スコーレNo.4 の商品レビュー
『もしも自分に絶対の自信があったら。そうしたら、思ったことをそのまま言える。自信。それは努力して身につけるものでなく、天恵みたいに与えられるものだ。可愛さとまったく同じように。』自分に自信を持って生きている人ってどのくらいいるのでしょうか。自分に自信があると言える人は、なぜそのよ...
『もしも自分に絶対の自信があったら。そうしたら、思ったことをそのまま言える。自信。それは努力して身につけるものでなく、天恵みたいに与えられるものだ。可愛さとまったく同じように。』自分に自信を持って生きている人ってどのくらいいるのでしょうか。自分に自信があると言える人は、なぜそのように思うことができるのでしょうか。自信とは本当に努力で身につくようなものではないのでしょうか。 タイトルと表紙に惹かれて手にしたこの作品。「スコーレ」とは『スクール』の語源となった古代ギリシャ語とのこと。この作品は、主人公・麻子が生きてきたこれまでの道のりを、中学校時代、高校時代、大学・靴屋での研修時代、皮革課勤務の時代の四章に分けて描いていきます。 骨董屋の三人姉妹の長女として育った麻子。No.1では、『真由も未知花ちゃんも首をかしげる。仲がよすぎて気味が悪いみたい、などと言う。今もいちばん親しい友達だ。でも親友と呼ぶほどではない。それは当然だろう。私には七葉がいる。』という位にとっても仲の良い妹・七葉との関係が描かれていきます。 自分には持っていないものに満ち溢れている妹・七葉。『七葉みたいに可愛かったら人生違ってた。そう口走った自分の言葉にいちばん驚いたのは私だ。』この世の誰よりも親しいと思っていた存在。でもそんな七葉に違和感を感じ、七葉と一緒にいたくないと感じ出す麻子。No.2の中で気付きの日が訪れます。 そして、『それぞれのやり方で私たちはお互いから遠ざかった。』スコーレを経るにつれ、やがてそんな妹とも疎遠になっていく日が訪れ、No.3へと舞台は展開していきます。 新しい場所は誰にでも不安なものです。進学して、就職して、全く新しい世界に飛び込んだ時の不安、心細さを感じたことは誰にでもあると思います。そんな時、『居場所をきれいに整えることは、居心地をよくしてその場所を味方につけるようなものだ。もしもまわりに味方がいないのだとしたら、なおさら場所の援護が必要だった。』知らない人ばかりの中での圧倒的な孤独感、周囲が全て敵にも見える絶望的な不安感。永遠に止まったように感じられる時の流れ。ここでの麻子の行動には、そんな時の一つの考え方のヒントをもらった気がしました。 輸入貿易会社に就職し、靴屋に研修に出た麻子。初めての仕事というものにどうやって向き合ったらよいのか、身体が、気持ちがついてゆかない時間。でも、少しづつ前へ、少しづつ上を向く。止まってばかりではいられないと一歩を踏み出す麻子。『自分の目を信じなさい。店長の言葉はじわじわと私の身体に染み込んできた。』初めに味方になってくれた『場所』が応援してくれる、きちんと前を、上を向く人を見てくれている人はきっといる。『違う場所からのぞく世界は、ちゃんとそれにふさわしい、今まで見たこともなかったような顔を向けてくる。靴をもっと、もっともっと知りたいと思った。』そしてNo.4ヘと、物語はまだ見ぬ世界のさらにその先へと歩みを進めていきます。 素晴らしいものを見るとなかなかそれを言葉にすることは出来なくなる。この作品を読み終えて頭に浮かんだのはその言葉でした。人生、回り道をする時だってある。今やっていることが何の意味があるのかと投げ出したくなる時もある。でも、そんな一見意味のない、何もないと思われた時間・時代も全て自分の人生だから。自分に自信を持って一歩づつ前へ。未来に全てが繋がって人生を作っていくんだということを信じて。 大きな事件も出来事も何も起こらない普通の人の普通の人生の四つのスコーレを切り取ったこの作品。でもそこに、読み終えた瞬間に、ありえないほどの圧倒的な爽やかさと、しあわせを感じました。 4月から新年度。新しく社会人となる方の中には残念ながら早々に退職を決意して去ってしまう方も出ると思います。そんな人たちに、その決断をする前にどうしても知ってもらいたい、是非手にとってもらいたい作品だと思いました。その一方で、社会に出て時間の経った自分が、この作品に出会ってまだ心が動いたこと、この作品からしあわせを感じられたこと、それがとても愛おしくもなりました。 今日は月曜日、さあ、今週も頑張ろう!そう思いました。 いい作品に出会えました。
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すごく好きだった。靴屋つながり、不器用な女の子つながり(ただし靴を売ることにかけでは不器用じゃない)で『靴を売るシンデレラ』を思い出したりもしたけど、文化の違いもあって当然読み味はちがう。 きれいな顔立ちをした妹への劣等感。物事に対しても妹ほど執着心や、はげしい情熱を持てないことに対するコンプレックス。でも、その激しい熱を持っていることもまた、その当人にとってはきっと大変なんだろうと思う。 麻子は骨董に対する父のじわじわとしみこむような愛を知らず知らずのうちに受けついでそだったんだろうな。それが靴の販売にも生かされて、ようやくそれが自分の持つ特技で長所なんだと気づいていくところがとてもよくて、満たされる思いがした。茅野さんとのつながりが、その気づきとシンクロナイズしているのもいいですね。
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平凡で、普遍的な女性の日常、人生を描かれていて、感情移入しやすくて好みでした。 こういう本、今の気分にとても合っていて楽しく読めました。 茅野さんが素敵すぎてこんなできた男性に愛される麻子はでもやっぱり女性として素敵な人なんだろうなと思いました。
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スコーレとは、ギリシャ語で「遊び」や「学び」を意味するそうです。 一人の女性が、学生・就職を経ながら、成長していく物語です。特に盛り上がりというものはありませんが、主人公にとっては大きな事柄ばかりで、全体的に瑞々しく、かつ生き生きと描かれているように感じました。 どうしても一代記...
