ローマ人の物語(40) の商品レビュー
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ローマ帝国の国教が遂にキリスト教になってしまった。 そして、皇帝が司教に赦しを請う。 最高神ユピテルも元老院に有罪判決が下される。 もはやローマ帝国ではないな… 宗教に何を求めるのかの問題だが、これを真っ向から上手く使って、キリスト教以外の排除の必要性を論破したアンブロシウスは賢いが、腹立たしい。
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ついにキリスト教がローマ帝国を乗っ取る。もはや皇帝は形骸化し、ミラノ司教アンブロシウスが強い力を持つようになる。信仰深い方々には申し訳ないが、一神教は人心掌握のための道具であることを示した代表的な例のよううに思える。そして国は分裂し、崩壊していく。
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ユリアヌスが短い治世・人生を終え、ついにキリスト教が本格的に政治・皇帝へ影響を及ぼし始める時代。それまでに出された反キリスト教の法律はことごとく無効とされ、テオドシウス帝によってキリスト教が国教に指定される。 ここにいたり、ローマは、皇帝が国民の信頼・希望を託され統治する国から、唯一の神に許されて神に統治される国へと完全に変貌を遂げる。 今まで信じられた神々は見捨てられ、神殿は破壊されたり作り変えられる。儀式をするだけで死罪になる。よく、今まで信じてきて普段の生活の一部になっていたものをそこまで排斥できるものだと、悲しい気持ちになりながら読んでた。 残り3巻。ローマ人が最後にどのような結末を迎えるのか、最後まで読みきりたい。
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ヴァレンティニアヌスから、テオドシウスの死までを書く。ヴァレンティニアヌスは弟ヴァレンスに東方を任せ、自らは西方で10年を蛮族の撃退で過ごした。ヴァレンティニアヌスが蛮族引見中に憤死すると、息子たちにスムーズに継承され、イタリアは「影の薄い皇帝」といわれるヴァレンティアヌス二世、西方はグラティアヌスに引き継がれる。東方はヴァレンスのままだった。このころ蛮族からも恐れられている「蛮族中の蛮族」フン族がゴート族を押しだし、ゴート族はドナウ南岸に移住を申しでた。ヴァレンスがこれを許したが、十分に移住の管理をしなかったために、想定を上回る蛮族が移住してきて、結局、ゴート族は略奪行為をすることになる。ヴァレンスは国内を略奪するゴート族と戦うはめになるが、戦法を誤り、ハドリアノポリスで2/3の兵を失った末に、自らも焼き殺される。ゴート族が中央に居座ったままの帝国に登場してきたのがテオドシウス、軍務はよくこなした人だったらしい。かくして西のグラティアヌス、東のテオドシウス体制となるが、無教養な彼らの相談役や外交使節をつとめたのが、ミラノ司教アンブロシウスである。彼はもと行政官僚だったが、ミラノの長官だったとき、アリウス派と三位一体派の闘争を調停、三位一体派に見込まれ、司教に推される。結局、洗礼をうけ、1週間で聖職者の階級をさっさと終え、司教になった。この「政治的宗教人」は二人の皇帝を操作し、キリスト教の特権化を推し進め、まず、アリウス派を追い落とした。聖職者制度、教会儀礼、貧救制度、聖人崇拝などの教会の基礎もつくった。グラティアヌスがブリタニア軍に殺されると、テオドシウスを操作し、ローマ元老院にキリスト教をローマの国教にさせ、ユピテルに有罪判決をださせた。また、暴動鎮圧で死者がでたことで皇帝を糾弾、皇帝に謝罪をさせ司教権力の優越をデモンストレーションした。テオドシウスは病にかかったとき、洗礼を受けてしまい、以後は司教の「羊」になってしまったのであった。このころ、偶像破壊がおこり、破門・異端審問などの原型もでた。ローマ元老院にあった勝利の女神像撤去に抗議した「最後の異教徒」シンマクスの抵抗もむなしく、ローマは、他者の宗教をみとめない一神教でありながら、他者へ布教してくるキリスト教という特異な宗教一色に染まっていくのであった。
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ミラノ司教アンブロシウスを中心にキリスト教の国教化まで話しが進んでいく。ローマ古来の宗教の最後の守護者として、シンマクスが登場するのだが、勝利の女神像の再設置を懇願した書簡を書いた努力も、むなしく終わってしまう。 しかし、蛮族の進入と、キリスト教の国教化という二つの問題が今ひと...
ミラノ司教アンブロシウスを中心にキリスト教の国教化まで話しが進んでいく。ローマ古来の宗教の最後の守護者として、シンマクスが登場するのだが、勝利の女神像の再設置を懇願した書簡を書いた努力も、むなしく終わってしまう。 しかし、蛮族の進入と、キリスト教の国教化という二つの問題が今ひとつ結びつかない。表面的には、これまでの宗教が、現状の政情不安に対し、無力だから、ということなのだろうが。日本史の中でも、政情が変化する状況下では、新興宗教が発達しやすい。それが、積もり積もると、国教化というところまで行くのだろうか。 著者は指摘する。もし、アンブロシウスが司教に担ぎ出されていなかったら・・・。このようなキリスト教の盤石な体制は築き得たのだろうか?
