ふがいない僕は空を見た の商品レビュー
「セックス」によってヒトの命は始まり「セックス」によってヒトの生は変わる。生きていることってなんて哀しくなんて辛く、そしてなんて美しいんだ。読みながら泣いた。命を思い、泣いた。
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読み始めたら「なんだエロ小説か、オエ」と思いつつ読み進めるとそんな事を思った自分がオエであった。 久しぶりに身体の隅々に染み渡ってホワリとズドンと後に残り続ける小説である。 これは心底読んでよかったと思う。
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これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変...
これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。 何だろう・・・この感覚。 読み始めと終わりがこうも違う、そしてそれはかなり良い意味で。 R-18指定とある限りは、性描写があることは覚悟ずみだ。 が、描写はともかくとして、シュチュエーションというか、 性癖というか、かなりショッキングで、いい歳してながら 焦った。 でも、読み進めるうちに、感情としては、 きっと誰もが一度と言わず抱えた「想い」がここかしこに 散りばめられている。 育った環境、友人達との関係性、 そして何よりも卓巳と母との関係が起因していると思われる、 卓巳の性根というか、自然と培われた思いやりみたいのが、 最後の最後でほんわかじんわりした読後感につながったのだと思う。 『本屋大賞』にノミネートされていなければ、 決して手に取ることはなかったであろう本作であったが、 読み始めが期待薄だった分、読み応えがあったと思えるものでした。 予想外の出会いに感謝! 《2010年1月27日 読了》
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
新聞での紹介だったかを見て、読んでみました。 「ふがいない僕は空を見た」というタイトルが気になっていたのですが、表題作はなく、オムニバス形式の短編集でした。 「ミクマリ」の斎藤とあんずの関係性はだいぶ衝撃的なものであるけれど、とても現代的であるし、現代ならではの悲痛さがある。 「ミクマリ」は別れで終わるけれど、このお話は一番不幸でない状態と言いますか…。 「ミクマリ」が発端となって、次の話に進んでいくので、「ミクマリ」の衝撃さは読み終わった後、それでも幸せな状態だったのではないかと思えてしまった。 如何せん、そのあとが重いのだ。 「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はあんずの物語。 これはまずタイトルが印象的。まさに言い得て妙だ。 あんずの過去、現在、「ミクマリ」があんず視点で描かれたものと考えていいと思う。 あんずの環境は起りえる話であり、実際にあるであろうと思うものだった。 「2035年のオーガズム」は斎藤に恋する松永の話。 「セイタカアワダチソウの空」は斎藤の友人・福田の話。 勉強が出来ない、父は死別、母は他の男性と暮らしていて、福田は呆け始めている祖母と暮らしている。 彼はコンビニバイトをしている。生活に疲れているといえる。 バイト仲間の田岡さんに勉強を教えてもらうが、結局彼は強制わいせつ罪で逮捕される。 印象的だったのは、福田のおばあちゃんがいなくなってしまったとき、偶然すれ違った友人に祖母を見かけなかったと尋ねたら、友人にも聞いてみると行動したシーン。 福田は家庭環境のため、人に頼るということをしない。 けれど、ふと聞いたところから、その友人は彼に手を貸す。そういう繋がりはすごいものなんだ、と改めて思う。 そして、福田がなぜ自分をこんなにも助けてくれるのかと聞いた際の田岡さんのセリフ。 「おれは、本当にとんでもないやつだから、それ以外のところでは、とんでもなくいいやつにならないとだめなんだ」 このとんでもないというのはその後逮捕される原因となったことを指しているのだろうけれど、"悪"は"悪"だけなのか?と思わされる。 田岡さんの福田やあくつへの行動はまた彼の一面だったはずなので。 勧善懲悪なんていうものは現実にはないのだろうと思うのだ。 「花粉・受粉」は斎藤の母の話。 母は助産師で助産院を経営している。 「自然に産む」という言葉の重みを感じた。 また、医療の力が必要になりそうで病院に搬送される妊婦さんに夫がかけた言葉の痛ましさ。 なんだかなぁ、と思いつつもこの話の中に出てくる人々は、とても現実的だった。自分自身が取り得る言動をしているのだ。 短編ではあるけれど、この一つの物語は、とても考えさせられるものだった。 また、どの年代の人が読んでもその人の状況でさまざまなことを考えてしまう作品だと思う。
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ふがいない。生きることは決して美しいことだけではない。 大切なことも決して。 そして、大切なことにいつも気づけるわけじゃない。 それでも…それだからこそ、明日が読めるわけでもないのに、空を見上げる。 人間は後悔を背負って生きていくんだ。 うまい。とてもうまい。文章とか、構成と...
