ローマ人の物語(40) の商品レビュー
蛮族の侵入等による混乱期を経て、帝国の統一のため、皇帝の帝位安定のため、遂にキリスト教が国教となる。親権政治の始まり、いわゆる中世の始まりである。それもこれも、皇帝が自身の立場の安定を図ろうとすることから出発し、たまたまその時一神教として存在していたキリスト教が都合が良かったとい...
蛮族の侵入等による混乱期を経て、帝国の統一のため、皇帝の帝位安定のため、遂にキリスト教が国教となる。親権政治の始まり、いわゆる中世の始まりである。それもこれも、皇帝が自身の立場の安定を図ろうとすることから出発し、たまたまその時一神教として存在していたキリスト教が都合が良かったということ。皇帝というリーダーの意思決定が一つの宗教の隆盛を生み出すとは、やはりリーダーというものは恐ろしい。
Posted by
えっ、皇帝じゃなくて司教?と思って読み始め、納得していった。多神教と一神教の違いも理解できた。ただ多くの神様を信じている、というだけではなく、いろんな神様がいることを認め、受け入れていること。私はキリスト教ではないけど、教会で騒いだりせずに厳かな気分になる。そういう感じ。 どんど...
えっ、皇帝じゃなくて司教?と思って読み始め、納得していった。多神教と一神教の違いも理解できた。ただ多くの神様を信じている、というだけではなく、いろんな神様がいることを認め、受け入れていること。私はキリスト教ではないけど、教会で騒いだりせずに厳かな気分になる。そういう感じ。 どんどんローマでなくなっていくローマをよみすすめるのがしんどい。だけど、どうやってなくなっていくのかをしっかりと見守って看取るのだ。 テオドシウス帝、いくら病気で気弱になっていた時とはいえ、キリスト教の洗礼を受けたことを後悔したんじゃなかろうか。皇帝である自分よりも司教の意見に左右され、従うだなんて。何よりもそれを自分で選択してしまっているという現実。 ローマの美術が残っていることに対する塩野さんの想像。それがこの巻の唯一の救い。ローマ人が大切にいつかまたこの美術を美しいものとして、大切にしてくれる時がくるのを信じて、願って、地下深く埋めたのではないかという仮説。そういした人が1人や2人ではなかったということ。何世紀も超えて、昭和の人がアメリカからのお人形を大切に隠していたのと同じように。
Posted by
キリスト教が国教になりもともとの宗教が消えていく過程がよく分かる。 ローマの宗教も考え方もシステムも変わっていく。
Posted by
皇帝テオドシウスを信徒にし操り、ローマ時代の象徴の元老院を屈服させたアンプロシウスによりキリスト教の勝利は確定した。それに伴いギリシャ・ローマの文化、芸術が破壊されまくる。初期の教義からはずれた宗教の偏屈が貴重な遺産を破壊していく。なんて悲しい時代なのだろう。この後、東西に分割さ...
皇帝テオドシウスを信徒にし操り、ローマ時代の象徴の元老院を屈服させたアンプロシウスによりキリスト教の勝利は確定した。それに伴いギリシャ・ローマの文化、芸術が破壊されまくる。初期の教義からはずれた宗教の偏屈が貴重な遺産を破壊していく。なんて悲しい時代なのだろう。この後、東西に分割されローマ帝国は滅亡のカウントダウンに入る。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ついに、ついに、ローマ帝国のローマたる部分が失われてしまいました。 法律の大切さを知り遵守することも、富める者がその富を社会に還元することも、ローマ市民の善き習慣でありましたが、もっともローマたり得るところは『寛容』の精神だったと思います。 自分とは違う、自分には理解できないものでも、それを尊重する人がいるのであれば尊重する。 違うことで排斥をしない。 だから多民族、多宗教でも一つの国としてまとまっていられた。 けれども一神教であるキリスト教は、それ以外を認めることがありません。 自分が信じるものを、無理にでも他者に信ずることを強要しました。 現世を楽しむローマの神々とは違い、キリスト教の神は、信じることによって死後の楽園を保証するものです。 だからローマのインフラはキリスト教の普及とともに廃れていった。 現世がどうでもいいのだから、面倒なメンテナンスなんてするはずがない。 違いを認めないのですから、異端は徹底的に排除されます。 異端審問、魔女狩り。 暗黒の中世はもうすぐです。 何しろ医薬も芸術も図書館もすべて、異教と紐づけられて廃棄させられたのですから。 学校で習うルネサンスの意味がようやく分かりました。 これほどまで人間の自然な感情が封じられ、宗教以外を学ぶことを禁じられ、現世の苦すら死後の幸せのために甘んじて受け入れる世の中では、文化が成長するわけがありません。 後に生まれたイスラム教は同じく一神教ですが、他宗教に対して当初は寛容でしたから、中世は圧倒的にイスラム文化圏の方が文化程度が高くて清潔で金持ちだった。 そういうことか。 ルネサンスがあってよかったね。 このシリーズも残り3冊だけど、読み進むモチベーションがさあ…。
Posted by
ユリアヌスの死後、紀元364年から374年の間、蛮族出身の皇帝がその地位についたのですが、西方ではドミノ式に蛮族が次々に襲ってきておりその侵入は激化する一方でした。皇帝は優位に闘いを進めていたものの、族長と引見中に急死。東方の統治者であったヴィレンス帝は甥二人を西方の統治の分担と...