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政局の安定のために、皇帝の上に神を戴くシステムを導入。システムの急激な普及のために、免税、経済支援。宗教も、メジャーになるには、やっぱり現世のお金ってことですね♪
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キリスト教の勢力拡大に大きく貢献したアンブロシウスの話が中心ですが、宗教の怖さやその偽善ぶり、いい加減さがイヤと言うほどよく判る内容です。 キリスト教会とは縁もゆかりもなかった官僚のアンブロシウスを司教にスカウトしたミラノ信徒達こそ聖人に列せられるべきだろうと思ってしまいました。...
キリスト教の勢力拡大に大きく貢献したアンブロシウスの話が中心ですが、宗教の怖さやその偽善ぶり、いい加減さがイヤと言うほどよく判る内容です。 キリスト教会とは縁もゆかりもなかった官僚のアンブロシウスを司教にスカウトしたミラノ信徒達こそ聖人に列せられるべきだろうと思ってしまいました。 ただ、アンブロシウスは何を目指して司教を引き受けたのか、最初から皇帝を凌ぐ権力者となることを目指していたのか、その点は良く判らない点でした。 それにしてもこの巻を読んだ後では、ユリアヌスの一本気さが本当に可愛らしく思えてきます。
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ローマがどんどんローマらしくなくなっていく。寂しい。 多神教で、自分が信仰しない神様でも他の人が信じることは認める「寛容」な古代ローマから、一神教で、キリスト教以外を信じることを認めない「了見の狭い」中世に移り変わりつつある。しかも、元高級官僚で司教に転職したアンブロシウスが巧...
ローマがどんどんローマらしくなくなっていく。寂しい。 多神教で、自分が信仰しない神様でも他の人が信じることは認める「寛容」な古代ローマから、一神教で、キリスト教以外を信じることを認めない「了見の狭い」中世に移り変わりつつある。しかも、元高級官僚で司教に転職したアンブロシウスが巧みに皇帝をあやつってキリスト教カトリックの地歩を固めていく。 何だか、2000年ぐらい早くローマに生まれたかったなぁ。
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キリスト教優遇策により、一神教支配に飲み込まれて行くローマを 止めようとしたユリアヌス帝の死後、後継の皇帝たちは次々とユリア ヌス帝の実施した政策を反故にし、キリスト教は帝国内での地位を 再び確立する。 そして、テオドシウス帝によりキリスト教はローマの国教となる。キリスト...
キリスト教優遇策により、一神教支配に飲み込まれて行くローマを 止めようとしたユリアヌス帝の死後、後継の皇帝たちは次々とユリア ヌス帝の実施した政策を反故にし、キリスト教は帝国内での地位を 再び確立する。 そして、テオドシウス帝によりキリスト教はローマの国教となる。キリスト 教史観では大帝と呼ばれるコンスタンティヌス帝も、その子コンスタン ティヌス帝も、キリスト教を優遇はしたが洗礼を受けたのは死・の直前 だったのに対し、テオドシウス帝は存命中に洗礼を受ける。 後世から「王権神授説」と呼ばれるきっかけを作った。そして、「ローマ 市民中の第一人者」であり元老院とローマ市民から統治を委託されるの が皇帝というローマの統治スタイルをまるっきり変えてしまう。 皇帝は神から統治を託された者になるのだ。要は皇帝の上にキリスト 教会が君臨していることとなる。これが、後の「カノッサの屈辱」が起こる 原因にもなった。 キリスト教国教化がなったことで、それまでのローマの神々を崇める こと・祭儀を行うことは禁止され、神殿どころか街道沿いにあった祠 までが閉鎖される。神々の彫像を飾ることさえ「偶像崇拝」とされ、 悪くすれば死罪である。 おまけにローマ・ギリシアの文芸作品を収めた図書館までが閉鎖 である。 あぁ…なんてこったいっ。ユダヤの人々に政教分離を説きながらも、 信ずるものまで奪わなかったローマなのに、自分たちの神々を捨てた どころか「邪教」とさえ呼んでしまう。「異なる教え」の異教ではなく、 「邪な教え」だぜ。 しかも、同じキリスト教なのに三位一体以外の教理は「異端」として 排除する。中世の異端審問や魔女裁判を思い出したよ。 ローマに屈したギリシアの文化を愛し、敗者の神々まで自分たちの 神に加え、皇帝でさえも死後には神格化したローマはもう存在しない。 ローマ人が誇った「寛容の精神」は死に絶え、狂信の時代がやって来た。 常々、食の否定は文化の否定と思っているのだが、宗教の否定もまた、 文化の否定に他ならない。 さて、ローマ帝国が完全に崩壊するまで、残すところあと3巻になってし まった。
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11/5/11 テオドシウス帝。キリスト教を国教と定める。異端、異教を迫害。ミラノ司教アンブロシウスがテオドシウス帝を裏で操る。
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