光媒の花 の商品レビュー
6章からなる連作小説。物語のどこかが互いに少しずつ繋がっており、そしてそれは循環する。道尾さんのテクニックが存分に味わえる一冊である。第4章までは本当に面白かった。見事と言う他に言葉が見つからなかった。ただ、惜しいかな、第5章と6章が急激に質が落ちたように感じた。連作の「まとめ」...
6章からなる連作小説。物語のどこかが互いに少しずつ繋がっており、そしてそれは循環する。道尾さんのテクニックが存分に味わえる一冊である。第4章までは本当に面白かった。見事と言う他に言葉が見つからなかった。ただ、惜しいかな、第5章と6章が急激に質が落ちたように感じた。連作の「まとめ」にかかってしまったのだろうか?締め切りに追われて不本意ながらも執筆せざるを得なかったのだろうか?本当に残念な結果である。 ただ、この本を読んで今さらながらに道尾さんは根っからのミステリー作家なのだ、と理解できた。純文学志向に走っているようにも思えていたが、やはり根っからのミステリー作家であった。そう、「人間」というミステリーを描き続ける、純粋なミステリー作家だったのです。
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なぜ、積読でいられたのか、 自分で自分が不思議。 もっとはやく読んでおけばよかったと思います。
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短編が数話の本、全ての話がどこかで繋がっている。話しひとつひとつで子供と大人がどこかしらで関係し、少なからずもやもやしている、けれど最後は比較的明るい方へ持ち直す。虫媒花、風媒花、光媒花、光で繁殖する花とはなんだろうか。
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各章がつながっていき、全体が一つにまとまっていく。 非常にきれいにオチがついていく論理展開が 氏の作品らしい。短編のつながりだけに話に 触れるとネタバレになるのでこのくらいに…。
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伊坂さんの「ラッシュライフ」を思い出したけれど、これはそれぞれの時間軸が全く異なっているから、林真理子の「秘密」に近いのかもしれない。登場人物が部分的にリンクしており、最後の章まで来て、やっと最初の人物と繋がるという。章が進むにつれて、明るみに向かって蝶が飛んでいっているのがわか...
伊坂さんの「ラッシュライフ」を思い出したけれど、これはそれぞれの時間軸が全く異なっているから、林真理子の「秘密」に近いのかもしれない。登場人物が部分的にリンクしており、最後の章まで来て、やっと最初の人物と繋がるという。章が進むにつれて、明るみに向かって蝶が飛んでいっているのがわかる。完璧なまでに完成された、それでいて、人間の持つ危うさや曖昧さを丁寧に描いているのが特徴。実際、お菓子の食べかすを指にくっつけるようにして集める仕草をするにはしても、それをあえて描写するほどの繊細さは珍しいと思う。特に道尾さんが得意な不気味さや、トリッキーな要素はなかったものの、とても人間味のある、物語が集まったのではないかと思う。ちょっぴりノスタルジックで、切なく、でも、最後には眩しい光を迎えるのだ。
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前章で脇役だった人が次の章の主役となって話が繋がっている連作短編集。 子どもの心の闇や性的虐待など、前半はやるせなさや諦めに満ちていて哀しく暗い。けれどけして不快な感じではなくどこか優しく、後半は希望の光が感じられる。かなり好みだった! 痴呆のことを「母の知性は、日向に落とした...
前章で脇役だった人が次の章の主役となって話が繋がっている連作短編集。 子どもの心の闇や性的虐待など、前半はやるせなさや諦めに満ちていて哀しく暗い。けれどけして不快な感じではなくどこか優しく、後半は希望の光が感じられる。かなり好みだった! 痴呆のことを「母の知性は、日向に落とした飴玉のように、ゆっくりと溶けていった」とかね、この作家さんの比喩や表現、すごく好き。
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登場人物が少しずつリンクしているミステリ短編集。 苦しみや悩みを抱え、それでも生きていく人たちの物語。例えその話のラストで登場人物に救いがなくても、次の話で出てきたときには少し救いを感じられるような作りになっているので読後感はよかったです。 今まで読んできた道尾作品が強烈な毒を含...
登場人物が少しずつリンクしているミステリ短編集。 苦しみや悩みを抱え、それでも生きていく人たちの物語。例えその話のラストで登場人物に救いがなくても、次の話で出てきたときには少し救いを感じられるような作りになっているので読後感はよかったです。 今まで読んできた道尾作品が強烈な毒を含んでいてどうしようもなく救いのない作品ばかりだったので(希望に満ちたラストの手前で落とし穴が掘ってあって奈落のそこまで叩き落される、みたいなのが結構好きなので)少しだけ物足りなく感じてしまったところも正直あるのですが(笑) 「虫送り」と「冬の蝶」がお気に入り。サチには幸せになってほしいなぁ。
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六つの短編の主人公が入れ替わり、少しずつ話が繋がりミステリー要素も含めた連作になっている。 それぞれの登場人物の秘められた過去。忘れられない記憶や深い闇を抱えて、必死で生きる人たちを描いている。 悲しい境遇の少女が紙袋を裏返して「世界を全部入れちゃうことだってできるんだよ」...
六つの短編の主人公が入れ替わり、少しずつ話が繋がりミステリー要素も含めた連作になっている。 それぞれの登場人物の秘められた過去。忘れられない記憶や深い闇を抱えて、必死で生きる人たちを描いている。 悲しい境遇の少女が紙袋を裏返して「世界を全部入れちゃうことだってできるんだよ」といった言葉があまりにせつない。 風媒花、虫媒花という例えもよくできていると思った。全体的にシリアスで重い内容だが、最後に一筋の光や希望がみえているのがよかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
どこかで繋がっている6つのお話。 リレーのように繋がり、ほんの少しだけ交錯する物語の運び方が途中までは上手いなと思い読み進めましたが、最後の話だけはちょっと無理に色々登場させてしまった感があり。 前半と後半で印象が違い、前半のダークな感じは道尾さんらしく感じ、後半の光を使ったキレイなまとめ方はちょっと違和感を感じました。こういうフンワリした読後感を書く作家さんではないと思っていたので意外でした。 登場人物の抱えるものが重すぎるけれど、その後の話で救いもあり、どうにも抗えないものに対峙する人の心の機微が描かれています。面白かったけど、何かが物足りない。前半のダークさをフワフワで終わらせてほしくなかったです。
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短編集。登場人物が、少しずつ重なり繋がっている個人的には好きな設定。 物語は決して明るくなく、暗いだけでもなく、幸せでもなく、不幸ばかりでもない。 それぞれの人がそれに気付きながら生きていくところに落しどころは見出せたかな? 最後の章での解説めいた文章はやや蛇足だった気がする。
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