白鳥先生訪問記」から読みはじめて、いい文章やなあと思う。 お酒を飲んだら気持ちよくなって、唄って踊るくせがあるという、古本屋の関口さん。途中からしだいに酒癖がわるくなって、きっぱりお酒は断ったというが、それからも、唄うことはやめなかったらしい。 その関口さんのいとなむ古本屋、山王書房をゆきかった本や、本をめぐる人たちとのことどもが、綴られている。某月某日のページに書かれていた「「方丈記」の精神をもって世に処して来たような人だ」(p.100)という井上さんの話が、こころにのこる。 あるいは、別の某月某日、「すみませんが、お宅の庭の落葉を少しくださいませんか」(p.126)といった調子で拾い集めた落葉でいっぱいになった袋のようすを記したこんなところ。 ▼一枚の紅葉した葉は芸術品のように美しく、太陽にかざして見る落葉の葉脈は一段と美しく見えた。  私はわが郷里の画家、菱田春草の「落葉」の名画を思い出し、その朴の落葉を画いた画家の心が判るような気がして来た。(p.126) そして、「父の思い出」に描かれている、著者の父の姿。「私はこの父を立派な父だと思うのである」(p.135)という。その父上は50代の半ばで亡くなり、関口さんご自身も60を迎えずに亡くなられた。還暦記念にとまとめようとした本の完成を見ることはなかったが、出版の意志の堅かったご子息が本を出された。父が「自分が死んだら、あとがきはお前が書け」(p.219)と言ったとおりに、あとがきを記されている。 (11/20了) ※菱田春草の「落葉」 - 永青文庫美術館 http://www.eiseibunko.com/collection/kindai2.html ※目についた誤字(私が読んだのは一刷なので、二刷以降で直っているだろうか) p.27 広律和郎 → 広【津】和郎 p.154 ビカデリー → 【ピ】カデリー p.206 文学界の新入賞 → 新【人】賞

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2014/11/03

かつて大田区新井宿にあった古本店「山王書房」の店主、関口良雄さんの随筆集です。 タイトルの通り、山王書房に訪れていた古本好きなお客さんや、当時の人気作家(尾崎一雄、尾崎士郎、三島由紀夫ら)との交流が描かれています。大変お話し好きだったという関口さんのユーモア交えた文体、古本へ...

かつて大田区新井宿にあった古本店「山王書房」の店主、関口良雄さんの随筆集です。 タイトルの通り、山王書房に訪れていた古本好きなお客さんや、当時の人気作家(尾崎一雄、尾崎士郎、三島由紀夫ら)との交流が描かれています。大変お話し好きだったという関口さんのユーモア交えた文体、古本への並々ならぬ想いが伝わります。

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