ふがいない。生きることは決して美しいことだけではない。 大切なことも決して。 そして、大切なことにいつも気づけるわけじゃない。 それでも…それだからこそ、明日が読めるわけでもないのに、空を見上げる。 人間は後悔を背負って生きていくんだ。 うまい。とてもうまい。文章とか、構成とか、表現とか… 最初の一文で、読ませる魅力がある。
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「そんな趣味、俺が望んだわけじゃないのに、変なオプション付けるよな、神さまって」 何が正しくて何が悪なのか。5章に渡って5人それぞれが抱える苦しみや生き辛さを描いた作品。 底辺とよばれるような劣悪な境遇のなかで、必死に生きる姿が読んでいて苦しくもあったけど、強く心に残った。読ん...
「そんな趣味、俺が望んだわけじゃないのに、変なオプション付けるよな、神さまって」 何が正しくて何が悪なのか。5章に渡って5人それぞれが抱える苦しみや生き辛さを描いた作品。 底辺とよばれるような劣悪な境遇のなかで、必死に生きる姿が読んでいて苦しくもあったけど、強く心に残った。読んでよかったと思える作品。
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最初の『ミクマリ』はまるで山本直樹か榎本ナリコの青年漫画の世界って感じの性描写いっぱいでさすがR-18大賞、まぁこんなもんなのかなぁーっと思いましたがこれはプロローグに過ぎなかった。そこからあんずの話し、彼女の話しと読み進めていくうちに、生々しい痛々しさに打ちのめされ親友良太の過...
最初の『ミクマリ』はまるで山本直樹か榎本ナリコの青年漫画の世界って感じの性描写いっぱいでさすがR-18大賞、まぁこんなもんなのかなぁーっと思いましたがこれはプロローグに過ぎなかった。そこからあんずの話し、彼女の話しと読み進めていくうちに、生々しい痛々しさに打ちのめされ親友良太の過酷で凄絶な毎日に心はぎゅんぎゅんと揺さぶられる。 それぞれの人間が人生に悩み迷い妬み苦しみそれでも生きていく。 圧倒されっぱなしでしたが、最終話の卓巳の母親の話しを読み終わったあとの読後感は悪くなくて爽快感すら感じさせてくれました。
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性的な描写がかなりディープだな、と思っていたら、第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞作品だった。 時に感情に流されて、時に運命のような流れに流されて、生きるのって大変だよなーって思った。 あんずの境遇が切なくて、ずっと斉藤君と一緒にいられたら良かったのに。
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性描写とか性事情が生々しくて軽くショック。流石女のためのR!8文学賞大賞。 でもおはなしはすごくおもしろかったです。登場人物みんなが嫌いになれない。
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前半でひいてはいけない。「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞した「ミクマリ」だけを読んで、この連作集を語ってはいけない。 『ふがいない僕は空を見た』という一冊の本を通して読んで、この物語の奥行きの深さを知ることができる。 高校生男子と主婦との非日常行為。これが高校生の...
前半でひいてはいけない。「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞した「ミクマリ」だけを読んで、この連作集を語ってはいけない。 『ふがいない僕は空を見た』という一冊の本を通して読んで、この物語の奥行きの深さを知ることができる。 高校生男子と主婦との非日常行為。これが高校生の視点、主婦の視点、家族の視点、友人の視点とそれそれの短編で語られる。 言ってみれば、湊かなえの『告白』のようなスタイルだ。 しかし、『告白』がページを追う毎に、人のいやらしさ、醜さを増していったのとは異なり、この物語は、人のどうしようもない面を描いているのだけれど、逆に人のしぶとさというか、生きることのこだわりを読者に伝える。 それは、セックスで始まり、出産で終える構成でもわかる。 また、R-18文学賞ということなのだが、この連作集の中盤を占めるのは、男子高校生の友人たちのストーリーだ。 「2035年のオーガズム」は家族の物語。山田太一の『岸辺のアルバム』的な(違う?)。「セイタカアワダチソウの空」は、貧しさのなかからの希望と現実(?)の物語。 後者は、こういう話が現代の日本を舞台にしているのに(昭和三十年代やアメリカの話ではない)、全然おかしくない事実にあらてめて気付かされ、うなってしまう。傑作。 人の本能や欲望を抑えているのか、そもそも強くないのか、ふがいない僕は、この本を読み終え、空を見上げてしまう。ニャオーン! 今回は猫話なし。
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