ユリアヌスの死後、紀元364年から374年の間、蛮族出身の皇帝がその地位についたのですが、西方ではドミノ式に蛮族が次々に襲ってきておりその侵入は激化する一方でした。皇帝は優位に闘いを進めていたものの、族長と引見中に急死。東方の統治者であったヴィレンス帝は甥二人を西方の統治の分担としました。北方蛮族の帝国内への侵入は、押し出されてきた大量の移住者の不満を生み、掠奪と暴行は見過ごせない状態になっていました。 紀元378年、「ハドリアノポリスの戦闘」でローマ軍は蛮族に完敗、ヴィレンス帝は戦死、ローマ帝国のゲルマン化は留めようもない状態になります。その後、前皇帝の息子であったテオドシオスがその地位につくと蛮族の移住を公認します。こうして、帝国の「防衛戦」は消滅し、ローマ社会の中堅層であった農民の生活は、蛮族による収奪と重税に苦しめられ、「農奴」にな成り下がります。 筆者はいわゆるローマ帝国の滅亡を、「溶解」という言葉が妥当ではないかと述べていますが、特に宗教面ではローマ人がキリスト教徒に敗れたのではなくローマ人がキリスト教徒になってしまったからだといいます。 その言葉どおり、元高級官僚だった辣腕の司教アンプロシウスの下で皇帝テオドシオスは異教排斥を推し進めていきます。 ローマ人の持つ特質「寛容」の精神から反するような、多神教から一神教であるキリスト教のみを認める法律は、ギリシャやローマの神々の神殿や彫像など芸術的価値の大変高い物を破壊するという、今思えば愚行にまで至ります。ローマ人のローマ人たる所以がこうして、どんどん溶け去っていくのを見るのは大変悲しいことでした。
Posted by
ユリアヌスの死後、ヨヴィアヌスがユリアヌスの反キリスト的な政策を全て撤回し、自身の死をもって、ヴァレンティニアヌスに帝位を譲ることになる。以降、親キリスト教路線が加速する。 ヴァレンティアヌスは、共同皇帝としてヴァレンスと共に蛮族相手に戦い、ローマをなんとか維持するが、突如死亡し...
ユリアヌスの死後、ヨヴィアヌスがユリアヌスの反キリスト的な政策を全て撤回し、自身の死をもって、ヴァレンティニアヌスに帝位を譲ることになる。以降、親キリスト教路線が加速する。 ヴァレンティアヌスは、共同皇帝としてヴァレンスと共に蛮族相手に戦い、ローマをなんとか維持するが、突如死亡し、その後をグラティアヌスが継ぐ。 帝国東方を守るヴァレンスは、蛮族フン族との戦いにより、命を落とし、その後をテオドシウスが継ぐことになる。 グラティアヌスとテオドシウスの2帝体制になってからは、反異教、反異端路線がさらに加速する。その政策を補助するのが、キリスト教の三位一体派である司教アンブロシウス。 その後、グラティアヌスが部下の反乱により殺される事件が起き、テオドシウス体制になるが、キリスト教化は止まらず、遂にローマ国教としてキリスト教が定められることになる。 キリスト教の神の権威の前では、ローマ皇帝とて一信者として遇され、皇帝の影響力は弱まっていく。 テオドシウスの死後、ローマは2分され、息子のアルカディウスが東ローマ帝国皇帝に、ホノリウスが西ローマ帝国皇帝になる。
Posted by
帝国が東西に二分され、キリスト教以外は処罰の対象となる。それまでの帝国と完全に別物になっていく様が書かれた巻。ここまでずっと読んできた身としては、とても切なくなった巻でした。
Posted by
作者の好きな男たちのつくったローマの 大嫌いなキリストへの敗北 というか堕落というか変質というかを描くだけに 筆ののりも重い ナポレオンという新しい時代の英雄への敗北ならまだ許せるが という感じありあり 古代ローマ最高キリスト教のせいで 中世暗黒ルネサンスでようやくまともに とい...
作者の好きな男たちのつくったローマの 大嫌いなキリストへの敗北 というか堕落というか変質というかを描くだけに 筆ののりも重い ナポレオンという新しい時代の英雄への敗北ならまだ許せるが という感じありあり 古代ローマ最高キリスト教のせいで 中世暗黒ルネサンスでようやくまともに というのが現代史観なのかもしれないが 神の子が降臨しなくとも近代が1000年早く来たかどうかはわからない ライン川を越えられずアレクサンドロスも生み出せず 羊になることを選んだのはただローマ人だけではない
Posted by
テオドシウス帝の治世と死,ローマ帝国の東西分裂 「そしてなぜか、移住者は常に、すでにその地に住みついている住民並みの待遇を期待するものなのだ。自分たちを、やむをえず故国を捨てた難民と思うからだろう。」(31頁)
Posted by