ギヴァー の商品レビュー
傑作です。 児童文学作家による近未来SF。 男の子の一人称で、語り口は平易です。 おだやかなようで特異な設定。 少年ジョナスは、もうすぐ12歳。 進路が決まるので、ちょっと緊張しています。 仲良しの友人たちはこれまで仕事を手伝った経験から、適性がはっきりしているので、おそらくそ...
傑作です。 児童文学作家による近未来SF。 男の子の一人称で、語り口は平易です。 おだやかなようで特異な設定。 少年ジョナスは、もうすぐ12歳。 進路が決まるので、ちょっと緊張しています。 仲良しの友人たちはこれまで仕事を手伝った経験から、適性がはっきりしているので、おそらくそう任命されると思うけれど、ジョナスにはこれといって向いている仕事が見つかっていないから。 皆が決められた生活を送る町。 職業は12歳の年末に、コミュニティの長老委員会が決めて、<任命>として発表されるのです。 ジョナスの父は、ニューチャイルドの世話をする<養育係>をしていて、穏やかな性格。 ジョナスの母は司法局の仕事をしている知性豊かな女性。 組み合わせを考えて決められた結婚でした。 かわいい妹も一人います。 どこの家もそうで、両親と子どもが二人。 血が繋がっているわけではありません。 子供を産むのは、職業の一つなのです。 ニューチャイルドは、出産をする仕事に就いている女性から生まれる。 子どもは、希望を出しておけば、いずれは貰えることになっている。 ジョナスは、コミュニティの記憶の器<レシーヴァー>に任命されます。 過去の歴史の中で、今は一般の人が知らない物事や感覚をすべて覚えておくのが職務。 コミュニティにただ一人いるだけの孤独な仕事です。 これまでのレシーヴァーは老人で、次のレシーヴァーが決まった今はギヴァー<記憶を注ぐ者>でもあります。 ギヴァーは、ジョナスに、さまざまな記憶を注ぎ込むのが役目なのです。 最初は知らなかった楽しい記憶を注ぎ込まれますが、やがて苦痛や寒さ、戦争など、痛みを知ることが増えていきます。 そして、コミュニティがこれまでとは違った姿に見えてくるのでした。 このあたりの描写が何とも言えず凄いのです。 淡々と書かれてはいますが、管理社会の様相とそれに気づいていく感じが。 今の体制に疑問を感じるジョナス。 ギヴァーもまた… 不安と切なさがしだいに高まります。 決死の行動を選ぶジョナス。 どちらとも決められない余韻のある終わり方。 枠にとらわれない品格がある作品です。 著者は1937年ハワイに生まれる。 少女時代を日本で過ごす。異なる世界の設定はこの時期が発想の元になっているそう。 世界的に名高い児童文学賞を2度受賞している。 「ギヴァー」は日本での絶版後、「『ギヴァー』を全国の読者に届ける会」によって、再版にこぎつけたそうです。
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これは…凄く良かった。成る程、始めは可愛らしい?ファンタジーかと思ったけれど、どうもそうではないらしい。最後にはなんとも言えないけれど、とにかく!続きが読みたい…
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『カッシアの物語』を読んだときに、この物語が好きな人なら好きですよ というレビューをどこかで読んで手にとってみました。 ディストピアという点で、 (カッシアの世界もまだ世界観が完全にはわかっていないので なんとも言えませんが) もっと悲痛な世界だなと思いました。 児童文学ら...