スコーレとは、ギリシャ語で「遊び」や「学び」を意味するそうです。 一人の女性が、学生・就職を経ながら、成長していく物語です。特に盛り上がりというものはありませんが、主人公にとっては大きな事柄ばかりで、全体的に瑞々しく、かつ生き生きと描かれているように感じました。 どうしても一代記となると、毒づいたものが目立ちますが、この作品は明るく、前向きにさせてくれる要素を中心にしている印象があって、清々しい読後感がありました。 それぞれの節目で出てくるコンプレックス・悩みがありながらも懸命に生きている姿に感銘を受けました。特に同性の方は、より響くのではないかと思います。 側から見たら、地味なストーリーですが、ジワジワと心に響いた作品でした。
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私はこの本を読んでもすっと心に落ちていく感覚がなかった、、、。結局何を感じたか上手く分からなかったからまた読みたいと思った。七葉の纏った空気の色がまた少し変わったかもしれない。という言葉になぜが惹かれた。けど上手く言葉で消化できないー!! 宮下奈津さんの作品は会話より描写や言葉選...
私はこの本を読んでもすっと心に落ちていく感覚がなかった、、、。結局何を感じたか上手く分からなかったからまた読みたいと思った。七葉の纏った空気の色がまた少し変わったかもしれない。という言葉になぜが惹かれた。けど上手く言葉で消化できないー!! 宮下奈津さんの作品は会話より描写や言葉選びが綺麗 。
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一緒に育った兄弟姉妹が少しずつ変わっていくことを寂しく思うのは兄弟がいる人なら誰もが感じたことがあるはず。時には理解しあえないことがあっても、大人になって三人姉妹が二段ベッドで一緒に寝れることはすごく幸せなことだと思う。家族の温かみを思い出して実家に帰りたくさせるような一冊。
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女性が生きる中で出会う様々な思いを繊細に丁寧に優しく描かれています。何かしら女性なら自分と重ねて引っかかる描写があると思います。
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図書館で。 一言で感想を言うと、女の子ってめんどくっさ。 長女って、自分は妹に比べると(ここで弟はあまりひがみの対象にならないのもポイント)親に愛されてないとか、可愛げが無いと言われるとか僻んでる文章を書く人が多い気がするんですが、これは妹の立場に居る自分の偏見でしょうかねぇ?...
図書館で。 一言で感想を言うと、女の子ってめんどくっさ。 長女って、自分は妹に比べると(ここで弟はあまりひがみの対象にならないのもポイント)親に愛されてないとか、可愛げが無いと言われるとか僻んでる文章を書く人が多い気がするんですが、これは妹の立場に居る自分の偏見でしょうかねぇ? 世間一般論的に長子の方が親は手間暇かけてるから。写真の枚数はケタ違いに多いし、必要なものは揃えてもらえるし、下が生まれるまでは親の愛は独占ですからねぇ(一般論として)。 だから下の方こそは躍起にならないと主張が通らないから、愛想を良くしたり、機転を利かせて注目を得るわけですよ。それは生来のものというよりは努力の結果だから!と下に生まれた者としては声を大にして主張したい所である。ウム。 というわけでなんだか面倒くさい女の子だなぁという感想。思い込みが激しいのか、自分の世界が出来上がってしまっていて難しいのか。結構自己評価高いし(それは別に良い事なんだと思いますが)。 後、おじいさんの話は唐突過ぎてよくわからなかった。 ヒロインよりは妹の七葉ちゃんの方が好きかな。 それにしても名前も妹の方が可愛いとか、親に言えよって感じですよね。
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とてもよかった。解説にもかいてありましたが、女性には是非とも、いや、働く若者みんなに読んで欲しい一冊ですね。全体として読みやすい作品ですが、スコーレ3,4の働き出してからの話は秀逸で久々の一気読みでした。読後感も良く心地良い余韻に浸ることが出来ました。宮下さんの作品は二冊目ですが...
とてもよかった。解説にもかいてありましたが、女性には是非とも、いや、働く若者みんなに読んで欲しい一冊ですね。全体として読みやすい作品ですが、スコーレ3,4の働き出してからの話は秀逸で久々の一気読みでした。読後感も良く心地良い余韻に浸ることが出来ました。宮下さんの作品は二冊目ですが、また、別の作品も読みたいです。これはおすすめの作品です。
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靴屋になって社会人こんなもんか、ぱっとしない主人公の今まで。読み手はこういう経緯からこんな考え方のキャラクターになったんだね、と納得できる筋だけど、自分に置き換えたら、どうだろ。 生きるってことは、あんまり一貫性がないのかな、と思ったりもする。 影響が強いシーンも過去にはあるけれど。 主人公の生家が骨董品を扱う質屋って言うのが、印象的。 真価を見定める力が養われた背景に、素敵な設定。
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