『カッシアの物語』を読んだときに、この物語が好きな人なら好きですよ というレビューをどこかで読んで手にとってみました。 ディストピアという点で、 (カッシアの世界もまだ世界観が完全にはわかっていないので なんとも言えませんが) もっと悲痛な世界だなと思いました。 児童文学らしいですが、大人が読んでも考えさせられることがたくさん。 自分で人生を切り開いていくことに大人になってから 「少しくらい誰かが私に道を示してくれてもいいのに、誰かに決めてほしい」 と思ってしまうことが時々あります。責任を負いたくないから。 でも、誰かに決められてしまう人生って本当に幸せなの? 痛みのない世界で本当の喜びはあるの? 自問すると苦しくても自分で選び取りたい自分がいることに気づきました。 何もかもが統制されていて、決められている世界に生まれ落ちて 世界で自分ともうひとりだけが「昔は「自由」があったんだよ」と伝えられたときの 孤独感は想像できないし、想像したくないです。 続編も読んでみたいのですが 日本では出版が難しいのかな…。 SF的な物語ですが、ぜひたくさんの方に読んで頂きたいお話だなと思いました。
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今の北朝鮮の社会を想像してしまった。 すべてにおいて平等、公平な社会。これが究極の幸福社会?ユートピア? 児童文学のジャンルらしいが、読後感は重くて考えさせられる。 近未来のSF小説という名を借りた自己啓発、いや自分を見つめ直すための小説かも。
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内容は、ネタバレにならない程度に、amazonから引用。 いかなる不便もない。争いやもめごとは起こらない。飢餓も貧困もない― 生活からすべての苦痛がとりのぞかれたコミュニティは、まさに理想郷に見えた。しかしその成立の秘密を知った時、少年は故郷を脱出し、世界を「より完全な姿」に戻...
内容は、ネタバレにならない程度に、amazonから引用。 いかなる不便もない。争いやもめごとは起こらない。飢餓も貧困もない― 生活からすべての苦痛がとりのぞかれたコミュニティは、まさに理想郷に見えた。しかしその成立の秘密を知った時、少年は故郷を脱出し、世界を「より完全な姿」に戻すための旅に出る… どうしてこの本が一度絶版になっている(ファンの声で復活)のか不思議なぐらい、加速度的に引込まれていきます。 そして最後は児童書?にしては深くて重い読後感。 人間らしさとは何なのかを考えさせられます。必読です。
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すべて与えられた人生を送ることが幸せではなく、 色々な物を見て感じ、様々な経験をすることが生きているということ。 読んでいるとちょっと悲しくなる小説だが、とても大事なことに気づく一冊。 自由=選択できること。
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色のない世界ってどんなのだろう?世の中のすべての人間の仕事が性格などで決められるものだとしたら? いつかはおとずれるかもしれない未来の話です。そんな中で、1人の少年は現代の我々が持つのと近い感情を持ち、自分のいる世界から飛び出していく話。なんとも興味深かったです。
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ジャンルは児童文学なのでしょう、ふりがないっぱい振ってあるし。内容は…私にとってはすごく重かった。一見朗らかなコミュニティーは徹底統制(それも独裁って感じではなく相互支配のイメージ)されており、すべての人生が計画的に遂行される。世界を彩るあれも、これも、それもなく。私も他のレビュ...
ジャンルは児童文学なのでしょう、ふりがないっぱい振ってあるし。内容は…私にとってはすごく重かった。一見朗らかなコミュニティーは徹底統制(それも独裁って感じではなく相互支配のイメージ)されており、すべての人生が計画的に遂行される。世界を彩るあれも、これも、それもなく。私も他のレビューワーの方と同様、『1984年』との共通性を感じます。★4つの理由は、続編と続けて評価したいから。単独としては十分満点です。
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近未来?感情をなくしてしまった人間がかなしい。職業を割り振られる場面が、最近見た映画にあり、場面がうかんでしまったが、それよりも内容はきつかった。 2012.11 なぜか再読です!
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【内容】 天候も仕事も感情も統率されたコミュニティに生きる少年ジョナスが、コミュニティ内で唯一人類の記憶を受け取る〈レシーウ゛ァー〉に選ばれる。 その訓練中に〈解放〉の真実を知ったジョナスは……。 【感想】 加速度的に面白くなっていった! 痛みも苦しみも死の概念もない世界……。...
【内容】 天候も仕事も感情も統率されたコミュニティに生きる少年ジョナスが、コミュニティ内で唯一人類の記憶を受け取る〈レシーウ゛ァー〉に選ばれる。 その訓練中に〈解放〉の真実を知ったジョナスは……。 【感想】 加速度的に面白くなっていった! 痛みも苦しみも死の概念もない世界……。 一見幸せそうだけど、それが何を犠牲にして成り立つものなのか、ある意味リアリティを持って深く追求した作品だと思う。 ありきたりな言い方になってしまうけど、間違いなく愛と勇気の物語。
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